停滞

新庄は書類の束を机に投げ捨て、溜息をついた。

「博士、また突き返されたんですか?」

「そうなんだ。流石にこうも通らないと気が滅入るな」

書類の一番上には「却下」の赤い判子が押されていた。研究への増額申請はもう却下され続けて何回目だろうか。最初こそ理由付きで返ってきた申請書は、いつからか却下の一言で済まされるようになっていた。

「アレは大人しくしているかい?」

「ええ、静かなものですよ。ちょっと前まであんなに暴れてたのが嘘みたいです」

良かった、と新庄は呟いた。本当にそれは幸運だった。この研究室が担当している番号未指定のオブジェクトは、未だに正式な収容の手続きが終わらない。それには研究対象となる価値があると新庄は確信しているし、収容が必要だとも考えていた。いつまでも初期収容のコンテナに閉じ込めたままというのは色々な意味で良くないだろう。

「早く収容したいんだがな」

「ここまでダメだと不安ですね」

そんな会話ももう3回目だ。オブジェクトはもう何週間も番号未指定のまま放置されていて、状況に進展の兆しは無い。未だかつてこんな事があっただろうか?分からない。ただ何かもやもやとしたものを感じるのは確かだった。

「ところで博士、このデータなんですけど……」

「どれ、見てみよう」

新庄は申請書の束を机の端の山に乗せて、研究員の方へ椅子を寄せた。何かがおかしいような気がする。そんな思いを抱えながら、今日も日常は続いていく。


大貫は書類の束を机に投げ捨て、溜息をついた。

「隊長、また突き返されたんですか?」

「そうなんだ。流石にこうも通らないと気が滅入るな」

書類の一番上には「却下」の赤い判子が押されていた。新装備の開発嘆願はもう却下され続けて何回目だろうか。最初こそ理由付きで返ってきた申請書は、いつからか却下の一言で済まされるようになっていた。

「装備の調子はどうだ?」

「大丈夫ですよ。整備にも慣れてますし、まだしばらくは使えます」

良かった、と大貫は呟いた。本当にそれは幸運だった。一度大規模な収容作戦で使用してから装備は全く変えられていない。既存の装備の新調なんかは滞り無いのだが、装備自体の更新だけがどうしても通らない。しかし便利な装備が出てくれば、いつかは変えることになるだろう。

「今のだっていい装備だが、そろそろ現役はきついんだがな」

「ここまでダメだと不安ですね」

そんな会話ももう3回目だ。装備は未だ旧式のままで、状況に進展の兆しは無い。未だかつてこんな事があっただろうか?分からない。ただ何かもやもやとしたものを感じるのは確かだった。

「ところで隊長、この編成案なんですけど……」

「どれ、見てみよう」

新庄は申請書の束を机の端の山に乗せて、部下の方へ椅子を寄せた。何かがおかしいような気がする。そんな思いを抱えながら、今日も日常は続いていく。


山上は書類の束を机に投げ捨て、溜息をついた。

「博士、また突き返されたんですか?」

「ああ……」

山上は椅子にどっかりと腰を下ろすと、背もたれに体を預けて脱力した。

いつからか既存の枠組みを打ち破るような目新しいものが現れなくなった。日常は代わり映えしなくなった。変化は無く、日々はルーティーンと化して行った。新たな申請書が揃って却下されるようになったのはいつからだ。通常業務が仕事の全てになったのはいつからだ。いつから、いつから、いつから、いつから。考えればきりが無かった。

何も起こらない。それはこと財団においては喜ばしい事であるにもかかわらず、山上の心を掻き乱した。何がおかしいのか山上には分からなかった。ただ、何かがおかしくなっているという予感だけがそこにあった。

「ところで博士、この書類なんですけど……」

「どれ、見てみよう」

山上は申請書の束を机の端の山に乗せて、部下の方へ椅子を寄せた。

何かがおかしいような気がする。そんな思いを抱えながら、今日も日常は続いていく。

昨日と変わらぬ今日が、明日も明後日も続いていく。


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