onthonon-75--7218
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17世紀末、英国海軍は海賊の取締を強化。カリブ海を追われた海賊達は英国海軍の目の届かないインド洋を目指した。


黄金海岸沖、連合東インド会社の船が白い旗を掲げる海賊に襲われた。

「ええと、この船の名は?」

「ニウスタート」

アムステルダム船籍、ニウスタート号の船員の一人が答える。

「ニウスタートの諸君、僕の名はジェームズ・ミッソン。あー、何であいつら、服着てないの?」

「不要かと」

「なわけないだろ。あいつらにも服を着させてやれ。お前らと同じ様なやつだ。ボロじゃないぞ」

服を着終えたことを確認したジェームズは演説を再開する。

「僕は人身売買が嫌いだ。そんなことやる奴は野蛮人とどう違う?僕は君達を売り飛ばすつもりはないし、痛めつけるつもりもない。必要物資を持たせて解放するつもりだ。ただ、もし僕らの仲間になりたいというのであれば歓迎しよう。差別する気はないし、そんなことは許さない。故郷へ帰るか、ヴィクトワールに乗り込み、共に自由のために働くか、自由に決めてほしい」

「ミッソン船長万歳!」

奴隷達から歓呼が響いた。ニウスタート号の船員からも驚嘆の声が上がった。


ラゴス、ポルトガル語で「潟湖」を意味する名の通り、巨大な潟湖を有している。

一味はこの潟湖の辺りで傾船修理を行うことにした。中の物を全て出した後、浜辺で船を倒し、船底に付いた汚れやフジツボ等を落とすのだ。大掛かりな作業で、作業中は敵から見れば格好の的であるが、これを行わなければ、付着物により水に対する抵抗が大きくなり、船が遅くなり、固着生物によって船の寿命も縮む。

傾船修理が終わると、進路を決める会議を行う。数週間ギニア湾を航行したが、ニウスタート号以来、1隻の船にも出会っていない。

「キューバで僕はギニア湾に向かうことを提案した。その時、もし期待外れだったとしても、インド洋へ出れば良いと言った。それは今でも変わらない。だが、新しい仲間も加わったので、もう一度、票決を行いたい」

ジェームズは票決を呼びかけた。当時、カリブ海では英国海軍が海賊の取締を強化しており、追われた海賊達は他の海に向かった。海賊周航である。とりわけインド洋は人気のある海だったが、それには訳があった。

オランダ人が手を挙げる。ジェームズは彼、ディックを指名する。ディックは前に出て発言する。

「知っての通り、僕はVOCで働いていました。その時、ベクソン商人と会話する機会もあり、インド洋については彼等程ではないが、知っています。あの海に行くのには賛成です。インド洋で覇を唱えるベクソン帝国は長らくオットマン帝国と対立しており、略奪行為に対する方針も昨今のヨーロッパとは違い、自国と同盟国に被害が無い限り、略奪は無罪となっているようです。つまり、ムスリムの船を襲う限りはベクソン人は攻撃して来ません。なので、インド洋に行けば、安定して略奪できると考えています」

「ありがとう、ディック。他に意見や情報のある者は?」

「……いないか。じゃあ、インド洋行きに賛成する者は挙手を」

満場一致だった。


喜望峰、バルトロメウ・ディアスが「嵐の岬」と名付けた岬を回る。海と風はその名の通り、嵐の如く荒れていた。吠える40度である。

「キャピテン、前方に船を発見しました!」

5隻の艦隊。ベクソンの哨戒艦隊であった。どの船も40~50門の砲を揃えていた。しかし―――

「船が1隻、煙を上げ、白旗を掲げました!降伏したようです!」

「火災か。よし、さっさと終わらせよう」

荒波を超え、乗組員が見えるほど近づくと、発砲してきた。白旗が「降伏」を意味するというのは洋の東西問わず、広い範囲で共通する概念だが、当時のベクソンにおいてはもう一つの意味があった。「一人残らず殲滅せよ」

砲弾は前方からのみならず、後方からも飛んできた。船が上げた煙は会敵を意味するロケット。これを用いて他の艦隊に信号を送っていたのだ。

船数は1対10。ジェームズらの敗北は必至だった。

船は急には曲がれない。敵艦隊へと接近する。近づくほどに的は大きくなり、矢と砲弾の雨が降り注ぐ。だが、彼らは耐えた。

船縁の置き楯が倒され、それを橋に敵が乗り込んでくる。上からもネットを伝って何人も。帆桁から飛んでくる者も一人。彼女は半裸の大柄な黒人女性で、右手に偃月刀を、左手に倒した者の首を持って暴れていたが、ディックを見かけるなり、

"tos!"

と叫び、偃月刀を収め、

"Wie is de kapitein van dit schip!? Ik zoek een parley! Parley!"

と、交渉を呼び掛ける。ジェームズはディックの肩を叩き、

「通訳を頼む」

と、ディックを連れて彼女の元へ歩く。

しかし、突然、西から強風が吹き、ヴィクトワール号とニウスタート号は大きく東へ流されてしまう。風が収まるともう敵艦隊は遥か彼方。しかし、彼女は堂々と佇んでいた。
"Oh! het is Dick!"

「知り合いか?」

「ええ、彼女はペル・バイリー。ペル家の当主です。彼女とは商談で何度も顔を合わせてきました」

「商談?となると、商人なのか?」

「はい、ですがたしか、アフリカ南岸に住むベクソン人はこの辺りの海での見回りと戦闘を義務付けられているとか」

"Ahoi."

「失礼、初めまして、マダム・バイリー」

「カピテイン、ベクソン人の名前はハンガリー人の順番です」

「これまた失礼、マダム・ペル。僕の名はジェームズ・ミッソン、この船、ヴィクトワールの船長だ。尋ねたいことはあるだろうが、まずは服を着てほしい。その……裸は野蛮だ」

「これは失礼。だが、生憎と俺の服は置いてきてしまった」

「なら、あげよう。女物ってあったっけ?」

「あるわけないですよ」

「そうか」

当時、「船に女を乗せたら不吉なことが起こる」という言い伝えがあった。女性が乗っているとその女性を取り合って不和になるというものだ。東アジアに「呉越同舟」という言葉がある。仲の悪い者同士が困難にあっては協力するという意味だが、宿敵同士である呉と越ですら手を取り合わねばならぬほど船上における不和とは致命的なものなのである。

「すまない、なかった。」

「男物でも構わん。心遣い感謝する」


同、ヴィクトワール号船長室、船内にはジェームズ、アンニーバレ、バイリー、そして通訳としてディック、バイリーは椅子に座らされている。

「なぜ、コンパニーの連中がここにいるんだ?ニウスタートも」

「我々がニウスタートを襲ったからだ」

アンニーバレが答えると彼女は椅子から立ち上がり、偃月刀に手を掛ける。

「待ってください。襲ったと言っても、物資を略奪したくらいで、乗組員は無事です」

ディックが制止しようとする。

「そういう問題じゃねぇよ。俺はこの際、コンパニーに恩を売ろうと思う。こいつらは邪魔だ」

「バイリー、僕はVOCに戻るつもりはありません。ジェームズ・ミッソンとアンニーバレ・カラチオーリの仲間になりました。カピテインは仲間にならなかった捕虜を次の陸地で解放すると仰っています。だから、戦う必要はないのです」

「信用できねぇな。だが、お前がそう言うんなら」

そう言って剣を収めると、

「ディック、こいつらに伝えておけ、俺達は次の陸地でニウスタートの捕虜と一緒に降りるが、もし、捕虜や俺の仲間の扱いが悪ければ、お前らを殺して、船と物資を奪うとな」

ディックが通訳すると

「元々そうするつもりだ」

とジェームズは返した。

「で、その次の陸地はどこにするつもりなんだ?」

バイリーが問う。

「それが、未定なのだ」

アンニーバレはそう言うと海図を取ってきて広げる。

「なんだこりゃ。お前らこんな地図使ってんのか」

「貴方方が喜望峰で通せんぼしているせいでな」

アンニーバレが答える。

「とりあえず、俺はウンズワニ島を勧める」

バイリーはそう言って"Johanna"と書かれたンズワニ島を指差す。

「マダガスカルではないのか?」

ジェームズが尋ねる。

「ベクソン海はベクソン人の目に付きやすいから、さっさと抜けたい。北コモロの中でもウンズワニは情勢が安定していて、停泊するにはうってつけだ」

「どんぐらいで着く?」

「3週間くらい」

「アンニーバレ、食料は?」

「ギリギリだが、足りそうだ」

「よし、ジョアンナ島へ行こう」

「ジェームズ、この女は信用できないと思うが?」

「他に情報がない」


その晩、ジェームズはアンニーバレを甲板に呼びだす。

「なあ、アンニーバレ、僕らが自由のために戦う限り、その敵は全世界となるが、今のこの2隻では戦力が足りなさすぎると思うんだ」

「それなら私に1つ策がある」

そう言ってアンニーバレは船室から大きな壺を持ってきた。側面には髑髏が描かれている。

「壺?」

「君は聖杯というものを信じるかい?」

「その壺がそうだとでも?」

「いや、これは私がヴェネチアで手に入れた遺物だ。なんともテンプル騎士団、今ではリュミエール騎士団と名乗っているようだが、彼らが██島で手に入れた物らしい。この髑髏はジャック・ド・モレーが死んだ後に描かれたものだろう。頭蓋骨と2本の骨さえあれば人は復活できると。実際この壺には骨を入れて土を被せると1晩ほどで入れた骨の持ち主を蘇らせる力がある」

「つまり、死んだ仲間も?」

「ヨハンナ島に着いたら蘇らせるつもりだ。で、ここからが本題だ。商人はこうも言っていた。トゥーレの使者が██島にこの壺を届けたという」


カープスタッド、ベクソン商館。オランダ東インド会社の社員ヘンドリック・ファン・デル・デッケンが部屋に入る。中にはドレス姿の1人の女性。

「どうかな、リック?」

質問する彼女はペル・パドマ。男である。

「好きです」

「語彙力失うほどか。フフッ」

「何で女装を」

ヘンドリックは金貨の入った袋を渡す。

「良いじゃないか。船じゃできないんだし。フフフッ。姉上もドレスの良さが分かってくれればな―。っとその姉上だが、海賊に捕まったそうなんだ」

「ほう」

パドマは品の入った箱とともに貝葉でもない葉を2枚渡す。

「おそらく、姉上が自ら切り込んでいったものの、何らかの事が起きて戻れなくなったんだろう。姉上に限って、ただ捕まるとは思えない」

「貴方がスペイース就任の直後にその座を譲ったという程の方ですからね」

「キルワに行くついでに拾って行くか」

「やはり、コモロですか」

「そこが一番可能性が高い」


モザンビーク海峡、イングランドのレッド・エンサインを上下逆に掲げる船を発見した。

「どういうことだ?イングランド海軍の反乱分子か?」

アンニーバレはこれを侮辱と捉える。

「いや、救難信号だ。僕は助けたいが、君は?」

ジェームズは同意を求める。

「救助しよう。食料や物資は残り僅かだが、シニョーラ・ペルによると1週間でヨハンナ島へ着くらしい。ヨハンナ島まで連れて行くことはできるだろう」

こうして、舵を故障して航行不能に陥っていたアドヴェンチャー・ギャレー号はンズワニ島まで牽引されることになった。

「この度は感謝する。私は海賊船とフランス船の拿捕を命じられているが、恩人を襲うわけにはいかない。今回は見逃すことにしよう」

ウィリアム・キッド、キャプテン・キッドとも呼ばれるこの男は、当時はまだ真っ当な私掠者であった。

「重ね重ね申し訳ないのだが、金を貸してくれないだろうか?」

「修理費か。いいよ」

「ジェームズ、お前がそう言うのなら、私も出そう」

「恩に着る」


ンズワニ島、ムツァムドゥ、ンズワニ・スルタン国の首都であり、この島最大の港町である。

船から降りると、身なりの整った男が1人と武装したものが十数人連れてやってきたので、一部の船乗りは船に逃げた。

「役人か。怯えることはない。俺らを捉えるつもりならこんな人数で来るわけがない」

バイリーが逃げた船乗りを宥める。

".أنا █. سآخذك إلى القصر. جلالة السلطان يدعوك"

頭にハテナを浮かべる両船長にバイリーは

「スルタンが呼んでいるから俺らを宮殿に連れて行くってよ」

と通訳する。

「随分と待遇が良いな」

「それだけの事をさせられるんじゃないか?」

一行は王宮へと案内される。

「ようこそおいでくださいました。私がンズワニのスルタン、アリマです」

「ペル・バイリーです」

「ウィリアム・キッドです」

「ジェームズ・ミッソンです」

「で、要件は?」

バイリーは単刀直入に聞く。

「我が国は今、ムワリ島の反乱軍に脅かされています。どうか、ご助力をお願いしたいのです」

「何をすれば良いんですか?」

「我が軍は現在、ムワリ軍の攻撃によって劣勢に立たされております。どうか、この国を守っていただけないでしょうか?」

「ムワリというのはどこです?」

「ムワリ島はこの島の西に5、6時間程進んだ所にあります」

謁見が終わり、回廊。ジェームズが話を切り出す。

「どうする?」

「俺は乗りたいが、ペルではやりたくないな。ジェームズ、お前の顔を立てるから乗ってくれ」

「私は乗るべきだと思う。ヨハンナを援助すれば片方は我々に保護を求め、もう片方は我々と友好関係になろうとするだろう。こうしてその立場を利用して和平に繋げるのがいいだろう」

アンニーバレがジェームズに意見を述べる。

「和平に繋げてどうするんだ?」

「奴隷は敗戦国から供給される。和平に持ち込めば未来の奴隷が解放される」

「そうか。よし、乗ろう」

「お前ら、奴隷解放とかやろうとしてるの?」

バイリーが疑問を呈する。

「そうだ」

ジェームズとアンニーバレが口を揃えて答える。

「高尚だな」

それに対してウィリアムは感心する。

「やめてくれ。働き手がいなくなる」

バイリーは苦言を呈する。

「」

翌日、一行はヴィクトワール号でムワリ島に向けて出港した。アンニーバレは数十人の船員とともにンズワニ島でニウスタート号とアドヴェンチャー・ギャレー号の番をすることになった。

一行が上陸すると、銃声が鳴り響く。驚いた一行は船に撤退する。

「銃持ってるなんて聞いてないぞ」

「……アダム・ボールドリッジか」

ウィリアムが仮説を口にする。

「自称『海賊王』の?」

「ああ、サン・マリー島を支配して、海賊達の拠点にしてる凶悪な犯罪者だ。奴が連中に武器を売ったってところか」

「俺もそう思う。こいつはベクソンの銃じゃない」

「奪ったのか」

ジェームズがそう言うと、バイリーは笑顔を見せた。

「さて、敵が銃を持ってるとなると、一筋縄じゃいかなくなるぞ。作戦を練らなくては」

「俺達が囮となって引き付ける。その隙にお前らが大将首を取れ」

「17人で何人引き付けられるか……。私達も、いや、あいつらが従わないか。ミスター・ミッソン、頼めるか」

「いや、彼女ならいけるかもしれない」

「そんなわけ」

「僕は喜望峰で彼女の戦いを見た」

「わかった。そうしよう。ただ、彼女達が危険ならそちらに回ってほしい」

「そっちは?」

「略奪する気満々だ。囮なんて聞いてはくれない」

「そうか。大変だな。君の言う通りにしよう」

まず、囮役であるバイリー隊が船から降りる。彼女達の役割は敵を引き付けることである。

「うおりゃー!!」

敵陣へ突っ込み、偃月刀を片手にバッタバッタと薙ぎ倒していく。

「囮とは」

「いや、現に敵陣に穴を開けたことで敵の注意は引けている。私達も行くぞ」



ショーレホイカーダ、ショーレホイカーダ邸、謁見の間、上座にはショーレホイカーダ家当主であり、ショーレホイカーダ総督のショーレホイカーダ・ナーガバイラ、脇にはその弟、ショーレホイカーダ・ナーガビジャヤ、そして、下座には仮面を着けた男。

「ペル・パドマよ、その仮面は何だ?」

ナーガヴィジャヤが問う。

「遥か東にある日本という国の智慧の面でございます」

「智慧……?そうは見えないが……。角生えてるし。って違う違う、そうじゃない。何でそれ着けてるんだよ」


リベルタティア、浜に1隻の小舟が現れる。見かけた船乗りがジェームズに知らせた。聞いたジェームズは浜辺に行く。

「……ウィル!ボロボロだが、どうした!?何があったんんだ?」

「セント・メアリー島でカリファドに会った。昔、アンティグアで、上官だった私を置き去りにした奴だ。復讐心から奴を捕らえようとしたが、部下が全員カリファドに味方した。私は裏切られたんだ。私は命からがら小舟に乗ってここに辿り着いた。ここが君達の拠点で良かったよ」

「とても残念だが、ここも安全とは言えなくなってきたた」

「どういうことだい?」

「先日襲った船が、バイリーの所の船だったんだ。ベクソン政府は海賊に対して咎めることはないが、官民問わず自国の船が襲われたら賞金を懸け、討伐を命じるらしい。ここも直に討伐の軍がやって来る。」


"syi!"

一斉に放たれる大砲。

「パスペイース!敵が同士討ちを始めました!」

「金属の虫の効果が現れたか。作戦は成功だ。このまま接舷戦闘に移る!」

ペル一族のパスペイース、ペル・パドマはインド洋を中心に世界の広範囲に情報網を構築していた。当然、リベルタティアにもペルのスパイが入り込んでおり、パドマはそれらを通して金属の虫を送り込んでいた。この虫に刺された人物の近くで何者かが殺傷されると刺された人物が凶暴化するというものだった。


1937年、大日本帝国外務省に宛名のない手紙が届いた。その内容は次のものである。

キャプテン・キッドの財宝は南西諸島にある。
その中にはテンプル騎士団の財宝、聖杯も含まれている。
ドイツの手に渡る前に日本政府によって見つけ出してほしい。

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