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東京復興庁視察団 TSP入り
公開日: 2026年9月15日17時30分
TSP誘導路上の「ドリームチェイサー」軽往還機(本紙記者撮影)
14日、東京復興庁の古戸史恵長官を団長とする視察団が、スリランカ沖の「タプロバニー・スペースポート」(TSP)の視察を開始した。
TSPは、従来の隠匿式地上サイトに代わる単段式宇宙往還機(SSTO)の大規模運用拠点の整備を計画した財団外宇宙支部が、2009年の「ベンチャースター・コマーシャル」SSTOの実用化以来増加し続けている産業宇宙飛行需要を見込んだ環太平洋諸国とともに建造した官民共用の宇宙空港。超大型のメガフロート(人工浮島)上に垂直発進式ロケットの打ち上げ施設や5千メートル級のSSTO用滑走路などを複数備え、さらには付随する外宇宙支部サイトおよび小規模都市機能まで内包した、蓬莱人工島と並ぶ現時点で最大級のメガフロート施設である。
東京復興庁は、最新の巨大メガフロートであるTSPを、今年4月に都市計画決定された「東京湾第2新都心構想」の主要な先行事例と位置づけており、巨大メガフロートの技術的詳細や運用状況の実態などを視察するものとしている。
東京湾第2新都心構想は、松永安左エ門氏率いる産業計画会議が1959年に勧告した東京湾海域の大規模都市化プラン「ネオ・トウキョウ・プラン」の浮島案を参考に、異災被害が軽微な東京湾内に巨大メガフロートを基盤とする海上都市を建設し、2017年からの東京現実崩壊性広域災害(東京事変)以来半ば放棄されている旧東京都に代わって、立地的に中央新都心では代替不可能なかつての首都機能の一部を復旧させるというものである。
TSPは宇宙空港および財団サイトとしての機能も併せ持つ関係上、対異常存在・災害面での防御およびダメージコントロール能力も重視した設計・運用がなされており、東京事変被災地の至近を建設予定地とする東京湾第2新都心構想においても参考にするべきと評価されている。視察団は、2024年に発生した「クリスタロイド事件」の被害区域を視察し、当時の状況について関係者から説明を受けていた。同事件は民生区画に被害を出さないまま沈静化に成功し、メガフロートに対する脆弱性の指摘を払拭することになった。
視察団の案内を務めたネレウス・マリーン・システムズ(NMS)社広報部のタニー・コッチ氏は、視察団が第1日の日程を消化した後の記者会見で以下のように語った。
「現在日本が計画している東京湾第2新都心は、メガフロートとしても、人類が築く建造物としても最大級のものとなるでしょう。しかし、基本はこのTSPの拡大型であり、技術的にはさほど困難な要素は存在しません。我が社を初めとするパラテック企業各社の能力をもってすれば、日本の皆さんが後の世まで誇ることができる、新たな都市を建造できると確信しております」
財団は語る
財団より東京復興庁に出向中の物部帝一博士は、座長を務める特別委員会が昨年11月に発行した提言の序文で、東京湾第2新都心構想について以下のように語った。
同提言は、今回の視察に伴って東京復興庁がTSP側に提出した協力要請書にも附属書類として添付されている。
*
東京という都市は、江戸という名前で誕生した時から、日本における異常存在に対する「確保、収容、保護」の要だった。そもそも、そのような機能を意図して築かれたのだ。
1603年に江戸幕府が開かれ、実質的な日本の政治中枢としての機能が生じた時点で、江戸は超常的脅威に対しても最大限の防御能力を有することを求められた。かくして、蒐集院をはじめとするその時々の異常技術運用組織は、寺社仏閣などの建造物の配置、土地造成、治水、そして何よりも都市計画そのものによる人の流れの誘起──あらゆる手段を駆使し、いわゆる「龍脈」などを総動員した超常的要塞として関東平野を作り変えることを前提として、江戸の都市計画の策定に関与していったのである。
そして、1868年の東京遷都とともに始まった明治という新時代は、超常的要塞としての東京の用途を大きく変容させることになった。戦国時代という内乱を経て建造された江戸が仮想敵としていた国内諸勢力はすでになく、列強諸外国がそれに取って代わった。御国の四方を護るべし。その新たな目標を実現させるため、東京をハブとする超常的防衛ネットワークはその範囲を日本列島全域、さらには統治下に加わった台湾や南洋諸島、朝鮮半島や旧満州国などへも広げることになったのである。その過程で、このネットワークには各地に点在する異常存在の抑え込みも課されることになった。
現在、このネットワークの詳細な情報は失われている。東京湾第2新都心構想が立ち上げられた理由は、突き詰めればこの一点に帰結すると言っていいだろう。
1945年の太平洋戦争終戦の折、蒐集院や異常事例調査局といった当時の日本の異常技術運用組織は、日本の版図すべてをカバーするこのネットワークに関する資料のほとんどを、「敵国に渡してはならない重要な戦略情報」と判断して破棄してしまったのだ。特に、本土決戦での攻撃的運用を想定して行われた「決2号計画」による全国的なネットワークの改修については、何もわからない、というのが今に至るまでの実情である。
国体の存続すら危ぶまれていた当時の日本情勢を鑑みれば当然の判断ではあろうが、結果として、戦後の日本政府や財団・GOCといった正常性維持機関は、「構造はわからないが問題なく機能している」超常的防衛・保安ネットワークの上で活動を行うことを余儀なくされたのだ。
無論、この薄氷を踏むような状態を前に手をこまねいていることが許されるわけもなく、日本超常組織平和友好条約機構(JAGPATO)による長期計画としてネットワークの解析・被制御化作業が進められていた。しかし、300年以上に渡って増改築が繰り返されてきたネットワークの構造は複雑極まりなく、2010年までに東京都および神奈川、埼玉、千葉県の県境付近のネットワークは解析作業が完了していたものの、全国すべての解析完了には早くとも2060年代までかかると予測されている。遅々として進まぬ、という形容がふさわしい状況だが、それでも平時が続きさえすれば大きな問題は生じないだろうと判断されていた。
しかし、東京事変の発生がすべての状況を変えてしまった。ネットワークの中枢である東京の機構が根こそぎ壊滅してしまったのである。
中央新都心に新たにハブを設けようにも、群馬県のネットワークの仔細は未だ不明であり、どのように接続すればいいのかわからない。東京失陥によってネットワーク全体も機能不全を起こしていると見られ、解析完了を悠長に待っていてはその間に何が起こるかもわからない。東京以上の大異災が生じる可能性も否定はできない。我々が取りうる選択肢はただひとつ、解析が済んでいる東京を代替するモジュール、すなわち東京湾第2新都心をネットワーク内のほとんど同じ位置に埋め込むことのみなのだ。
東京のハブ機能、それは東京という都市そのものを基盤として成立していた。何らかの装置で代用できる類のものではない。単に建物を建て並べればいいというものでもない。人の流れ、人の営み、住民の生活が行われている「生きた都市」をハードウェアとして稼働していたのだ。代替モジュールにも同様の構造が求められる。
東京を起点として張り巡らされていた交通・物流ネットワークの起点機能の復旧。東京事変の観測を目的とした正常性維持機関の前線基地としての需要。旧東京でますます盛んになる別次元・空間探索産業(ODSE産業)のための「鉱山都市」としての需要。東京湾第2新都心構想が求められる理由は様々だが、我々財団にとっての理由は「そこに東京という都市がなければ、日本、さらには東アジアがさらに深刻な異常災害に見舞われかねない」という一点しかないのである。
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- portal:2972406 (21 Dec 2019 11:01)
この下書きは「1998年」カノン、および「財団外宇宙支部」企画に基づきます。
画像は以下からお借りしたものを加工しています。
提供元: https://images.nasa.gov/details-KSC-2013-3229
作者: NASA / Ken Ulbrich
画像のライセンス: パブリックドメイン
拝読しました。
まず、この記事に関していいますと、「財団は語る」の部分がまるごとありません。信濃中央新聞フォーマットとしては異例であり、財団視点から東京湾埋め立て構想について何らかのコメントがほしいところです。
また、新都市計画を行うに当たって、東京湾は些か東京事変の震源地に近すぎるのではないでしょうか? 生まれた都市は当分、東京事変という巨大異常現象を目の当たりにすることになります。住民がそれに精神的に耐えうるか、難しいところだと思います。同様の理由で、すでにTSPとして運用されていることにも疑問があります。財団外宇宙支部にとって地上サイトはかけがえのないものであり、危険が迫る地帯にわざわざ置くか、という疑問があります。
上記、ご参考になれば幸いです。
winston1984さんの批評を受けて改稿を行いました。
改稿前では簡単に述べるのみだった建設理由を「財団は語る」部分で詳細に説明させていただきました。
ただし、現状の「財団は語る」パートは財団の語りでこそありますが、信濃中央新聞記事に載るものとしての落とし込み方を思いつけておりません。その点に関しても皆様のお力をお借りできれば幸いです。
なお、TSPに関しては蓬莱人工島という先例もあることから、98世界ではメガフロート技術は十分に成熟しており、財団外宇宙支部が危険視するものではないと判断しています。
個人的な感覚としては(2043年以降であるならまだしも)東京事変最中で異常事象が激しく続く旧首都圏地域の真横にある(記事によってはその真っ只中でもある)東京湾へ非常に繊細であろう巨大施設の建築計画を立てるというのはリスクなどを鑑みると厳しいように思われます。
少なくともそのリスクを完全に払拭して(ほかにも多数存在するだろう)候補地の中から選択されることを可能とする、より十分な理由付けが必要になってくるのではないでしょうか?
「また東京事変が拡大したらどうするんだ」などとの批判があることは容易に考えられるため、協力を仰ぐ場合このような懸念事項を解消する回答があったほうがより説得力を持たせられるのではないかと思います。
Misharyさんの批評を元に改稿を行いました。批評ありがとうございます。
今回の改稿は、主に第2新都心(の基盤となるメガフロート)の防御力をアピールする形で加筆を行ったものになります。
また、今回までの改稿で「第一級異災特区での別次元・空間探索産業について」で語られているような別次元・空間探索事業の従事者のベースキャンプとしての需要や、第2新都心移住者に対する優遇措置などの要素を盛り込んでいます。こちらは今後、案を思いつき次第さらに加筆を行うかもしれません。
拝読しました。
MisharyさんやWinstonさんが指摘なされたことは概ね解消されていますし、設定の練りこみもしっかりしていると思います。
ただ、「財団が語る」の部分ですが、既存の「財団が語る」の多くは特定の財団職員のコメントを貰ったというかたちをとってます。つまるところ、ここは財団の公式プレスリリースではないのです。既存作を参考に、冒頭をどこかの部門の職員のコメントを貰ったという形に改造するといいかもしれません。
個人的には、『理外研電算機、起死回生の神格存在計算機開発計画を発表』や『特集記事 森野雄太郎教授が語る科学の今後』あたりが参考になると思います。
また、日本の東京復興庁の企画にもかかわらず、財団が「皆様のご理解とご協力を期待したい。」と言ってるのは少々ちぐはぐなように感じられるので、財団(や正常性維持機関・超常研究組織)がそれを支持・バックアップしている、あるいはJAGPATOなどで提言したという内容の記述をを挟んだ上で文章を少し変えると自然に読めると思います。
批評ありがとうございます。
現在、該当部分は提言または談話という形で「財団は語る」に盛り込もうかとも思っているのですが、記事本体との関連性が微妙になるため、どうするか迷っている状況です。
記事部分を削って提言だけにすることも考えております。
「東京復興庁視察団 TSP入り」として本投稿いたしました。
批評にご協力いただいた皆様、ありがとうございました!