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※「5.」以降の内容はオネイロイ・ガーデンのオリエンテーションではなく普通の財団内オリエンテーションに変更するかもしれません。自分なりの理論を形にして説明するのが最たる目的なので、それが達成できれば他の要素にこだわりはありません。
気になっている点:
- 内容はわかりやすいか
- 説明の流れに問題はないか
- 「5.」以降が駆け足すぎないか
0.

みなさん、グッドナイト。
はい、これは言うまでもなくおはようグッドモーニングの夢バージョンですね。そこ、席を立たないで。まだオリエンテーションは始まってすらいませんよ。
そう、今あなたがたは夢の中にいます。入眠前に説明があったかと思いますが、今回皆さんは空間心理学の初回講義に参加することになりました。夢についてのオリエンテーションということで、折角なので皆さんにはこうして夢の中でオリエンテーションを受けていただきます。
あ、こういう流れですしベーグルでも用意しましょうか。ここは夢なのでもちろんベーグルなんて腐るほど作り出せますし、それらが実際に腐ることはありません。いくら食べても腹が膨れないのが残念ですが、まあせめて各々理想の味を堪能してください。口がパサつかないようにコーヒーも置いておきましたからね。
行き渡りましたか? ベーグル。よろしい。では、そろそろ自己紹介をば。私、こういった講義を担当しておりますクロコダイル・ティアーズと申します。変な名前だと思いました? これはシャドウネームと言いまして、要するに夢におけるハンドルネームみたいなものです。慣習的なものなので、まあ「そういうもんか」と軽く受け止めておいてください。
1.
さて、前置きはこのくらいにしてオリエンテーションの方に入っていきましょう。まず、空間心理学というものについて軽く説明していきます。
空間心理学というのは、人間の心を空間 — つまり「箱」のようなものとして捉える心理学です。それもただの箱ではなく、マトリョーシカのように入れ子構造になった箱をイメージしてください。「難しい」って? ならばスライドを表示してあげましょう。えっと、リモコンリモコン …
はい、えー、これが我々人間の心の構造になります。見えますかね? よろしい。まあ図だけ見せられても置いてけぼり必至でしょうし、1つ1つしっかりと解説していきましょう。
まず「シャドウ」。専門的には「意識」と呼びますが、これは我々にとっての「心の中での私自身」にあたるものです。例えば今ここにいるあなたたちはもちろんのこと、この私もまたシャドウですよ。シャドウは心のマトリョーシカの中でも一番小さく、中には自我くらいしか入っていません。そのわずかなスペースの中で何かを考えたり何かに対して感情を沸き上がらせたりするのが、シャドウの主な機能ですね。
次に「夢界空間」。これは、個人個人の心に存在する夢という劇の舞台です。この夢界空間は、シャドウよりも大きなマトリョーシカとして存在しています。それこそ、皆さんがいるこの場所も夢界空間ですよ。この部屋の中はもちろん、外にも夢界空間が広がっています。もちろん無限じゃないですけどね。
さて、こうしてこの部屋を軽く見渡してみると、そこには色々なものがありますね? 机・椅子・照明・窓・食べかけで放置されたベーグル・エトセトラ。そう、この夢界空間の中にはこういった「もの」が存在します。これらはまとめて「非意識ノンコンシャス」、略して「ノンコン」と呼ばれています。ええ、スライドにある丸・三角・四角のやつですね。
先ほど例示したように、ノンコンの大きさや形は千差万別です。それこそこの夢界空間の中にある、我々シャドウ以外の全てはノンコンに分類されます。窓の外にきらめく太陽もノンコンですし、床にちょっと積もったほこりだってノンコンです。場合によっては、動物や人間の形をしたノンコンだっていることでしょう。見た目や振る舞いは一切関係なく、シャドウ以外は全てノンコンなのです。そしてシャドウでない以上、どんなに知性ある振る舞いを見せようとノンコンに自我はありません。あなたたちはAIに自我があると思いますか? あ、「思う」? すいません、思想の対立が見つかっちゃいましたね。まあとにかく、ノンコンはAIと同じようなものなのです。
最後に「個人的無意識」。これは、言ってしまえば「もう1人の私」として機能する大きなマトリョーシカです。そこ、何かのアニメを思い浮かべたりしないように。そういう多重人格みたいな意味ではないですからね。えー、そうだな … 例えば、近所の行きつけのお店に向かうときのことを思い浮かべてください。ファストフード店でもいいですし、ドラッグストアでもいいですよ。とにかく、あなたがどこかへと向かうときに、あなたはもちろん歩いていますよね? でも、あなたは「よし、この足を踏み出すぞ」と思って一歩一歩踏み出してはいないはずです。では、誰があなたの足を動かしているのでしょうか? ええ、それこそが「もう1人の私」こと個人的無意識なのです。
夢界空間は、その個人的無意識の一部として存在しています。個人的無意識の一部である夢界空間の中に、シャドウとノンコンが入っているわけですね。
2.
さて、取り敢えずざっと夢の中の登場人物紹介が終わったところで、今度は人間の睡眠と覚醒のメカニズムについて解説していきましょうか。あ、一応言っておきますがこれはあくまで空間心理学的な解釈なので、生物学的な正しさはあまり期待しないようにお願いします。はい、それではスライドをば。
ん、出た出た。えー、ではまず起きている間の話から。日中、皆さんのシャドウは夢界空間の中にいません。ではどこにいるのかといえば、「半夢界空間」という箱の中にいます。これは夢界空間と同じような、シャドウが入るための個人的無意識の一部です。夢界空間と同じように中にはノンコンが存在していますが、その状態は大きく異なります。
先ほどベーグルを出して見せたように、夢界空間においてはノンコンをシャドウの意思で自由に生み出したり、別の形に変化させたりすることができます。また、それ以外の夢界空間由来のノンコンは個人的無意識の働きによって生成・変化・消滅を繰り返します。スライドには記憶整理とか感情複合とか書いてありますが、ちょっと専門用語が過ぎるのでここでは省略します。要するに、個人的無意識の働きによってノンコンが生まれており、その変遷がいわゆる「夢」の正体なのです。
一方、半夢界空間には現実の肉体が受け取った感覚情報をもとに、肉体が置かれているのと全く同じ状況が再現されています。つまり起きている間、我々シャドウは肉体というラジコンカーを操作しつつ、その車載カメラから送信された映像を半夢界空間という部屋でモニターしているような状態にあるわけです。そのため、あなたというシャドウが見たと思った自室の天井も、口に突っ込んだと思った歯ブラシも、実際には半夢界空間の中のノンコンということになります。
さて、そんな感じで半夢界空間にいたシャドウですが、では眠ったらどうなるのでしょうか? そう、今我々がこうしてこの部屋にいることからわかるように、シャドウは夢界空間に移動するわけですね。つまり、起きている間のシャドウは半夢界空間に、寝ている間のシャドウは夢界空間に移動しているということです。こうして、シャドウは睡眠と覚醒のサイクルにおいて2つの空間を行ったり来たりするわけですね。
シャドウがいない間も夢界空間や半夢界空間は存在していますが、その間はスリープモード … いや、夢の話でこれはワードチョイスが良くないですね。要は、シャドウがいない間の空間は軽い休息状態に入るわけです。こうして入れ替わりで休むことで、2つの空間は心の演算装置である脳に過剰な負荷をかけないようにしています。
3.
さて、先ほど「夢界空間におけるノンコンは自由に変化させることができる」と言いましたが、実はシャドウに関しても同じことが言えます。皆さんも、夢の中で自分以外の何か — 例えばウサギとかになったことがあったりしませんか? ない人は「ないです」って答えなくていいですからね。とにかく、シャドウの姿もまた本人の意思で自由に変えることができます。
はい、このオリエンテーションが始まって15分くらい経ちますが、皆さん誰も私の容姿に突っ込みを入れませんでしたね。良いと思いますよ。今どき、ボディシェイミングとかルッキズムとかは好まれませんから。クロコダイル頭のワニ人間が「我々人間の心」だの言っているからといって安易にツッコミを入れなかった姿勢は評価できます。グリフィンドールに10点。まあこんな感じで、シャドウの見た目は必ず人間を模しているとは限りません。こんな感じである程度ヒューマノイドしてることもあれば、完全に他の動物を模していたりすることもありますし、なんなら無生物の姿をとることすらあります。ノンコンの姿が千差万別なのと同じように、シャドウの姿にも基本的に制限はありません。
よっこいしょ。ところで、睡眠にも2つの種類があります。「これは夢だ」とわかっている睡眠とそうでない睡眠です。前者を明晰睡眠、後者を非明晰睡眠と呼び、後者の方がより自然な睡眠とされます。なんでいきなりこの話をしたかというと、この睡眠の種類によってシャドウが姿を変えるかどうかが違ってくるからです。
非明晰睡眠において、シャドウの姿は一定ではありません。それこそ、夢の内容に応じてシャドウは様々な姿に変わっていくものです。しかし明晰睡眠においては、そもそも「夢」というもの自体が固定化されてしまいます。シャドウが夢を夢だと認識することで、個人的無意識よりシャドウの方が優位になってしまうことがその原因です。このため、夢の固定化に応じてシャドウも1つの姿に固定化されてしまいます。皆さんも今、突然鳥になって部屋の外に飛んでいったり、突然岩になって床をぶち抜いたりはしていないでしょう? まあ、あくまで勝手に姿が変わらないというだけで、自分の意思でなら姿を変えることは不可能ではないんですが。あ、今やろうとしても無駄ですよ。一朝一夕でできることではないのでね。
4.
また、睡眠の種類で変わるシャドウの振る舞いはこれだけではありません。明晰睡眠下限定で、シャドウは他人の夢界空間にお邪魔することができるようになります。厳密にいえば非明晰睡眠下でも可能なんですが、自分の意思で行えるのは明晰睡眠している間のみです。… あ、すいません。スライド変えるの忘れてました。
よし。えー、そう、シャドウの移動の話ですね。ちょっと前で説明した通り、シャドウには別の空間に移動する性質があります。これは当人の夢界空間と半夢界空間の間だけに留まらず、自分と他人の夢界空間の間においても同じなわけです。なので、シャドウは人々の夢界空間を渡り歩いていくことができるということになります。今皆さんが置かれている状況も同じですよ。だって、こうして私の夢界空間の中の部屋に、他人である皆さんというシャドウが集まっているわけですから。このように、夢界空間は複数人のシャドウを受け入れる懐の深さを持ち合わせています。広さの概念があるので、流石に途方もない人数は入れないですがね。
なお、他人の夢界空間では基本的に自由な行動ができません。他人の夢にお邪魔している状態なわけなので、基本は他人の見ている夢に自分が巻き込まれる形になります。さっき、皆さんにベーグルを生み出すように指示しなかったのはこれが理由です。なので、ベーグルのおかわりが欲しくなったら手を挙げてください。私がこの場で新しく作り出してあげますからね。
ちなみに他人の夢界空間に行ったシャドウは自分の夢界空間、ひいては「もう1人の自分」である個人的無意識と離れ離れになってしまうわけですが、こんな状態にあっても心とか脳の状態に特に影響は出ません。これは今でも諸説あるんですが、一説ではシャドウと個人的無意識が「シルバーコード」と呼ばれる心のケーブルでつながっているからとも言われています。あくまで一説ですので、興味があればご自身で調べてみてください。結構スピリチュアルな話がヒットするので注意!
さて … ん? はい、何でしょう。早速ベーグルのおかわり — あ、違う? … 「"集合的無意識"ってなんですか」ですって? おお、よく気が付きましたね。そう、今回は「個人的無意識」ではなく「集合的無意識」になっています。このスライドでは図の都合で個人的無意識が省略されていますが、夢界空間の外側に薄皮のように境界線が描いてあると思ってください。
この集合的無意識ですが、一言で言えば「全ての個人的無意識が入った一番大きな箱」です。ええ、誇張なく全人類の心の要素がこの集合的無意識の中に存在しています。ただこれについて語ると長くなっちゃうので、そうですね … 例えるなら個人的無意識が「島」で集合的無意識が「海」になるでしょうか。シャドウが他人の夢界空間という島にお邪魔するときは、この集合的無意識という海を渡って行くわけですね。今回はその程度の認識で大丈夫です。
5.
さて、このようにシャドウは他人の心の空間に行くことができるわけですが、実はそれは本来ごくごく限られた人間の話だったりします。理由は簡単で、大抵の人は明晰睡眠ができない、つまり「これは夢だ」と自覚することができないからです。
皆さんも、これまではそうだったはずですよ。というか、今日こうして夢が夢だとわかっていること自体がイレギュラーなのではないですか? これがどうしてかというと、今現実の皆さんの肉体に特別な装置がつけられているからですね。それは明晰睡眠サポート機器「エッシュナスト」といいます。
まあ、その呼び名の通り明晰睡眠をサポートしてくれる装置ですね。外から脳波に干渉だのまあ色々することで、明晰睡眠に慣れていない人も明晰睡眠ができるようにしてくれるわけです。長期間使えば、ギターの弦を押さえる指が硬くなっていくみたいな感じで、だんだんそれが無くても明晰睡眠できるようになっていったりもします。
とにかく明晰睡眠サポート機器のおかげで、人々は互いの夢界空間に気軽にお邪魔できるようになったわけです。そして、空間同士の繋がりはインターネットに代わる新たな情報ネットワーク兼メタヴァースを形成していきました。その名を、オネイロイ・ガーデンといいます。こうして、空間心理学、明晰睡眠サポート機器、そしてオネイロイ・ガーデンという3本の柱によって、俗に「ドリームパンク」と呼ばれる現代の夢産業革命が巻き起こったというわけですね。
さて、改めまして。オネイロイ・ガーデンにようこそ、ニュービーの皆さん。この夢界ネットワークの管理・運営を行っているオネイロイ・ガーデン社より、心からの歓迎の言葉をお贈りします(TM)。
6.
あ、皆さんベーグル食べちゃいましたね。では、キリも良いですし今回はこの辺りで終わりにしましょう。というわけで、今回のオリエンテーションは如何だったでしょうか? 堅苦しいのも良くないかなと思い、全編通してラフな感じでお送りしました。え、「ちょっと腹立った」? 貴重なご意見ありがとうございます。その辺のほこりと一緒にゴミ箱に捨てておきますね。… 冗談冗談。真摯に受け止めさせていただきますよ、もちろん。ハハハ。とにかく、このオリエンテーションの内容が、皆さんがこの夢産業社会への第一歩を踏み出す足掛かりになれば幸いです。
それでは皆さん、グッドモーニング。
… もちろん、おやすみグッドナイトの夢バージョンですよ。
付与予定タグ: jp orientation tale オネイロイ
オリジナルの用語:
- シャドウネーム(shadow name)
- シャドウに独自の名前があることはほぼ共通設定ですが、それに対する呼称はありません。
- 意識(conscious)
- 元は心理学用語です。通称(シャドウ)は既出ですが、この名称はこの作品オリジナルです。
- 夢界空間(dream space)
- 他作品では主に夢界(dream)として言及されています。
- 非意識(nonconscious)
- 通称(ノンコン)は既出ですが、この名称はこの作品オリジナルです。
- 個人的無意識(personal unconscious)
- 元は心理学用語です。
- 半夢界空間(interdream space)
- 完全オリジナルな概念です。
- シルバーコード(silver code)
- 元はスピリチュアル用語です。
- 集合的無意識(collective unconscious)
- 元は心理学用語です。
- 明晰睡眠サポート機器「エッシュナスト」(Eschenast)
- 完全オリジナルな概念です。
- 夢界ネットワーク・メタヴァース「オネイロイ・ガーデン」(Oneiroi Garden)
- 「オネイロイ・ガーデン」は元記事における社名であり、サービス名ではありません。
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アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:2859452 (31 May 2018 22:00)
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