ニードホッグ、貧しき根住み(お団子 に-2)

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アイテム番号: SCP-1212-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-1212-JPの出現を予見する確実な手法は発見されていませんが、実例が巨大であることから、財団の汎用的な初期異常覚知システムによる捕捉は十分な確実性が担保されています。異常現象の発生現場に派遣された所定人数のエージェントは、SCP-1212-JPを目撃した人物全てを対象とした記憶処理の実施と適切なカバーストーリーの流布を確実に遂行してください。必要性に応じ、広域記憶処理剤の散布、ミームエージェントによる報道管制の実施も許容されます。その後、対応職員は実例と交渉し一般社会に与える影響が少ない地点へと誘導した上で、実例が消失するまで監視を継続する必要があります。この際、可能な範囲で実例に対する計測やインタビューを行い、実例の健康状態の把握に務めることが推奨されます。

2021/09/13以降、SCP-1212-JPは要注意領域"穴蔵"の深奥に滞在しています。当該領域は空間安定性が低いため有人探査は制限されており、実例に対しては無線通信機器を搭載した剛体ドローンによる最低限の視察のみが行われます。現在の収容措置は姑息的なものであり、プロジェクト・カタスの成功に伴い、地上の適切な収容サイトへの実例の迅速な移送が実施されます。

説明: SCP-1212-JPは主流生物学の分類に基づかない大型有翼爬虫類の1個体であり、大まかに以下に挙げられる特徴を有します。

  • 赤銅色の鱗に覆われた表皮。
  • 2対の眼球と1対の前方へ湾曲した角を備える頭部、体側面から出る胸腹部と比して短い2対の肢、体長の55%を占める鋭利な棘に覆われた尾、薄い黒色の翼膜を備えた1対の翼。
  • 財団の計測下における全長は5145cm、体高740cm、翼開長1830cm。
  • 四足歩行と蛇行を使い分けて得る最大時速25kmの移動速度。地上あるいは空中の移動を目的とした翼の使用事例は観測されていない。
  • アスファルト舗装された路面に頭部の角を用いて直径10mの竪穴を作り出し、その中に全身を埋め潜伏することを可能とする掘削能力。
  • 衰弱の徴候。おそらくは飢餓に由来する。
  • 日本語およびアイスランド語の読解能と発話能。
  • ヒトとの意思疎通を遅滞なく可能とする知性、並びにヒトとの文化的交流に十分な礼節の理解度。
  • 自身を「大黒天の神使であるネズミ」と定義するアイデンティティ。

SCP-1212-JPは財団職員を含むヒトに対し概して友好的な態度を取っており、(自身の体躯の移動に伴う「不可抗力」を除外すれば)ヒトおよびヒト社会に対し明確な害意を見せた事例は確認されていません。しかしながら、実例は財団による自身の収容の試みに対し消極的であり、その理由として「適切な食料の供給能力を有していないこと」を挙げています。実例の申告から得られた情報を統合すると、実例の飼料として機能しうる存在は超次元多層構造空間の構築における根幹をなす特定要素のみであると考えられています。

SCP-1212-JPは不定期に瞬間的な消失能を発露しますが、実例の申告によればこれは自身の能力ではなく、実例により「主人」と呼称される不明な外部勢力からの意図的な操作であるとされます。実例の申告から「主人」は日本において信仰される大黒天および大国主命に関連する存在であると推測されますが、客観的な裏付けは得られていません。現在に至るまで財団による実例消失の能動的な阻止に成功した例はなく、これがSCP-1212-JPの身柄を確保することを困難としています。実例は任意の地点への瞬間的な出現もまた可能であると推測されますが、事例の観測歴はありません。

補遺1/1212-JP: インシデント記録1 & インタビュー記録1

SCP-1212-JPが初めて財団の監視下に出現したのは、2021/03/17に島根県出雲市の神社で開催されていた甲子祭の会場におけるものです。実例は現場付近の山林から境内へと移動して衆目に姿を現し、当時境内にいた少なくとも1300名以上の参拝客を一時的な恐慌状態へと陥れました。有事発生に際し現地に滞在していたエージェント・八尋により、迅速な周囲の封鎖と記憶処理剤の散布が施行されたのち、拝殿前を困惑しながら徘徊していたSCP-1212-JPへの接触が行われ、実例は近隣の山林へと誘導されながら初回のインタビューを施行されました。

Record 2021/03/17

インタビュー記録:SCP-1212-JP

対象: SCP-1212-JP
インタビュアー: エージェント・八尋


【前略】

インタビュアー: そこのお前!何をしている!

対象: ああ!そこのお兄さん、ちょっと助けてくださいよ!ご主人のお供え物を頂きに来ただけなのに、みんな私を見ただけで逃げちゃったんですよ。

インタビュアー: そりゃ、お前のような姿をしたものが突然出てきたら、普通の人はみんな逃げるだろうが。

対象: そんなあ。私、ただのネズミのはずなのに。

インタビュアー: ネズミ?お前が?しらばっくれないでくれ。お前は何者だ?

対象: 職質ですか?お兄さん、警察の方でございましたか?これは大変失礼いたしました。私、大黒天様の使いのネズミでございます。

インタビュアー: まあ、警察みたいなものと思ってもらってもこちらとしては構わないが、それにしたってその姿でネズミはないだろう。

対象: いえ、確かにネズミです。昔からご主人の使いのものは皆ネズミであると取り決めがありますので。

インタビュアー: 埒が明かないな、少し詳しい話を聞かせてもらおうか。その前に、とりあえず神社からは出ていってもらおう。

対象: 承知致しました、境内の中のものは傷つけないよう細心の注意を払っておりますので、移動に時間がかかりますことご了承願います。

インタビュアー: 畏まらないでもいいから。

[10分後]

インタビュアー: ここまでくれば人目にはつかないだろう。では、聴取を始めさせてもらう。

対象: はい、申し訳ありませんが仕事が残っておりますので、なるべく短めにお願い致します。ご主人は従業員の残業をあまりお好みになられないお方でございますので。

インタビュアー: ああ、まずはお前の仕事とやらから教えてもらおうか。

対象: 先程も申し上げましたとおり、私は大黒天様のもとで神の御使いとしての業務を担当させて頂いております。が、捧げものを受け取りに人様の前に立つ仕事は今日が初めてでした。

インタビュアー: 道理でこれまで発見報告がないわけだ、これが初回の出現だったんだな。これまではどこで何をしていたんだ?

対象: 今まではご主人のところで丁稚奉公をしておりました。根の国に住み込みで、同僚のネズミたちと一緒に叩き上げで営業の仕方を教えていただいて。某所で武勲を立てる機会もありまして、ようやく一人前として仕事をしてよいとお許しを頂いたのです。

インタビュアー: 武勲?

対象: そのとおり。ご主人が草原で曲者に放火されたとき、私はほらほらと腹の下にご主人を招き入れて火炎から護り、外の曲者を尻尾でぶすぶすと突いて追い払いました。ご主人はたいそうお喜びになり、それから私に目をかけてくださるようになりました。

インタビュアー: …それで、お前の主人はお前がネズミとして人前に出ることを許したのか?

対象: ええ、ご主人にお仕えしています限り、私はネズミですので。

インタビュアー: …質問を変えるか。お前はいつからネズミということになっているんだ?

対象: 申し訳ありませんが、仕事に関わらない私の身の上のことはお話できません。ご主人は従業員が自身のプライバシーを流出させることを禁じておられます。それでは。

インタビュアー: 待て!話の途中でどこへ行く!

対象: すみません、ご主人のご命令です。私達はご主人に呼ばれれば自動的に退勤することとなっております。ご主人はお兄さんのことは残念ながら存じ上げませんので。

インタビュアー: ならせめて、次の仕事だけでも教えてくれ。

対象: 従業員のシフトは社外秘でございます。…ただ、予定とは違うところに行かされるかも…初仕事がこの有様ですから…。

インタビュアー: おい!

[対象がその場で消失する]

【記録終了】

補遺2/1212-JP: インシデント記録2 & インタビュー記録2

次にSCP-1212-JPが確認されたのは2021/05/16、和歌山県田辺市の山中に多数の陥没穴が出現したと地元の山林管理者から通報が発せられたことによります。現場に派遣されたエージェント・八尋は、山林に生える複数の大木の近辺で穴を掘り、地中の根や樹皮を齧ろうと試みている最中のSCP-1212-JPを発見し、現地で2回目のインタビューを執り行いました。実例は最終的には樹木の根を消費していなかったことが認められました。

Record 2021/05/16

インタビュー記録:SCP-1212-JP

対象: SCP-1212-JP
インタビュアー: エージェント・八尋


【前略】

インタビュアー: おい、そこのネズミ!久しぶりだな。

対象: ああ、どうも!この前のお兄さんですね。その節は大変失礼いたしました。結局あの後ご主人に叱られちゃいまして、今日は人の来ない小さな神社で練習することになったのです。

インタビュアー: 今度は一体何をしてるんだ?山を掘り散らかして。

対象: 本日の業務はもう終了しておりまして、今は帰る前に食事のできる場所を探していたところです。情けないことに、私、多忙で食事を摂る暇がございません。

インタビュアー: 食べようとしていたものは?

対象: 木の根です。ですが、残念ながら私に合う大きさのものは無さそうですし、そもそもこの土地の人様のものですからやっぱり遠慮させていただきました。同僚の者たちなら、木じゃなくて草の根でも満足するのですが。

インタビュアー: 根が主食なのか?

対象: いえ、私はネズミなので、ネズミが食べるものなら何でも頂いております。ご主人のもとでは原則、従業員の一日の食事は皆平等でございます。

インタビュアー: なるほど。それで、そんなに痩せているのか。ネズミと同じ食事じゃあ、1日24時間食うだけに費やせたとしても全然足りないな。

対象: お恥ずかしい限りですが、そのとおりでございます。…実を申し上げますと、私がここで仕事を始めたのは、根の国なら私に見合う根が得られるはずと聞いたからなのですが。ここ木の国も根についてはダメそうですね。

インタビュアー: おや、プライバシーについては話せないんじゃなかったのか?

対象: ああ失礼。帰りの予定は明日なので、幸いにして今なら時間がございます。少しならオフレコのお話もできますよ。

インタビュアー: 明日と言わず、できればずっと私達のところに居てほしいのだが、それは難しいか?

対象: 残念ながら。ご主人はお怒りになられるとたいそう恐ろしい方でございます。従業員の職務妨害になると認識されることはお控えになったほうがご懸命かと。

インタビュアー: 不本意だが、今はそれで仕方ないか。ならば、ここに居てもらえる間に色々とオフレコの質問を追加させていただこう。

対象: ええ、お兄さんのためになることでしたら、可能な範囲でお答えいたします。

インタビュアー: 協力感謝する。では聞くが、お前はネズミになる前は何だったんだ?

対象: ええ、まあ、お兄さんから見た姿のとおりです。昔の私は仕事もせずぐうたらしていて、住処にあった世界の根をただただ齧っている毎日でございました。

インタビュアー: 世界の根。

対象: はい。私がもともと暮らしていたところでは九つの世界が一つの樹に集まっておりまして、私はその樹の根にいたわけでございます。ですが、あいにく今はその樹はもう焼けてしまいました。

インタビュアー: その話なら、私達もよく知っている。あくまで、物語としてだが。

対象: 私は焼け出された者たちを樹から運び出す役割を果たしました。運命として定められた役割です。皆を遥かな天か、あるいは地の底かへと運んだのです。私は仕事を全うして、…その後には私だけが残ったのです。

インタビュアー: 続けてくれ。

対象: 物語が終わっても私自身はまだピンピンしていましたが、何しろ家も食べるものもなくなってしまったものですから、どうしたものかと途方に暮れておりました。世界の根が取れる樹なんてそう簡単に見つかるものじゃありませんし。そうしておりますと、私に救いの手が舞い降りたのです。

インタビュアー: それは。

対象: 彼は、自身を「トリスメギストス・トランスレーション&トランスポーテーション」という企業の社員であると名乗りました。なんでも、物語の世界からこぼれ落ちた私のような者が生きていくために必要な手段を用意するという触れ込みで、彼は私に仕事を斡旋してきたのです。

インタビュアー: それが、大黒天の神使となることだったと?

対象: 職場が「根の国」だと聞いて私は即決しましたとも。私が生きるためには根が必要ですからね、こんな名前の国ですし、さぞかし立派な世界の根があるのだろうと。斡旋してくれた方も、私がいずれ必ず適切な食事を手に入れられることを約束するとおっしゃって、親切なことに日本語の講習までやってくださいました。

インタビュアー: そうなると、お前がネズミとして働いている目的は食事の確保だというわけだな。

対象: まあ、実際のところ、それは未だ叶っていないのですが…。今になって思うと、多少の誇大広告はあったのかもしれません。少なくとも普通の勤務者が満足できるだけの根があるのは確かですから。

インタビュアー: …なるほど。それなら、私達にお前の食事の世話ができるようになれば、大黒天のところから私達のもとへ引っ越して貰えるか?お前の巨体がいつどこに出るかわからないのは私達としては困るんだ。

対象: うーむ、仮定の上でなら考えられないこともないです。ただ大変申し上げにくいのですが、私にはお兄さんたちがそれをできそうには思えないですね。皆さんが暮らしてる場所は樹じゃなくて硬い岩石の球の上だって聞きましたし。

インタビュアー: 何としてもやってみせるさ、お前が過労と空腹で倒れる前にな。それが私達の仕事なんだ。

対象: お気遣いありがとうございます。くれぐれもご無理はしないでくださいよ。

【後略】


補遺: インタビュー後、現場周辺の小規模な神社においてSCP-1212-JPにより作成されたとみられる陥没穴が発見されました。発見時、神社には奉納物は認められませんでしたが、当該寺社は参拝客が非常に少ないため、SCP-1212-JPが干渉するに足る量の奉納物が存在していたか否かは明らかでありません。現地での実例目撃の報告は現在に至るまで知られていません。

このインタビューにおいてSCP-1212-JPは一時的に田辺市山中に滞在することを承諾し、この時点で財団による実例の各種計測および観察が行われました。紀伊山地に仮設収容施設を構築することも検討されていましたが、翌日の2021/05/17になると、実例は唐突に「主人から退勤するよう呼びかけられた」という旨の言葉を発してその場から消失しました。財団が持ち込んでいた各種計測機器からは、微弱なAkiva放射の痕跡のみが検出されました。財団製の逃亡阻止用設備(スクラントン現実錨を含む)は一切の有効性を示しませんでした。

補遺3/1212-JP: SCP-1212-JP収容計画の変遷

2回のインシデントの経過から、SCP-1212-JPの物理的な収容の達成は至難であると判断されました。事前予測が困難な位置へ不定期に巨大なオブジェクトが出現する性質に伴う異常存在隠蔽の困難さ、並びにオブジェクト自身の衰弱の進行に際し生じた喫緊の保護の必要性により、SCP-1212-JPに対する財団の各種任務遂行において現時点で使用可能な手段が模索されました。以下の表は、実例の確保・収容・保護の達成を目標として提案され稟議された計画の一覧です。

計画 論拠 現状
SCP-1212-JPに対する経口以外の持続栄養投与ルートを構築する。 実例の栄養状態の改善。 却下。獣医学的外科処置の最中に実例消失が発生した場合に生じる、実例への健康影響にかかる重大な懸念のため。
携行可能なドノヴァン・ホロプロジェクターをSCP-1212-JPに付与し、実例の視覚的特徴をアカネズミに近づける。 一般社会へ露出する実例の注目度の低減。 却下。現在の実例と理想的な容姿との体積の差異は、現時点の技術で隠匿可能な範囲を逸脱しているため。
SCP-1212-JPに現在の「雇用体制」を解消する請願を行うことを要求する。 実例の消失現象発生の阻止。 却下。実例に影響を及ぼす未知の異常存在に対する接触ルートの消失を含む、複数の不確定要素を生じるため。
既知の多層構造空間の根幹を居住地としてSCP-1212-JPに提供する。 実例の恒久的な収容にかかる飼料の提供。 却下。調査に着手されている既知の多層構造空間は基底次元の一般社会を内包しうるものに限定されるため。
一般社会に直接の影響なくSCP-1212-JPに提供可能な、新規の多層構造空間を創出する。 実例の恒久的な収容にかかる飼料の安定生産手段の構築。 継続中。別文書: プロジェクト・カタスを参照のこと。
一般社会に直接の影響なくSCP-1212-JPに提供可能な、未知の多層構造空間の根幹を模索する。 実例の恒久的な収容体制の確立までに使用される姑息的な収容措置。 継続中。下記の提案内容を参照のこと。

要注意領域"中国地方の穴蔵"は、中国地方の四県(広島県、山口県、鳥取県、島根県)を中心とした西日本の地下に分布する多数のポータルからアクセス可能なポケット宇宙であり、複数の異常空間を内包しています。最外層には地底の積層都市が構築されており、財団の限定的な影響下にある大規模な超常コミュニティが根付いています。しかしながら、それよりも深層の構造は大部分が不明であり、それらは流動的であると理論立てられています。

注目すべきは、穴蔵が互いに性質の異なる次元結節の集合体であることです。外層の景観は日本国の一部分の複製と形容できる構成から成っていますが、観測可能な範囲での深層においては、高温高圧の空洞、あるいは希薄な大気のみが広がる空虚な区画などが認められており、おそらくそれらは日本の領土・領空・領海内に存在し得る全ての空間の混成に由来しています。また、穴蔵の内部空間は自己拡張を繰り返し、その内積を増大させる一方で、拡大した内腔は常に自切される可能性を孕み、それらは外部からのアクセスが不可能な閉じた小空間として残ります。一方でこれらの自律的な構造転換は外部から観測可能な空間の総容積を変化させることなく行われており、コミュニティの成立している穴蔵外層の空間安定性を欠くことなく、影響範囲は深層に限局しています。

以上の性質から、全体を樹状の多層構造空間と定義できる穴蔵深層には理論上の根幹が存在し、それはSCP-1212-JPの飼料として利用可能なはずです。

プロジェクト・カタス完遂までの一時的なSCP-1212-JP収容措置に穴蔵を利用するメリットとして、以下の要素が挙げられます。

  • 穴蔵が、現時点で日本国内に確認されている最大の多層構造空間であり、なおかつ構成要素に一般社会を含まないこと。従って、姑息的な収容地点の選定においては実質的に穴蔵が唯一の候補地となります。
  • オブジェクト移送の簡便さ。穴蔵の外層は財団を含む多数の超常組織の交通路となっており、地上と比較して巨大質量オブジェクトの輸送時に要求される隠蔽基準を低減できます。
  • オブジェクト隠蔽度の高さ。ポータルと直結する最外層を除く穴蔵内から外部社会へ干渉する手段は確認されておらず、偶発的アクシデント発生時にそれが非超常コミュニティに露見する可能性はほぼ無視できます。
  • 穴蔵深層に滞在している超常コミュニティ構成員は存在しないか、しても極めて少数です。

我々と対等に交渉可能な知性が実例に備わっていることを鑑みると、次回のオブジェクト出現時に新居の斡旋を行うことで、実例の飼料獲得による健康状態の改善を期待する価値はあるものと考えます。

エージェント・八尋

補遺4/1212-JP: インタビュー記録3

2021/09/13、"穴蔵"に滞在していた財団フロント組織から、現地の内部層の調査において多数の階層から同一の音声が継続して記録されていることが報告されました。解析の結果、音声の発信源がSCP-1212-JPであることが疑われたため、当オブジェクトの収容チームが"穴蔵"へと派遣され、遠隔操縦ドローンを用いて実例との交信が試みられました。

Record 2021/09/13

インタビュー記録:SCP-1212-JP

対象: SCP-1212-JP
インタビュアー: エージェント・八尋(剛体ドローンを経由した遠隔通信)


【前略】

インタビュアー: よう、ネズミ君!私だ、八尋だよ。その様子だと、新居は悪くない住み心地のようだな。

対象: 八尋さんですか。こんなところまでわざわざご足労頂きありがとうございます。ええ、おかげさまでようやく腹は満たせそうです。

インタビュアー: 本当に何よりだ。君たちのような存在が無事に過ごせることを応援しているのが私たちだからな。

対象: しかし驚きましたね、根の国にこんな場所があったなんて。私に仕事を斡旋してくれた人のこと、疑っちゃって申し訳なかったです。

インタビュアー: そう、そこが聞きたかったんだ。…君、どうやってここまで来た?

対象: 大黒様の仕事の合間に根の国をもう少し探訪しまして。そうしたら、見つけてしまったんです、今齧ってる根を。見上げると、球のように見えるとても沢山の世界が浮かんでいて。現れては消え、中から外へと広がるように伸びて、互いに緩い糸みたいなものでつながっていて。これが全体としては樹のように見えるわけですね。率直に言って、非常に懐かしい眺めでした。物語の外にも、こういう場所ってあったんですね。

インタビュアー: つまり、穴蔵の深層と「根の国」は繋がりを有するのか。これは驚いたな。

対象: あなた達の世界を去った者が居着く場所、って点では、どっちも同じなように思います。それで、あなた達からは根の国の一部がこうやって観測されていたのでしょうね。

インタビュアー: 私達としては、もっと安全に世界の根が作れるようになったら、君には根の国を出てまた地上に来てもらえることを望んでいる。まだ努力目標だがな。ところで、ここで腹を満たしたら、お前は今後どうしたい?

対象: うーん、とりあえず今の仕事は辞めて、昔の自分に戻ろうかなと思ってます。また前みたいにここでぐうたら暮らします。

インタビュアー: 物語の住民だったころの自分に?

対象: はい。多分もう皆さんにはバレてると思いますが。私の名前はニードホッグNidhogg貧しきネズミneedy hogですよ、はは。

インタビュアー: そうなると、主人にはなんて説明するんだ?

対象: そうですね、そこが問題なんですよ。大黒様に円満退職の願いを出すのはこちらでできるんですが、理由をどうしたものかと思いまして。根の国の果てで世界の根を発見したから、って言っちゃうと、ちょっとばかり不味いことになるかもしれません。

インタビュアー: どうしてだ?

対象: 彼は大黒天マハーカーラですから、枝葉と根を持つほど広大な世界の塊があると知ったら、間違いなく破壊しに来ると思うんですよね。そうしたら私はまた根無し草に逆戻りですし、多分あなた達はもっと困るでしょう。見たところ、穴蔵と呼ばれる世界は中も外も生命で溢れているようですから。

インタビュアー: 穴蔵の深層に生命?ドローンは生物を何も映していなかったが…。

対象: だとすると、あなた達には彼らが見えないのでしょう。見えない生命に対して責任を取るのは難しいでしょうが、しかし責任を取らないのであればそれは悪です。マハーカーラはこの世全ての悪を滅することもまた自身の任務としています。

インタビュアー: [無言]

対象: まあ、皆さんにはこの場を提供してくださった恩義がありますから。私からはこのやり取りはオフレコにしておきます。今後ともよろしくお願い致します、…私の背に乗りたいのでないなら、くれぐれもお気をつけて。

【後略】

この記録以降、"穴蔵"内部層での音声は継続して確認されており、SCP-1212-JPが現地を滞在地として選定したことが示唆されています。実例をより安定した空間へ移送する試み、および実例が消失せず滞在を続けていることによる未知の副次的影響の予測と対応が継続中です。




[下書きここまで]
タグ
scp jp keter ネズミ 爬虫類 樹木 穴蔵 ttt社 お団子21 _イベント2

  • この記事は十五夜お団子フェスティバル参加予定です
    • スロットは「に-2」(樹木+ネズミ)予定。元々はネズミ+ヘビで考えてたけど四肢と翼あったら蛇とは言えないですね…

プロット

  • オブジェクト: 自分を大黒天(大国主)の使いのネズミであると思い込んでいる一般精神異常ニーズヘッグ。外見は明らかに巨大なドラゴンだが振舞いは完全にネズミ。火を吐いたりするけどネズミ。
    • ネズミなので一般的なネズミが食うものならなんでも食うが、「世界樹の根」判定されるものでないと腹を満たせない。財団に対してはそれなりに友好であるが、世界樹の根がないからという理由で収容には極めて消極的である。収容プロトコルの根幹は世界樹の根を財団の手が届く範囲内でどうにかして調達すること(未達成)。
  • かつてはニブルヘイムの片隅にある泉でユグドラシルの根を齧って暮らし、ラグナロクが終焉した暁には死者の群れを乗せて世界樹の外の世へと翼を広げた。その後の再就職口(?)を探していたところ、「根の国」の主宰が使いの動物を探しているとの報を耳にし、嬉々として赴く。しかし「根の国」という名前なのに齧るのに適切な根が無くて途方に暮れている。
    • 職を斡旋してくれたのはTTT社かもしれない。
    • TTTの通信教材のおかげで達者な日本語が喋れる。
  • 主人が草むらに射かけられた矢を拾いに行かされてその草むらごと焼かれそうになった時は、その巨体で主人を覆って火から守り、包囲者を逆に蹴散らして解決してみせた。いつの話だ。代わりに見繕った矢はヤドリギでできていたという。
    • 中はほらほら(ほらほらと声をかけて主人を自分の腹の下に匿う)、外はすぶすぶ(並み居る敵をぶすぶすと尻尾で刺し貫く)
  • 財団と初めて出くわしたのは出雲で開かれていた大黒天を奉ずる祭り。「大黒天の使者」として本人(※ドラゴン)が現れたものだから大騒ぎになり、財団によって追い立てられ、人里離れたところまで行ってからインタビューに応じる。
    • 神の使者なのは本当なので、財団の技術だけで収容房に封印するのは難しい。主人に呼ばれた時点でどこへでも逃げられてしまう。
    • 主人は大黒天なので、罷り間違ってシヴァ的側面が表出したら世界の終わりである。
  • 本人としては齧る根が欲しい。同僚のネズミたちは普通の木で満足できているが、自分もネズミなのに全然満足できない。サイズが違いすぎて残当。
    • 主人のツテで木の国(紀伊国)まで行ってみたけどやっぱり木がない。
  • その後なんやかんやあって
    • 財団内部での話し合いで穴蔵を斡旋したことにしてしまうと問題あるか…?この図体は隠すだけでも超常空間ないとキツそうだが
  • 続報が入ったのは中国地方の穴蔵の駐在員から。この精神異常ニーズヘッグは穴蔵内部に広がる超常空間の「樹」の隙間から無の領域に忍び込み、そこで「樹の根」を齧ることに成功したのでたいそう満足しているそうな。
    • SCP-184と整合性をつけられる理屈を探す
  • だがそんな場所が安定構造なわけがなく、「根」を齧られて「樹」が崩れてしまえばニーズヘッグもどうなるかわかったものじゃない。故に保護の難しさからKeter判定。
    • 穴蔵に身を置く他のGoI(特に青大将)からも何かコメントあるかなぁ?
    • 穴蔵の住民は積層構造の外縁にのみコミュニティを作っているらしい(内部は危険すぎるため)。でも内部に命が全くないわけでもあるまいし、豊穣の使いにしてニーズヘッグな彼からするとどんな形であれ財団が命の保全を軽視するのは好まないかもしれない。元はと言えば原因は彼自身にあるのだが。
  • 「穴蔵」そのものが「根の国」と重複する概念を有している。ではそこの主こと「大黒天(大国主)」とは…?
    • 穴蔵を「中つ国」と呼ぶ案も昔はあったらしいが…

追加のメモ

  • 世界樹の概念についてちゃんと定義しておこう
  • プロジェクト・カタスの中身に触れるべきか否か
  • ニードホッグ氏から見て財団の振る舞いが「悪」と取れる根拠
    • 財団の側から穴蔵を斡旋するのはリスク高すぎ
  • 大黒天(の一面であるマハーカーラ)の登場させ方の工夫
  • その他インタビューの臨場化

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