アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Eparch
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP及びその構成員が異常な物品・技術と接触することを避けるため、ヴェール措置に基づいた標準監視プロトコルが実行されます。サイト-811C喪失事件に関する知識を持たない一般部門職員により、諜報部隊い-229“マズルビリーバーズ”が編成され潜入任務を行います。
説明: SCP-XXX-JPは単立宗教法人「懐中銃教会」です。SCP-XXX-JPは異常な物品・技術・人員を持たず、既知のあらゆるPoI、GoIとの関連を持ちません。教典は超常的な現象に関する記述を有し、教祖はそのような現象を経験・実践出来るとされているものの、実際に異常現象が確認された事例はありません。
以下はSCP-XXX-JPの教義の概要です。
- 意識は宇宙と同期する。故に、「内的革命」を以て宇宙を塗り変えることが出来る。
- 銃は人間の宇宙に対する可能性の象徴であり、放たれた弾丸は人間そのものの象徴である。
- 上記の帰結として、射撃によって「内的革命」を果たした時、放たれた弾丸は自身によって支配された宇宙と相似である。
- 常に銃を懐に所持しておくことが望ましい。
SCP-XXX-JPはサイト-811C喪失事件が発生した2024/01/31、局地性因果律歪曲を伴って形而下に挿入されました。SCP-XXX-JPの本質は、サイト-811C喪失事件に伴い抹消された何らかの概念が、基底現実との干渉により痕跡として残留したものであると考えられています。SCP-XXX-JPの原型となった概念は未特定です。
補遺1: サイト-811C喪失事件概要
2024/1/31、サイト-811Cにて同時多発的な収容違反が発生しました。サイト職員の殆どが意図的な収容違反幇助及び破壊工作を行ったことが判明しており、これが当事案の直接的原因と考えられます。収容違反したオブジェクト群は不明な相互影響によって収束性現実不全を引き起こしたと見られ、結果としてサイト-811Cは崩落・喪失しました。サイト敷地外への影響はSCP-XXX-JPの存在を除き確認されていません。
補遺2:
以下は回収記録群から再構成された当事案のタイムラインです。
補遺3: サイト-811C映像記録01
映像記録01
注記: SCP-1809-JP収容室前の監視カメラの映像。
[記録開始]
AM0:35 苅田サイト管理官がSCP-1809-JP収容室を訪れる。1名のDクラス(D-229)が共に行動しているが、D-229は所定の拘束具を着用していない。D-229は鞄を所持しており、頻りに周囲を見回している。
AM0:36 苅田サイト管理官は自身のセキュリティカードを用い収容室に入室する。D-229が後に続くが、扉が閉じ侵入を阻む。D-229は所在無げに立ち尽くす。
AM0:38 画面が大きく揺れる。収容室の扉が煙と共に開き、D-229が入室する。
[記録終了]
補遺4: サイト-811C映像記録02
映像記録02
記録日時: 2024/01/31 AM0:40〜
注記: 収容室内の記録機器による映像及び音声記録。
[記録開始]
[収容室には収容違反を知らせる警報が鳴り響いている。]
苅田サイト管理官: ……ひとまずパーツは揃ったな。
D-229: な、なあ。やばいんじゃないのか、これ。あんたらの仕事はよく分かんねえけど、こんな……。
[D-229は収容室の入口に目を向ける。扉の施錠部が爆発物によって物理的に破壊されているのが分かる。]
苅田サイト管理官: 私語は慎め。
[苅田サイト管理官はセキュリティキーを床面に置き、収容室中央のSCP-1809-JP保存庫に近付く。SCP-1809-JPの異常性により、苅田サイト管理官が所持していたボールペンがニューナンブM60拳銃に置換される。]
苅田サイト管理官: これがこいつの異常性だ。くれぐれも、貴重品は近付けないように。
D-229: [嘆息] まあ、訳分かんねえのはいつもの話か。……おれは何をさせられるんだ?
[苅田サイト管理官はSCP-1809-JPの異常性により生成したAK-47、M249軽機関銃、イサカM37ショットガンをD-229に手渡す。]
苅田サイト管理官: 使い方は分かるな? 直に、敵がここにやってくる。敵が来たら、こいつの傍から決して離れずに応戦するんだ。少しでも離れれば、そこは敵の統括領域になる。
D-229: [沈黙] いよいよキナ臭くなってきたな。Dクラスに銃を渡して、あんたみたいな重要人物と一緒に戦うって? ……どう考えてもマトモじゃない。ここを切り抜けても、結局上から処分されるなんてのはゴメンだぜ。
苅田サイト管理官: 私より上などここには居ない。お前は、敵を撃つことだけを考えればいい。……私は財団職員だ。[小声で] 礎は、正しき世界の下で在らねばならない。
D-229: そうかい、分かったよ。……まあ、やけに信頼されてるようなのが気持ち悪いが。
[収容室内の放送機器が突如、大音量でRed Bisの楽曲「Z.O.C.」を再生し始める。]
苅田サイト管理官: ……クソ、ここも万全ではないのか。おい、耳を塞げ!
[不明なノイズにより映像及び音声が判別不能になる。数秒後、信号が途絶する。]
[記録終了]
補遺5: サイト-811C映像記録03
映像記録03
記録日時: 2024/01/31 AM0:42〜
注記: サイト-811Cカフェテリア内の固定カメラによる映像。
[記録開始]
AM0:42 カフェテリアには約50名の職員が存在するが、収容違反を示す警報にも関わらず、食事や歓談を行っている。職員達は酩酊状態にあるとみられ、顔面が紅潮している。
AM0:45 カフェテリア内の音響機器がRed Bisの楽曲「Z.O.C.」を再生し始める。カフェテリア内の全職員は一斉に立ち上がると、中空の一点を見つめる。視線の先に存在していた浮遊する象の死体がゆっくりと回転し始める。
AM0:48 職員達は象の死体を見つめたまま、回転に合わせて首を捻じ曲げていく。全ての職員は数秒以内に明らかな致命傷を負うが、首はその後も捻られ続ける。
AM0:50 全ての職員の頭部が脱落する。落下した頭部は依然象の死体を見つめ回転し続けている。
AM0:52 職員達の死体が立ち上がる。死体は隊列を為して行進し、カフェテリアから退出する。
[記録終了]
補遺6: サイト-811C映像記録04
映像記録04
記録日時: 2024/01/31 AM2:00頃
注記: SCP-1809-JP収容室内の映像。
[記録開始]
[約40名の頭部のない職員達がSCP-1809-JP収容室への侵入を試みている。苅田サイト管理官はUZI短機関銃、D-229は64式7.62mm小銃を用いて応戦している。]
D-229: ゾンビかよ、全然効いてねえぞ!
苅田サイト管理官: 胴体は効果が薄い、脚を狙え! 動きを止めて通路を塞がせろ!
[職員の死体群は弾丸を受けると僅かに後退するものの、停止することは無い。苅田サイト管理官らとの距離は約7mである。]
苅田サイト管理官: クソ、部品は揃っている筈なんだ。遅すぎたのか? しかし……。
[D-229の上方1mの地点に突如異次元ポータルが開口し、容姿が同一な白人男性の死体が続けて出現・落下する。死体がポータルから出現する度、最前に位置する職員の死体が停止、身体が融解する。]
D-229: うお、なんだこれ!
苅田サイト管理官: 調和は成された! D-229、標的を定めろ、銃火を絶やすな!
D-229: あ? こいつらは敵じゃねえのか? なんなんだよ本当に……!
[収容室内の音響機器がエイブラハム・リンカーンの第二期大統領就任演説の録音を再生し始める。同時にポータルから無色の粘性のある液体が流出し、職員の死体群へ降り注ぐ。液体は高濃度のエクトプラズムを含むと見られ、職員の死体は苦しむ素振りを見せる。]
声: この [ノイズ] の強固かつ永遠の拡大こそが、叛徒どもが戦争を起こしてまで [ノイズ] を引き裂かんとする目的でありましょう。
苅田サイト管理官: 銃口の奥の瞳よ、苦悩を愛する魔弾の射手よ! ようやく報いたか!
声: [音飛び] しかし、私が裁かれぬ内に、人々を裁いてはなりません。
声: そして鞭によって流された血雫の一滴までも、[ノイズ] によりて贖わんとするならば。[音飛び] 私は宣明せねばなりません。「神の [激しいノイズと音飛び] 」
D-229:「神の審判は絶対の真実であり、正義である。」ってか! 懐かしいな、小学校で暗唱させられた。
苅田サイト管理官: そう。審判は我らに停滞を命じ、魔法使いを騙る叛徒はその上ににせの王宮を建てた。ハリボテの空はやがて砕け落ち、その瓦礫が今、我らに降り注いでいる。
D-229: とにかく、今がチャンスだよな? 押し返すぞ!
苅田サイト管理官: いや、もういい。聖遺物の結界、管理者たる私、そして引き金を引くお前。調和は既に宿痾となり、光翼を蝕んでいる。強大な帝国とて、内患を抱えたまま忘却の黄昏を明かすことなど出来はしない!
[苅田サイト管理官は銃を下ろし、収容室の天井を仰ぐ。]
苅田サイト管理官: 巡礼が、ようやく終わる。
[職員の死体群は殆どが行動不能になっており、停止した死体がバリケードとなって収容室への侵入を阻んでいる。]
苅田サイト管理官: D-229。俺を撃て。
[苅田サイト管理官はニューナンブM60拳銃をD-229に投げ渡す。]
D-229: はあ? お前、やっぱ自爆テロでしたってオチかよ! ふざけた巻き込み方しやがって……!
苅田サイト管理官: 違う。俺がこの場所で標的として死ねば、統括領域は真に完成する。不治の癌細胞として、簒奪者を滅ぼせる。それさえ済めば……お前は自由だ。
D-229: ずっと何言ってんのかわかんねえよ! ああ、クソ、指が勝手に……!
苅田サイト管理官: お前はまだ五体満足だ。風化を待つ我らと、忘却に敗れる彼らとは全く異なる。[沈黙] 街へ帰るんだ。戦争は終わる。安寧を歌え。あらゆる錆と歪みから解き放たれたお前が、我らの名残りとなってくれることを願うよ。
[発砲音]
[記録終了]
補遺8: 2024/01/31 AM3:00、サイト811Cの現実性が復帰し始めたことが確認され、AM3:30より援助部隊によるサイト-811C復旧任務が行われました。サイト内にはD-229を除き生存者は存在せず、苅田サイト管理官の死体は発見されませんでした。SCP-1809-JP収容室にて回収された苅田サイト管理官のセキュリティカードには以下の英文が記されていました。
“Then, a remaining hole only tells.”
(そして、弾痕のみが遺される。)
SCP-XXX-JPは2024/01/31 4:58、援助部隊による苅田サイト管理官のセキュリティカード回収と共に形而下に挿入されたことが確認されています。D-229は2024/02/31、所定の勤務期間を終えたとして記憶処理の後解放されました。
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