『なんか壊れちゃったんだけど?』

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「高井くん、ちょっと良いかな?」

しかめっ面をしながら作成途中の報告書と格闘していた高井研究員は、パソコンから声の主の方へ顔を向けた。声の主は高井研究員の上司、古方博士だ。

大抵、上司から声が掛かるのは余り良い兆候ではない。新しい仕事の押しつけか、仕事にミスがあったのかのどちらかだ。ただ、今回の用事がそういうものでは無いことは高井研究員も分かっていたし、この部屋に事情を知らない者がいたとしても、古方博士の情けない声色と申し訳なさそうな顔色から面倒な問題ではないことぐらいは察せるだろう。

「ごめんねぇ。なんかまたパソコンがおかしくなっちゃって……」
「またですか。」

古方博士は超がつくほどの機械音痴だ。週に3度はこうやって問題を起こす。

「いやねぇ、変なことはしてないはずなんだけど、急に壊れちゃって。」
「はいはい、壊す人はみんなそう言うんですよ。」

先日もあからさまなサイトにジョークスクリプトの餌食に合っていたばかりだ。今度は何事か。高井研究員は溜息を押し殺し古方博士に質問した。

「で、今度はどうしたんです。」
「急に数字が入力出来なくなっちゃって。困るなぁ。経費で落ちたりするのかなぁ。」

「博士──

NumLockって知ってます?」
「ナム、なんだい?」
「NumLockです。ここを押すとホラ、数字が入力出来なくなるんですよ。」

そう言いながら適当な数字を入力してみせる。

「はぁ、こんな簡単なのか。流石高井くんだねぇ。」
「大方間違って押したんでしょう。お願いしますよ。」

そう言いながら高井研究員は自席に戻る。今度研究室全員で参加するアメリカ出張までに報告書を完成させなければならないのだ。


「──というわけで、こちらの研究は以上です。」

大きな拍手が起こる。なんとか発表をやり遂げることが出来た。資料完成直前まで古方博士の「壊れちゃった」攻撃が続いたのは何かの陰謀だと思ったぐらいだが終わってみればあっけないものだ。

終わってからすぐ、古方博士は地元の研究者と仲良くなった。その中で「682を見てみないか?」と言われたらしく、古方博士は喜んで彼らについていった。高井研究員はクリアランスが足りないらしく入ることが出来なかった。暇を紛らわすものもなく、ただ博士達が入っていった扉を見つめる。

──少し経ったか、扉の向こうが騒がしい。何かあったのだろうか。そう思っていると青ざめた顔で古方博士が出てきた。古方博士は言う。

「高井くん、なんか大変なことになっちゃってね。驚かないで聞いてもらえるかい?」
「はぁ、なんでしょう。」
「驚かないでね。

──682、終了させちゃった。」

「は?」

なんで?

「いやねぇ、変なことはしてないはずなんだけど、急に終了しちゃって。」

だからなんで?


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