著作信息
SCP-CN-1111 「死在南山」
=Enflowerzの創作
薇帳びちょうは煙を逗とどめて綠塵りょくじんを生じ、金翹きんしの峨髻がけいは暮雲ぼうんに愁う。
沓颯とうさつとして起たちて舞う真珠の裙くん、津頭しんとうに別れを送りて流水に唱えば、酒客の背は寒くして南山は死せり。
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レポート111-終南により、あなたの求めるドキュメントは1111-酒客臨時委員会のクラスA再審査対象に該当します。情報の正確性を確認するため、再審・改訂期間中は、暫定的に全てのドキュメントへのアクセス行為が停止されます。研究のためにドキュメントに関する情報が必要な場合は、1111-酒客臨時委員会へ書面により申請してください。
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ようこそ、評議員-酒客-9。あなたの提出した評価意見は現在再審査中です。
アイテム番号: SCP-CN-1111 |
レベル[未定] |
オブジェクトクラス: Keter |
Classified |
SCP-CN-1111内部で撮影された画像。海面の色は異常影響を受けている点に注意。
特別収容プロトコル: 2012年██月██日以降、全世界に情報統制プロトコル1111-官街鼓が実行されています。当該情報統制プロトコル1111-官街鼓の実行が失敗した場合、財団の総力を挙げて言論統制/情報操作/メディア誘導を実行し、“世界終焉”に関する言論が制御不能な程に拡散することを阻止して下さい。財団データベース内のKクラスシナリオに言及されたドキュメントは全て1111-酒客臨時員会の二次審査に付して下さい。
財団の海上ポータルサイト-CN-126が建立され、SCP-CN-1111の探索を支援します。毎月月初めと月中に、サイト-CN-126の全職員は定例心理評価を受けてください。SCP-CN-1111が観察可能な状態であれば、サイトに搭載されたEDO-魚目観測システムによりSCP-CN-1111の基底部を継続的に精密観察し、注目すべき全ての状態変化を確認して下さい。収集されたデータは既存の資料と比較された後、長期保存されます。観測チームのリストはEOD-031(2009)を参照して下さい。
処理プロトコル-中山酲に必要な材料の貯蔵量が制限されるため、現在SCP-CN-1111の探索は機動部隊-壬申-9 ("千年觥せんねんこう")のみが行います。現在、更なる探索活動は資源の浪費と 評価中と 必要と 早急に再開されるべきと判断されています。
CN-1111-酒客臨時委員会注釈
特別収容プロトコルの第一次改訂は完了した。繰り返すが、本ドキュメントの第二稿の全ての内容は、委員会以外には誰にも開示してはならない。違反者はレベル5職員処罰規則を偽装して処理される。特別収容プロトコルの暫定改訂では、126サイトの全職員に対する忠誠度試験を完了した後、各自の財団メールボックスへ送信することが求められる。
説明: SCP-CN-1111は南シナ海海域西南部(██°██′N,███°██′E)に位置する異常な山嶺です。SCP-CN-1111の影響面積は約1522㎢であり、生物活動の痕跡は一切観察されていません。更なるオブジェクトの統計データは観察ログCN-1111を参照してください。
毎年農歴九月九日の日中にのみ、SCP-CN-1111は観察可能な状態となります。この状態下のSCP-CN-1111は無実体の異常性を示し、視覚以外の感覚器官では感知できません。職員がSCP-CN-1111内部に侵入した場合、外界を通常通り観察することが可能ですが、この観察は色彩の消失を伴います。この異常性質に対し、現在の主な観点は[期限切れデータ削除]。
処理プロトコル-中山酲を終えた職員はSCP-CN-1111を実体として感知でき、これら職員が操作する設備は正常なデータを得ることが可能です。同一人物が接種可能な処理プロトコル-中山酲は、2年279日に一度のサイクルに限定されます。一回の有効処理毎に一度SCP-CN-1111の探索が実施され、この探索時間は最大で六時間に限定されます。職員の安全を考慮し、SCP-CN-1111を探索する際は職員に財団のパラシュートを装備させねばなりません。
1959年、財団は異学会のドキュメント中の復元された情報から、SCP-CN-1111に関する最初の記録を獲得し、SCP-CN-1111の状況を確認するために調査チームを組織しました。SCP-CN-1111の本質に対する調査は現在進行中であり、現在獲得されている情報では[期限切れデータ削除]と推測されます。
CN-1111-酒客臨時委員会注釈
説明文中の期限が切れた個所は削除されており、詳細は三次探索記録を参照すること。1111の本質についての説明は改訂中であり、改訂が完了後、本ドキュメントのクリアランスはレベル4/1111に格上げされる。
備考: 1962年に組織された最初の観測が失敗した後、SCP-CN-1111への今回の公式観測が行われました。本任務には1997年に投入使用された財団製ドローン“白鸞Ⅱ”が配備されました。
観測時間: 1998年10月28日
観測対象: SCP-CN-1111
[記録開始]
<00:00:00>白鸞Ⅱがサイト-CN-126のデッキから離陸に成功する。
<00:00:03> 白鸞Ⅱとの無線接続に成功、地上司令部に最初の画像が送信される。
<00:0:37> 白鸞Ⅱが高度海抜100mまで上昇する。山体の色彩により画像の露出がオーバーするが、全ての観測データのパラメーターは正常な範囲内である。
<00:02:53> 白鸞Ⅱが高度海抜500mまで上昇する。白色の裸岩以外はいかなる植物、動物および堆積物も観察されない。地質学的な形態と断崖は一致しておらず、SCP-CN-1111の急勾配が記録された。
<00:06:16> 白鸞Ⅱは高度海抜1000mまで上昇する。この付近に不自然な形状的特徴を有する正方形の構造物が出現したことが、再生により判明した。
<00:09:24> 白鸞Ⅱは高度海抜1504mまで上昇する。岩壁に矛状の構造物の出現が観測される。上昇速度の高さにより、構造物の鮮明な画像は撮影できない。
<00:20:43> 白鸞Ⅱは海抜高度3000mまで上昇する。継続的な観測により、SCP-CN-1111の側面に正方形の断面状の構造物が連続して出現したことが判明する。一部の構造物は著しく損壊していることが観察される。
<00:32:33> 白鸞Ⅱは高度海抜5000mまで上昇する。白鸞Ⅱの上昇が加速する。
<00:35:36> 白鸞Ⅱは高度海抜6451mまで上昇する。正方形の断面と矛状の構造物の出現頻度が上昇し続けるとともに、三角形の構造物が出現する。現在のところ、この現象に対する明確な説明はなされていない。
<00:37:54> 白鸞Ⅱが高度海抜7290mまで上昇した時、層雲に進入する。観測は18秒後に回復する。
<00:39:01> 白鸞Ⅱは高度海抜8500mまで上昇する。この高度で発生するはずの積雪等の現象は観察されていない。生物、堆積物、地形の侵食等も依然として見られない。
<00:41:25> 白鸞Ⅱは高度海抜10000mまで上昇する。この高度はこの地域の地質で形成できる山峰の高度限度を超えていると考えらえる。異常な断面の構造物は山体の体積が縮小するにつれ、大幅に減少する。
<00:43:46> 白鸞Ⅱは高度海抜11094mまで上昇する。SCP-CN-1111の頂上が観察される。海抜11094mがSCP-CN-1111の高度であると記録される。この記録映像のキーフレームを補強することで、2つの人造建築物が記録された。一つは低層の平屋と観察され、もう一つは二階建ての塔楼に近い外観である。両者の建築様式は中国古代建築と共通点が見られるが、既知の時代の特徴とは一致しない。平屋状の建築物の下には三名のヒト型実体が観察され、そのうち一命は女性の特徴を有すると推測される。白鸞Ⅱは接近観察を試みる。
<00:43:47> 山体のヒト型実体へ接近観察を開始した際、白鸞Ⅱとの接続が兆候なく切断された。接続が切断される前、白鸞Ⅱの各パラメーターは安定した状態を保っていた。
[記録終了]
[翌日、白鸞Ⅱの残骸が海中から回収された。機体は長時間水中に浸されており、故障の原因は判明していない。]
CN-1111-酒客臨時委員会注釈
この記録中のデータは不正確であり、探索記録三を参照して欲しい。サイト126が魚目のデータを送信した後、このドキュメントは削除される。
備考:1959年、財団は異学会のドキュメント中から復元された情報より、SCP-CN-1111に関する最初の記録を獲得した。SCP-CN-1111の状況を確認するため、ただちに調査チームが組織された。研究員徐██はこのチームの隊長である。
██九月、海上に見ゆる山有り。矸嵬䃹巖かんかいらいごん、騫かけず崩れず;一日で沒しずみ、人の觸ふれる可べくも莫なし。[識別不可]有り。維これ南昌千日の酒を飲み、或いは攀よづる可し。山の凡およそ[識別不可]中の人以て告げる:南山也、終に愆あやまちを忘れず、岑崟しんぎん崔たかく鬱うつし、我は世に居り、年を知らず。遂に之と遊び、鬢びんを改め返す。或いは然るに曰く[識別不可]?人の壽を祝う則ち南山と言う、蓋なんぞ死なざる乎。然るに世は未だに夷である故に、崤函こうかんの萬よろずの沚なぎさ、豈あに[識別不可]崩れん。 魚沫の秦橋、海沙の柱石、歴歴と在る也。世は頽唐たいとうし、心は干戈かんかす、[識別不可]を以て人語を中あたる、南山崩れる可し、更に況や人や? 浮世の泡影、已に須臾しゅゆに沒しずむ、南山の固まことの語の為に長ず、何ぞ經へざる也。将に
[以下脱落]
誰かのせいにするつもりは無いが、我々が発見した時には既に手遅れだった。
私は表面上の考え方は理解できたが、いくつかの堅苦しい断片と意味のよく分からない箇所で構成されており、大規模な探索をサポートするには不足していた。南海で二十一日漂泊することは、誰にとっても耐え難い試練だろう。正直に言えば最初は、これは全くの無意味だと感じた。どれほど正常な人間の心も、潮辛い空気の中で一ヶ月ドライフードを齧れば潰れてしまう。私はもともと自分が広場恐怖症だとは思っていなかった。だが、無限に広がる翡翠の如き海の上では我々の船はまるで須弥山の塵芥のようだ。この情景を思い浮かべるだけで人間の理性は理性を失われてしまう。この数日、私は船室に閉じ籠るしかできず、自分がいる場所が絶対に安全な密閉空間であると自分に言い聞かせた——だがこれは役に立たなかった。私と外の波を隔てるのは、ただ一枚の鋼板だということを知っていたのだ。
以前なら、これは私が人生で受けた中でも最大の精神攻撃の一つだと言ったかもしれない。だが、そんなことはあの山の前では全く些細なことだった。
重陽、つまり今日、ついに我々は南山が海中から隆起する瞬間を捉えた。人々が南山に対してどのようなイメージを持っているのかは知らない。“寿比南山”中の陳腐な祝辞、或いは詩や志怪の常連だろうか? 自分の目でそれを見た時、私はようやく理解した。このイメージは千百年来ずっと“永劫”を象徴していたのだ。
私はチベットで3年を過ごしたが、それらの聳え立つ聖なる山脈ですら、路傍の石の自惚れでしかない。深く覆われた雲中の山頂は見えないが、エベレストの積雪さえも屈服するのが分かった——その高さを語ることは全く無意味なのかもしれない。私はこの山の威圧感に気圧されずどうにか対峙するために、この山は単なる実体の無い虚像であって、この世界の片隅の投影に過ぎないと、常に自身に言い聞かせなければならなかった。しかしこれは有効ではなかった。この山は触れることのできない幻覚ではなく、それは自分よりも現実的だった——例え我々の次元から離れていたとしても、それは何処かに絶対に存在するのだ。私はその実体が存在しないことを喜びさえし始めたが、視覚に注ぎ込まれただけのその圧迫感は、全ての感覚に浸透するのに十分だった。
同僚達の受けた衝撃は私以上だった。山体がゆっくりと崩壊し消失する様を目撃した呉██の瞳から光が失われるのを見た。最初に山が虚像に過ぎないと提案した李█は、山を突き抜けて足を海へ足を踏み入れた。勿論、地理的にも歴史的にも、この山は存在するはずもない。その白色は——象牙、白壁、霧氷——それらと似ているとも似ていないとも言える捻じ曲がった空間の中にあった。いかなる破損も、侵食も、堆積物も生物の痕跡も無いその山は、山とは全く違っていた。あるいは、これこそが山という語句が本来意味する形状なのかもしれない。我々は異常を収容することにかけては素人ではない。だがこの山の前では、たった今自分がガンジス川の一粒の砂に過ぎないことに気付いたばかりのようだ。
“永遠”を表すものは何か。長城、ピラミッド、自由の女神像、或いは財団自身だろうか?“永遠”と言われれば、私はそれらを思い浮かべているだろう。だが“南山”と言われれば、私は永遠を想像するだろう。
それは永遠ではない。呉██は信じても、李█は信じても、私は信じられない。ミーム学部門で十年も過ごせば、直感的に奇妙なことに気付くだろう。それは神経信号より先に大脳に伝達される——この山の圧迫感の前で、直感的に私に告げたのは“死”だと気付いたのだ。それは巨人の膨張した死体が眼前に横たわっているのを見た時のような、巨大で直接的な“死”のイメージだった。一瞬、腐敗した山体と岩の狭間で骸骨がほほ笑むのを幻視した――山体の白さが何に由来するのかを理解した——それは蛆虫だった。硬直した死体の脂の中で蠢く、玉の如き蛆虫の白色だった。直感はほんの一瞬だったが、私は様々な概念性の異常には十年も取り組んできたんだ。植物人間でさえ、どのような時に直感を信じるべきかを知っている。
私が想像しうる状況の中で、これは最も不明瞭だ。これが古代人の誤解か、私個人の精神的な原因であって欲しいが——そうでなければ、この恐怖はある種の予兆なのかもしれない。私は異学会が仄めかしたことに、もっと早く気が付くべきだった。魚沫の秦橋、海沙の柱石、これらは悪意の憶測のようだ。私は帰還した後で趙顧問に見てもらうべきだった。彼は何時だってこの手のことに長けていた——あるいは私は答えを探しているのかもしれない。私が受け入れることのできない答えを。
私には分からない。この山の前で、私は山に軽く触れることさえ出来なかった。私はこの時ほど感覚の限界を感じたことは無かった。可能であるなら、私は帰還後に探索の実施、そして観測サイトの建立を申請するだろう。異学会のドキュメントにあった中山酲の内容は、倫理委員会を相当不快にさせるだろう。だが、この記録はもしかしたら、人を動かす十分な理由になるかもしれない。我々は更に多くを視なければならない——だが例えこれら全てが実現できたとして、我々には何ができるというのだろう?
私にはわからない。
南山、これこそが南山なのだ。
データはサイト10充てに梱包され、船は2週間後に接岸する予定だ。
CN-1111-酒客臨時委員会注釈
徐氏は鋭い人で、当時私は彼と共に本件に携わっていた。最初の探索記録として、本ドキュメントはかなり高いレベルを示していると言えるだろう。この記録に基づいてカバードキュメントを書くことを提案する。
備考:本記録は機動部隊-壬申-9 ("千年觥")が1999年にSCP-CN-1111に対して行った第一次探索ログである。SCP-CN-1111の高度を鑑み、本探索では高空よりロープで降下した。
探索時間:1999年10月17日
探索職員: 機動部隊-壬申-9 ("千年觥")(隊長 Cap-两辜リャングー、隊員01-昏径フンジン、02-伏藏フーツァン、03-白暁バイシャオ)
探索目標: SCP-CN-1111、山頂エリア
[記録開始]
機動部隊-壬申-9("千年觥")がSCP-CN-1111頂部へ降下する。
地上司令部: 機動部隊-壬申-9、こちら地上司令部。現在の状況を報告しろ。
01-昏径: 壬申-9-昏径、チェック。
02-伏藏: 壬申-9-伏藏、チェック。
03-白暁: 壬申-9-白暁、チェック。
Cap-两辜: 壬申-9-两辜、チェック。通信は正常。機動部隊-壬申-9全員準備、SCP-CN-1111に異常が無いことを確認。我々は予定位置に降下し、二棟の人造建築を観察記録している。計器を設置中。
02-伏藏が計器を設置する。
02-伏藏: 完了。こちら伏藏。計器によれば標準温度に近く、体感温度も同様に正常です。この重たい暖房と酸素供給装置を外していいですか? 恐らくここは独立した外次元空間です。
03-白暁: ここからは正常に山下の雲が見えます。高度が原因でなければ、司令部でも確認できるでしょう。
01-昏径: サンプルが採取できません。この山の構成物質は破壊できないようです。この石は麓との違いは無く、どれも不自然に白くて、山全体が同一物質のようです。山頂は平坦で、どの異常構造物も見られません。
Cap-两辜: データを記録した。計画通り、我々は前方の建築を探索する。
機動部隊-壬申-9は平屋状の建築物に接近する。建築物の材質は山体と類似している。
01-昏径: なんてことだ、この部屋は全部石だ。そして風格は少し不気味で——上手く言えません。これは、陵墓? 純白の大理石で造られていますが、既知のものかはわかりません。
Cap-两辜: 司令部があの建物の探索を要求した。みんな分散して、異常建築の初歩探査批准プロトコルに従って行動しろ。私が門をノックしよう。
Cap-两辜がノックをする前に、建物の扉が開く。二名のヒト型実体が観察され、そのうち一名の外観は中年男性に、もう一人は幼年の女性に類似する。それぞれSCP-CN-1111-1Aと1Bに分類される。
SCP-CN-1111-1B: ねえ、おとうさん、ひと!
SCP-CN-1111-1AがSCP-CN-1111-1Bを背後へ引き寄せる。
SCP-CN-1111-1A: 皆さんは——山外の方ですか? 本当に申し訳ありません、この地は長く訪れる人がおらず、子供は発音があまり良くありません。本当に恥ずかしい限りで、もし以前に飛来するものを見てから練習をしていなければ、私の言葉もこの子と大差はなかったかもしれません——私の発音はおかしくはないでしょうか?
SCP-CN-1111-1Aは中国語を用いて機動部隊-壬申-9 ("千年觥")隊員と会話する。
SCP-CN-1111-1A: 山外の人がここに来るのは容易ではありません。私の父からは、近頃はどんどん少なくなっていると聞いています。実を言うと、私も生まれて初めて外の人を見ました——少々失礼かもしれませんが、私達はみな同じらしく、私は本当に嬉しいのです。皆さんは珍しいお客様です、どうぞ中に入って腰を下ろしていただけませんか?
地上司令部は機動部隊-壬申-9に建物への進入を承認する。機動部隊-壬申-9は敵意の無い態度を維持するよう要求される。
Cap-两辜: それでは、お邪魔します。
SCP-CN-1111-1B: おとうさん! おかあさん!
SCP-CN-1111-1A: お母さんじゃない、お母さんじゃない——お前のお母さんは帰って来ないんだ。こちらはお父さんのお客だ——
SCP-CN-1111-1Aは03-白暁へ謝罪する。
03-白暁: 構いませんよ。先ほど貴方は、ご家族が帰ってこないと仰いましたが、ちょっとその理由を教えて頂けないでしょうか?
SCP-CN-1111-1A それは…申し訳ありません、それを人様にお話することはあまり都合がよくありません。ただ言えることは、人間には命があり、山中の人間には山中の人間の生活があるのです。私達はそれを長く受け入れてきて、山外の人に理解を求めるつもりはありません。
Cap-两辜: 白暁、問い詰めなくていい。あなたを何と呼びましょうか?
SCP-CN-1111-1A: 呼び方? 名前のことを仰っているのですね。ここはたったの三人しかいない場所で、名前は実質意味がありません。もしお知りになりたいのならば、愚生の姓は常です。
Cap-两辜: 常——常さん、わかりました。確認させて下さい。この場所、この山を、あなた達は何と呼んでいますか?
SCP-CN-1111-1A: ここですか? ここは南山です。あなたは外から来たのなら、山外の人がこの名を付けたことを知っているでしょう。外の人がいつからこう呼んでいるのかは知りませんが、私たちにとって、山は山でしかありません。
Cap-两辜: 大変感謝します。
数人が建物内部に入る。実体は飲食に類することを必要とする様子は観察されない。意味のない会話は省略。
02-伏藏: すみませんがもう一つお尋ねします。あなたは“ここはたったの三人しかいない”と仰いましたが、ここにはもう一人住んでいるのですか?
SCP-CN-1111-1A: 三人——と言いました、間違いなく三人しかいません。私の父-父さんは病を患っていて、年中床に臥せり、今はちょうどあちらの塔で休んでいます。年よりですので、いつも人に起こされるのを嫌がるのです。そのためにあの年よりがあなた達とお会いできないのは、本当に残念なことです。父は私よりも物事を多く知っており、外の人にとっても興味を持たれるでしょう。
SCP-CN-1111-1B: おとうさん! わたし! [識別不能]
02-伏藏: そうなのですか。もし貴方のお父上がご病気なら、我々は役立つかもしれない薬をいくつか持っています。
SCP-CN-1111-1A: ありがとうございます、お気遣い痛み入ります。しかし我々の“病気”への理解は、貴方達とは異なるかもしれません。
Cap-两辜: 我々は昨年、この地は毎年一度、重陽の日に出現するらしいことに気付きました。皆さんと接触したければ…ええと、[データ削除]しなければなりません。この関係の原因についてご存じありませんか?
SCP-CN-1111-1A: [データ削除]…この地は南山ですから、山は元々こうでした。私は半生を山上で過ごしましたが、山自身について私が知っていることは殆どありません——私の理解ではこうとしか言えません。皆さんを私の父の所へご案内しましょう。父は博識で、もしかしたら私よりも多くのことを知っているかも知れません。
Cap-两辜: それでは——
地面が予兆なく激しく振動し、SCP-CN-1111-1Aが激しく咳き込む。この時、地上司令部はSCP-CN-1111の基底部は眼に見える揺れを観測していなかった。
SCP-CN-1111-1A: これは——[咳き込む]——私——[咳き込む]、ああ、皆さん、どうやら——申し訳ありません——[咳き込む]——今日だとは思わなかった——しかし——
SCP-CN-1111-1B: 南山! 南山!
地上司令部: 千年觥? 状況を報告しろ。繰り返す——
機動部隊-壬申-9が全員建築物から退出する。予兆なく激しい揺れが起こり、機動部隊-壬申-9は墜落する。全員はパラシュートの展開に成功し、四名はサイト-CN-126の海上デッキ上に降下する。探索活動は中止を余儀なくされる。
[記録終了]
[期限切れデータ削除]
CN-1111:酒客臨時委員会注釈
プロトコル改定後、この章は直ちに削除されるべきだ。倫理委員会はこのために何度サイト126の邪魔をしたのか判らず、そのままでは我々も面倒なことになるだろう。いずれにせよ、財団からは一滴の中山酲も絞り出すことはできない。資料部門はその年の最初のプロトコル記録を持たねばならないが、申請する前に心理的な準備、そしてその準備の材料が必要だ——“新時代”だ、知っているだろう。
備考:2002年、機動部隊-壬申-9("千年觥")がSCP-CN-1111へ第二次探索を実施した。本探索では財団製のFemlied-Edvoit検出器を配備し、SCP-CN-1111内部構造を検出する。SCP-CN-1111の高度を鑑み、本探索では高空よりロープで降下した。
探索時間: 2002年10月14日
探索職員: 機動部隊-壬申-9(“千年觥”)(隊長 Cap-两辜、隊員01-昏径、02-伏藏、03-白暁)
探索目標: SCP-CN-1111、山頂エリア
[記録開始]
機動部隊-壬申-9("千年觥")がSCP-CN-1111頂部へ降下する。
機動部隊-壬申-9が通信状況を確認する。
Cap-两辜: 壬申-9-两辜チェック。通信は正常。機動部隊-壬申-9は全員準備完了。計画通り、我々は——これは?
地上司令部: 两辜? 状況を報告してください。
Cap-两辜: 了解。司令部、こちら两辜。SCP-CN-1111の変化を確認しました。前回探索した平屋状の建築物が見られません。
ビデオ中では、塔状建築物は依然として存在することが観察されるが、平屋状建築物は元の位置には観察されない。
地上司令部: 無い? そのことを確認できますか?
03-白暁: 確認しました。我々は塔状建築物付近に移動し、周囲には建築跡はまったく見られません——ちょっと待って、前回の記録で、こんな断面構造はあったかしら?
地面上に正方形に隆起した断面構造が存在することが観察される。
02-伏藏: 無かったな。前に確認したが、山頂には何も異常構造物は無かった。
Cap-两辜: 伏藏、ここにFeedを設置しろ。司令部からこの断面の内部構造を観測するよう指示があった。
02-伏藏が機器を設置する。機器は地面に垂直方向の画像を出力する。SCP-CN-1111-1Bが塔状建築物の後方から出現する。
SCP-CN-1111-1B: [分析不能]
01-昏径: これは——前回のあの女の子か?
03-白暁: ちょうどあの子が見えた。あの子は父親と一緒じゃないの?
02-伏藏: いないな。今回の探索では、我々は1Aを見ていません。彼は娘の近くにいるはずです。彼らが以前いた建築物も見られません…まさか彼は前の時に落下したのでしょうか?
03-白暁: それは無いでしょう。この前の1Aの反応を見るに、あれが初めてというわけじゃない。半生を山上で過ごした人物が、そんなに簡単に落下するはずがないわ。ましてや彼自身も異常実体なのよ。
03-白暁がSCP-CN-1111-1Bに向かって身を屈める。
03-白暁: あなたのお父さんがどこにいるのか、お姉さんに教えてくれないかな?
SCP-CN-1111-1B: お父さん! いる!
03-白暁: いる? 私が言いたいのは——
Cap-两辜: 白暁、少し気を付けろ。我々は山中の人間たちの異常性質については十分な知識を持ってない、彼女の外見とその場の態度に惑わされるんじゃない。ヒト型の異常存在は往々にして、幼年期が最もコントロールが難しい。プロ意識を忘れるな。
SCP-CN-1111-1B: おとうさん! いる!
01-昏径: “おとうさん、いる”…この子の言葉は表現力が不十分です。この言葉は——“おとうさんはまだいる”と言う意味でしょうか?
03-白暁: もしかしたら——そうかもしれない。“まだいる”? 我々がまだ行っていないのは塔の内部だけですが、この子は1Aが塔の中にいると言っているのでしょうか?
Cap-两辜: 司令部から確認するよう指示があった。白暁、昏径、私について来い。伏藏はデータ観察を継続し、連絡を維持しろ。
Cap-两辜、03-白暁、01-昏径は塔の扉を押すが開くことができない。門を破る試みはすべて失敗した。
01-昏径: この門はどんなブランドなんだ、質量はいくらなんだ? 塔全体がまるで地面に埋まっているようだ…そういえば、この塔は前はこんなに短かったか?
Cap-两辜: 昏径、こちらに注意しろ。伏藏の画像作成結果が出力された。
画像作成の結果、色の塊に覆われている
02-伏藏: データに異常があるようです。司令部、このFeedに問題はありませんか?
地上司令部: 過去起こった故障には、こんな症状はありません。エンジニアは設備に故障はないと判断しています。
02-伏藏: おかしいな…この山にはこんな奇妙な画像を生み出すような、何か恐ろしいものがあるのでしょうか?
Cap-两辜: もしかしたらこの方向の深度が深過ぎて、干渉が多過ぎるのかもしれない。
02-伏藏: そうかもしれません。山壁にもう一度設置してみます。
02-伏藏が機器を再設置する。
SCP-CN-1111-1B: [分析不能]
Cap-两辜: 待て、彼女——1Bだ、今何て言った?
03-白暁: よく聞こえませんでした。さっき彼女を見た時に、よく似たことを喋っていました。
Cap-两辜: 彼女の発音は——古代の音韻の変種に聞こえる。確実ではないが、“南山”の単語が聞こえた気がする。白暁、彼女にもう一度発音させてみてくれ。
03-白暁: お嬢ちゃん、さっきあなたが言ったことを、お姉さんもう一度話してくれないかしら?
SCP-CN-1111-1B: [分析不能]! [分析不能]!
Cap-两辜: …司令部、サイトにいる言語学者に連絡は取れるか?
地上司令部: 少し待ってください。勤務スケジュールを確認しました。趙馥一顧問がいます。既に連絡員を派遣しました。
13分後、趙馥一博士が司令部に到着し、機動部隊-壬申-9(“千年觥”)と通話を始める。
趙馥一博士: 两辜、こちら趙馥一。再生を聞いたが、はっきりとしない点がある。もっと多くの音声資料を取得して欲しい。
03-白暁がSCP-CN-1111-1Bに発言を繰り返させようと試みる。この時、02-伏藏は二度目の画像作成に成功する。
Cap-两辜: 白暁、趙博士と通信を維持しろ。伏藏、作成した画像の内容を報告しろ。
02-伏藏の解答が無い。
01-昏径: 伏藏? 今回の結果も正常じゃないのか?
02-伏藏: いや、設備の働きは完全に正常だ…だが結果は故障していたよりももっと理解できない。
02-伏藏が機動部隊メンバーへ画像を示す。画像中では、山体内部に不規則に分布し密集した建築物群が存在し、建築物の変形や損壊の程度が異なることが観察される。山壁付近の建築物は、観察された異常構造と対応している。そのうち塔楼建築物は矛状構造物、平屋状建築物は断面構造物、東屋状建築物は三角形構造物と対応している。
01-昏径: これは——つまり、あの断面構造物は実は屋根が変形したもので、どの異常構造物も建築物の残骸だということか? この山壁には少なくとも何十万もの異常構造があって、山体内部を含めれば恐らくその数十倍になるだろう——この山の殆どは建築物が積みあがってできているんだ——どうやってそんなことができるんだ?
Cap-两辜: 画像を見るに、平屋が消失した原因は山体が高くなって、元々あった建物が山体に埋没したことが原因らしいな。画像では建築物の分布は下方が密集する傾向にある。これを計算すると、麓部分の建築群の規模はまるで都市ひとつ——いや、古代の水準ならば国家一つ——
01-昏径: 隊長、それはどういう意味——
03-白暁が三人の元へ駆け寄る。
03-白暁: 隊長! 趙博士の分析結果が出ました! それによれば——
Cap-两辜: 一千年、二千年―—我々の足元には、一つの国家の歴史があるんだ。
趙馥一博士: 1111-1Bが話した言葉の内容は——
趙馥一博士: “あなたも私も塵に還り、ただ南山が在り続ける。”
[記録終了]
機動部隊-壬申-9はその後山壁と麓に対し、それぞれ何度もFemlied-Edvoit検出器により画像を撮影した。その結果、Cap-两辜の推測が証明された。麓部分の建築群の規模と経済状況は、古代の小国家の水準に達していると推測された。山体が増高する理由は現在未解明である。
インシデントレポートサイト-CN-126-1
インシデント日時: 2004年6月18年
インシデント地点: サイト-CN-126
関連オブジェクト: SCP-CN-1111
インシデント概要: 2004年6月18日、元サイト-CN-126常駐レベル4研究員李██が65名の元財団職員を扇動し、海上ポータルサイト-CN-126の制御権を取得して位置を変更しようと企てました。14時22分、李██らはサイト左翼収容エリアに収容されていたSCP-CN-███、SCP-CN-███等のオブジェクトを収容違反させ、火器管制システム制御室を占領しました。14時51分、サイト-CN-126左翼収容エリアは李██らの制御下に置かれました。
機動部隊-壬申-9(“千年觥”)が14時44分に、事態を収束させるために派遣されました。16時35分、サイト-CN-126左翼収容エリアは再度制御下に置かれ、収容違反を起こした異常オブジェクトは6時間以内に臨時収容プロトコルにより収容されました。李██は自決し、その他65名の職員はそれぞれ記憶移植を受けた後、解雇から[編集済み]までの処分を受けました。
本インシデントにおける直接的な死亡者は、李██以外にはいませんでした。
損失評価: 本インシデントでは直接または間接的に██名の元財団エージェントの失い、██件の異常オブジェクトを再収容せねばならず、サイト-CN-126左翼収容エリアの面積の約19%が破損する事態を招きました。
李██らはサイト-CN-126左翼収容エリアを制御する間に、サイト-CN-126の高価値物品保管室に貯蔵されていた“中山酲”の約91%が破壊されました。破壊過程で利用されたSCP-CN-███の異常性質により、“中山酲”の回復は不可能と考えられます。本インシデント後、SPC-CN-1111の実地探索活動は全面的に停滞しました。前サイト-CN-126管理官の徐██は事件後に辞任しました。
インシデント分析: インシデント後の調査レポートにより、李██はサイトエージェントを扇動する際、その理由を“SCP-CN-1111は永遠の具現化した姿で、それに干渉することはKクラス終焉シナリオを招く”と述べていたことが判明しました。李██の過去の定例心理カウンセリングの言動から、SCP-CN-1111は一定の精神影響性質を有すると推測されます。この異常性に関する研究レポートはサイト-CN-126研究部門へ申請してください。
要求された強化心理テストはサイト-CN-126で実施され、サイト-CN-126の実施職員のローテーション制度の実行可能性について現在議論がなされています。
備考:2012年4月12日、サイト-CN-126研究部門はSCP-CN-███から開発されたリバースエンジニアリング技術を使用し、処理プロトコル-中山酲の材料消費を81%低下させ、SCP-CN-1111の再探索を可能とすることに成功しました。この技術は2012年5月2日に実行可能であることが確認されました。“中山酲”の貯蔵量が限られているため、今回の探索職員は機動部隊-壬申-9隊長、つまり機動部隊-壬申-9-两辜一名に限定されます。今回の探索後、中山酲の貯蔵は全て消費されました。
探索時間: 2012年10月23日
探索職員: 機動部隊-壬申-9-两辜
探索目標: SCP-CN-1111、山頂エリア
[記録開始]
機動部隊-壬申-9-两辜がSCP-CN-1111頂部に降下する。
機動部隊-壬申-9-两辜が通信状況を確認する。
Cap-两辜: 本当に久しぶりだ。壬申-9-两辜、テスト。
地上司令部: チェック。
Cap-两辜: 司令部、塔の高さが変化したように見える。前回の資料を出して比較する。
前回の画像資料と比較した結果、搭状建築物の高さが探索ごとに縮小していることが確認された。今回の探索においては開いた窓と思われる構造のある、塔の二階部分のみが確認できる。
Cap-两辜: 山の高さはこの期間に増加したのか。塔の中に入る方法を探そう。
Cap-两辜は窓状構造を測量し、成年男性が通過できることを確認する。Cap-两辜は撮影設備を窓口に進入させ、塔内の状況を探測する。撮影設備は老年のヒト型実体が壁の隅に寄りかかり座っている様子を撮影する。このヒト型実体はSCP-CN-1111-1Cにナンバリングされる。当該実体の身体は地面と異常な融合をしていると見られ、行動能力が無いと推測される。Cap-两辜は窓より塔内に進入する。
Cap-两辜: こんにちは、ご老人。間違いが無ければ、私はあなたのご子息と孫娘にお会いしたはずです。何人が今…
SCP-CN-1111-1C: 彼らは南山にいるよ。山外の人、私は子供達から、君が知を求める人だと聞いている。昔と同じだ。
Cap-两辜: 昔と同じ?
SCP-CN-1111-1C: 君の眼は私に流砂を、電光を、束の間に過ぎ去った歳月を思い出させる。あの時代には君のように、山海の間を往来する人々が多くいた。あの時代、私達はこの地を南山とは呼んでいなかった。
Cap-两辜: あなたが仰ることは、ここの過去——
SCP-CN-1111-1C: 過去。贅沢で美しい語彙だ。錆びていない胴と同じく、黄金の如く煌めく。その頃はこの地は村だったが、さらに数百年間は、ここは小さな国だった。国の民は代々受け継がれ、変わらない日々を過ごしていた。人は生き人は死に、人は歌い人は哭く。山はこの歌声と哭き声の中でゆっくりと隆起してきた。古い家は土地に呑み込まれ、新たな建物が山中に建てられた。新しい日々、古い生活。何百年も、代々受け継がれ——ずっと——ずっと——(咳き込む)
Cap-两辜: ご老人、ゆっくりと話してください。
SCP-N-1111-1C: それから、私達は下界を眺めるようになり、山の高さは百丈を超えていた。それにつれて私達の土地は消えて行った。だが、誰も全く意に介さなかった。そうして南山国は南山城になり、南山城は南山町になった。私が生まれた頃は、既に村一つ程の土地しか残されていなかった。さらにその後は、山外の人、あなたが見た通りだ。私が最後の南山だ。あの伝説中の南山は既に高い絶壁だったが、あの故事にあった国はただ、半死の身体が残されているだけだ。
だが私は孤独ではない。過去の人々は皆私のそばにいる。過去、昼も夜も泣き、笑い、一人一人が皆、いつでもこの山にいて、私の足下にいる。彼らは誰も死なず、あの日々も死なんでない。彼らはただ南山に回帰し、伝承の二字の一音節に回帰したのだ。
Cap-两辜: …わかりません。南山に回帰する——それは、その人々は山になったのですか?
SCP-CN-1111-1C: 私が南山で、山中の全ての人間が皆南山なのだ。私達と南山は一体で、この認識は生まれた時から私達と共にあった。私達が塵に帰る時は、南山は完璧に近づく日なのだ。十万人、百万人——代々山上で人生を送り、山に埋葬される。南山は私達の運命だ。私達は静かに帰結する。この場所で全てのことが起こった。黄塵と清水、滄海変じて桑田となる。万物存在の影。これらは全て、最後には山中の石の一つに帰るのだ。
山は国の墓標で、私は最後の墓碑銘だ。この永遠の墓碑は我々の終着であり、そして全ての終着でもあるのだ。
Cap-两辜: 全ての終着? それは南山が“永遠”の具現化した姿だ…という意味ですか?
SCP-CN-1111-1C: (笑い声)大きな誤解だ。
Cap-两辜: 誤解……
SCP-CN-1111-1C: 南山は終末を象徴している。我々は永遠を象徴している。これまで“永遠”と“終末”は同じもので、山中人と南山はまるで同じ命を生きるも同然なのだ。
Cap-两辜: わかりません。山中の人が永遠を表すのなら、何故死ぬのですか? “永遠”と“終末”は本来相反するものですが、どうやってお互いに入れ替わるのですか?
SCP-CN-1111-1C: 永遠は一つの概念だ。概念は弱まり消える。多くの人々が“終末”を信じるようになれば、“永遠”の概念は自ずと弱小化していく。南山は高くなり、力は更に強まれば、多くの人々の心に植え付けられ、終末を信じさせるだろう。全ての人間の心に南山が生まれた時、それが正真正銘の終末の時だ。
この最後の永遠の象徴が塵に帰った後では、誰にも終末を拒むことは出来ない——この永遠の国は幾千年も伝承されてきて、ここが伝承の終点なんだ。
Cap-两辜: それは——外界の力を使って——二つの概念を均衡を保ち——更には逆転させることは、可能なのですか?
SCP-CN-1111-1C: “逆転”、“平衡”——もし永遠と終末が本当に相対する概念だとしたら、どうしてそんなことが可能だろうか。山外の人よ、その出発点自体が馬鹿げている。
Cap-两辜: それは——?
SCP-CN-1111-1C: 山中人は南山自体であり、永遠もまた終末そのものだ。世間の所謂“永遠”は、“終末”の一つの投影に過ぎない。真に永遠のものは終末にしかない。永遠と呼ばれるものは終末のヴェールでしかないのだ。
これが南山だ。私達は南山で生まれ、そして南山で死ぬ。
君も私も塵に還り、ただ南山が在り続ける。
[記録終了]
新技術の不安定性により、処理プロトコル-中山酲はこの時に意図せず効力を失った。Cap-两辜のパラシュートは展開に成功し、探索資料の回収に成功した。
本探索後、CN-1111-酒客臨時委員会が設立された。SCP-CN-1111の精神影響効果はCN-1111-背寒効果と命名された。この効果の広範囲に渡る伝播は、Kクラスシナリオを引き起こす可能性があると推測される。
備考:今回の会議ログはCN-1111-酒客臨時委員会が招聘された最初の会議の概要である。この会議においてレポートCN-1111-終南の大部分の内容が決定された。
本ログは機密オブジェクトSCP-CN-1111の性質の推測が含まれるため、レベル5/1111機密に分類されました。
[会議開始]
ようこそ、ようこそ諸君、私は酒客-1。諸君は既に委任通知を受け、SCP-CN-1111の状況も深く理解しているだろう。結局、これは我々委員会の核心なのだ。幾人かの友人が私を見ているかもしれない。堅苦しくする必要はないが、私語は慎んでくれ。門を開けば山が見える。 我々の最初の会議では、もっとも重要だと考える事項を話し合いたい。
CN-1111-背寒効果だ。
君達は戦国時代の“杞人天憂”と呼ばれる故事のことを聞いたことがあるだろう。ここでその内容を詳しくは話さなくとも、各自が私の意図を理解してくれるだろう。背寒効果、影響を受けたものは杞人と同様、“世界終焉の日が来るに違いない”と感じるのだ。李██の造反は明らかにこの影響を受けており、サイト126の徐管理官が1111にこれほど関心を持つ理由も、恐らくはそれと切り離せないだろう。勿論、利益が弊害よりも大きいことが証明されている。
ここまでで、諸君は気付いているかもしれない。そうでなければ、デスクトップ上の原稿をもう一度読んでくれ。読んだか? このドキュメントは諸君が以前入手したものとはバージョンが異なる。外部に公開される描写中では、背寒効果は“世界の終焉が訪れると不合理的に考える”と書かれているが、この“不合理”の副詞はここには無い。
間違ってはいない。背寒効果の影響は李██程明確かつ過激ではない。実際には、我々が確認した情報によれば、“終末の日が訪れる”という情報を信じている状態は全て、背寒効果の影響を受けている可能性があるのだ。
諸君、静粛に。
今日この場にいる諸君は高いクリアランスを有する職員だ。遠慮することはないだろう。結局のところ、財団内部では多かれ少なかれオブジェクトがKクラスシナリオを引き起こすかもしれず、またいくつかのKクラスシナリオを起こしうるオブジェクトは——それを阻止することができない。鉄鎖の中の神格実体、緋色の王の七番目の娘、そして言うまでもなく——すまないが、例として挙げるのはこれでもう十分だろう。同時に、世界中に伝播する宇宙学説——熱的死、ビッグチル、特異点、それらは例外なく宇宙が終焉に向かっていると考えている。これらの学説を信じる人物を特定し、背寒効果の初期影響を受けているかをッ全員確認することは不可能だ。
疑う余地も無く、これらKクラスシナリオを引き起こしうるオブジェクトは非常に多い——異常なまでに多すぎるのだ。我々は財団が一貫して理性的に行動していたことを知っているが、異常効果に感染する前にメールを送ることはできなかった。私が言いたいことは、そういう事だ。
SCP財団、つまり異常の手から世界を守る我々の組織は、知らず知らずのうちに最大の効果を発揮するキャリアとなったのかも知れない。 我々はずっと“確保、収容、保護”し続けているが、それもまた当初の意図と異なっているのかも知れない。
そしてKクラスシナリオに関わるオブジェクトの収容を緩めることなどできない——些かも緩めることなどできはしない。これらオブジェクトを怠けた対価は、絶対に受け取るべきではない。そうだ、進退窮まっている。適切な言葉で要約すると、言い換えれば、騎虎難下なのだ。この部屋の中の、この財団の中の、この地球上の全ての人間は、皆既に背寒効果の影響を受けているかもしれない。この問題を検証することは出来ず、改竄することも不可能なのだ。
私が示せる幾つかの事実は——何十年もの間、ありとあらゆる終末論が吹きあがってきたという事だけだ。2000年問題、ミレニアム審判、惑星直列、死の惑星、更に多くの馬鹿げた議論。だがどんなに馬鹿げた議論でも、熱狂的な支持者はいるのだ。同時に、我々が収容するKクラスに関連する全てのオブジェクトもまた、多くはこの時期に出現した。この何十年かは、まさに1Cが言うところの、南山の力が迅速に増長していく日々だった。
諸君が何を思うのかは分からない。
我々は自分が堅持して来たものの全てが正しかったかどうかは判らず、自身が受け継いできた信条が歪曲されているかどうかも知ることができない。
だが、我々は受け継いでいく。例えこれが伝承の終着点であったとしても。
我々は受け継いでいく。例え伝承自体の意義が失われていたとしても。
ありがとう。
[後続内容は省略]
我々は南山の異常性質を探索し、南山が形成された原因を解明し、南山の最終的な本質を暴き出した。
しかし振り返ってみれば、我々は依然南山について無知であることが分かった。
現在、世界の人々がCN-1111-背寒効果の影響を受けているのか分からない。
現在、財団データ保管庫がCN-1111-背寒効果の影響を受けているのかは分からない。
現在、このドキュメントがCN-1111-背寒効果の影響を受けているのかは分からない。
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