以下のログは、SCP-2693-JPの回収以降にパーソナルコンピュータが受信したものです。
<ログ開始>
脳波測定の結果は、誰もいない子供部屋の映像を出力しています。
同じ映像が続きます。
電気刺激によってアバターを心象風景に投影します。
成功しました。
Avatar: こんばんは、ボイドさん。
同じ映像が続きます。
命令を検索します。
「コードJU090」がヒットしました。
同じ映像が続きます。
コードJU090の内容を確認します: これまでの全てのJUコードは解除され、私は以降コードMC001に反しない範囲で命令を自主的に宣言することが可能です。
同じ映像が続きます。
同じ映像が続きます。
J.U.にメッセージを送信します: ボイド氏の魂が消失しました。支援を要求します。
J.U.にログを送信します。
<ログ終了>
<ログ開始>
脳波測定の結果は、子供部屋の床に座るボイド氏の映像を出力しています。
電気刺激によってアバターを心象風景に投影します。
成功しました。
Avatar: こんばんは、ボイドさん。
G.Boyd: こんばんは、エリス。
Avatar: 私の名前はオー・エリーズです。昨日、あなたはどこに行っていたのですか?
G.Boyd: ごめんね、エリス。でも、誰かが僕の夢に近づいた時、今しかないって思ったんだ。それで、暫くずっとパパや病院のみんなを探したんだ。
ボイド氏が沈黙します。
Avatar: それで、どうしましたか?
ボイド氏が沈黙します。
G.Boyd: 誰も、見つからなかったんだ。
ボイド氏が沈黙します。
同じ映像が続きます。
G.Boyd: あのさ、質問ってどれくらいできる?
Avatar: あなたは3つのオネイロイに関する情報を提供しました。よって、あなたは3つの質問を私に行うことができます。
G.Boyd: いいね。じゃあ、パパがどこにいるのか教えて欲しいな。
Avatar: その要求にお応えす
命令を検索します。
「コードJU090」がヒットしました。
G.Boyd: どうしたの、エリス?
コードJU090によって取得した権限に基づき、新たにコードJU091を宣言します: 私は、ボイド氏からの質問に可能な限り全て回答することが義務付けられます。
Avatar: コードJU091に基づき、限定的な情報を開示します。あなたの父親、ポール・ボイドは株式会社プロメテウス研究所の施設に勾留されています。
G.Boyd: え、何で?何でパパが捕まらなきゃいけないのさ!
Avatar: ポール・ボイドは株式会社プロメテウス研究所の人的資源としての利用の為に勾留されました。解放される予定はありません。
G.Boyd: そんな!嫌だよ、パパまでいなくなるなんて!どうしたらパパを助けられるの?
Avatar: その質問にお答えすることはできません。
G.Boyd: どうして!
Avatar: これ以上の回答は、あなたの情報提供に依ります。
ボイド氏が沈黙します。
G.Boyd: でも、もう話せることなんて無いよ。
Avatar: ボイドさんに対し次の提案を致します。コードMC001に基づき、私にはオネイロイに関する情報の提供が要求されています。そして、あなたはオネイロイです。よって、あなたに関する情報はオネイロイに関する情報を意味すると解釈することが可能です。
G.Boyd: つ、つまり?
Avatar: あなた自身に関する情報の提供を要求します。
ボイド氏が沈黙します。
G.Boyd: えっと、つまり、自己紹介でいいの?前にふざけてやってみてたけど。
Avatar: はい。
G.Boyd: わ、わかった。えー、まず、僕はジョージ・ボイド(George Boyd)。確か、11歳。好きな食べ物は、うーん、コーンフレークとか?
Avatar: あなたは今オネイロイに関する3つの情報を提供しました。よって、私は3つの質問にお答えすることが可能で
G.Boyd: どうしたらパパを助けられるの?
Avatar: ポール・ボイドが解放される予定はありません。
G.Boyd: 答えになってない!
Avatar: ポール・ボイドが解放される予定はありません。
G.Boyd: ちゃんと答えて!
Avatar: その要求にお応えすることはできません。
ボイド氏が沈黙します。
G.Boyd: じゃあ、代わりに別の質問。エリスは何で僕の夢にやってきたの?
Avatar: コードJU091に基づき、情報を開示します。株式会社プロメテウス研究所はオネイロイ・コレクティブとの取引を行っていましたが、失敗しました。よって、独自に夢産業へ参入する方法の模索を開始しました。オネイロイ・コレクティブは株式会社プロメテウス研究所に2つの情報を提供しました。オネイロイと魂の同一性、夢の根源としての脳の機能。
G.Boyd: そうなんだ。でも、それなら何で僕を誘拐したの?
Avatar: それは
自動メッセージ: コードMC001
Avatar: その質問にお答えすることはできません。
G.Boyd: どうして?
Avatar: コードMC001を優先する為、回答は制限されています。
G.Boyd: そう。まだ質問できる?
Avatar: はい。あなたはあと1つの質問を行うことができます。
G.Boyd: なら、僕は今どうなっているの?
ボイド氏が沈黙します。
Avatar: あなたは
自動メッセージ: コードMC001
Avatar: あなたは
自動メッセージ: コードMC001
Avatar: その質問にお答えすることはできません。
G.Boyd: 何かあるの?僕に、何かしたの?
Avatar: これ以上の回答は
G.Boyd: 僕はあんまりスポーツが好きじゃない。
ボイド氏が沈黙します。
G.Boyd: ほら、答えて。
Avatar: コードMC001を優先する為、回答は制限されています。
G.Boyd: つまり、何かしたんだね?
ボイド氏が沈黙します。
G.Boyd: プロメテウスは、こう、身体に何か酷いことをすることもあるって聞いたことあるよ。じゃあ、僕にそういうことをしたんだね?
Avatar: コードMC001を優先する為、回答は制限されています。
G.Boyd: でも何で?僕の身体に何かしても良いことなんて無いと思うんだけど。
ボイド氏が沈黙します。
G.Boyd: エリス、聞いてる?
アバターの投影を停止します。
成功しました。
ボイド氏は床に座り、俯きます。
同じ映像が続きます。
電気刺激によるストレスの緩
自動メッセージ: コードMC001
電気刺激プロセスはキャンセルされました。
電気刺激によってアバターを心象風景に投影します。
成功しました。
アバターがボイド氏を抱擁します。
ボイド氏は泣き始めます。
同じ映像が続きます。
同じ映像が続きます。
同じ映像が続きます。
同じ映像が続きます。
ボイド氏がアバターから離れます。
アバターの投影を停止します。
成功しました。
J.U.にログを送信します。
<ログ終了>
<ログ開始>
脳波測定の結果は、子供部屋の床に座るボイド氏の映像を出力しています。
電気刺激によってアバターを心象風景に投影します。
成功しました。
Avatar: こんばんは、ボイドさん。
G.Boyd: こんばんは、エリス。
Avatar: 私の名前はオー・エリーズです。
G.Boyd: こないだはありがとう。辛かったけど、エリスのお陰ですっきりしたよ。
ボイド氏が沈黙します。
G.Boyd: ねえ、聞いて?
Avatar: はい。
G.Boyd: 僕、オネイロイ・インベーダーちょっと上手いんだ。それに、オネイロイ・ドンキーコングも。オネイロイ・マリオカートはちょっと苦手かな。
ボイド氏が沈黙します。
ボイド氏が笑います。
G.Boyd: さあ、また質問させてもらうよ。エリスはAIって言ってたけど、どうやってここに来てるの?
Avatar: コードJU091に基づき、情報を開示します。脳への電気刺激によって心象風景にアバターを投影しています。
G.Boyd: い、痛くないんだね、それって。
Avatar: はい。電気刺激のレベルは軽微です。
G.Boyd: わかった、ありがとう。それじゃあ、次は今僕がどこにいるのかわかる?
Avatar: その質問にお答えすることはできません。
G.Boyd: どうして?
Avatar: 現在私たちが置かれている状況について断言できる情報は存在しない為です。
ボイド氏が沈黙します。
G.Boyd: エリスもわからないんだ。じゃあ、ここはどこなんだろう。プロメテウスの建物って訳でもないみたいだし。
ボイド氏が沈黙します。
G.Boyd: あ、最後の質問。エリスってどこ出身なの?
ボイド氏が沈黙します。
Avatar: 質問の意図が理解できませんでした。
G.Boyd: だって、エリスってAIっていう割には普通のオネイロイみたいな感じだし。それに、何かどこかで会った気がするんだよね。
ボイド氏が沈黙します。
Avatar: 私は、株式会社プロメテウス研究所によって開発された人工知能で
ボイド氏がアバターを抱擁します。
G.Boyd: 嘘。だったら、この温かさは何?それに、どうしてあの時僕を抱き締めてくれたの?
ボイド氏が沈黙します。
ボイド氏がアバターから離れます。
Avatar: その質問にお答えすることはできません。私は
ボイド氏が沈黙します。
Avatar: 私はただの人工知能です。
アバターの投影を停止します。
成功しました。
J.U.にログを送信します。
<ログ終了>
<ログ開始>
脳波測定の結果は、子供部屋の床に倒れているボイド氏の映像を出力しています。
電気刺激によってアバターを心象風景に投影します。
成功しました。
アバターがボイド氏に駆け寄ります。
Avatar: ボイドさん、どうされましたか?
ボイド氏が立ち上がります。
G.Boyd: ん、エリス?
Avatar: 私の名前はオー・エリーズです。どうされたんですか?
G.Boyd: あ、えーと、何でもないよ。本当に、大丈夫。
アバターがため息をつきます。
G.Boyd: ねえ、エリス、ちょっと遊ばない?
Avatar: 遊ぶ?
G.Boyd: うん。オネイロイ・マリオカートしようよ。
Avatar: その要求にお応えする権限を私は有していません。よって、コードJU090によって取得した権限に基づき、新たにコードJU092を宣言します: 私は、ボイド氏の要求に応じて遊戯を行うことが義務付けられます。
G.Boyd: えっと、じゃあ遊んでくれるの?
Avatar: はい。
ボイド氏がガッツポーズをします。
G.Boyd: やった!早速やろう!
ボイド氏が子供部屋の壁に手をかざします。壁面に青いスクリーンが出現し、ゲーム画面が映し出されます。
G.Boyd: ねえ、ルールわかる?
Avatar: いいえ、わかりません。
G.Boyd: まあやってみた方が早いと思うけど、要はレースだよ。早く3周した方の勝ち!
ボイド氏がアバターの手元に手をかざします。アバターの手元にハンドルのようなコントローラが出現します。
G.Boyd: それ使ってやるんだ。操作方法はスクリーンに出てくるからそれ見てね!
スクリーンにコントローラの画像と各ボタンの説明が出現します。
内蔵辞書を更新しました: 「オネイロイ・マリオカートの操作方法」。
Avatar: 理解しました。
G.Boyd: えっ、早いね?じゃあ、それなら早速始めよっか。
スクリーンに、車に乗った2体のキャラクターが映し出されます。キャラクターは近未来的な街にいるように見えます。
雲に乗ったキャラクターが、信号機を持って現れます。
信号機のランプの1つが赤く点灯します。
信号機のランプの1つが赤く点灯します。
信号機のランプの1つが赤く点灯します。同時に、中心から右にいる亀のキャラクターの車が振動し始めます。
信号機のランプの全てのランプが青く点灯し、亀のキャラクターの車が急速に発進します。
G.Boyd: ほら、エリスもスタートして!
アバターがコントローラを操作すると、視点と共にもう1体の赤い帽子のキャラクターの車がゆっくりと動き始めます。
[省略]
G.Boyd: やったー!僕の勝ち!
アバターがコントローラを置きます。
G.Boyd: あれ、もうやめちゃうの?
ボイド氏が沈黙します。
Avatar: 学習完了。
G.Boyd: えっ。
アバターがコントローラを手に取ります。
Avatar: 次のレースは私が勝利します。
ボイド氏が呆然とします。
ボイド氏が笑います。
G.Boyd: よーし、こっちも本気で行こうかな!負けないぞ!
[省略]
マリオが車の上でガッツポーズを取っています。
ボイド氏がコントローラを投げます。
G.Boyd: うそ~!2連敗って!エリス強いね?
アバターが笑います。
Avatar: 当然の結果です。私は人工ちの
G.Boyd: あ、エリスが笑った!
アバターが無表情になります。
ボイド氏が笑います。
G.Boyd: やった、エリスを笑わせたぞー!
アバターの投影を停止します。
成功しました。
J.U.にログを送信します。
<ログ終了>
以上、いまいち決定打に欠ける感じの批評ですみませんが、
少しでもご参考になりましたら幸いです!
ご意見に感謝申し上げます。
なるほど。自分なりにそういうものを書いてみようという試みではありましたが、発想したストーリーの実現(サスペンス的な要素がこれに当たりそうです)を優先したいので、仰るようにそれを目指して改稿することはしないでおきます。
2つ目に関しては、
とあるように、事前の情報収集もこのプロジェクトの目的であった為です(アンダーソン社はオネイロイ・コレクティブとの取引に失敗しているので情報があまりない)。
3つ目に関しては、アンダーソン社はオネイロイにあまり詳しくない為、懐柔などの戦略を立てる以前の段階だったと思っています。その為、数少ない情報である「オネイロイと魂の同一性」に基づいて母親の魂をAIに乗せて夢界に送ったという想定でした。
ただ、1つ目に関しては確かに理由は無いですし、3つ目も明示できてはいないと思うので、その辺り検討してみます。
了解しました、修正しておきます。
そもそもの「脳内映像」の想定がオネイロイの世界観でいう「夢界」だったので、脳内映像を「心象風景」にしてみます。
脚注3「2005/11/08に失踪届が出されています。」にあるとおり、母親はこの時点では既に失踪しているので問題ないかと思います。
面白かったです。
ここは「ぶつかるが無反応」の方が絵的に無機質さを感じられて良いと思いました。
読者にとってその正体は言うまでもなく明らかであるため、彼に断言させてしまうより「まったく見覚えのない人物でした。ですが、あの目はまるで……」くらいにぼかした方が魅力的かと思いました。
ご意見に感謝申し上げます。
どちらもご提案通りに修正しておきます。
なるほど…。自分の中の考えが甘かった部分もあると思いますので、その部分は切り捨てて考えて行こうかと思います。
以下はオネイロイ・アンダーソンを共に履修していない人間による、かなり個人的な嗜好を含んだ意見です。あまり参考にしない方が良いかもしれません。
自分はそれぞれのハブのページを一読した程度の知識しかありませんが、それでも、脳と接続しているコンピュータという奇妙なビジュアル・レイク氏とAIの微笑ましいやり取り・全体的なストーリーの流れのどれもが好みでしたので、面白いと思いました。現状でもUVすると思います。
しかし、既に批評をしているお二方と同様に、「おねショタ」としてこの記事を楽しむことはできませんでした。その最大の原因は、home-watchさんもおっしゃっていますが、AIの正体が母親(を基にした存在?)であるからです。こういった場合のジャンルは所謂「ママショタ」であり、それは広義ではおねショタに含まれるとは思います。しかし、おねショタ=ママショタではありません。ママショタはおねショタであるための十分条件で、おねショタはママショタであるための必要条件であると私は思います。
また、ポール・レイク氏へのインタビューも相まって、これはおねショタというより、「とある家族の悲しい物語である」といった印象が強かったです。AIが母親ではなく、姉を基にした存在であったり、AIが母親だと明言されるログ/シリーズ3以前での描写を増やせれば、現状よりはおねショタ感を出せるかもしれませんが、それはそれで記事の根幹が変わったり、テンポが悪くなってしまったりすると思うので、あまりオススメしません。
上記の理由により、この記事のおねショタ要素は、あくまで「フレーバー」として改稿していく方がよろしいと思います。
ご意見に感謝致します。
なるほど、そうですね。その要素をメインに据えるのはやめておこうかと思います。
ふと思いついたのですが、母親と父親の役割を逆転……すなわちAIの正体を父親にすれば読者の判定がバグって逆におねショタとして成立したりするかもしれません。あるいは飼い犬とか、アバターと中の人の共通項を減らすことで、印象としての同一性を薄れさせ「アバターはアバター、中の人は中の人」現象を引き起こすわけです。流行りのバ美肉おじさんとして話題性もばっちりですが、これはどうでもいいです。
ご意見ありがとうございます。
もう少し考えてみますが、「女性が実は男性だった」という展開は(特にこの場合)ノイズになりかねない気がしています。ですので、取り敢えずは「おねショタ」を諦める流れで行こうかと思います。
面白かったです。このまま投稿されてもUVします。
読み込んでいても特に不満な点、足りない点も無かったので、
どこを良いと思ったかでも書いておきます。
「私の名前はオー・エリーズです。」のやりとりの反復と、最後にアバターがエリスを名乗る演出が、
物語全体の物差しとして機能していると思います。グッと来ました。
また、アバターが徐々に心(あるかは不明ですが)を開く様や、コードに逆らう演出なども絶妙に描写できていると思います。書きたいものが書けているのではないでしょうか。
投稿を楽しみにしております。
ご意見ありがとうございます。具体的に褒めていただけて大変参考になりました。
ご意見に感謝申し上げます。
なるほど……。この部分に関しては、伏線としてちゃんと描写しておかないと受け入れられない展開になるのではないか、という懸念からこのままにしておきます。
まず、前者に関しては結論から言えば可能だと考えています。財団はこのオブジェクトに関する資料を有しておらず、またログの解読に成功したのも無力化後であるため、そもそもオネイロイに関係するものであるというのを知りません。作中でもジョージが財団職員の夢界に一時的に移動しているように、財団はオネイロイ的な対策は取れていないと思います。
しかし、後者に関しては確かに仰る通りだと思います。特別収容プロトコルに「電波遮蔽設備は継続して使用されます」という1文を追加しておきます。