SCP下書き「飛燕」
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フェイズ2の初期段階にあるSCP-XXXX-JP-2

アイテム番号: SCP-XXXX-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPの雌個体は収容サイト-264の低脅威度鳥類飼育ケージでそれぞれ個別に収容されます。オブジェクトに対しては1日2回給餌シュートによって飼料を与え、定期的にケージ内をDクラス職員によって清掃させてください。

SCP-XXXX-JPの雄個体は個体ごとに2m x 2m x 2mのタングステン製のコンテナに隔離した上で、収容サイト-264の高脅威度オブジェクト収容室に収容されます。給餌方法やコンテナ内の清掃方式については、雌個体のものに準拠します。

SCP-XXXX-JPは種の存続にあたって必要最低限の個体のみが飼育され、個体数が増加した場合は適宜オブジェクトを殺処分する必要があります。SCP-XXXX-JPの繁殖に際しては、事前にSCP-XXXX-JP研究チームと収容サイト-264管理官の間で協議を経る必要があります。

SCP-XXXX-JPの収容違反の防止およびそれに関する民間への情報統制は、機動部隊プサイ-31("白夜")および諜報部隊クシー-31("極夜")により行われます。活動内容の詳細については補遺XXXX-JP.4を参照してください。

説明: SCP-XXXX-JPはユーラシア大陸北部 北半球全域に分布するツバメ科 (Hirundinidae) の未知の生物です。全長は平均して約17cm、翼幅は約32cmであり、光沢のある黒色の羽毛を特徴とします。

SCP-XXXX-JPの雌個体は熱に対して異常な耐久性を有しており、少なくとも1000℃の高温下で生存することが可能です。解剖と実験の結果、雌個体の内部組織の熱に対する耐性は非異常性のツバメのそれと同程度であることが確認されているため、オブジェクトの異常性はその皮膚組織にあると考えられています。また、雌個体がこの異常性を獲得した要因としては、後述のプロセス-XXXX-JPにおける雄個体との接触が背景にある可能性が指摘されています。

SCP-XXXX-JPの雄個体は雌と同様熱に対する高い耐久性を有しています。雄個体の特筆すべき点は、プロセス-XXXX-JPと指定される繁殖時の一連の行動にあります。このプロセスはSCP-XXXX-JPの発情から雄個体と雌個体の接触、交尾の終了までを指しており、内容は以下の6段階のフェイズに大別することができます:

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フェイズ4のSCP-XXXX-JPの雄個体が放つ閃光
1984/03/23、シベリアでの収容作戦の実施に際して撮影された。

  • フェイズ1: SCP-XXXX-JPが発情期に入る。これまでの観測においてフェイズ1は全て夜間に開始しており、これは後述のフェイズ4においてより多くの雌個体を誘引するためであると考えられている。
  • フェイズ2: フェイズ1の開始直後から、雄個体は羽毛が黒色から徐々に橙赤色へと変化する。また、これに伴い雄個体の体温が上昇していることが確認されているが、このメカニズムは現状未解明であり、研究チームによる調査が進められている。
  • フェイズ3: フェイズ2の開始とほぼ同時に、雄個体は上空50~100mでの滞空を開始する。この状態は、雄個体が雌個体と交尾し全てのフェイズが完了するか、長時間の滞空による衰弱などにより雄個体が死亡するまで継続される。この行動もフェイズ1と同様、フェイズ4においてより多くの雌個体を誘引するためのものであると推測されている。
  • フェイズ4: フェイズ3の開始から2時間ほどで雄個体の体温は約500~600℃に達する。この時、SCP-XXXX-JP-2は約100,000lmの光を放ち始める。この光は視認者から「眩い」「太陽のよう」と形容されており、その明るさにより雌個体を誘引する効果があると推測されている。
  • フェイズ5: 雄個体の放つ光に誘引され、オブジェクトの下に雌個体が飛来する。その後、雄個体は雌個体と交尾を行う。
  • フェイズ6: フェイズ5の終了後、雄個体の体温は徐々に低下し、羽毛の色も通常時に戻り、滞空も終了する。これらを以てプロセス-XXXX-JPは完了したものとみなされる。

プロセス-XXXX-JPの完了後、SCP-XXXX-JPの番いは泥や枯草などで営巣します。その後、雌個体は5~8月の間に1~3個の卵を産み、雛は約1ヵ月間親鳥に育てられた後巣立ちします。

1984/03/22、現ロシア連邦シベリア連邦管区内の針葉樹林において突発的に山火事が発生したという報を受け、財団は調査のため機動部隊を派遣しました。同部隊は到着して間もなくSCP-XXXX-JPを発見し、5日間に渡る初期収容作戦の末、雌雄合わせて72体のSCP-XXXX-JPを確保しました。

補遺XXXX-JP.1: 1984/03/27から開始されたSCP-XXXX-JPの収容以降、ユーラシア大陸北部において継続的に実施されていた機動部隊プサイ-31によるオブジェクトの収容作戦の結果、同地域におけるSCP-XXXX-JPの未収容個体が減少傾向にあり、民間人との接触も4年前の2001/03/28以降確認されていないことが研究チームより報告されました。

野生個体の根絶に成功したとして、SCP-XXXX-JP研究チームは2004/04/03現在オブジェクトクラスのEuclidへの変更および収容プロトコルの改定を提言しています。提案は現在サイト管理官の承認待ちです。 補遺XXXX-JP.2を参照してください。

補遺XXXX-JP.2: 事案-XXXX-JP

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2005/05/19に民間人により撮影されたラスベガス市の夜景。この写真の撮影から3時間後、SCP-XXXX-JPの大規模な収容違反が発生した。

2005/05/19、アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス市郊外に総数不明のSCP-XXXX-JPが北北東方向より飛来する事案(以降"事案-XXXX-JP")が発生しました。即座に周辺の財団サイトへ収容違反が通知され、機動部隊プサイ-31が現地へ派遣されましたが、機動部隊の到着のおよそ12分前にオブジェクトはプロセス-XXXX-JPを開始しました。

研究チームの許可の下、機動部隊プサイ-31は殺傷性兵器を用いてSCP-XXXX-JPの鎮圧を行い、飛来から5時間3分後に全個体の終了を完了しました。この事案の結果として、民間・財団合わせて39名が死亡、221名が重軽傷を負い、大規模賭博施設を含む計7棟の建造物が半壊しました。財団は事後処理としてラスベガス市全域に記憶処理剤の散布を行い、報道機関への情報統制とカバーストーリー("多発的な自爆テロ")の流布を行いました。

特筆すべき点として、プロセス-XXXX-JPにおけるSCP-XXXX-JPの挙動が通常とは異なっていたことが確認されています。以下はそれらの行動の一例です:

  • 市街地の上空を円状に旋回する。
  • 上空から地面に急降下し衝突する。あるいは高層ビルを目掛けて飛び衝突する ── 特筆すべき点として、衝突死した個体は全て雌であったことが判明しています。

また、SCP-XXXX-JPの飛来に関しては、オブジェクトがユーラシア大陸最東端のデジニョフ岬から北アメリカ大陸アラスカ州に渡り、そこからカナダを経由してラスベガス市に到達した可能性が指摘されています。しかしながら、本来北半球の高緯度地域に生息していたSCP-XXXX-JPが北アメリカ大陸中部にまで飛来した理由、そしてそこで繁殖活動を行った背景は現状不明であり、上記の特異的な行動も含め、現在原因の調査が進められています。

補遺XXXX-JP.3: SCP-XXXX-JP研究チームからの定例報告書

以下は、2005/06/02~2006/02/22までの間SCP-XXXX-JP研究チームにより報告されていた研究記録の抜粋です。

宛先: 収容サイト-264

差出人: SCP-XXXX-JP研究チーム

件名: SCP-XXXX-JP定例研究報告書


少なくとも20世紀の初頭までは、SCP-XXXX-JPと我々人類が接触することは極めて稀なケースであったと考えられています。調査の結果、SCP-XXXX-JPは同地域において語り継がれてきた童謡の中でЖар-птицаジャール・プチーツァ、即ち「火の鳥」として示唆されていましたが、それ以外の文献での言及は発見できませんでした。また、19世紀までユーラシア大陸北部で活動していたどの超常組織もSCP-XXXX-JPの存在は認知しておらず、前述の童謡については単なる迷信と看做し取り合わなかったことが確認されています。これについては、SCP-XXXX-JPが高緯度地域の森林や山岳地帯といった特殊かつ過酷な環境にのみ生息していたため、20世紀に文明が急速に発達するまで人類がその生息域に近づくことができなかったという点が要因として挙げられています。

しかしながら、この関係は20世紀中盤に崩壊したものと考えられています。ユーラシア大陸北部における工業開発や石油・天然ガスの産出、そしてそれに従事する人々の定住などにより、我々人類がSCP-XXXX-JPと接触する可能性は急激に増加しました。1984/03/23におけるSCP-XXXX-JPの発見も、切っ掛けとなったのは民間人による当局への通報であったことが判明しています。その後の活動により、我々は"ユーラシア大陸北部における"SCP-XXXX-JPの封じ込めには成功していましたが、一部の個体は北アメリカ大陸へと渡りそこで繁殖していたと考えられています。


北アメリカ大陸へと渡ったSCP-XXXX-JPは、その後ネバダ州ラスベガス市に辿り着き事案-XXXX-JPを引き起こすこととなります。この事案においてSCP-XXXX-JP、特にその雌個体が通常とは異なる行動をとっていたことが確認されていましたが、数か月に渡る調査の末、我々はある1つの答えにたどり着きました。

この世界には数多くの公害が存在していますが、その中の一つに「光害」と呼ばれるものがあります。都市が夜間も過剰に光を生み出すことで、夜空が明るくなり、天体観測に悪影響が生じ、生態系に悪影響を及ぼすというものです ── 例えば街灯の近くに植えられた街路樹は周りよりも紅葉するのが遅れ、リゾート地の砂浜で生まれた子ウミガメは月明りが照らす水面ではなく、繁華街の明かりへと向かっていきます。

我々研究チームは、SCP-XXXX-JPがこの光害の影響下にあるものと推測しています。既に知られているように、SCP-XXXX-JPの繁殖のトリガーは雄が放つ眩い閃光です。暗闇の中で煌々と輝くその光に雌は魅せられ、そして子孫を繋いでいく。それがSCP-XXXX-JPの本来のライフサイクルでした。しかしながら、時代が進み文明が進歩し人類がその裾野を広げるうちに、我々の居住地と彼らの生息域は重なっていきました。そして最終的に、SCP-XXXX-JPは暗闇の中で煌々と輝くもう1つの光 ── すなわち我々の住む大都市を見つけたものと思われます。


以上から、事案-XXXX-JPに代表されるSCP-XXXX-JPの大規模な収容違反は、大都市の放つ強力な光に誘引された雌個体、そして自身の子孫を遺さんとしてその後を追う雄個体により引き起こされるものと推察されます。SCP-XXXX-JPが市街地の上空を旋回する行動や、地面や高層建築物に衝突する現象も、雌個体が都市の光を雄個体の放つ閃光と誤認したために起こった事例であると説明できます。

そして、我々が目下のところ対処すべき課題は、主要都市における光害の発生を防止し、SCP-XXXX-JPの大規模な収容違反とそれに伴うプロセス-XXXX-JPの発生を阻止することです。事案-XXXX-JPは都市の郊外で発生したため被害は最小限に抑えることができましたが、より人口が密集しかつ光害の発生している北半球の都市で同様の事案が発生した場合、収容違反がLK-クラス:"捲くられたヴェール"シナリオへと発展し、正常性維持機関やアノマリーの存在が現代社会に露呈する可能性が最悪の事態として考えられます。

想定されるK-クラスシナリオの阻止のため、我々研究チームはSCP-XXXX-JPへの対抗策について協議を行う事を提案します。

上記の提案を受け、収容サイト-264管理官はSCP-XXXX-JP研究チームとの協議を行い、プロトコル・"ライトポリューション"と呼称されるSCP-XXXX-JPに対しての特別対抗措置を策定・施行しました。詳細は補遺XXXX-JP.4を参照してください。

補遺XXXX-JP.4: プロトコル・"ライトポリューション"概要

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フランス共和国パリの衛星写真。プロトコル・"ライトポリューション"の対象都市の1つである。

プロトコル・"ライトポリューション"はSCP-XXXX-JPの市街地への定着の阻止、プロセス-XXXX-JPの開始による大規模な収容違反の鎮圧、北半球に生息する未収容個体の終了のため、2006/07/12に策定されました。

諜報部隊クシー-31("極夜")は世界各国の主要都市における光害の現状を監視し、将来的にSCP-XXXX-JPの収容違反が発生する可能性のある都市をマークしなければなりません。2018/09/18現在、コロンビア特別区1、ロンドン、東京、パリを含む全███都市において潜在的な収容違反の可能性が示唆されており、これらの都市は諜報部隊による光害削減措置の対象となります。諜報部隊クシー-31による都市のマーク後、政府職員に偽装された財団のフィールドエージェントは光源規制法案の可決などを通して、その都市における光害の削減を試みます。

主要都市におけるSCP-XXXX-JPの収容違反が確認された場合、近隣の財団サイトは駐留している機動部隊を現地に派遣し、プロセス-XXXX-JPの発生の有無に関わらずSCP-XXXX-JPを終了してください。オブジェクトの終了後は記憶処理剤を広域に渡って散布し、「大規模災害」「テロ行為」等のカバーストーリーが状況に合わせ適宜流布されます。

機動部隊プサイ-31("白夜")は北半球に生息するSCP-XXXX-JP個体の終了を任務としています。現在機動部隊プサイ‐31はカナダでの活動を主としており、現状のペースで活動を維持すれば最短で2035年までには北アメリカ大陸からのSCP-XXXX-JPの排除が完了すると見積もられています。

補遺XXXX-JP.5: 2024/07/08、財団による光害削減と野生個体の終了、および昨今の世界各国における環境保全活動の高まりにより、SCP-XXXX-JPの収容違反事例が3年前から減少傾向にあることが確認されました。しかしながら、現在も多くの後進国・発展途上国や一部の先進国は光害の削減に対して非積極的であり、主要都市における大規模収容違反の可能性は依然として潜在的に存在しているものと考えられています。


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