SCP-CN-2300(1000)

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あなたがこの一文を閲覧し、かつ理解したのであれば、あなたは既にSCP-CN-2300の唯一の承認者となっています。
O5-1のクリアランスはあなたに対して解放されています。パスワード入力してください:
-黒き月は吠えているか? -然り、されど我等は終に其れを黙らせる。


永久記憶刻印が施されました。あなたはこれから本ドキュメントの内容を忘却することも、他者へ漏洩することも出来ません。
冷静さを保ち、本ドキュメントの閲覧を続け、その内容を完全に理解してください。

アイテム番号: SCP-CN-2300

オブジェクトクラス: Thaumiel

1000.jpg

SCP-CN-2300-1,数字は現在のサブタイムラインナンバーの下四桁

特別収容プロトコル SCP-CN-2300-1はその唯一の承認者が携帯し、かつ、その他の全ての知的生命体に対してその真の機能が秘匿されねばなりません。承認者の優先順位は下記の通りです:

  • O5-1本人またはその複製体
  • オブジェクトが生存する現在の承認者に24時間以上接触していない場合、オブジェクトは再度承認者を評定し、感情レベルがガンマ-02区分のレベル3またはそれ以上の財団職員に対してクリアランスが解放されます(詳細は財団精神状態評価マニュアルを参照)
  • 承認者がいない状態が24時間継続した場合、オブジェクトは再度承認者を評定し、全ての超常管理組織の構成員に対してクリアランスが解放されます
  • それでも承認者がいない状態が48時間継続した場合、オブジェクトは再度に承認者を評定し、全ての正常な人類に対してクリアランスが解放されます
  • 承認者は同時に一名の人間だけが担当します。新規承認者の評定時点で元の承認者が死亡していない場合、元の承認者に対してミーム殺害エージェントが作動します。

例外として、SCP-CN-1000が既に発生しており、承認者がいない状態が72時間継続した場合、オブジェクトは自動的に起動します。これは承認者がSCP-CN-2300-1を押した場合と同じ状態です。

SCP-CN-2300-2のコピーは財団オペレーションシステムに関連付けられており、財団の所持する全てのデータ記録媒体上にコピーが保存されます。永久記憶刻印がその隠された部分に施されており、現在の承認者だけが閲覧でき、かつ、記憶処理を含むいかなる方法によっても忘却することができません。非承認者がドキュメントの閲覧を試みた場合、Safeクラスのカバードキュメントが閲覧されます。

説明: SCP-CN-2300-1は特殊合金製の外装を持つ押しボタン式カウンターです。対象が示す数字は対象が存在するタイムラインのシリアルナンバーです。押しボタンは生体認証ロックにより完全にロックされており、現在の承認者のみ押すことが可能です。SCP-CN-2300-1を押すことは現在の承認者が抵抗を放棄し、その世界線の現実存在全ての破棄を許可し、他の世界線のSCP-CN-2300-2に付記の内容を伝達するために用いることを意味します。

意味は簡単だ。もし君がSCP-CN-2300-1を押したのなら、君と君の世界は決して救うことができない。消失、存在の否定、全てのタイムライン上からの削除、ZKクラス世界終焉シナリオ、完全な死亡。その代価として、君がこのドキュメントに残したメッセージは他の世界の過去に向けて発信され、その世界の承認者に警告する。君の世界が一歩一歩終焉に向かっていても、君の辿った道を彼等が歩むことは何としてでも避けさせるべきだ。——承認者 #0001

SCP-CN-2300-2は本ドキュメントです。現在の承認者だけがSCP-CN-2300-2にメッセージと付記を添付することができますが、その原文を削除または修正することはできません。メッセージは財団の全ての情報媒体上に記録されます。情報媒体が存在しない環境下では、現在の承認者は強化思考方法を用いて記憶中のSCP-CN-2300-2にメッセージの添付を試みることができますが、この方法はデータ破損を招く可能性があるため、バックアップの方法としてのみ記載されます。

利用可能な情報媒体が無い状況が今、私に起こった。我々は非常に深刻な概念上のインシデントを経験した。全てのサイト-CN-99と下水道のイメージが混ざりあって——私は今、言及したくはない成分の混合物の中に浸かる羽目になった。SCP-CN-2300-1以外には何も無い。コントロールパネルが汚物に沈む前に、サイト自壊プロトコルを起動して、地表上から全てを消し去るしかなかった。
ミーム部門からGOCに人を遣ってくれ。出来るだけ早く。彼らに人豚猪獣か他の研究資料を回収させられれば、きっとこれを概念的に解決できるだろう。——承認者#0041

補遺: SAP-1000/SCP-CN1000計画に関するO5評議会の通信

O5-1のパスワードは全てのドキュメントのコードを解除できる。もし君の身がまだ危険に晒されていないのなら、読んで欲しいものがある——SCP-CN-1000だ。これは我々が何から逃れるために世界単位で犠牲としているのかに関係している。このオブジェクトは前半部分のみが記載されている。当時のO5-12から私への返信がまだないからだ。読み終わった後で、私自身と評議会員達とのその後の会話をコピーしたこのドキュメントに戻ってくれ。タイムスタンプは証明で、私はそれらの内容に意図的に手を加えてはいない。——承認者#0001

From: O5-1

To: O5-12

君の意見にはある程度賛成できる。確かに、ただ挑戦と調整を試み続けるだけでは活路は無いだろう。絶望と罪悪感が、何一つとしてタイムラインを救えていない我々をいつも取り囲んでいて、私自身も、いつも報告書に“放棄を確認”とサインする度に辟易している。だが、私は人類はまだ限界に達してはいないと信じている。β3-03-ACDA2の幸運な生存者である我々に至っても、故郷では人類の技術の終点には至らなかった。当時の我々は文明の心地よさのせいで技術の探求を緩めたのかもしれない。381本のタイムラインを経験し、95250年を経た現在、何故我々はまだ九万年以上前の技術で人類を救おうとしているんだ? 逆にこう言えるだろう。我々には時間がある。そして、別の方法で時間を使わなければならない。

立ち止まってよく考えるんだ、トゥエルブ。我々が毎回ひとつのタイムラインの人類を保護するために慎重に行動して、我々の持つ技術の一部を彼らに与え、彼らの発展がSCP-CN-1000を緩やかに軽減したり十分に克服できる事を期待したとしても——それは逆に我々自身の歩みを制限し、我々と彼らにほぼ尽きること無い苦痛をもたらすだろう。我々に欠けていることは、一つのタイムラインの全人類へ早期に死刑を宣告して、技術を研究するために彼らの全ての富、資源そして希望を絞り尽くす残忍さなんだ。

我々一人一人がこの手で殺害した人間の数は一回のSCP-CN-1000に匹敵する。そして、私は自分自身の数が倍になることも厭わない。君は私が狂ってしまったと思うかもしれないが、もし私を信じてくれるなら、もう一度、少しの時間が欲しい。

[下品な言葉を削除]——もし俺がO5評議会(勿論他のタイムライン上から観劇している不死の幽霊共だろうが任務を執行しに来た複製体だろうがだ)がこんな連中だと知っていたら、俺は財団に入らなかったし、ましてや今こんな悪魔のオブジェクトの“承認者”になりはしなかった。俺はボタンを押さない。永遠にだ。俺は……俺自身は、誰のモルモットにもなりたくはないんだ。——承認者#0132

しかしあなたはもう死んでしまった、あなたの最も貴重なタイムラインをそんな自分の愚痴を発信するために使うことは無意味だ、#0132。もちろん、私自身も何を残せば良いか分からない。自分の世界を表す遺書を書くことは困難だった。私は何も起こらなかったかのように残りの二十年を過ごして、その後死ぬ前にこれを片付けるかもしれない。もしくは私が選択するのは[残りのデータが破損しています]——承認者#0133

From: O5-1

To: O5評議会

戻った。

五万体の自分のクローンとの共同作業は、確かに奇妙でクレイジーな体験で、もう少しで撤収時間を忘れるところだったよ。撤収前に全人類を殺害することはできなくて、あそこの財団自身に人類の後始末をつけさせるしか無かった。だが、このタイムラインが我々に与えた技術は、彼らの命を対価にする価値があった。

具体的には、真の乱数を生み出す技術を発見した。そして、1bitの乱数が表示された瞬間、カント計数機の警報があらゆるサイトに響き渡った——それがヒューム指数の環境基準値だろうが、SAP自身の“異常な測定値”であろうが、全ての測定値は50%を下回っていた。タイムラインは二本のサブタイムラインに分裂し、正常世界の現実も二つに別れて、その後各々が通常通りに進行した。

それによって我々は、過去に我々がSAP-4150/SCP-2000への投入を決めたような、実に多くのエネルギーを省くことができるだろう。我々は毎回一から始める必要がないのだ。だが、更に重要なことは、分裂後のタイムラインを利用できることだ。例えれば、結ばれたロープを操ることは出来なくとも、それを無数の細い糸に解けば、我々はそれをどうにでも出来るようなものだ。私はそれを証明しに行こう。

もう一つタイムラインが欲しい。その先に光を見たんだ。

なぜO5-1が承認者をたった一人にしなければならなかったのか、理解できる気がする。#0132ただ一人だけが承認されていれば、このタイムラインで最後に発信される付記の内容は破棄されたかもしれない。O5-1はそのことを知っていた、そして財団は“諦めない”ことに長けている。彼の計画では、異邦人の独裁者に彼の世界全てを犠牲にさせることを要求している。
レベル5のクリアランスで調べられることは私の想像した以上に多く、例えばガンマ-02タイプはO5-1自身の性格分類だ。切羽詰まった状況でなければ、彼は自分と自分に似た人間しか信じられないんだ。——承認者#0179

私は、O5-1だけがこの方法を教えられた訳ではないと疑っている。O5-5が代替わりして、かつ先代の承認者がシステムに登録される前に急死したことを、随分後になって知った。注意すべきことは、評議会もSCP-CN-2300計画の味方とは限らないのだ。——承認者#0198

From: O5-3

To: O5-1

君が人を驚かせるのはこれが初めてではないし、私が驚くのもこれが最後ではないだろう。私は君のやり方に賛成する。

私からの助言が一つだけある。人類を瞬時に滅ぼせる武器をいくつか持っていくことを忘れるな。最後のタイムラインの財団が、殺人にどれほど非効率的だったのかを君は知らないんだ。私は次の2300年の地球がまた融解して歌う生者で埋め尽くされるのは絶対に見たくない。

朗報を待つ。

違う、間違えた、私は多くの時間を無駄にした。もっと速く#0133のメモを見たならば気付いたはずだ! あなたがまだイエローストーンと連絡が取れるのなら、すぐに彼らが何度SCP-2000を動かして、何年ロールバックをしたのか確認してから、その時間を計算に加味するんだ。SCP-CN-1000は我々が世界をリセットしても、我々が今西暦2300年だと考えるタイムポイントまで延期されはしない。SCP-2000が記録されずに起動した可能性を加えれば、西暦を頼りにSCP-CN-1000の到来を予測することはもう不可能だ——
……奴が来た。放送を完了する。——承認者#0231

From: O5-12

To: O5-1

君が我々を謀っているとは断言できない。君の説明は事実だったからな。君のクローンがタイムラインに入った時、ほとんど即座に、そのタイムラインは私達の観測するパネル上で溶けてしまった。ファイブとセブンが大急ぎで観測機器を改修して、精度を上げて、どうにかあの幻と見紛うような影を見ることができた。どの影の中にも君を見ることができた。

これらの朧げな影を何千年も見てきた。君が人類を機械に造らせて、再び機械に人類を滅ぼさせるのを見た。君が自分に数十本も向精神薬を注射して、そしてそれらを君自身の血管に永久に埋め込むのを見た。君の飛行機械が月にまで登り、それが成功するかどうか誰も分からない機械を建造するためにヘリウム3をすべて燃やしたのを見た。最後に、ロボットアームを操作して、地球上で唯一不死者を殺せる拳銃を自身に向けさせて、引き金を引いたのを見た。

君はどんな約束も破らなかった。君は離脱する前に最後の人類を滅ぼした。君は議会にタイムラインを一つ求めて、それを君が望む数千本に分割して、数千に分裂した自分自身に滅亡直前の僅かな資源を搾り取らせた。

君はとっくに狂っているに違いないが、君の生み出した価値を誰も否定はできない。今、これらのタイムラインが西暦2300年に至るまでに、227件のレポートが何らかの方法で鮮明に送り返されたのを受け取った。

#0231が言うように、私たちに残された時間はもう殆ど無いけれど、他のO5は私よりも上手く人類を保護できると信じている。私はSCP-CN-2300の存在を明らかにできなかったけれど、使える間接的な手段を全て使ってこのドキュメント上の全てのヒントを他の者に提示した。このドキュメントで発見したことをできるだけ手短に説明しよう。
私が受け取ったバージョンでは#0133の付記を見つけられたけれど、#0132は見つけられなかった。そして伝言を残した承認者の番号は全て私より小さかった。これはパラドックス環の発生を防止するための当然の措置だ。つまり、伝言はただ後の番号に向かって伝達されるだけで、かつ伝達過程で失われる可能性がある。[データ破損]から推測すると、伝達する情報が多いほど多くのエネルギーが必要になるため、喪失される確率はメモの長さと相関するのではないだろうか。私が推奨するのは[残りのデータ破損]——承認者#0387

収容違反を収容しようとするな。そんなことをする職員は何としてでも止めるか、終了しろ。財団は、一度苦労すれば後はずっと楽をできるようなものじゃない。——承認者#0448

#0389の#0387への補足を抜粋した。私より後の承認者には、単独で送るべき重要な情報が無い場合は、あなたが読むことのできたメモをコピーして再送信してみることを推奨する。メモが失われる現象は長さとは関係が無ければ、この行為によって後続者は全ての内容を読むことができる。ひとまとめになったメッセージを読んでいなければ、失われるメモと長さに一定の関連があることを意味し、承認者は重要な情報を可能な限り短く送信せねばならない。——承認者#0491

From: O5-1

To: O5-12

知っての通り、我々が自分の使うあの独立した時間転移装置を残したように、私も真の乱数製造機を独立して残した。私は受信機を押しボタン式カウンターに偽装して持ち運び、異なるタイムラインの私に異なる数字を表示させた。あらかじめ各種全ての研究方向を表すフォームを準備し、その表示数によって私がそのタイムラインで携わる研究の方向を決定した——例えそれが最も馬鹿げた方向であっても、私は全力を尽くす。そして、それら多くの私の中から成功事例が出せると信じている。

227件のレポートは想像よりも多かった。50本のタイムラインの私は時間転移装置に向かって、いくらかの“外力”の力を借りて、自身のいるサブタイムラインを破壊する要求を送信する責任があった——時間転移装置はそれ以上精度の高い要求をサポートできなかったため、ただ破壊するしかなかった。その後に起こったことは仮説と一致している。破壊されたサブタイムラインは他のサブタイムラインを混乱させた——この混乱は他のサブタイムラインの過去に伝達されるだけでなく、コードを編集して情報を伝達することも可能にした。間違いなく、他のサブタイムラインの私は最初のサブタイムライン間で伝達されたレポートを受け取った。

その後に、更に226件のレポートが続いた。それは226本の世界線でもその方法を模倣し、タイムラインを破壊し、情報を伝達したことを表していた。最後のレポートは観測学から得られた。そのタイムラインの私は最後まで全力を尽くして、どのタイムラインも破壊された後にはその現実を観察できなかった。タイムラインは一度元の軌道から外れると、そこでの現実は直ちに崩壊する。つまり、我々がこの方法で受け取ったレポートは、全てそのタイムラインの私が私たちに書かせた遺書なのだ。

君はこの犠牲が全くの無意味だと感じるかもしれないな。我々の技術では、タイムライン間でメッセンジャーを派遣することは難しいことではなく、こんな“大規模”な犠牲は必ずしも必要ではないと。だが、サブタイムラインの人間にとって、他のサブタイムラインへ転移する装置を独力で構築することは資源の浪費であり不必要だ。一方で、我々にとって、サブタイムライン自体を残し続けることも価値が無い。それらが持つ現実性もごく僅かで、それに乗り込む人間は誰であれ、それを容易く滅亡させられる現実改変者になる。唯一価値があるのはSCP-CN-1000を突破したサブタイムラインと、それがどうやって為し得たかだけだ。

だから、それらの意義は自動化にあり、我々はごく僅かな消耗で試行錯誤の機会を得て、無限の試行錯誤により有限の災難に抗うことができる。我々は既に試行と選択に疲弊しているので、サブタイムラインの人類に我々の代わりに試行と選択を行わせるのだ。その上、これらのサブタイムライン達に相互に助言させ、相互に警告させることもできる。これは我々の議会が会議室で決定するよりも数倍効率的だ。その後は、我々はただ観察し、待ち、そしてサブタイムラインで成功した方法を新しいタイムラインで正確に再現するだけで良い——評議会はこの行為に非常に長けている。

次こそが本番だ。真の乱数生成器のリミットを解除する。これはサブタイムラインの数が正真正銘の無限となることを意味する。君が無限に細分化されたサブタイムラインの人物を人間と見なすならば、そこに含まれる現実性のレベルから考えれば、彼らは三流小説の中の人物よりも遥かに現実的ではない。それでもまだこれが残酷だと思うならば、君は反対票を投じ続ければいい。

だが、我々は最後には黒き月を黙らせる。

承認者#0597の復唱、第一パート: 他の承認者が完全なドキュメントを閲覧する可能性を高めるために、あなた達がこのタイムラインで発見したことを可能な限り繰り返して欲しい。この請求は#0597声明と呼称される。——承認者#600

承認者#0597の復唱、第二パート: SCP-CN-1000の開始時、我々は#0231の残骸と17秒間遭遇した。彼が差し込んだ記録では、#0231は自らSCP-CN-2300のボタンを押したが、機械改造によって五分間生命を維持した。——承認者#0643

承認者#0597の復唱、第三パート: ミーム部門を配置して時間異常部門を保護し、SCP-CN-2300の知識の共有の保護を後回しにして、オブジェクト起動後のサブタイムラインの状況を確認してみて欲しい。——承認者#657

承認者#0597の復唱、第四パート: この世界線では現実再構築が発生して、私以外の全ての人類は突然姿を消してしまった。私は[データ破損]の撃った拳銃で死んだ。——承認者#0694

私は少なくとも、時間異常部門で働いたことがある。高次元の観測の本質は、自分のタイムライン上で他のタイムラインの投影を観測することだ。そして投影はゼロで、どちらか一方が消えたわけでないのならば、それはタイムラインが垂直だということだ。——承認者#0712

From: O5-5

To: O5-1

トゥエルブ一人だけが“噎鳴ムセビナキ”に疲弊しているのではない。そして君はその点を利用するのが実に巧みだ。初めに“時間がある”と我々を説得したのに、レポートを受け取った後にすぐさまSCP-CN-2300の実行を提案した。君の行為がどれ程向こう見ずで危険に満ちているかを、どんなに必死なって他の者を説得しても、私には別の提案を出せず投票を取り消すことはできなかった。

君はもう、評議会に加わる前の、あの瞳に炎を宿した財団職員ではなく、今私には君が自分自身を燃やし尽くしたがっているだけにしか見えない。

そもそも君の計画には一切賛成するべきではなかったのかもしれない。自分の死を見送ることは君をどれ程麻痺させたのだろう? 君はまだ人類の未来に希望を抱いているのか?

当然ながら、O5-5としてプロジェクトに加わるという私の申請はもう却下されている。だから、私は辞表を提出して、私に代わる新たなO5-5を推薦した。それでも私は、タイムラインに入る。O5-5にはなれなくとも、サブタイムライン内の一人の時間部門の一般研究員として、君の性格との違いのために承認者とはなることがほぼ不可能な一人の普通の人間として。私はただ試さねばならない。或いは君は、私が身勝手にもどこかのタイムラインで彼女ともう一度会いたがっているのだと思うかもしれない。推測に任せるよ。

君の凱旋を見送ることはできないだろう。だがもしも君が深淵に陥ったのなら、積み上げられた君の死体の上に橋を渡し、未来の世代へ告げるだろう。ここに埋葬されるのは一人の賢者にして狂人、無私の犠牲者にして利己的な独裁者だと。

承認者#0732の復唱、第一パート: #0597声明の使用を確認した。SCP-CN-1000が起きた後、情報が逆流するのはタイムラインの歪曲の副産物に過ぎなかった。——承認者#0709

承認者#0732の復唱、第二パート: 全ての歪曲したサブタイムラインは、メインタイムラインと垂直に進行しており、このためにメインタイムラインの観測手段では検知することができない。——承認者#0739

承認者#0732の復唱、第三パート: 進行方向の異なるタイムラインが衝突した時、二つのタイムラインの現実は互いに融合して、大規模な現実再構築と自然法則の崩壊を引き起こす。——承認者#0748

承認者#0732の復唱、第三パート: 進行方向が異なるタイムラインが衝突した時、二つのタイムラインの現実は互いに融合して、大規模な現実再構築と自然法則の崩壊を引き起こす。
そして、君はこの返信を見ることができないけれども……すまない。彼女はもう殉職している。——承認者#0755

承認者#0732の復唱、第五パート: 現在、メインタイムラインの西暦2300年1月1日を垂直に交差するように屈折した多数のタイムラインが存在し、そのため、それらタイムラインはこのタイムポイントを通過する際に衝突の影響を受けやすい。——承認者#0787

承認者#0732の復唱、第六パート: 恐らくSCP-CN-1000の原因は、現在のタイムラインと上述の歪曲したタイムラインが衝突し、終わったことによって発生するのだろう。以下の内容は#0597声明に属さない。
別の、承認者#0732への返信: 彼女は確かに財団の人材採用リストに載っていたし、それを確認した。彼女は今、高校教師をしていて、元気にやっている。——承認者#0822

From: O5-1

To: 現在の承認者

もしかしたら、私は実はトゥエルブよりも早く壊れたのかもしれない。自分の計画が、SCP-CN-1000を乗り切る可能性を探すというよりも、排除することでその不可能性を証明するものであることは解っていた。私は最早、自身が生きたいのか死にたいのかもはっきりしなかった。

SCP-CN-2300は時限式の滅亡ボタンのようなもので、そして君が持つのは、その起爆を繰り上げる許可だけだ。沈黙のうちに滅亡するより、遺書を渡せられることがどれ程人の心の慰めになるだろうか。見よ、我々は希望に向かって近づいている。無価値な死でさえ輝きを見せ、言葉で建てられた塔は我々に世界の果てを通過させる。それでも、SCP-CN-1000の終わりがあるのかは誰にも分らない。

私はあるタイムラインで地球を支配した。君が世界の死期が迫るのに気付いた時、権力と他者の命は全て消耗品に過ぎなくなる。新たなO5-1よ、君は全身全霊で彼等を利用し、或いは自らの心の安寧のために彼等を保護し、君の望む全ての方法で消えゆく命に価値を与える権利を持っている——だがもし君がまだ私であるなら、あの特製の拳銃が何処に置かれているのかを知っているはずだ。

捨て駒として、勿論君は無能な指し手だと私を恨んでもいい。だが、私はもう君に戴冠させたのだ。

照会ドキュメント、コード入力80CC53DB81EA5DF1。私は以前からずっと、SCP-CN-2300-1は父から貰った奇妙なお守りだと思っていました。私は誰? ——承認者#0852

彼は生涯を自分の築いた天網、SCP-CN-1000の中で浪費した。そして私達が試みる度にその糸が一筋加わり、風が通らなくなる程に目が細かくなるのだ。——承認者#0876

だが我々は可能な限り隙間を残さねばならない。言い換えれば、生き続けて、可能な限りSCP-CN-2300の自動起動を阻止するんだ。――承認者#0898

生きろ。たとえ君がただ一人になっても、十億年後に地球が滅びるまで生き続けろ。——承認者#0899

生きろ、永遠のO5-1よ。——承認者#0900


14分前に就任したO5-1はディスプレイを下方にスクロールし続けた。何の情報も残されておらず、空白の入力ボックスだけが彼を待っていた。

彼は自分がO5のオフィスに入る権限を得たのはこれが初めてだと確信していたが、今ではもう確信できなくなっていた。それを検証するために、彼は手を伸ばし、慣れた手つきでキーボードへ秘密のコマンドを入力した。 弾き出された引き出しには“Y-909”という表示のラベルが貼られた空瓶と一丁の拳銃が入っている。彼はこの瓶の液体を自身に使って、全く新しい人生を作り上げて、恐怖から逃れようとしたことを思い出した——だが今や、彼は全てに向き合うために戻らねばならない。

“君はいつでも永遠の命や記憶を放棄する選択ができる。私はいつでもできる。”過去の彼自身が同じ部屋の中で、疲弊した声で呟くのを聞いた気がした。“だが真の不死者とは最も適合したオブジェクトの管理者なんだ。君も私も、死や罪の忘却によって平穏を得る価値は無い。”

当初の計画によれば、似たような道を歩む無数の自分がいる。このサブタイムラインは千本目かもしれず、十億一千本目であるかもしれない。無数の絹繊維が天網にかかり、一本の糸の反抗は無駄で馬鹿げているように思える——ましてや、到達できない未来に向かって歩むためには、少なくともロープを十分通せる程の大穴を残さねばならない。

彼は自身の半生を思い出した。それら消耗品の明るい笑顔と暖かい抱擁を思い出した。青く澄み渡った空を思い出した。かつて己の故郷の廃墟に人類を愛すると誓ったことを思い出した。彼はキーボードを広げ、メモを一通りコピーしてから、保存をクリックした。

生きろ。可能な限りSCP-CN-2300が自動起動するのを阻止しろ。たとえどんな対価を払ったとしても。——承認者#1000

最初にして最後のO5-1がSCP-CN-2300-1を手に握り、そして正式にコマンドシステムにアクセスした。

“O5-1、ログイン。各サイトは直ちに世界終焉戦備体制に入り、戦略的備蓄とThaumielクラス収容物品の使用可能状況を報告しろ。”

黒き月が斯くの如く告げた。


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