アイテム番号: SCP-017-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-017-JPはサイト-45-Aの専用植物型オブジェクト収容室に収容されています。当該収容室には標準植物型オブジェクト収容室の設備のほか、小型焼却炉3基が付近に配置されています。
収容室内のSCP-017-JP-1は、Dクラス職員により定期的に除草されます。除草後オブジェクトは焼却炉により処分されます。
SCP-017-JP-2の発芽が確認され次第、収容室には人員が配備され、出現したSCP-017-JP-3の確保、および焼却炉での終了を行います。
説明: SCP-017-JPはネバダ州ラスベガスの森林を起源とする、異常実体群の総称です。
SCP-017-JP-1は外見上は単子葉類の、植物型の実体です。その外見にも関わらずSCP-017-JP-1の遺伝子は、アカシカ (Cervus elaphus) との一致を示しています。
未特定の方法でSCP-017-JP-1は、ごく少量の水分と栄養分のみでの生育が可能です。SCP-017-JP-1は地下茎から成長しており、栄養分を利用した茎の成長ののち、そこから地上に向かって新たなSCP-017-JP-1個体が成長します。SCP-017-JP-1は地下茎からの発芽から短時間で、成形に相当する段階となります。これらの特性上、結果的にこの葉による"草原"が形成されることとなります。
SCP-017-JP-2は地下茎から低確率で発芽する、双子葉類の植物の葉で構成された水滴型のオブジェクトです。発芽直後は高さ100mm、幅50mmですが、その後急速に成長し、最終的には高さ2m、幅1mとなります。SCP-017-JP-2は未特定の方法で高い耐久性を有しており、サンプルの回収には成功していません。
SCP-017-JP-2の発芽から1~5時間後、オブジェクトに亀裂が入ったのち、SCP-017-JP-3と指定されるヒト型実体が内部から出現します。その後SCP-017-JP-2は即座に霧散するため、サンプルの回収には成功していません。
SCP-017-JP-3群はどの個体も、20代後半~30代前半の非人類言語話者の成人男性の姿をとり、遺伝子はSCP-017-JP-1とほぼ一致しています。SCP-017-JP-3群の平均寿命は1~2週間ですが、死亡直後に身体は霧散します。
誕生直後からオブジェクトは知性・自我を得ていますが、知能はヒトの幼児程度であり、インタビューは実施されたものの十分な情報は得られませんでした。ですがSCP-017-JP-3群の全個体が、自身の名前として「Nathan(ネイサン)」を用いることは判明しています。
序文-017-JP
SCP-017-JP 文書
以下の文書群は、SCP-017-JPに関連した財団の公的文書の一覧です。これらの文書群は主に、SCP-2746-1内部から回収された資料で構成されています。一部文書は方言A-12(「旧き天使」)で記述されていたものを、後に財団が翻訳したものです。
多くの文書の閲覧のためには、レベル2/2746クリアランスもしくはレベル2/017-JPクリアランスが必要であり、一部文書は何れかのクリアランスを所持したレベル3以上の職員のみが閲覧できます。
補遺-017-JP-1
SCP-017-JP-3群が方言A-12を用いることから、財団はSCP-017-JPとSCP-2746-1内文明("████")との関連性を疑いました。後日、機動部隊ショー-15("山歩き")がサイト-45-Aより派遣され、数日間の内部調査が実施されることとなりました。
補遺-017-JP-2
前述の探索の結果、空間内部の首都と推測される地域の家屋より、SCP-017-JPに関連すると推測される文書が回収されました。文書の内容は方言A-12で黒色のインクで記述されたものであり、これらは日記あるいは記録であると推測されています。その内容から、文書は文明内においての"内戦"の前後に執筆されたものと断定されました。
発見された家屋には、かつて「Nathan」という名の人物が居住していたとされており、屋内からはルーン文字のシンボル・文字列や、SCP-017-JP-1と同種の植物が発見されています。文書群や家屋内からは、アカシカの遺伝子が検出されています。
文書の内容は、文書-017-JP-1にて閲覧できます。これは方言A-12からの翻訳の後、財団による抜粋が実施されたものです。
文書-017-JP-1
「怒り」が結成され、造物主への反逆を示してから1週間ほどが経った。「怒り」の今後の活動には注目すべきものがある。
造物主からの指令は、例え全ての主であるとはいえ聞き入れられるものではなかった…こうして反旗が上がるのも、ある意味必然といえるのかもしれない。
私が栄誉者として貢献できない故郷、共喰いの横行する故郷を、私は望んでいない。彼らはある意味、████の希望の光といえるだろう。
街に貼られた「怒り」についての日報を見て、私は驚愕した。「怒り」は製作者と学徒の指揮によるものであり、彼らのうちの1人は製作者の長であるというのだ。…「怒り」の強力な指導力には疑問を持つものが多かったが、その疑問は今日解消された。
彼らが指導しているともなれば、自然と人は集まるだろう。彼らなら、もしかしたら造物主を説得することができるかもしれない。
再び私が████へ貢献できると思うと、胸が高まる。全盛期と同じ製作力ができるよう、鍛錬を積む必要がありそうだ。
3週間が経った。「怒り」の動き・規模が徐々に大きくなってきている。
巷では「怒り」を支持する声が大きくなっている。先日は私の弟子たち、友人らまでも「怒り」へ加わった。どうやら既に████の全国民を巻き込む運動になっているようだ。「怒り」の総数は計り知れない。
「怒り」の数が増えれば、それは悪政の改善へ繋がるだろう。
ただ、私としてはこの規模の増大が惨事に繋がらないことを願いたい。…流石に彼らも、人々の人格が十人十色であることは周知しているだろうが…。
恥ずかしい事だが、私は悪政の改善を望んでいるにも関わらず、「怒り」への参加を躊躇っている。弟子たちは失望するだろうか?
雲行きが怪しくなっている。
結成から早1ヶ月、遂に無所属は私とあと数人というところにまでなった。今や「怒り」の人数は国民の過半数となっている。
権力の増大と少数による指導は、いずれ混乱を巻き起こすだろう…今や、数えきれないほどの数の████国民は、たった3人の手中にある。彼が製作者の長とて、彼女が長の相談役とて、彼女が国家一の公神官とて、私は心配せざるを得ない。
人伝に聞いた話によると、████████ ███で再び共喰いがあったらしい。共喰いは「怒り」結成以前よりも、頻繁に起こるようになっている。
不穏な動きは、時を経るにつれて増加している。歌う事、踊る事、話す事…████での娯楽のそれらは、最早ここではすることが叶わなくなった。
「怒り」が正しい存在なのか、自分でも最早分からなくなっている。
昨夜、「怒り」が武力による造物主への抵抗を開始した。ほぼ全ての国民で構成された「怒り」らは、首都で暴動を起こしていた…。今朝は地方で暴動を起こした。
造物主が昼頃に令を発した。内容は「怒り」の討伐だった。明日にも、処刑は開始されるかもしれない。
言論で抵抗すれば、こうはならなかった筈だった。 悪は今の悪政だ。彼らを責めても意味はない
今朝、首都で大きな戦いがあった。「怒り」らが磔にされている。同時に民間人も巻き添えになっている。
地方へ逃げる準備をしなければならない。
補遺-017-JP-3
上述の文書の内容を踏まえ、財団は機動部隊ショー-15による空間内部での広域探索を実施しました。探索開始から2週間後、機動部隊は首都からおよそ20km離れた石山に、SCP-017-JP関連オブジェクトの痕跡を示す家屋を発見しました。
家屋の内部には1冊の本のみが存在し、内容は方言A-12で記述されています。前述の家屋と同様、文書群や家屋内からはアカシカの遺伝子が検出されています。
その地形にも関わらず、家屋の周辺には小規模に草原が広がっており、それらはSCP-017-JP-1との一致を示しました。草原からは枯死したSCP-017-JP-2群に似た外見の植物群が発見されたほか、ジャージー種のウシ (Bos taurus)、ゴールデン・レトリバー種のイヌ (Canis lupus familiaris)、ヒグマ (Ursus arctos)、そしてサラブレッド種のウマ (Equus caballus) の白骨死体が、オブジェクト群が植わった状態で発見されています。
文書の内容は、文書-017-JP-2にて閲覧できます。これは方言A-12からの翻訳の後、財団による抜粋が実施されたものです。
文書-017-JP-2
目的地には到着したが、共喰いを避けるためとはいえ荒野へ移住するというのは苦い選択だった。ここは一先ず、木を確保するべきだ。
安定した生活を送れる場所が欲しい。住居…小屋が必要だ。
ひとまず家屋の設営と、植物の生産には成功した。少なくとも衣食住に困ることは無い。
首都の現状についての情報は、入手できない状態だ。最早首都へ帰る予定はないが、「怒り」の現状について少しは把握しておきたい。
それと、共喰いの現状も。
朝起きた時、近くの森林に牛が転がっているのを見つけた。体が食い千切られ滅茶滅茶にされている…再生も追いついていない。
結局私は彼を埋葬した。肉は採っていない。共喰いをする訳にはいかない。
昨日の牛が気掛かりで仕方がない。この場所に共喰いがいるとは思わなかった。明日明後日の移住も考慮すべきだ。
彼らにとって、最早場所は関係ないのだろうか。
近くを犬が歩いている。体が血で塗れている。
(以降数ページが破損しているか、血液で濡れている。検査の結果血液は、アカシカとイヌのものであることが判明した。)
昨日の犬はMarxだろうか。兎に角、植物を使えるだけの力があったことは奇跡としか思えない。私は彼に喰われずには済んだ。…いや、尾を少し齧られたか。再生は完了している。
記録は血で濡れたが、辛うじて全破損は回避した。
当面の問題は共喰いと、Marxの死体の処分だ。死体を喰うわけにもいかないが、穴を掘るほど力が余っている訳ではない。
奴を放っておく訳にはいかない。他の共喰いが嗅ぎつくと、非常にまずい。
一夜考え通した結果、最終的にMarxは製作に用いることとした。
今日、小屋の周りに生やした草をMarxにまで広がらせた。Marxは完全に息絶えていたが、時折痙攣しているように見えた。
大柄の犬1匹分の栄養があれば、果実ぐらいは実るだろうか。一先ずは、経過観察だ。
Marxの体から蕾のようなものが生えている…栽培が必要なのか、成長に時間がかかるのか。…兎に角雲行きが怪しい。
Marxを完全に処分できたのは、不幸中の幸いか。
進展だ。それも想定外の。
昼頃に蕾が急に成長した。自分の倍以上はある大きさだ。
観察を継続する。
蕾に裂け目が出来た。
移住から2週間が経過。心がようやく落ち着いた。蕾からは、自分と全く同じ見た目の鹿が生まれた。知能はみられない。ただ自分の名前としてNathanを用いている。そこが非常に不快で、平常になるまで1週間ほど掛かってしまった。
何が起きている?
果実こそは実らず当初の予定とは異なったが、ひとまず製作には成功したといったところか。製作と、詠唱に費やした力と時間に釣り合う分の見返りが得られることを願いたい。
Marxにはまだ、蕾がいくつかある。私が更に増えるとなると…。精神を平常に保てるか、気掛かりである。
経過観察の中で、蕾から生まれた鹿は私の命令に従う事が分かった。この力を何かに有効活用できないだろうか。
Samが私の家に入ってきた。予想外の出来事だった。「怒り」への磔刑から、彼は生き延びていたのだ。
だが私が彼へ「怒り」についての質問をした時、彼は急に私の右脚に噛み付いてきた。彼は共喰いだった。栄誉者としての、私の旧友としての彼は残っていなかった。
私は彼を止む無く殺した。遺体は埋葬した。
Samの遺品から████の日報を見つけた。「怒り」についての日報だった。そこには彼らの、親造物主派に対する行いが記されていた。
共喰いも「怒り」も…最早かつての国民としての姿を失っている。████がかつての姿を取り戻すことなどできるのか?
少なくとも、それができる者はまだ1人もいない。
優先すべきは自身の身の安全ではなかった。
████の立て直し――復興ができるかもしれない。私の分身たるあの鹿達なら可能かもしれない。自身の力を有効的に活用する事ができるかもしれない。
命令さえすれば、彼らは忠実に働いてくれる。我ながら良案だ。
能力のお陰で復興に必要な材料は直ぐに揃った。
最後に必要な材料は、能力成功の確実性だ。
今日、近くを通りかかった馬を取り押さえた。彼が「怒り」であることを知った後、殺害し草を広げた。
Samの身体から、まだ小さいが蕾も生えている。
早朝、Samと馬から鹿が生まれた。健康状態は良好。完璧といったところか。
製作に費やした労力は、どうやら実を結んでくれたらしい。そしてあの蕾は、牛に偶然生えたものではなかった。
これでやっと、████を立て直す事ができる。これでやっと、これからに光が見えた。媒体は幾らでも手に入る。首都に行きさえば、そこら中にいる。
明日にでも、首都へ出向こう。造物主との話は、後につければいい。
(以降のページは白紙である。)
付記: 懲戒命令-017-JP-501は方言A-12で記述された文書であり、財団による調査中に空間内の所蔵庫から回収されました。
懲戒命令-017-JP-501
遺憾と悲哀と共に
████における学徒らへの振る舞いを踏まえ、栄誉者Nathanへの刑罰を執行します。
Nathanは、道徳と造物主・████への忠誠心を持つ人物で、栄誉者の中でも随一の貢献意欲を持っていました。彼は、彼のその植物の創生術・操術を用い████に貢献し、また内戦に加わることのなかった数少ない栄誉者の一人でした。
彼への罰は、我々全ての損失になります。
内戦の最中、彼は████の復興を考案しており、そのための方法を模索していました。ですが彼は、████の復興を名目として████の激怒に属する十数の学徒の殺害を行い、そして彼らを自身の一部とすることで利用しました。冒涜者らへの行動とはいえその手法は残虐なものであり、その点を考慮し彼は後に捕縛・刑罰が科せられました。
以下の命令は、永久の磔刑と生き埋めに加えて、Nathanの罰のために命じられています。
- 創生術と操術の使用を禁ずるため、Nathanの四肢は再生が不可になるまで潰されます。
- Nathanが創生術の使用に成功した場合に備え、彼の全身は詠唱により常に炎で燃やされることとなります。この炎は、自身を傷めることによる自戒を目的ともしています。
- 磔刑に処されたNathanは、磔ごと████から追放されます。
- Nathanが激怒らの命を用いて制作した蕾は、如何なる手段――打撃、燃焼、詠唱等――を持ってしても朽ちることはありませんでした。これを考慮し蕾は、Nathanとは全く別の場所へ追放されます。この際、Nathanと蕾の再接触が起こり得ないよう注意しなければなりません。
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