アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Keter-potissimi Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPが予期せず発生した場合、SCP-XXXX-JP-Aの収容体制の見直しが行われます。事後対応に関しては、各除外サイトで行われた影響評価に基づいて行われます。
SCP-XXXX-JP-Aはサイト-132の専用収容棟に収容します。当該施設には2基の時間溝が設置されており、過去改変の発生を阻止します。SCP-XXXX-JP-AはEクラス職員として雇用し、異常と関りの無い事務作業を割り当てます。
説明: SCP-XXXX-JPは2020/08/02から2020/08/06までの間に群発的に発生したCK-クラス:再構築イベントです。イベントによる影響は多岐にわたりますが、いずれも発端は1名の人物に対する過去改変事象です。確認された改変事象を以下に示します。
改変対象 |
改変前 |
改変後 |
---|---|---|
XXXX |
俳優を志望していたが、節約のためエアコンを付けずに寝ていて脱水症状で死亡 | 俳優として大成。映画の主役を獲得 |
XXXX |
陸上選手。怪我を繰り返して左足不随。 | オリンピックの候補選手に選ばれる。 |
XXXX |
X | X |
XXXX |
医学部を目指すも8浪して自殺。 | 立派な医者になる。 |
XXXX |
芸人を目指すも売れず、馬鹿にした同僚2名を自宅で殺害。 | M1に出場。 |
補遺: 対策チームの調査の結果、SCP-XXXX-JPの発生要因が日本人男性の脇田 裕希(32)であると推定されました。インタビューから改変前と改変後についての知識を有していることなどが判明したため、時間溝を設置した暫定収容房への収容を実施しました。その結果、SCP-XXXX-JPの発生が停止したため、脇田氏がSCP-XXXX-JPを発生させていたと判断されました。確認実験の実施は困難であるため、XXXXはSCP-XXXX-JP関連実体としてSCP-XXXX-JP-Aに分類されました。
インタビュー記録XXXX-JP-3
日付: 2020/08/09
対象: 脇田氏
インタビュアー: 岸川研究員
付記: インタビュアーはサイト-132の別棟から遠隔でインタビューを行った。
[インタビューへの同意や事務手続きが主であるため省略]
岸川研究員: それでは、あなたが異常性を獲得した時や、行使する際についてお聞かせください。時間制限も特にありませんし、出来るだけ詳しく話してくださると、こちらとしても有難いです。
脇田氏: 分かりました
脇田氏: 最初に変だと思ったのは…9日前の朝でした。朝起きた時に、なんというか、記憶がタブっている感じがしたんです。ほんの少しだけ違う、2つの記憶があるような。
岸川研究員: 最初の過去改変が行われた日でもありますね。それ以前に、何か兆候などはありませんでしたか?
脇田氏: はい、ありました。前の日の夜に、変な夢たんです。
岸川研究員: 夢の内容を教えてください。
脇田氏: 真っ白い空間に、自分が立っている夢でした。目の前には、四角いフレームがありました。そのフレームには、男の人が1人映っていました。その人は事務所で演技の練習をしてたり、アルバイトで稼いだりしていました。お金に困ってるようで、真夏なのにエアコンとかを付けずに寝てるみたいでしたね。それで熱中症になって、亡くなってしまいました。あとで気付いたんですが、その人は寝る前にニュースで見た人でした。その人の人生を夢で見たんだと思います。でも今は大スターになってましたね。映画で主演とかもしてたみたいですし。あ、夢の内容は終わりです。
岸川研究員: ありがとうございます。まず1つ気になった点ですが、かなりはっきりと夢の内容を覚えられているようですね。
脇田氏: そこから5日も同じような夢を見続けましたから。
岸川研究員: そうでしたか。では2つ目ですが、あなたが夢で見た人物は、そのタイミングで過去が改変されています。あなたがそれを行っていたと認識していましたか?
脇田氏: いや、それは流石に。でも、2回目の時点で自分がやってるんじゃないかと思い始めました。同じような境遇の人が2日連続で夢に出てきて、起きたら同じように大成してたわけですから。だから3日目の夜は、目ぼしい人を調べてから寝てみました。そしたら夢にその人が出てきて、あとは同じです。
岸川研究員: 4日目、5日目も同様に、脇田さんが意図した人物の夢を見たのでしょうか。
脇田氏: はい。寝る前に探しました。
岸川研究員: なるほど。
岸川研究員: あなたが改変を行った人物には、一定の傾向があるように見受けられます。口語的な表現になるのですが、いずれの人物も夢を追った結果、悲しい結末を迎えているように思います。あなたがそのような人物を意図的に選択していたようですが、他の傾向の人物を夢で見ようとは思わなかったのですか?
脇田氏: ああ…そうですね。
岸川研究員: 何かこだわり、目的があったのでしょうか?例えばですが、夢が叶わなかった人を救済したかったなど。
脇田氏: [沈黙]
岸川研究員: 答えにくい質問でしたら、次の質問に移らせてもらいましょうか?
脇田氏: …いえ、大丈夫です。そうですね。岸川さんには何か夢はありましたか?
岸川研究員: それは、私の質問と関係あるものでしょうか
脇田氏: まあ、はい。
岸川研究員: …いつ頃の夢でしょうか。
脇田氏: 10代とかで。
岸川研究員: その頃なら…プロバスケットボール選手になりたいと思っていました。
脇田氏: スラムダンクですか。
岸川研究員: (笑い) そうです。
脇田氏: でも今はバスケ選手じゃないですよね。
岸川研究員: 高校卒業を機に辞めてしまいました。学業の方が合っていると分かったので。
脇田氏: 今の自分に満足していますか?
岸川研究員: はい。
脇田氏: …僕も昔、野球選手になりたいと思っていました。でも才能が無くて、高1の冬頃に辞めてしまいました。それから何となく勉強して、何となく大学に入って、何となく会社に入って今に至ってます。別段苦しい思いとかはしてないので、今の生活に不満があるわけではないんですが、時々思うんです。もっと努力してたら、夢を叶えられたんじゃないかって。岸川さんもそう思うことはないですか?
岸川研究員: 無い、とは言い切れないですね。バスケの観戦をしている時に、そう思うこともあります。
脇田氏: ですよね。みんな少なからずあるんだと思います。思い返すと、本気でやっているつもりでも、どこかで言い訳して手を抜いて練習していました。もっと本気でやっていれば。あの時本気になれなかった自分に、何かできることがあるのか。そんな風に、自己嫌悪に陥ることもありました。
脇田氏: そんな時に、さっきみたいな夢を見たんですよね。あの人たちは、必死に夢を追いかけていました。自分の身も顧みないほどに。でもそれは叶わずに、死んだり、犯罪に走ったりしていました。それを見て僕は、凄く安心したんです。ああ、夢を諦めて良かったって。才能とか運も無いのに夢を追いかけたらこんなことになるんだから、僕の選択は正解だったんだって。4回目と5回目も同じような人の夢を見ようと思ったのは、もっと悲惨なことになった人が見たかったからです。それで、今の自分に自信が持てました。ここにきてから夢を見なくなりましたけど、僕はもう満足です。
岸川研究員: 分かりました。お答えいただきありがとうございます。一度お話しいただいた内容をこちらでまとめようと思いますので、本日はここまでにさせて頂きます。
脇田氏: 分かりました。
[記録終了]
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