奇蹄病 (お団子 に-4)

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2017年 1月 日本超保健学会雑誌 第15号 第1巻


奇蹄病
〜超常バイオハザードの始まり〜

御国 春砂
国立超保健医療科学院超常感染症研究部


2009年に発生した新興感染症である奇蹄病は、現在の国内超常医療における重要な懸念の一つである超常感染症拡大の先駆けとなった。加えて、慢性奇蹄病患者が被害者あるいは加害者として関与する事件件数の増加に伴い、彼らが日常生活において抱えている制約とそれに対する社会の目線もまた、出現から現在に至るまで流動し続けている。本稿では、奇蹄病という疾患の病態生理、治療法、ならびにその歴史に関する整理を通し、読者が持つ奇蹄病に対する認知を確かなものにすることを目的とする。


1. 臨床像

1.1. ウイルスの特徴

奇蹄病ウイルス(正式名: 獣変調ウイルスTX-85957)はレトロウイルス科ガンマレトロウイルス属に分類される一本鎖RNAウイルスである。ウイルス直径は92nmで、エンベローブを有する球状の形態を取る。遺伝子治療用のウイルスベクターを元に作成された人工のウイルスである。RNAの一部に構造が不安定な配列を含んでおり、外界からの刺激がない状態でも容易に遺伝子変異を起こす。乾燥や紫外線に対し脆弱であり、このため2009年の出現から現在に至るまで、環境表面から単離された例は確認されていない。

奇蹄病ウイルスの宿主となる動物はヒトの構成要素を持つ生体、すなわち身体組織の一部あるいは全部がホモ・サピエンスである生物に限定されることが知られている。発見から現在まで、in vitroでの感染実験には成功していない。[1]in vivoでは、ヒト細胞への感染経路は原則的には直接感染であり、血液感染・性的感染・垂直感染により、皮膚のみの接触では感染しない。ただし、後述する急性期症状を呈する患者の上皮細胞から排出されるウイルスは飛沫感染能を有することが知られている。また、奇蹄病ウイルスに感受性を有する細胞は分裂中のものに限られ、従って分裂能を持たない脳などの臓器に感染することはないとされる。奇蹄病の罹患率は小児の方が成人に比して高率であるが、これは小児の細胞分裂が成人に比して活発であることが理由とされている。

分裂中のヒト細胞に侵入した奇蹄病ウイルスは、他のレトロウイルスと同様、逆転写酵素によって一本鎖RNAを二本鎖RNAへと逆転写し、これを宿主のDNA内に挿入する。このとき、奇蹄病ウイルスDNAが組み込まれたヒトDNAは転写産物として多量のDNA分解酵素を生成する。結果としてヒトDNAの構造は不安定化し、多数のヌクレオチドへと分けられるが、ウイルスに由来する遺伝子配列は保たれる。続いてウイルス遺伝子部分の転写が行われ、不特定のDNAポリメラーゼが合成されることで、分割されたヌクレオチドは再びDNAへとつなぎ合わされる。しかし、再構築後のDNA配列はヒトのそれではなく、他の生物種の体細胞における遺伝子構造の再現となる。これはウイルス遺伝子が組み込まれた細胞が持つ遺伝子全体で引き起こされ、最終的には染色体の本数をもヒトが持つ46本からは乖離することとなる。

細胞内遺伝子・染色体動物化のメカニズムは、奇蹄病ウイルス由来のDNA配列が持つ安定性の低さに由来するとされる。in vitroでのウイルス感染プロセスの詳細な観察には未だ成功例がないものの、患者から直接採取された奇蹄病感染細胞内の成分調査では、C末端近傍のアミノ酸配列の一部が三次元上での安定性を欠く構造をとる超次元タンパク質が同定されている。当該タンパク質は奇蹄病ウイルス由来の遺伝子からの転写における初期段階に合成され、生物学的形而上のアーカーシャ領域に存在する地球上の全脊椎動物の遺伝子データベースにアクセスするキーとしての役割を持つものとする説が有力視されているが、現在に至るまで仮説の域を出ていない。[2]

ウイルス活動の結果として生成される分裂後の感染細胞は、不特定の生物種と同一の遺伝子配列を取り、その生物種と同様のタンパク質を生成し、ゆくゆくはその生物種と同質の生体組織を発育させてゆく。この際、感染細胞から分泌されるホルモンによって元々のヒト組織は急速なオートファジーが惹起され、分解されたヒト体組織・骨格組織に含まれるアミノ酸や無機物は変異後の生物組織へと再利用される。加えて、健在である奇蹄病ウイルス遺伝子配列部分は、通常のウイルスと同様に奇蹄病ウイルスタンパク質の複製を行い、完成した複製ウイルスは非殺細胞的プロセスを経て排出される。複製ウイルスは宿主の細胞液中を通じて別の細胞へと感染していき、場合により血中に出て他の体組織へと移動していく。感染細胞が皮膚や気道などの体表にあればそのまま外界へと排出され、この場合のみ飛沫感染を起こす可能性がある。

動物化した感染細胞が安定化すると、奇蹄病ウイルスの排出はわずかとなる。遺伝子転写物により長期に亘る免疫寛容が確立され、宿主のキメラ状態は維持される。

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▲図1
A: ヒト鼻咽頭の細胞診で検出された奇蹄病ウイルス。
B: ウイルスRNA構造の一部。塩基対の結合が弱く切断を受けやすい。
C: アーカーシャアクセスキータンパク質の三次構造。C末端側は三次元上では観察できない。
D: ウイルス感染を受けたヒト側頭筋の病理標本。オートファジーによりヒト筋細胞が分解され生じた空隙内に、イエイヌの耳介軟骨が出現している。

1.2. 急性期症状

奇蹄病ウイルスの潜伏期は5〜7日間である。潜伏期間中は、軽度の発熱、鼻汁、関節痛などの非特異的なウイルス感染症状を呈する場合がある。また、潜伏〜発症初期には食欲増進が起こることが知られている。これは発症後の組織変化時に消費される多量のカロリーを前もって貯蓄させる目的があると考えられている。

発症から計測して168時間までが急性期に、それ以降は慢性期に分類される。奇蹄病急性期の最も特徴的な症状は、感染細胞が先述の特異的な変異を起こすことで、感染部位のヒト組織が他の生物種のそれへ置換されることである。多くの場合、変異先の動物種はいずれかの哺乳類であるが、その他の脊椎動物が選ばれる症例も認められている。ただし、無脊椎動物、および動物以外の生物種へと変異する例は未確認であり、あったとしても稀であるとされる。また、変異結果として生成される動物組織は本来の感染ヒト部位と相同な機能を有する部位となっており、具体例としてヒトの右下肢が変異する場合は、それと同じ部位にウマの右下肢が生成されることとなる。動物化は発症から6〜72時間の時期に最も顕著に進行する。

奇蹄病による動物化の範囲は症例によってまちまちであり、事前に予測する方法は知られていない。表皮を含む動物化は外部から容易に観察可能であるが、消化管・内分泌器官・血管などの体表から視認できない組織も動物化の対象となる。診断されている奇蹄病症例のうち60%は頭部・四肢末端・殿部(尾部)に集中した変異が起こる局所型、30%は全身の体表が変異する全身型、10%は体表から観察できない部位にのみ変異が起こる内臓型、と分類することが可能であるが、いずれも病態生理は共通する。

急性期の奇蹄病における死亡率は約3%であり、変異面積が大きいほどに死亡率は上昇する。直接的な死の原因としては主に以下が挙げられる。これらには奇蹄病以外の成因によって引き起こされるヒト動物化事象との共通性が多分に認められる。[3]

  • 動物化に伴うヒト組織分解・動物組織生成に消費されるカロリーが供給できず、ホメオスタシス維持が不能となる。
  • 気管や頚動脈などの生命維持に重要な器官が動物化し、変異中に器質的な機能不全となり死亡。
  • 動物化後に免疫寛容が成立せず、拒絶反応により重篤な自己免疫疾患を惹起。
  • 変異後の動物組織が人体に対し小型であり、血圧や筋収縮によって破壊され、結果として大規模な身体欠損が発生。
  • 変異後の動物組織が人体に対し大型であり、血液灌流量が不足したことによるショック死。

1.3. 慢性期症状

発症から168時間が経過すると、急性期に見られた動物化現象は進行を停止し、代謝は安定化する。ウイルスによってもたらされる長期の免疫寛容が確立されることにより、これ以降、変異を終えた患者の動物組織は当該の動物種と同様の生体機構を担うようになる。これをもって奇蹄病は慢性期に入ったものと見なされる。原則として変異後の体組織がヒト細胞に戻ることはなく、患者は生涯を動物化部位とともに過ごしてゆく。

慢性期の奇蹄病は、それ単体で患者の生命に関わる事例は非常に稀である。しかしながら、奇蹄病患者のQOLを損なう可能性の高い症状が2通り存在する。

1.変異後の動物化部位の活動がヒト体組織と齟齬を起こすことによる症状。例として、頭部にシカの角を生じた症例では、1年の特定時期に長期間の頭痛を生じることが知られている。これは本来のシカ角が生え変わる時期と同期しており、神経系が成立している奇蹄病患者シカ角は抜け落ちることがないために頭痛へと置き換わっているものと考えられている。

2.変異後の動物組織が分泌するホルモンによって生じる精神症状。これは患者が強いストレスに晒されることにより激化し、時には野生生物にも比類する破壊的な凶暴性を発露する場合が認められる。動物化組織が肉食獣となっている症例で精神症状が出現しやすいとする研究があるが、それらの患者が外部からのストレスを受けやすい環境にいた事例が多いことから、肉食獣の組織と凶暴性に真に相関があるのかは、未だ意見が分かれている。

誤解されやすいが、奇蹄病は細胞分裂を行わない組織には発病せず、脳をはじめとした中枢神経系には感染しない。従って、奇蹄病患者が精神発達遅滞や後天的知能低下を起こすことはない。ただし、垂直感染の予防が不十分であることにより生じる先天性奇蹄症候群においては、この限りではない。

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▲図2:
A: 30代男性。両側耳介の動物化を認める。耳介の生じる位置は側頭部〜頭頂部まで症例差が大きい。
B: 10代男性。右手第4・第5指がスイギュウの蹄へと置換されている。五指の一部あるいは全部が統合される症例は特にQOLへの影響が大きく、適切な装具の提供が望まれる。
C: 40代女性。左大腿から末梢側のウマ変異。運動器が左右非対称となる症例では転倒により難治性の骨折を生じやすく、早期より慎重なリハビリテーションが要求される。


2. 診断と治療

2.1. 診断

奇蹄病ウイルスは自然界に存在しない病原体であるため、感染の原因は人為的なものに限られる。非特異的なウイルス感染症状や、数日前からの食欲増進を主訴とする患者に対しては、性交歴・血液との接触歴・家族歴について問診し、慢性感染者からの接触感染ルートがないか確認する。確定診断は血中抗体の検出による。

急性期の奇蹄病と鑑別すべき肉体変異症候には、主に以下が挙げられる。

  • 変形性狼狂: 満月の夜間にしばしば発症する。発症中の鑑別には最も苦慮するが、奇蹄病と違い可逆的であるため、期間をおけば容易に判別できる。
  • 現実不全症候群: 行動歴について問診し、現実性低下領域への進入歴、現実改変者との接触歴の有無を確認する。 
  • 肉操作魔術の発現: 変異組織が動物個体の形質を呈しない場合に疑う。特に、表皮を含む変異にもかかわらず皮膚が形成されない場合は、強く疑う。
  • 神学的変異: 2015年のスペイン国民カワウソ化事件以降、症例が顕在化した。個人の発症の場合、問診で神格の怒りを買う経歴がなかったか聴取する。集団発症時は、発症以前に互いの接触歴のない発症者が多ければ疑う。

新規の奇蹄病患者を診断した場合、感染症法に基づき、直ちに最寄りの保健所に届け出なければならない。

2.2. 急性期治療

急性期の奇蹄病患者に対しては、変異を起こしている体組織の範囲を早期に同定すべきである。奇蹄病で生命の危機に瀕する可能性のある時期は大きく2つに分かれる。

呼吸器系や循環器系が変異の対象に含まれている場合、発症早期に急激なショックを起こして死亡する可能性が生じるため、速やかな循環動態の安定化が必要となる。酸素投与、気管挿管、場合により一時的な人工心肺の使用が救命に要求される場合があるため、これらの患者は早期に集中治療室を有する施設へ搬送すべきである。また、免疫寛容の不成立に伴う拒絶反応が最も顕在化しやすいのもこの時期であるので、バイタル計測と採血で炎症反応のモニタリングを行い、ステロイド全身投与や免疫抑制剤の使用の必要性を早期に判断すべきである。

一方、筋骨格系や表皮に限局する変異である場合、変異の終了まで無治療で経過観察が可能な場合が多くを占める。ただし、変異後の動物組織の体積がヒト組織に不釣り合いである場合、組織全体が脱落する危険があるため、この場合も高次医療施設への搬送が適当である。組織脱落、あるいは組織の過剰な肥大化による循環動態の不全が起こった場合、重大な外傷に準じた外科的なデブリドメント処置が必要となる場合がある。大量輸液および輸血、血液製剤の投与はこれらの症例の救命に対し有効性が示されている。

逆転写酵素阻害薬をはじめとする抗レトロウイルス薬は、潜伏期間中に投与を開始できれば発症を抑制できることが知られている。ただし、発症後の症例で動物化の進行自体を抑制する治療は、現在に至るまで確実なものはない。

2.3. 慢性期治療

慢性期の奇蹄病患者に対する決まった治療法はない。症状が安定化したあとの患者に対しては、原則として2ヶ月〜半年程度の周期で定期的なフォローアップを行う。

動物化部位を根本的に患者の身体から除くためには外科的処置が必須であるが、生命予後には寄与しない。筋骨格系の動物化部位がADL低下を招く場合、適切な形状の装具を作成し、処方することが有効である。[4]

消化器系、特に肝臓に変異を有する事例では、ヒトが常食する食材の一部が有害となる場合が存在するため、変異が表出する動物の食性に準拠した食事への移行が推奨される場合がある。ただし、食生活は患者のQOLに直接結びつく要素であるため、ヒト肝酵素製剤の内服を通してヒト食材に対する耐性を維持する方法も必要に応じて選択されるべきである。また、動物化部位の体積がヒト部位に対し巨大である場合、代謝の維持のために奇蹄病罹患以前と比して多量の食事カロリーが必要となるが、消化器がヒトのままである場合、カロリーの供給に足る摂食量が確保できない例がある。これらの症例は定期的な経静脈栄養を必要とする経過を辿ることが多く、経口での十分なカロリー補給を可能とする栄養補助食品の開発が現在も進行中である。[5]

慢性期で最も問題となるのはホルモンバランス変化による精神症状である。ひとたび凶暴化した場合、通常のヒトを遥かに上回る膂力や爪牙による自傷他害を起こすリスクが極めて高く、痛ましいことに、既に複数の事件が発生している。向精神病薬の効果は限定的であり、適切な予防薬の開発が依然進行中である。外科的手段による変異内分泌器官の摘出は根治手段になりうるが、手術後のホルモンバランスの変化が予測困難であるためハイリスクであり、推奨されない。奇蹄病患者の知能および精神活動は正常のヒトと全く同様であることから、症状が安定している患者に対する根拠のない隔離などの差別的な扱いは、行われるべきでない。[6]

このほか、動物化部位に毒腺が含まれている症例では、患者のヒト組織を毒から保護するために追加の抗毒血清投与を必要とする。

2.4. 予防

種々の超常感染症と比較した際の顕著な特性の一つとして、奇蹄病ウイルスの構造と生活環は、動物化事象に直接的に作用する根幹の遺伝子構造を除けば、全てにおいて主流医学・主流ウイルス学に基づいて説明されることが挙げられる。従って、奇蹄病ウイルスの由来となるレトロウイルスベクターのエンべローブを標的としたワクチンが、奇蹄病の予防を目的として使用可能である。

医療従事者など、他者の血液に触れる可能性のある職種に就く者は、ワクチンを接種することが推奨されている。また、万一ワクチン未接種の状態でウイルスに曝露した場合であっても、48時間以内であれば同一のワクチン投与により、発症予防が可能であるとされている。現在、生後1年の乳児に対する奇蹄病ワクチン接種の義務化の必要性に関する議論が盛んである。


3. 歴史

3.1. 奇蹄病事件

奇蹄病ウイルスの出現は、ヴェール政策終了以降に発生した最初の超常バイオハザード事件として広く周知されている。

2009年1月23日、神奈川県に存在した日本生類創研(当時)の研究施設の一つから、奇蹄病ウイルスの偶発的アウトブレイクが発生した。拡散経路は脱走した複数の実験動物とされており、ウイルスを保有していたヒト化キメラマウスおよびコウモリが少なくとも50匹以上目撃されている。それらは当初「ウマの脚や耳が生えたネズミ」として報道され、緊急駆除活動が行われたが全個体の捕殺には至らなかったようである。

ヒトの奇蹄病患者の第一号が報告されたのは、それから5日後の2009年1月28日である。神奈川県在住の13歳女児(当時)の両脚が、栗毛のウマのそれへと置換されたのが発見された。第一号症例における変異が奇蹄目動物の特徴を有していたことが、「奇蹄病」の命名由来である。この女児は幸いにして致命的な変異を起こすことはなかったが、その間にも患者は次々と発見されていき、同日夜までには感染者が100人を超え、死亡例も報告された。新種の超常感染症であることは衆目に明らかであり、神奈川県内は一夜にしてパニック状態となった。翌日には急性期症状による死者が100人を上回り、緊急対処事態が宣言された。

財団による神奈川県境閉鎖が行われたものの、逃げた実験動物たちは既に県外まで拡散した後であり、封鎖による感染抑制効果は限定的であった。犠牲者の中には変異部位が血圧に耐えられず破裂して多量の出血をきたした症例もあり、それらはバイオハザードの実例としてセンセーショナルに報道された。

財団日本支部、世界超保健機関極東支部、警視庁公安部特事課など、日本超常組織平和友好条約機構(JAGPATO)加盟団体が多数、事態の収束に奔走した。ウイルスの流出地が県内の日本生類創研の実験施設であると判明したのは2月に入ってからであり、同施設への突入捜査の結果、放棄された区画から「獣変調ウイルスTX-85957ワクチン」が発見された。日本生類創研製「ワクチン」の解析と安全試験が非常なスピードで終了したのち、超常製品を手掛ける多数の製薬会社がワクチンの複製を行い、奇蹄病の軽症例、神奈川県内在住者、および感染者と接触した県外の民衆に対し広域接種が実施された。結局、アウトブレイク全体における奇蹄病感染者は全国で6万人、病死者は1500人を数えた。[7]

3.2. 事件の原因

財団、世界オカルト連合極東支部、および警視庁による合同捜査は、日本生類創研が奇蹄病ウイルスを他企業からの依頼発注に応じて開発していたことを明らかとした。依頼主は国内の製薬企業の一つである海捌製薬で、レトロウイルスベクターを改変してヒトに動物化部位を作成する製品を娯楽目的として発注していたという。その企業は抗レトロウイルスワクチンの高効率な生産体制を確立していたことで知られていた。日本生類創研が以前から多数の漏洩問題を起こしていたことを根拠として、今回も注文製品の漏洩が起こることを見越し、先んじてワクチンを各地の医療施設に売りつけることを狙っていたとされる。結局、この企業の社長は財団に確保され、ワクチンの販売は頓挫し、ほどなく会社は倒産した。なお、実験施設からのアウトブレイクそのものに製薬会社が関与していたかは定かでない。[8]

なお、奇蹄病ウイルスの発端となった日本生類創研は、JAGPATO非認可の状態で病原体の漏洩を招いたことから、多額の賠償金を課せられ、最終的には国による事業認可取消処分を受けた。[9]その後、生物実験から距離をおいて医療機器を扱っていたグループは政府による援助を受け、「ニッソ医機」として再編された。一方、ヴェール消失以前から悪質な超常生物開発を続けていた勢力は、東京の地下に潜伏し非合法な活動を継続しているとされている。彼らが未押収の奇蹄病ウイルスを所持している可能性は否定できないため、現在でも新規のバイオテロに奇蹄病ウイルスが使用される危険性が残っており、警戒が必要とされている。

3.3. 事件後の奇蹄病

ワクチンの供給体制が整ってからは、現在に至るまで奇蹄病の飛沫感染は確認されていない。しかし接触感染は現在に至るまで散発しており、全国で1年あたり200〜300人程度の新規感染者が報告されている。ただし、潜伏期間中のウイルス陽性例に対する発症予防策が充実したことから、動物化の新規発症者は年間50名程度に抑えられている。

2010年代に入ると、慢性化した奇蹄病患者が精神に変調をきたしたことで発生した集団暴行・殺人事件が頻発し、大きな社会問題となった。多くの場合、加害者は学生であり、校内におけるいじめや家庭内の虐待によるストレスが凶暴化の引き金を引いたとみられている。[10]これらの事件は国民から奇蹄病患者に対する視線を厳しいものとした。また、奇蹄病事件そのものが「超常バイオハザード」のモデルケースとして認知されたことを受け、同様の経緯で生じる新規感染症が多数報告されるようになった。[11]これらの変動に対し、財団や世界超保健機関は日本国政府と共同して差別感情の緩和や精神症状の抑制手法の開発を手掛けており、事態の沈静化にあたっている。


参考文献


[1] 琳谷悠子, 他 「獣変調ウイルス TX-85957に関する初期調査報告」, 財団医療部門, 2009, Vol.208
[2] 今仁龍人, 他 「生物DNA記録領域としてのアーカーシャ」, 超常生物学, 2005, Vol.36
[3] 神鳥梅, 他 「ヒト科-非ヒト科合一オブジェクトへの包括的初期対応案」, 財団生物学, 1997, Vol.511
[4] 紅屋瓶蔵, 他 「人間型超常存在に対する医学的フォローアップのガイドライン(2016年度改訂版)」, 財団医療部門, 2016
[5] 春屋十三, 他 「『ニュートラシティ』の考え方」, 多種栄養学会, 2015, Vol.2
[6] 卯都木紫陽 「黄昏に抗う者 -奇蹄病と共生可能な社会-」, 信濃中央出版, 2016
[7] 日本超常組織平和友好条約機構, 「日本特異例報告-特異例504号『奇蹄病』」, 2009
[8] 日本生類創研独立調査委員会, 「獣変調ウイルスに関する日本生類創研と海捌製薬間の取引に係る調査報告書」, 2009
[9] 「生物工学事業の認可を取り消しました」, 厚生労働省プレスリリース, 2014
[10] 「峯川狂暴惨殺事件の真相 背景にはAFC差別問題」, 信濃中央新聞電子版, 2015.7.19更新
[11] シュバイツァー,K 他 「超常感染症疫学統計-極東区域(2015年度)」, 世界超保健機関, 2015



[下書きここまで]
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