SCP-XXX-JP - 時の迷宮

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid Neutralized

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは本格的な収容体制確立の前に外的要因によって破壊されているため、異常性に対する特別な封じ込め方法は策定されていません。SCP-XXX-JP-Bなどが、機能を維持しているSCP-XXX-JPのサブシステムに対して遠隔手段によるアクセスを試みる可能性を考慮して、暫定的な対応として行われていた電波暗室内での収容は継続されます。

SCP-XXX-JP-AおよびBは現在未収容であり、独立したPoIとしての登録が検討されています。

説明: 以下の説明は本格的な解析が行われる以前の予備調査のみに基づくものであり、事実とは異なる可能性が存在することに留意してください。なお、インシデントXXX-JP-01によってこれ以上のSCP-XXX-JPの調査は不可能となっています。

SCP-XXX-JPは、基底世界の21世紀初頭とは別の時点、あるいは別の世界線で製造されたと推測される、個人用のタイム・マシンとみられる乗物です。

ヒトの視覚および触覚によって認識できるSCP-XXX-JPの外観は一般的な仮設トイレのものですが、電波や超音波を用いた観測では仮設トイレの外観よりも巨大な幾何学的な構造体として捉えられており、何らかの手段でヒトの認識に介入する偽装機能を備えているものと思われます。内部には後述する時空間航行機関と、その構造から超小型のカー・ブラックホールを利用した重力縮退炉と推測される動力炉に加え、操縦区画と簡易的な居住区画が存在しており、内装部の設計思想はキャンピングカーのそれに近似しています。

内部機構に対する一次調査において、SCP-XXX-JPの時空間航行機関はカテゴリー2・高次元航行型に分類されるであろうもので、使用される理論やおおまかな構造などには、198█年にGRU"P"部局の命令を受けて██████設計局が開発に着手した報復時間兵器「計画100021との類似性が認められることが確認されていますが、SCP-XXX-JPはより進歩した技術に基づいて設計・製造されたことや、両者の間に直接の技術的関連性はなく、類似性は技術の「収斂進化」の産物であることが推測されています。

SCP-XXX-JPに備え付けられていた銘板には「ディメンショナル・スキッパー(D・S)」という製品名と、「イエローブリンプ」という企業2によって製造された旨の情報が読み取れます。銘板には「2TC3-8874」というシリアルナンバーも刻まれており、後半部を製造数と仮定する場合、相当数が量産されたことが伺えます。また、製造年と思われる「1032」という刻印もありますが、これがいかなる紀年法に基づくものなのかは不明です。

SCP-XXX-JPは、202█年に要注意団体「アニメキャラクターと結婚するための研究計画局」(PAMWAC)が[編集済]に設けた電子掲示板上に作成されたスレッド「本職の歴史改変者だけどお前ら質問ある?」を発端として収容に至りました。同スレッドに対するPAMWAC構成員の反応は「カテゴリーエラー」「ジョン・タイター3の二番煎じ」などと冷ややかなものでしたが、当掲示板を監視していた財団エージェントが投稿内容を元に調査を行い、茨城県大洗市の廃倉庫内に保管されていたSCP-XXX-JPを発見しました。ただし、掲示板への投稿を行ったと推測される本来の所持者(SCP-XXX-JP-B)の確保には失敗しており、SCP-XXX-JP内部にも毛髪や指紋といったSCP-XXX-JP-Bの身体情報に繋がる痕跡は残されていませんでした。また、収容地点付近で観測可能な時間航行の痕跡が過去に検出されたことはありません。

SCP-XXX-JPの内部からは、SCP-XXX-JP-Bが残したと見られる遺留品が複数回収されており、いずれも起源以外の異常性が存在しないことからAO-XXX-JP群としてAnomalousアイテムに指定されています。以下は、そのうち特筆すべきと判断された物品のリストです。

AO-XXX-JP-02: 「コルト M2086 LTブラスタ」という刻印がなされた拳銃様の装置。内部構造から、レーザー誘雷を用いることで従来のワイヤー部を省いたテーザーガンであると確認されている。コルト社が同様の製品を開発・計画した事例はなく、バッテリー部などには21世紀初頭の主流工業水準を上回る技術が用いられている。

AO-XXX-JP-03: 石川県の酒蔵「萬歳楽」の純米大吟醸生原酒の空瓶。使用されている酒米「八十八万石乃白」の名前は江戸時代の加賀藩の石高に由来するとされるが、いわゆる「加賀百万石」とは数値に開きがあり、基底世界外を起源とする、あるいは過去に生じたCK-クラス再構築シナリオの痕跡である可能性がある。

AO-XXX-JP-04: フェニキア文字に類似する文字が書かれた紙片。プロジェクト・パラゴンへの照会により、かつてアポリオナで用いられていた言語によって、所持者がシャッタークリストの下級指揮官であることを証明する旨の文面が記されたものであると判断されている。内容が当時のアポリオナの軍制度その他に合致しているかは不明。

AO-XXX-JP-08: エスペラントで書かれた『歴史改変概論・改訂版』と題されたハードカバーの書籍。材質は洋紙の性質を模倣した未知の超薄型合成樹脂。時空間航行技術が普及した文明圏で執筆されたものと見られ、他者による再介入が困難な形でCK-クラス再構築シナリオを発生させる方法を指南している。著者・編者・出版元は「正しい歴史改変者の会」という団体だとされているが、執筆者個々人を判別できる記述は存在しない。また、ISBNコードが割り振られているが、接頭記号が「982」であるなど現行の発番規則とは一致しない箇所が過半を占める。

インシデント記録XXX-JP-01: 202█年n月n日、SCP-XXX-JPの時空間航行能力を実証すべく、原田博士を主務者として行われた第一次運転試験の開始直前に、試験場となったサイト-81██の大規模屋内実験ハンガー内に未知の人型実体(SCP-XXX-JP-A)が出現し、SCP-XXX-JPを破壊した後に逃走しました。SCP-XXX-JPの外観はモンゴロイド系の男性のそれであり、未知の法執行機関または軍事組織の制服と見られる衣類・装身具を着用しています。 使用する言語は21世紀のものと同様の日本語です。

以下は試験記録より、インシデント時の箇所を抜粋し文章化したものです。一部の漢字表記には財団による推測を含みます。

原田博士: では、試験を始めよう。目標時点は10分後。三次空間座標に変更なし。現在から未来に飛ぶわけで、CKの心配はない、と。こちら管制室、計測機器に異常はない。準備はいいか?

志摩研究員: 問題ありません。これからSCP-XXX-JPに乗り込みます。

(この瞬間、実験ハンガー内にSCP-XXX-JP-Aが出現する。出現した瞬間の記録に成功したのはハイスピードカメラによる光学映像のみで、その他の計測機器はいかなる異常も探知していない)

SCP-XXX-JP-A: 諸君、その場を動くな!

(SCP-XXX-JP-Aは、瞬間的に周囲の財団研究者全員の動きが硬直したのを確認すると、拳銃様の物体を構えトリガーを引く。ほぼ同時にSCP-XXX-JPは小爆発を起こし、計測機器群はSCP-XXX-JPの全機能の喪失を確認するが、SCP-XXX-JPとSCP-XXX-JP-Aの拳銃様物体との間にはあらゆる相互作用が観測されていない )

原田博士: SCP-XXX-JPが完全に沈黙した。志摩くん、そちらでは何が起こっている?

志摩研究員: 未知の人型実体がハンガー内に出現。状況を見るに、彼がSCP-XXX-JPを破壊したようです。これから接触を試みます。

原田博士: オーケー、管制室はモニタリングに注力させる。君はまず彼とのコンタクトに専念しろ。準備を整え次第私もそちらに向かう。

志摩研究員: わかりました。──あなたは何者だ?

SCP-XXX-JP-A: 失敬、名乗りが遅れました。小官は多次元監察機構時域公安刑事局巡査・トキノ。当時間線当時を含む第283-L管区の警邏任務全般を担当しております。

(SCP-XXX-JP-Aは警察手帳様の物体を志摩研究員に向ける。光学記録映像を閲覧した人物はいずれも、そこに当該人物の母語でSCP-XXX-JP-Aが名乗った肩書きが書かれていると認識した)

志摩研究員: トキノ──“時の巡査”、本名ですか?

SCP-XXX-JP-A: ノー・プロブレム! 今この場この時で必要なのは小官を識別する呼び名であり、それが父母が付けた名前である必要性はありません。小官としては、そちらの規則に従って「SCP-XXX-JP-A」とでも呼んでいただいても構わないのですが、現時のヒトの発声器官ではまどろっこしいでしょう。

志摩研究員: ではトキノさん、なぜ、SCP-XXX-JPを破壊したのですか?

SCP-XXX-JP-A: 単純です。法執行です。時間航行基本法第3条、民間人による時間航行は、緊急避難的なケースを除き十分な準備を──高次空間に関する諸理論に熟達した上で準備を行い、かつ我々監察機構の認可を得た上で実行する場合にのみ許可されます。皆さんは初犯かつ未遂ですので逮捕・起訴などは小官の判断により省略できますが、そのタイム・マシンは予防処置として機能を抹消させていただきました。

志摩研究員: しかしこれは……法の遡及効は原則として認められないはずです。我々の世界で時間航行に関する法がいまだ存在しない以上、未来を起源とする法を我々に適用するというのは……。

SCP-XXX-JP-A: ナンセンス! タイムスケープの観点に立たぬ発想ですな。法は民を保護するためにあります。不用意な時間航行者が独自に発明されたばかりのタイム・マシンで時間災害を引き起こし、ひとつの時間線の全人口が存在しなくなった後で「こうなるとは知らなかった」とのたまう。それを未然に予防するべく立法された法が、不遡及を唱うというのは骨抜きにされるも同然です。

志摩研究員: なるほど。一応は納得できる理由です。

SCP-XXX-JP-A: 小官を律する諸法規に接触しない範囲であれば。

志摩研究員: 我々による予備調査では、SCP-XXX-JPの内部で、あなたがおっしゃるような時間航行に関する法規則を伺わせるものは発見できませんでした。SCP-XXX-JP、このタイム・マシンの持ち主は何者なのですか?

SCP-XXX-JP-A: 順法意識を示すものがないのは、奴が法を無視しているからです。奴はまさに我々の法から外れ、時間線を規定する世界法則すら無視せんとする、札付きの時間犯罪者です。正しい歴史改変者の会初代代表にして時間解放戦線ネオ・エヴェレッティスト上派行動隊総長、“自由歴史主義者”を名乗って歴史改変、皆さんの呼び名で言えばCK-クラス再構築シナリオを頻発させる。その動機は特定の思想に基づかず、ただ改変による歴史の変化の過程のみにその興味を集中させる娯楽犯罪者。それが許容される“自由”こそがもっとも価値あるものと断じ、歴史ごと消し去られる無数の人々のことは省みない。奴は今、あなたがたの時間線を改変しようとしている。小官は奴を追っている途中に、あなたがたの危険行為を発見し対処したに過ぎません。

志摩研究員: それでは、我々にも情報を提供していただけませんか? CK-クラスシナリオは我々としても防がなければならない課題です。協調は可能なのでは?

SCP-XXX-JP-A: ニエット! 失礼なのは重々承知していますが、我々はあなた方を対等なパートナーとして扱うことはできません。我々とあなた方を動かすイデオロギーには絶対的なずれがありますし、比較的正確な時間理論へ達するまでに数回の学術的ブレイクスルーを経なければならないあなた方は、時についての知識の片割れを手にしただけで、その危険性を認知せぬまま使命感に突き動かされるでしょう。そうですな……今の彼らの名は確か、そう、「マナによる慈善財団」。彼らがあなた方に対して「ともに世界を救おう」と呼び掛けたところで、あなた方はその声に応じますか?

志摩研究員: しかし……。

(原田博士がハンガー内に入室。標準的な規定に従い、背後には軽火器を携行した保安チームを同行させている)

原田博士: 志摩くん、ご苦労だった。あとは私が引き継ごう。

(SCP-XXX-JP-Aは保安チームを見回す)

SCP-XXX-JP-A: フム、潮時のようですな。小官はこれで失礼いたします。我々の個人防護システムは、なるべく当代の人間に見せるのは避けるべき技術の産物なものでして。

原田博士: お待ちください。我々は決して暴力的な恫喝を第一の選択肢としては……。

SCP-XXX-JP-A: この時間犯罪は我々が管轄すべき案件です。手出しは無用。あなた方は当代の異常存在に対して心を砕くべきだ。それでは!

(SCP-XXX-JP-Aは左腕の腕時計様の物体を操作し、出現時と同様の形でハンガー内から消滅する)

補遺XXX-JP-01: 以下はAO-XXX-JP-8内の記述、およびSCP-XXX-JP-Aの発言を元に原田博士が提出した、SCP-XXX-JP-Bに起因するCK-クラス再構築シナリオの特性に関するレポートからの抜粋です。

SCP-XXX-JP-Bが再構築を引き起こしたい時点に対して直接干渉することはほぼなく、それより過去の時点に対して複数の小規模な干渉を加え、最終的に本来の目標通りの再構築を達成する形を取ります。これの主目的は、CK-クラスシナリオに犯された歴史の修復を試みる超時間的法執行機関に対する擾乱・妨害ですが、我々のような現時組織の抵抗に対しても、過剰と言っていいレベルの効果を発揮します。

一例を想定するならば、アステカ神話を「白き神」を悪神とする形に書き換えるとともに、マルティン・ルターの宗教改革を不発に終わらせ、その最終目標は第二次世界大戦における日本の完全勝利である、といった具合になります。むろん、これはその通りでは実現し得ないであろう単純化された仮定上の干渉モデルであり、実際にはより多数の干渉が複雑に絡み合うことになるはずです。

さて、上記の仮定モデルは、近世期における日本の対外進出を阻害する要因を取り除くと同時に西欧のそれを遅滞させ、可能であれば南北アメリカ大陸を日本の影響下に置くことで、将来的な両文明圏の衝突において日本が有利になる地政学的条件を確保することを目的としています。しかし、当時の人間が「宗教改革への妨害」の観測に成功し、さらにそれが未来人の犯行であるところまで把握できたとしても、その目的が数世紀後の世界大戦の勝敗の変更であるということはまず理解できないはずです。

その動機が理解できない、ということは、干渉者が過去に何を行い、未来で何をするつもりなのかということが想定できないということです。すでに生じたCK-クラスシナリオの検知が困難なことに加え、彼らの高度に発達したタイム・マシンの航跡を科学的に検知する方法がない以上、我々が干渉者の行動を予測し対処する方法はホワイダニットの追求に限られるわけですが、その手段すらSCP-XXX-JP-Bの前には骨抜きにされています。

補遺XXX-JP-02: 202█年n月n日、財団高次空間部門の特別審議委員会“CHRONOGRAPH”は、今後何らかの関連事象が観測されない限り、SCP-XXX-JPに関する追跡調査は無意味である旨の勧告を提出。O5評議会および81ブロック理事会はこれを承認し、SCP-XXX-JP関連事案の無期限凍結を決定しました。

“CHRONOGRAPH”による勧告レポートの全文は、こちらから閲覧することが可能です。


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