すりこみ(改題前:あじみ

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頂いたコメント

donoturafriends 28 Aug 2022, 22:35
>彼女が新しく産んだんですよ。

とありますが、結末をハッキリさせるのではなくて、主人公に彼女がいて彼女になにかしてしまうかと不安に思う、下書き時点でのおちのほうが好きでした。
この展開だと作品の良さである、見えない奴らの薄気味悪さとでもいいましょうか、そこらへんが薄れているように思います。
個人的にですが、回答をきっちりかくのではなく、想像させるそんな作風のほうがあっているように思えます。

あ、グリルチキンはこっちです。どうもです。

美味しいんですよ、このお店。まあ俺も彼女に教えてもらったんですけど。

っと、惚気話はどうでもいいですよね。


始まりは3年前です。

大学に入って初めての夏休み、友達も全然いないしバイトもしてなかった俺は、実家に帰ることにしました。

実家では何もしなくてもメシは出てくるし、洗濯も全部してくれます。

そんな環境に甘えてダラダラ過ごしていると、スマホに友人からのメッセージが来ました。

「戻って来てんの!?飯食いに行こ奢るぜ」、俺はすぐ「OK」と返信しました。


友人からの連絡で、少年時代がなんだかとても懐かしくなりました。村を離れていたのはほんの4カ月程なんですけどね。

思い出を辿りたくなった俺は「やっぱ、あの森だよな」と、友人たちと色んな「冒険」をした場所へと散歩に出かけました。

森っていうか……山っていうか……。自然歩道?っていうんですかね?ほぼ手付かずの野山、みたいな感じなんですけど一応道があるような場所なんです。

村が昔に「自然体験を出来る場所を作ろう」と整備したらしいんですけど、結局人が全然来ずに管理も放棄されたらしくて。

子供の頃「冒険」をした時よりも荒れていて、ちょっと怖い感じがしました。


「この荒れ方だと、今はもう小さい子供たちには危ないかもなあ」なんて思いながら歩いていると、居たんです。歩道から外れた林の奥に。

これ、写真なんですけど。

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こいつらです、この白いの。見づらいんですけど5匹居ます。

見た時は「なんかの目印かな?」って思ったんですけど、こいつら俺に近づいてきたんです。

めちゃくちゃ怖くて、逃げようと思ったんですけど体が動かなくて……。

いや、違うんです、恐怖で動けないとかじゃないんです。熊に遭った時は怖かったけど動けました、こいつらに遭った時は物理的に押さえつけられてるみたいな感じでした。

「妖怪に殺される」と思って、必死に動こうとしたんです。それでもダメで、こいつらが目の前まで迫ってきて、目を閉じようとしたけど閉じれなくて、叫ぼうとしたけど声も出なくて。身体は動かせないけど心臓は激しく動いていました。

そしたらこいつら、俺を避けて後ろに行ったんです。

一瞬「助かった」と思いましたが、「後ろからやられるかも」と思うとまた怖くなりました。反射的に振り向こうとすると、振り向けました。体が動いたんです。




こいつら、俺の後ろに並んでました。縦にです、整列してました。



やっぱり怖かった俺は、森の中で走ったり、崖を背にしてみたり、思いつく限りの方法でこいつらから逃げようとしました。

こいつらの動きは俺より遅いんですが、なんというか……「すごい頑張って」ついてくるんです。一生懸命。

俺も相当頑張ったつもりですが、結局こいつらを撒くことは出来ませんでした。

ヘトヘトになった俺は「別に殺されるわけじゃないみたいだし、もういいや」と、半ばヤケクソになりながらこいつらを引き連れて森を出ることにしました。



森から出ても、こいつらは付いてきました。「帰れよ」と言ってみましたが反応はありません。

深く溜息をついて歩き出そうとすると、近くに軽トラが止まりました。

「おー、久しぶりじゃん!!今日焼き鳥な!」

連絡をくれた友人が、偶然にも通りかかったんです。

俺の後ろに白い奴らがズラズラと並んでいるにも関わらず、全くもって普通に、何もおかしなことが起こっていないかのように彼は大学の話を聞いてきました。

その時の俺はこの状況をどう考えればいいのか、この後どうすべきかで頭がいっぱいで、かなり適当に返事をしていたと思います。

そんな中で俺は「車ならこいつらを撒けるかもしれない」と思い立ち、彼に言いました。

「なあ、乗せてってくれないか?」

彼は言いました。

「いやー流石に6人も乗せるのは無理だって。田舎つっても荷台に人乗せたらマズイべや。」





居酒屋にやってきました、焼き鳥が美味しいお店です。友人と2人でやってきました。

「7人ね!小上がりにどうぞー!」と通されました。

「おうお前ら、来年成人か?成人式の時はウチで飲めよ!」と大将に声をかけられます。

「今はコンプラがどうとかで、職場の先輩と飲みに来ても『飲むな』って言われんだよね~。」と友人は語ります。

俺の視界には友人の両隣にも、俺の両隣にも、白い奴らが居ます。

しかし何というか、誰もこいつらに反応しません、それなのに頭数としてはカウントするんです。

俺は漫画とかドラマとかでよくある、「お前……見えないのか?」みたいなのが苦手です。

恥ずかしくなるんですよ、主人公が変な目で見られるのが。「自分だけが見えてる」ことを確認するシーンなのは分かるんですけど。

だから遠回りに確認することにしました。

俺の隣にいる白い奴の後ろにジェスチャーとかを作って、友人がそれに反応出来るか確認する。

めちゃくちゃ大げさで変な動きする奴になりますが、「見えないものが見えてる変な奴」になるより全然マシです。


結果、友人にはこの白い奴らが見えていないことが分かりました。こいつらの後ろに隠したじゃんけんの手を、友人はきっちり答えました。

それと、俺が変な動きをしている最中、白い奴らの1匹が俺の飲みかけのスープを飲み干してしまいました。

この光景が友人からどう見えたのかが気になりました。やはり直接聞くのは嫌なので、白い奴らに食わせて友人の反応を見ようとしました。

焼き鳥の一本を、何気なく白い奴らの1匹の前に差し出してみます。白い奴は食べません。

「なんで?」と思いつつ、「さっきは飲みかけのスープだったし、食べ残しが良いのかな」と考え、半分だけ食べて差し出します。


食べました。


友人から見れば、焼き鳥が虚無に消えたように見えるか、あるいは浮いているように見えるか、とにかくおかしいことが起こるはずです。しかし友人は何も起きてないかのように楽しそうに喋っています。

2本目、3本目とどんどん白い奴らに食わせましたが、無意味でした。多分、何もかもの辻褄が合ってしまうんでしょう。





翌日、母が昼食に俺の大好物のからあげを揚げてくれました。10人分くらいはありそうな量です。

俺は母に訊いてみることにしました。

「なあおっかぁ。この村って妖怪とか、祟りとか、そういう話ってないん?」

「んー、きいたことないね、なしたの急に。」

「いや大学でさ、田舎から出てきたっつったら、そういう話聞きたがるやついるんだよね。」

「ばあばに聞いたほうが知っとるかもよ。」

「あー、ばあばは知ってる?」

「いんやー、聞いたことないわ。神様が子供攫ったとか、祟りだとか、そういうことなーんもねぇ。平和なことしか起っとらん。」

予想はしてましたが、そういう昔話みたいなのは無いようでした。あったら子供の頃にでも聞いてそうですし、こいつらそもそも俺以外に見えてないんですから、伝わりようがないのかもしれません。

ただ、「行方不明」とか「不審死」みたいな話もないらしいことは、俺にとってありがたいことでした。







結局、こいつらに付いてこられたまま大学に戻ってきました。

一緒に講義を受けたり、学食に行ったり……銭湯にも一緒に行きましたね。俺なりにこいつらを観察したんですが、理解してるのかなんなのか分からないですけど、人間みたいな動きはするんですよ。

銭湯に行けば、肩ぐらいまで浸かって壁にもたれて上を向いたりする。

講義中は、何もない机に何か書くようなそぶりをする。

バッティングセンターでは、バッターボックスに立ってねじれてみたりする。

多分、自分から進んで何かすることはないんですが、俺がやると真似してそういうことをするんです。

ちょっと面白くて、親しみを感じて、段々とこいつらと一緒に暮らすことが当たり前になっていきました。

カラオケとか、食べ放題とか、人数あたりで金がかかる場所は行かなくなりましたが、こいつら自体が何か悪さをすることもありません。


なんとなく、俺はこいつらを「ヒナみたいだな」と思うようになりました。

親の後ろをついてきて、エサを食わされて、親から学ぶ。見た目は全然鳥っぽくないですけどね。


一緒に過ごすうちに、こいつらの事が少しずつ分かっていきました。

他人の物を奪ったりはせず、俺が口をつけた食べ残し、飲み残ししか食べたり飲んだりしないこと。

沢山食べさせても絶食させても、こいつらの機嫌や健康?に問題は起きないらしいこと。

俺の色んなことを真似すること。バンジージャンプを試した時は傑作でしたよ、川まで落ちてびしょ濡れでゆっくり浮いてきました。

知性があること。一度改札を通れずに大行列が出来てしまいましたが、以降は浮遊して乗り越えています。



そして、いつだって俺に付いてくること。






どうです、信じられますか?今もあなたの両隣に居るんです。

俺のグリルチキン、いつ無くなったか覚えてます?

俺とあなたしか居ないのに、8人席に通されてるのもおかしいと思いませんか?

そもそも店に入った時、8名様って言われたの変だと思いませんでしたか?


「君の話では5匹だったはずじゃないか、6匹いるのか?」ですか。

ほら、言ったじゃないですか、俺には彼女がいるんです。


彼女が新しく産んだんですよ。








こいつら、何でも俺の真似するんです。かわいいでしょ?



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