本ドキュメントにおいて、クリアランスレベル3/3000JPからの更新箇所は青字で表記されます。
アイテム番号: SCP-3000-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3000-JPは原理上完全な収容が不可能であり、また一般社会において広く認知されているものの、その発生確率を低下させることが可能であり、人類に対する直接的な脅威度は低いものとみなされます。
SCP-3000-JP-αの発生が確認された場合は、状況に応じて“幻覚”“見間違い”“珍しい自然現象”等のカバーストーリーを流布してください。対象が形而下へ顕在した場合はSCP-3000-JP-α指定を解除し、標準アノマリー収容プロトコルに従って収容し、新たに個別にナンバリングしてください。記憶処理は推奨されません。SCP-3000-JP-βが疑われる事例が発見された場合は、対象ごとに収容プロトコルを更新することで対処してください。一般社会の情報操作は推奨されません。
機動部隊こ-5(“ザ・ポニータイム”)はクリーピーパスタ、神話、民間伝承、都市伝説、怪談等、聞き手に恐怖を喚起させる現象や異常存在が描かれた物語群(以下、クリーピーパスタ群と呼称)を収集します。この活動は風説、インターネット、SNS、書籍等の媒体上で行われますが、これに限定されません。財団記録・情報保安管理局拾異課は収集されたクリーピーパスタ群を解析し、既知のアノマリーとの関連性の有無及び情報災害の有無を判定するとともに、非異常性であると判断されたクリーピーパスタ群をアーカイブ化します。このうち、コレス=オンブス値が15.5以上に達したクリーピーパスタ群は専用データベースにアップロードされます。担当職員は上述のデータベース上のクリーピーパスタ群を熟読し、物語の内容をわずかに改変した上で、一般社会において拡散してください。拡散の方法は口述が推奨されますが、状況に応じて他の方法を用いても構いません。
既に一般社会に広く認知された神話、民間伝承及びクリーピーパスタ群に対して、その特徴から大きく逸脱し、かつコレス=オンブス値が15.5を超過した物語に対して、機動部隊こ-6(“怪談作家”)が財団フロント企業を通じてメディアに干渉し、当該物語が映画/アニメーション/漫画/ゲーム等のフィクションであることを一般大衆の意識に刷り込んでコレス=オンブス値を減少させてください。
説明: SCP-3000-JPは普遍的形而上空間Non-inherent Space(以下、NiSと呼称)における無我的概念的実体(以下、SCP-3000-JP-αと呼称)の行動が、基底現実(形而下)において生物に認識される現象です。NiSは人類を含むあらゆる生物の無意識下と接続した概念的空間であり、生物の記憶や想像がシャドウとして反映されます。SCP-3000-JP-αはNiSに遍在する無数の細分化された概念的エレメントにより構成され、NiS内を伝播/拡散する点で夢界実体(dream entities)に類似しますが、下記の点で明確に区別されます。
普遍的形而上空間とSCP-3000-JP-αの模式図(クリックで拡大)
- 自我を有さず他律的に行動する。
- 周囲の概念的エレメント濃度に影響を及ぼす。
- 同時に複数の生物の意識体に認識され、形而下での覚醒状態の認識に影響を与える。
- “対象は異常な存在/現象である”“対象は実在する”という概念エレメントを主要な構成要素とする。
SCP-3000-JP-αはNiSにおいて特定のエピソードに紐づいた記憶・想像のシャドウを核に、周囲の概念的エレメントが結合して構成されます。SCP-3000-JP-αはNiSにおける生物の意識体と類似した行動を示しますが、その活動は自身の核となるエピソードが周辺の概念的エレメントに反応して起こる現象であり、一定の規則性が見られる他律的活動であると推測され、自我を有さないと考えられます。また、SCP-3000-JP-αは形而下においては、バスケス⁼メタフィクション観測器により概念的エレメント濃度を観測することで観測が可能です。
基底現実で認識されるSCP-3000-JP-α(クリックで拡大)
SCP-3000-JP-αは周囲の概念的エレメントと接続しているため、常に自分自身を構成する概念的エレメントを断片化し、NiSに放出し続けているため、通常は長く存在を維持できません。しかしながら、同種のSCP-3000-JP-αが存在した場合は互いに接近、接触、融合し強大化します。これにより概念的エレメントを長時間放出し続け、周囲のNiSの概念的エレメント濃度に影響を与えます。同時に、NiSと接続していることで、SCP-3000-JP-αの活動と連動して概念的エレメントにゆらぎを生じさせ、揺らぎは更に周囲の概念的エレメントへ波として伝播し、生物の無意識領域に到達します。これにより無意識領域はSCP-3000-JP-αを認識、観測し、個々の脳へ記憶/想像をフィードバックします。この結果、形而下において複数の生物が同時にSCP-3000-JP-αを認識するに至ります。特筆するべき点として、既に一般社会において神話や民間伝承等の物語によりその概念が広く認知されたアノマリーは、新たな物語が拡散することでNiSにおけるSCP-3000-JP-αに新たな概念が付与され、形而下において認識される姿が変化する場合があります。当該現象はSCP-3000-JP-βに指定されます。
エピソードと紐づいた記憶や想像は、NiSにおいてシャドウを核とし、概念的実体を構成します。フィクションの概念的実体に対しては、その“実在しない”という概念が構成要素の大半を占めるため、形而下で認識された場合も対象は幻覚や錯覚、白昼夢等と考えられる結果に終わります。しかし、恐怖を伴う物語は聞き手に“実在する”ことへの恐れを抱かせ、深層心理において“存在する”ことを確信させるため、形而下で認識された場合は対象が実在する怪奇的存在だと見なされることに繋がり、結果的に恐怖を想起させるクリーピーパスタ群がSCP-3000-JPを生み出す原因となります。
以下は、SCP-3000-JPの発生プロセスです。
<フェーズ1>
[コレス=オンブス値: 0.0]
クリーピーパスタ群と接触した人物が、描かれた異常存在/現象に恐怖を抱く。
恐怖により防衛機構が機能し、無意識下において対象を“実在する”と認識し、遭遇した場合のシュミレーションが行われることで、NiSにおいて対象のイメージが投影される。
<フェーズ2>
[コレス=オンブス値: 0.1~10.0]
NiSに投影されたイメージが周囲の概念的エレメントと結合し、概念的実体として活動を開始する。
<フェーズ3>
[コレス=オンブス値: 10.1~20.0]
特定のクリーピーパスタ群に対して複数の人物が類似するイメージを抱くことにより、SCP-3000-JP-αが結合と同化を繰り返し、存在を強大化し、NiS内において活動を開始する。
フェーズ3に至った概念的実体をSCP-3000-JP-αと呼称する。
<フェーズ4>
[コレス=オンブス値: 20.1~30.0]
強大化したSCP-3000-JP-αの活動によりNiS内の概念的エレメントが揺らぎ、周辺の無意識へ波としてその運動を伝達し、生物の意識体に認識される。
意識体が認識したことで、脳を介して覚醒状態の生物に認識される。
<フェーズ5>
[コレス=オンブス値: 30.1~50.0]
生物が覚醒状態でSCP-3000-JP-αを知覚したことでその存在をより確信し、NiSにおけるSCP-3000-JP-αの存在がより強化される。
以下、フェーズ4・フェーズ5が繰り返されることでSCP-3000-JP-αを知覚する人間が増加する。
<フェーズ6>
[コレス=オンブス値: 50.1~]
多数の人間が存在を確信するとともに、累積ヒューム値が1.0を超過することで現実改変が発生し、SCP-3000-JP-αが形而下に顕在化する。また、一部のSCP-3000-JP-αはNiSにおいてSCP-3000-JP-αを自身の意識体として獲得する。
対象が既に形而下において実体を有し、かつその特徴がSCP-3000-JP-αと異なる場合、人間の認識がSCP-3000-JP-αに合わせて改変される場合がある。この現象をSCP-3000-JP-βと呼称する。
フェーズ4に至ったSCP-3000-JP-αは、元となったクリーピーパスタ群に対応した容姿や異常行動をとる存在として認識されるため、SCP-3000-JPの発生が放置された場合はヴェールの崩壊へ繋がることが懸念されます。フェーズ4に達したSCP-3000-JP-αは形而下で認識されることで自己完結的に強大化し続けるため、クリーピーパスタ群自体の消去はSCP-3000-JP-αの無力化に有効ではありません。しかし、特定のクリーピーパスタ群の内容を僅かに改変し拡散した場合、無意識下でその実在性に疑念を生じさせ、SCP-3000-JP-αが形而下で認識された場合も“実在しない”と認識させることに繋がるとともに、これらの差異によりNiSにおける“共通のイメージ”が不安定化され、概念エレメント同士の結合・融合そのものを阻害されるため、SCP-3000-JPの発生を阻止することが可能です。
フェーズ6に到達したSCP-3000-JP-αは、形而下では映像記録や録音上でも認識され、バスケス⁼メタフィクション観測器によるNiS観測以外の方法では識別が困難になります。この段階に到達した時点で当該クリーピーパスタ群は多くの場合数十万人規模の人類に認知され、かつその存在性を確信されることによりイベント・ブルーランタンの条件を満たし、SCP-3000-JP-αが顕在化します(補遺参照)。顕在化したSCP-3000-JP-αはその存在性を確立し、NiS内の概念的エレメント濃度に影響されず形而下で存在を留めます。また、SCP-3000-JP-αは元となったクリーピーパスタ群に準じた外見的特徴と異常性を有します。フェーズ6のSCP-3000-JP-αは生物、非生物、霊体、悪魔実体、神格実体、現象等、あらゆる存在形式が含まれ、また全く異なる発生時期・場所・条件・行動原理・異常性を有します。このため、形而下に顕在化したSCP-3000-JP-αは別存在のアノマリーとして扱われ、個別に収容され、ナンバリングされたうえで特別収容プロトコルが制定されます。また、既に対象が形而下に実体を有する場合においてNiSのSCP-3000-JP-αがフェーズ6に到達した場合、SCP-3000-JP-βが発生する可能性が生じます。SCP-3000-JP-βは、人間の脳が感覚器官の情報よりもNiSにおけるフィードバックを選択することによる認識不協和であり、対応する物語の知識の有無を問いません。
神格実体や悪魔実体等、形而上空間と密接に繋がるアノマリーが、概念の変化に伴い形而下の実体を変質させることは以前から確認されており、SCP-3000-JP-βも当初はこの一種であると考えられました。しかし、一部の知的アノマリーは自身の変質を否定したことから、認識異常の可能性が指摘され、1990年代にバスケス⁼メタフィクション観測器が開発され、アノマリー自身の自己認識とSCP-3000-JP-αとの乖離が観測されたことから、上述の変質とは異なる現象であると確認され、SCP-3000-JP-βに指定ました。
補遺1: インシデント記録_3000JPβ抜粋
本インシデント記録は、収容中のアノマリーに対して発生したSCP-3000-JP-βインシデントリストの抜粋です。その他の記録の閲覧は財団記録・情報保安管理局に問い合わせてください。
分類: クラスC霊的実体
オブジェクト概要: 室町時代中期の女性の容姿を有する霊的実体
観測された影響: 対象は蒐集院により14世紀に収容され、財団に引き継がれた霊的実体。収容当初の記録では人間と同じ容姿を有していたが、18世紀以降、日本国内において“幽霊には足が無い”とする認識が一般化するにつれ、対象の下半身を認識できなくなった。霊素測定の結果は、脚部に相当する部位の存在を示した。
戦後、日本国内で“足を有する幽霊”という概念が広がり、1995年に再び下肢の観測が可能となった。
分類: 地球外知的生命体
オブジェクト概要: グレイ・タイプ・エイリアンの容姿を有する複数のヒューマノイド型地球外知的生命体
観測された影響: 1960年以降、財団は地球外知的生命体をアノマリーに指定し、収容を開始した。当初、収容過程で一般人に目撃された個体は出身ごとに異なる外観を有していたが、1970年代以降、映画等のメディアでグレイ・タイプ・エイリアンが描かれるようになにつれ、グレイ・タイプ・エイリアンのSCP-3000-JP-αが目撃・収容される事例が著しく増加した。
また、1980年代以降、既に収容していた個体の一部が、その容姿をグレイ・タイプ・エイリアンに変化させたが、いずれの個体も自身の姿が変化したことを否定した。
分類: 悪魔実体
オブジェクト概要: 自らを堕天使であると主張する複数の悪魔実体。
観測された影響: 対象はいずれも自身をアブラハム宗教における堕天使であると主張している悪魔実体。共通した特徴として、対象は背中に翼の生えた男性コーカソイドの外観を有しているが、一部の実体は自身が翼を有することを否定し、文献上の自身の記述に翼の描写がないことを示した。考古学部門および宗教部門によりこの主張は肯定された。
分類: ヒト型実体
オブジェクト概要: 白人の外観を有する複数の吸血性ヒト型実体
観測された影響: 対象は14世紀~18世紀より存在すると主張する吸血性ヒト型実体。白人の外観を有し、極めて日光に弱く、吸血により人間を同様のアノマリーに変化させ、現地において吸血鬼伝説として認知されてる。1930年に財団が収容した時点ではいずれの個体も犬歯の発達が観察されたが、アノマリー自身はこれを否定した。後に発見された16世紀の文献記録はアノマリーの主張を裏付けるものであった。
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