残響
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「早く!こっちだ!」
管理官の怒号が響き渡る。その後ろを駆ける十数名の研究員の白衣はどれもが鈍い赤色で汚されていた。研究員達が逃げ込んだ先は一見ただの行き止まりのように見える。だが管理官は壁の手触りを確かめながらこう呟く。
「下から70cm、右の柱から150cm……ここだ!」
管理官が取り出したIDカードを白色の壁に押し当てる。瞬間、少し低い音がした後に壁が左右に開き始めた。
「開いたぞ!」
管理官が言うのが先か、誰かが走り込むのが先だったか。なだれ込むようにして全員が避難経路に入ったのを見届けると、管理官は入口を閉じた。経路は薄暗い闇に包まれる。電灯こそ機能しているものの、電気の供給がままならないのか10m先を見渡すのもやっとの状況だ。無我夢中で暗闇の中を走って行く。足下すら覚束ない薄暗さだが、避難経路が一直線なのは幸いか。
「ここ、長さどのぐらい!?半分来た!?」
「3600!まだ5分の1も走っちゃねえぞ!」
まだそれしか、誰かのつぶやきが漏れる。恐怖と緊張感が、心拍数と時間感覚を無限に膨らませる。
あぅ。
- portal:3205804 ( 02 Jun 2018 12:45 )

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