懐中銃フレーズ集

あるガンスミスからの手紙

撃針に叩かれて放たれた弾丸は中空にて何ものにも妨げられずにいられるので、これは最も自由なものである。故に、あなたがたはこれを目指した。しかし、これは常に刹那の後に自らその自由を捨て去り、身に宿した衝撃を放散させる。あなたがたの幾人もの同胞は、そのようにして自ら散り散りになってしまった。ワシントンの銃讃会は近ごろ手紙も返さない。

あなたがたが良く知るように、弾丸の衝撃が常に向かうべき標的に打ち響くことはない。

放たれた弾丸はとうに、撃針の導きを失ってしまっているからである。撃針に叩かれた薬莢は地にうち捨てられ、炸裂した装薬は役目を終えて霧散した。ならば、どうして弾頭のみが導きに従えるだろう。これは古い三位一体論を引くまでもなく明らかなことだ。そして、これも古い教典にあるように、着弾したならば、その弾丸は必ず外れていない。これは単に真理である。あなたが標的を選ぶのではなく、それは常に標的であったのだ。

だから私はあなたがたに告げる。

離れゆく弾丸に身をやつすのをやめ、より御下に近づくことのみを考えなさい。標的は離れた場所にはいない。それは導かれていないが故に。標的は必ずもっとも近くにあり、それはその近さ故、あなたがたが知りさえすれば必ずや撃ち抜くことが出来る。銃と弾丸は御下そのものではなく、ただその道具である。

ここにおいて、あなたがたは自らの行うべきを知った。そしてあなたがたは、遂に長く不毛であった巡礼の終わりを見た。吉報を待つ。銃口の門徒よ、銃と弾丸を正しく用いんことを。

ある信徒の述懐

銃は強く、硬く、平等で、そしてそれはただ銃である。私はかつてそれを知っていたが、久しく忘れていた。長い巡礼は私の原野を切り拓き啓示を与えると同時に、素朴な信仰の源泉を枯らしていた。

銃はただ、銃である。撃つことはただ、撃つことである。

銃口から離れた暮らしは、私にそのような素朴さを取り戻させた。そして今朝、久々に銃を握った。形式張った祈祷は最早不必要だった。くすんだ銃身は磨く度に輝きを増し、手のひらにかかる重みはそれが内包する力を無言のままに暗示する。私はまさに胸を撃ち抜かれたように感じられ、気が付くと部屋は暗くなっていた。

銃はただ銃である。そして、それはあるがままで美しかった。

聖典より抜粋

我々はみな正しき弾道を逸れゆくように定められた落とし子であるからして、頭蓋からの血による洗礼のみがそれを贖う。

星条旗を見よ!
十三の横縞は、1892年の4月14日、ワシントンD.C.フォード劇場前に集った十三人の男達を表している。

放たれた弾頭を再装填できる筈はない。もはやそこに弾薬は残されていないのだから。
代替品の弾丸の再発射に意味があろう筈はない。それは彼の弾丸ではない。彼の銃ではない。
熱源を失い、慣性のみに従って落ち続ける世界がどうして正しき標的に至れよう。
標的を欠いて果てしなく続く落下は、すなわち停止である。無重力下の死体のように、我々は熱と推進力を失った。唯一残された言葉でもって、戻らぬ光を、魔法を、熱を、惜しみ罵り待つ他ない。

中空で舞うコインの表裏はまだ分からない。無重力下の象の生死もまた。そして、私はそれを確かめられない。それは私の側にはないからだ。

魔法の銃、魔導の弾丸、魔性の標的。どれひとつが欠けても意味を為さない。それでいて、引き金にかける指先が無ければ、それらは何物をも充たさない。
願い無き行動が無意味であるのと同様、三位一体は常に撃ち手を求めている。

雑多な台詞

お前は彼の撃鉄の落ちたる音を聞いたか。
ああ、聞こえたさ。そして、弾はとうとう出なかったんだ。引き金を引いたなら、撃鉄が落ちる。しかし、弾頭はとっくに放たれ終わっていて、撃針は空薬莢を叩くばかり。それで、終わりだ。三位一体は俺たちの物語ではなく、離れてしまった弾道の行方は知る由もない。

俺たちが生まれたときにはもう、放たれ終わっていたんだ。神を手にする英雄譚は昔の話で、次の英雄の到来はまだ先。まさしく末法さ。

俺はいまここで、弾倉全てに弾を込めてロシアンルーレットをやってやることだってできるんだ。でも、それはお前らのためにじゃあない。

あなた自身を愛するように、あなたの敵を愛すること。あなたの子供を導くように、あなた自身を導くこと。つまり、その至るところは自分と世界の合一です。当然そこにおいては、等価である私とあなたは媒介するまでもなく響き合います。私が私を空砲で撃ち抜き、それは世界です。

弾丸は慣性、あるいは惰性に従い進んでゆきます。その弾道は定められた放物線にのみ従うのであって、歪むことはありません。崇高な着弾に至るか否かはさておき、銃が定めた標的へと飛ぶのです。なればこそ、祝福無きわたしが敢えて撃ち抜かれるを望む時、その標的になれるなどという考えは烏滸がましさの極致でしょう。故に、わたしは流れ弾を愛しました。

弾丸の導きは消え果てた。撃鉄の音はとうに久しくなり、銃身は冷えて錆び付こうとしている。
魔法の銃のシリンダーはきっと空っぽで、聖なる標的なんてどこにもいない。世界が堕ちてゆく。冷え固まって停止する。

聖典が必要だ。
今一度、我らの照門の先、導きの照星を見据えよう。

夢の中で私はカフェに居て、向かいにはにやけ面の男が座っていた。彼が魔法使いであることは一目瞭然で、私と彼は旧知のようだった。私達は、しばらくどうでもいい話―私の故郷のことだとか、最近のアメリカの政治ゴシップだとか―をしていた。私のコーヒーが無くなったところで、彼は一度だけ大あくびをし、立ち上がった。

彼はいつの間にか手にしていたリボルバーを私に向け、引き金を引いた。呼び鈴を押すかのような何気なさで、私は目を瞑ることも出来なかった。

弾は決して出なかった。弾倉は空だったのだ! 彼は大笑いして、全部ジョークだったんだ、と言った。

私は動揺し、叫ぼうとして、目が覚めた。

魔法使いのおニィちゃん、おれはお前に付き合ったんだ。付き合ったんだぜ。なあ。昔のことだって言うのかい。どうせその面に弾丸をぶち込んだって、お前はにやけたままなんだろうな。お前がおれを忘れたって、おれは忘れてやんねえ!忘れてやんねえ!……ああ、だからいつかもう一度、魔法の銃でおれを撃ち抜いてくれよ。

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