アイテム番号: SCP-3000-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3000-JPは原理上完全な収容が不可能であり、また一般社会において広く認知されているものの、その発生確率を低下させることが可能であり、人類に対する直接的な脅威度は低いものとみなされます。
SCP-3000-JP-αの発生が確認された場合は、状況に応じて“幻覚”“見間違い”“珍しい自然現象”等のカバーストーリーを流布してください。記憶処理は推奨されません。
機動部隊こ-5(“ザ・ポニータイム”)はクリーピーパスタ、都市伝説、怪談等、聞き手に恐怖を喚起させる現象や異常存在が描かれた物語群(以下、クリーピーパスタ群と呼称)を収集します。この活動は風説、インターネット、SNS、書籍等の媒体上で行われますが、これに限定されません。財団情報部門拾異局は収集されたクリーピーパスタ群を解析し、既知のアノマリーとの関連性の有無及び情報災害の有無を判定します。非異常性であると判断されたクリーピーパスタ群はリストアップし、専用データベース上にアップロードしてください。
担当職員は、上述のデータベース上のクリーピーパスタ群を、一般社会において拡散してください。拡散の方法は口述が推奨されますが、状況に応じて他の方法を用いても構いません。拡散の際に、物語の内容を僅かに改変してください。
また、当該データベースはクリアランスレベル1以上の職員に対して解放され、該当する職員は財団内部ネットワークより自由にアクセス・閲覧が承認されています。
説明: SCP-3000-JPは普遍的形而上空間(non-inherent space)における無我的概念的実体(以下、SCP-3000-JP-αと呼称)の行動が、基底現実(形而下)において生物に認識される現象です。普遍的形而上空間は人類を含むあらゆる生物の無意識下と接続した概念的空間であり、生物の記憶や抱いたイメージはシャドウとして普遍的形而上空間に反映されます。SCP-3000-JP-αは普遍的形而上空間に遍在する無数の細分化された概念的エレメントにより構成され、普遍的形而上空間を伝播/拡散する点で夢界実体(dream entities)に類似しますが、下記の点で明確に区別されます。
- SCP-3000-JP-αは自我を有さない
普遍的形而上空間においてSCP-3000-JP-αは生物の意識体と類似した行動を示しますが、それは周囲と自身の概念的エレメントの相互作用によるものであり、特定の条件下で特定の行動を取る形而上的プログラムの一種であると見なされ、SCP-3000-JP-αは自我を有しないと考えられます。
- SCP-3000-JP-αは周囲の概念的エレメントの濃度に影響を及ぼす。
SCP-3000-JP-αは周囲の概念的エレメントと接続しているため、常に自身を概念的エレメントに断片化し、普遍的形而上空間に放出し続けているため、通常はは長く存在を維持できませんが、同種のSCP-3000-JP-αが存在した場合は互いに接近、摂食、融合し、その存在を長く留められます。また、同時に自身の持つ概念的エレメントを周辺に拡散し続け、普遍的形而上空間に影響を与えます。
- SCP-3000-JP-αの活動は周囲の概念的エレメントに波を起こし、覚醒状態の複数の生物の無認識に影響を与える。
SCP-3000-JP-αは概念的エレメントと接続しており、普遍的形而上空間内における活動と連動して周囲の概念的エレメントにゆらぎを与え、波として複数の生物の無意識領域に自身の運動を伝達します。伝達されたSCP-3000-JPの運動は脳により五感による情報に変換され、覚醒状態の複数の生物が同時にSCP-3000-JP-αを認識するに至ります。
- SCP-3000-JP-αは“対象は異常な存在/現象である”“対象は実在する”という概念を中核に構成される。
物語に対する人類の認識や記憶は普遍的形而上空間において概念的実体を構成します。多くの場合、その概念的実体は“フィクションである”という概念がその中核を占めますが、恐怖を伴う物語は聞き手に“実在する”ことへの恐れを抱かせます。これは深層心理において“存在する”ことを確信させるため、結果的に恐怖を想起させるクリーピーパスタ群がSCP-3000-JPを生み出す原因となります。
以下は、SCP-3000-JPの発生プロセスです。
<フェーズ1>
クリーピーパスタ群と接触した人物が、描かれた異常存在/現象に恐怖を抱く。
恐怖により防衛機構が機能し、無意識下において対象を“実在する”と認識し、遭遇した場合のシュミレーションが行われることで、普遍的形而上空間において対象のイメージが投影される。
<フェーズ2>
普遍的形而上空間に投影されたイメージが周囲の概念的エレメントと結合し、概念的実体として活動を開始する。
<フェーズ3>
特定のクリーピーパスタ群に対して複数の人物が類似するイメージを抱くことにより、SCP-3000-JP-αが結合と同化を繰り返し、存在を強大化し、普遍的形而上空間内に置いて活動を開始する。
フェーズ3に至った概念実体をSCP-3000-JP-αと呼称する。
<フェーズ4>
強大化したSCP-3000-JP-αの活動により普遍的形而上空間内の概念的エレメントが揺らぎ、周辺の無意識へ波としてその運動を伝達し、脳を介して覚醒状態で生物に認識される。
<フェーズ5>
覚醒状態でSCP-3000-JP-αを知覚したことにより、その存在をより確信し、普遍的形而上空間におけるSCP-3000-JP-αの存在がより強化される。
以下、フェーズ4・フェーズ5が繰り返され、比例してSCP-3000-JP-αを知覚する人間が増加する。
フェーズ4に至ったSCP-3000-JP-αは生物に知覚される以外の異常性を有しませんが、元となったクリーピーパスタ群に対応した容姿や異常な行動をとるため、多くの場合は異常存在として認識されるため、SCP-3000-JPの発生が放置された場合、ヴェールの崩壊へ繋がることが懸念されます。
しかし、フェーズ4以降は例え元となったクリーピーパスタ群が忘却されたとしても、形而下で認識されることで普遍的形而上空間にける存在性が強大化され続けるため、フェーズ3以前に戻すことは極めて困難であり、また、どのようなクリーピーパスタ群であれ拡散されることでSCP-3000-JP-α化する可能性を孕むため、情報統制によりSCP-3000-JPを完全に収容することは実質的に不可能です。
一方で、同一のクリーピーパスタ群と複数回接触しても、内容に微細な差異が存在した場合は、無意識下で確信された実在性に疑念を生じさせ、SCP-3000-JP-αの活動を抑制させます。また、これら微細な差異により接触した人間が抱く“共通のイメージ”が不安定化されるため、SCP-3000-JP-α同士の結合・融合を阻害します。
このため、SCP-3000-JPに対してはクリーピーパスタを制限するのではなく、差異を持たせたクリーピーパスタ群を拡散することで普遍的形而上空間におけるSCP-3000-JP-αを不安定化することで、発生を抑制することが可能です。
補遺1: オリエンテーション抜粋
固有形而上空間(inherent space)=自己と他者を隔てる船
補遺2: クリーピーパスタの一例
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