SCP-XXXX-JP - 宙の灯台を

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NAVSTAR-54と同型のナヴスター衛星(ブロックIIR)

アイテム番号: SCP-2621-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-2621-JPは現象であり、その発生母体であるGPSそのものを収容することは、現代社会に対しての影響が大きすぎるため見送られています。SCP-2621-JPの異常性発現を抑制するため、財団およびGOCは対異常存在業務において、GPSを民生用と同等の性能のまま使用しなければなりません。偶発的なSCP-2621-JPの異常性発現を予防・感知するため、GPSの実運用を担当するアメリカ空軍第50宇宙航空団には、財団とGOCから常時複数名の監視要員が派遣されています。

また、SCP-2621-JPが発生していることを隠匿するため、暗号化が施されたのみの一切の新機能を持たない信号コードが「次世代軍用コード」としてGPSに実装されており、「GPSにはいまだ非公開の機能が存在している」という偽情報を一般社会に定着させています。

説明: SCP-2621-JPは、アメリカ合衆国が運用する全地球測位システム(GPS)全体で生じている異常な障害です。SCP-2621-JPの異常性の発現形態は様々ですが、いずれもGPSのあらゆる機能が民間に向けて無制限かつ統制不能な形で常に解放される点は一致しています。

GPSは用途・使用者の異なる複数の測位用電波信号コードを擁していますが、その性質上、SCP-2621-JPが生じるのは民生用の「C/Aコード」に限られています。2020年現在までに確認された事例では、いずれも軍事目的などでC/Aコードにかけられた制限の無効化や、他の信号コードに秘密裏に実装された機能がC/Aコードにそのまま反映される形で発現しており、本来は機器の構造的に生じ得ない現象を伴う事例も記録されています。SCP-2621-JPの具体的なメカニズムなどは未解明です。なお、GPS以外の衛星測位システムにおいては、SCP-2621-JPの発生は確認されていません。

経緯と背景: SCP-2621-JPの異常性発現が初めて観測されたのは2004年3月、GPSの衛星コンステレーションを構成するナヴスター衛星(GPS衛星)「NAVSTAR-54」が、軌道に投入された直後と判断されています。同時期に[編集済]での対テロ作戦行動を支援すべく米軍によって一時的・局所的な精度劣化措置が施されていたC/Aコードの精度が、運用者の制御を離れて米軍用の「Pコード」と同レベルまで回復する形で観測されており、当時は単なる非異常性のマシントラブルと判断されました。その後も█回に渡って同種のトラブルが発生しましたが、財団を含む正常性維持機関の調査対象にはなりませんでした。

財団がSCP-2621-JPの異常性を認知したのは、2007年に財団・GOCが共同で使用する正常性維持機関用の秘匿信号コード「Aコード」に対して生じた、深刻な機能不全の原因としてでした。

Aコードは、軍用に限定された航法システムとして1963年に米空軍内でGPSの概念が提唱された直後から、ボウ委員会を介して秘密裏に実装が要求されていた「裏コード」です。当初は予備信号コードとされていたC/Aコードの転用が計画され、GPSの開発グループへ「より高レベルの軍用秘匿コード」と偽装しつつ設計変更が要請されましたが、C/Aコードの用途変更には開発グループから強固な反論と対案が提示され、最終的に新たな信号コードを設ける形になりました。なお、これは開発グループがC/Aコードの将来的な民生用途への転用を見越していたためであることが、1983年の民間へのGPSの限定的解放の後に判明しています。

運用開始の時点では、Aコードは[編集済]によるより厳重な暗号化と信号そのものの隠匿化を除き、基本的にはPコードと同様の仕様でしたが、2007年に革新的な「ベースライン3」へのアップグレードが行われました。これは対異常存在業務に特化した性能向上策であり、5次元以上の余剰次元域でも伝播する重力子の性質を補助的に利用した、[編集済]による新式の測位手法によって、異常性の影響下に置かれた領域においても精度の高い位置情報の提供を可能とするものでした。Aコードおよびベースライン3の技術的詳細については関連資料2621-JP-02を参照してください。

財団外宇宙支部の軌道機動部隊によって、全ナヴスター衛星に対するベースライン3対応化改修が秘密裏に行われた直後、C/Aコードがベースライン3のAコードと同等の機能を発揮するようになりました。結果、財団とGOCが事態を把握しAコードが緊急停波されるまでの41分の間、「外部から観測される面積と内部の面積が一致しない」などといった空間異常を抱える異常領域の測地情報がカーナビゲーション・システムなどの民生用GPS機器上に出現しました。これは、SCP-████-██および未解明領域██ヶ所、未知の異常領域2ヶ所において興味本意による一般人の侵入事案を生起させ、エアロゾル化された記憶処理剤の広域散布事案█件を伴う深刻な機密漏洩をもたらすことになりました。

対応化がなされていないC/Aコードでベースライン3のAコードと同様の測位を行うことは構造的には不可能なはずであり、このインシデントは明確な超常現象事例と認識されました。これを受けて財団とGOCが共同で行った調査の結果、過去にPコードで発生した異常性発現事案が再発見され、SCP-2621-JPと認定されました。

調査結果を元にSCP-2621-JPの異常性の発生源と判断されたNAVSTAR-54に対し、外宇宙支部のステルス宇宙機による回収、および同型の代替機の軌道投入が秘密裏に行われました。しかし、SCP-2621-JPの異常性発現はNAVSTAR-54が取り除かれた後も依然として確認され続けており、回収後に行われたNAVSTAR-54自体に対する分解調査でも異常性およびその痕跡は確認されなかったため、NAVSTAR-54はあくまで異常性発生のトリガーに過ぎず、現在の異常性自体はGPS衛星ネットワーク全体から発しているものと推測されています。

SCP-2621-JPはGPS衛星ネットワークそのものを発生母体としているため、これを排除することによる現代社会への影響は許容不可能な域に達すると判断され、収容および破壊は見送られました。一方、SCP-2621-JPの異常性が解消されない限り、対異常存在業務の支援を目的としたAコードの性能向上がLV-Zero「捲られたヴェール」シナリオに直結しうることは明白であり、一時的なPコードの借用を経て、Aコードの運用は性能をC/Aコードと同程度までダウングレードした上で再開されました。これにより、現地スタッフから「異常領域内の探査に用いるにはGPSの性能・信頼性が不十分である」旨の報告が恒常的に寄せられていますが、SCP-2621-JPの異常性を無効化あるいは回避する手段は現時点では発見されておらず、有効な対応策は施行されていません。

なお、米国政府はC/Aコードの精度劣化措置を全面的に取り止めることでSCP-2621-JPの収容に協力しており、2018年に運用が開始された「ブロックIII」シリーズのナヴスター衛星では、精度劣化機能そのものが撤廃されています。

補遺2621-JP-01: 2020年現在、GPSに匹敵する全地球規模の衛星測位システムとして中華人民共和国が運用を開始した北斗衛星導航系統に対し、GPSのAコードと同様の秘匿コードの実装が検討されています。これは、SCP-2621-JPの影響下から脱せるとともに、中国当局による北斗衛星導航系統の運用体制が、機密下での運用により適した形であると判断されたためです。財団・GOCと中国政府の間で交渉が重ねられていますが、中国側が求める対価について折り合いがつかず、交渉は難航しています。

補遺2621-JP-02: NAVSTAR-54の設計・機能は、同型機である他の「ブロックIIR」シリーズのナヴスター衛星と同様のものですが、機能に関係しない部分で一点のみ他の同型衛星と異なる箇所が存在します。

NAVSTAR-54の側面には、提唱者であるブラッドフォード・パーキンソン教授とともに、米空軍でGPSの開発に尽力したイワン・A・ゲッティング博士を記念したプレートが取り付けられています。ゲッティング博士はNAVSTAR-54打ち上げ前の2003年10月11日に死亡しており、プレートおよびゲッティング博士がSCP-2621-JPの発現に関係しているかは不明です。プレートには、生前のゲッティング博士がGPSの民間での普及を望み、好んで用いた以下のフレーズが刻まれています。

"Lighthouses in the Sky, Serving All Mankind"
そらの灯台を、あまねく人々に




注: 以下は投稿時にはディスカッションに書き込みます)

拙作tale「GPSの異常領域向け機能 民間への解放へ」は本作を一部補完する内容となっています。併せてご一読いただければ幸いです。

作中で言及させていただいたパーキンソン教授ゲッティング博士は実在の人物であり(リンクはどちらも英語版Wikipediaに飛びます)、NAVSTAR-54のプレートの逸話も史実に基づきます。

なお、軍用信号コードがPコードからYコードへ更新されていることや、PコードとC/Aコードの間にはそもそもチップレートの差=最初からの測地精度の差が存在することなど、記事中で触れると説明が冗長になると判断して、意図的に言及を割愛したGPSの仕様があることをお断りさせていただきます。

ついでに、特別収容プロトコル内で言及した「次世代軍用コード」は現実におけるMコードに相当するものですが、これがナヴスター衛星に実装されたのは2005年のことであり、記事中の描写とは年代の齟齬が生じることも白状しておきます。

画像は以下よりお借りしたものです。

提供元: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:GPS-IIR.jpg
作者: US Government
画像のライセンス: パブリックドメイン


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