円鑿方枘
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ラテン文字117番目の文字である "Q" は、超常界隈において「丸い穴に四角い釘2」の意匠に見立てられる文字です。

一般に「丸い穴に四角い釘」という語は、丸い穴に四角い釘を入れようとしても入らないことから、「ちぐはぐ」「かみ合わない」「不適格」を表すものとして使われています。

しかしながら、この語は超常界隈においては別の意味を持ちます。「不可能を可能とする」「理不尽に対して理不尽を以てする」「(SCP)オブジェクトをクロステストすることで相克して収容する」などです。Qはこちらの意味の「丸い穴に四角い釘」として、超常の世界に係わる人々に古代より使用されてきました。

Q、およびそれを含むラテン文字は、紀元前7世紀ごろに現在のイタリア半島中西部にいたラテン人(後のローマ人)によって成立しました。一般には前1200年のカタストロフ3として知られる大規模な超常戦災・天災による東地中海各地の文明崩壊より約500年がたち、東地中海世界の復興が成った頃、イタリア半島を訪れたギリシア人およびフェニキア人の利用していた文字を取り入れたと考えられます。ラテン人の伝説において、トロイア戦争4に敗れイタリア半島に逃れてきたアイネイアースをローマ建国の祖としていることは、このことの傍証といえるでしょう。

ラテン人は文字のみでなく、語彙や概念、哲学など広範な知識をギリシア人から取り入れました。その中にはもちろん、オカルトに関する知識も含まれます。かつての文明を破壊したオカルトに関する知識は、現代と違いヴェールに閉ざされることなく脈々と受け継がれていたのです。

紀元前753年、ラテン人ロームルスによってティベリス川のほとりに都市ローマが築かれ、王政ローマが誕生します。マールス神の子でありオオカミに育てられたなどの異常な経歴を持つロームルス王は、現代の基準に照らせば人型オブジェクトといえます。ロームルスの最期は、突然の雷雨ののちに姿を消すというアノマラス・インシデントでしたが、その後の王の時代にもアンキーレーの顕現5などの異常事態が起こります。歴代の王はそれらの異常を利用し、周辺部族を征服することでローマの強大化を図りましたが、最終的に大国エトルリア6との同盟を結び、安全保障を確保しました。しかしながら国力の差は明らかであり、さながらローマはエトルリアの属国のような立場に陥りました。ローマ市民の不満をさらに高めたのは、エトルリアが臓卜7を行う、かつて東地中海を滅ぼしたサーキック文化の影響を色濃く持つ文明であったことです。

紀元前509年、エトルリアと同盟を結んだ第7代ローマ王タルクィニウス・スペルブスは、ローマを追放されます。元老院はその後、ローマに王を戴くことをしませんでした。こうしてローマは共和制へと移行することになりますが、これと同時に、人類史においても画期的な決定を元老院は下します。アノマリーの積極的な使用の禁止です。元老院はこの方針を4文字で表し、これをローマの象徴としました。すなわち"SPQR"です。現代のヴェール外において、これは"Senatus Populusque Romanus"(ローマの元老院と市民)を意味するというカバーストーリーが流布されていますが、実際には、"Secure Protegant Q Roman"(確保、保護、Qするローマ人)を意味します。ギリシアにおいては文明崩壊後もアノマリーは積極的に利用されましたが、多くの場合、規模の大小はあれど破滅的な結果を招きました8。ラテン人はその結果を学び、また自らがアノマリーを使用したことで、結果的に他国の属国となりラテン文化が消滅する危機に見舞われるという事態を体感したことから、アノマリーの積極的な使用の禁止を決めたのです。"Q"という文字自体はラテン文字のもとになったギリシア文字にも存在しますが、この意匠が「丸い穴に四角い釘」という意味で用いられるのはこれ以後のこととなります。Q1文字で意味をあらわした理由は、一般人からアノマリーを遠ざけるための秘儀化であり、ひいては後のヴェール思想の源流であると超常言語史では考えられています。

ローマにおいてはアノマリーの積極的使用は禁止されましたが、近隣の国家・部族はもちろんそうではありませんでした。ローマはアノマリーの脅威から市民を保護するためそれらを確保しようとします。こうして、積極的な征服戦争が繰り返され、結果的にローマは地中海世界の覇者となるのです。

ローマ化された占領地域でも、アノマリーの積極的使用は禁止されました。かつて、アノマリーが身近に存在した状態から、「正常」なもののみが身の回りに存在する世界に暮らすようになり、人々の常識も徐々に転換されていきます。アノマリーは伝説の中の出来事であり、現実に存在するものではない、というものです。実際上、共和制以降のローマは正常性維持機関として機能していました。キリスト教の国教化後は教会もその任務に加わりました。紀元後4世紀に入り、西ローマ帝国の勢力が衰えた後もカトリック勢力はヨーロッパの隅々に至るまで赴き、異教を滅ぼし、異端を焼き、アノマリーを確保しました。

ローマ帝国滅亡後の中世ヨーロッパにおいては、引き続きキリスト教会がアノマリーに対処しましたが、16世紀初頭には宗教改革によって教会勢力は混乱しており、アノマリーの確保に支障をきたしはじめました。折しも、ルネサンス、そして大航海時代の到来によって西欧人の関心と行動範囲は全世界に大きく広がりました。アノマリー再発見の時代が訪れたのです。秘密結社が暗躍9し、錬金術師が復活10するなど、古代から細々と命脈をつないできたオカルティストたちが息を吹き返したのです。

しかし、一般の人々にオカルト知識が広まることはありませんでした。衰えたといえど教会の監視はいまだに存在しましたし、なによりも、一般層にオカルト知識を授けるメリットがオカルティストには存在しません。オカルティストの知識は、彼らのスポンサーである社会的に上層の人々に対して、金銭や身の安全11と引き換えに教授されました。

17世紀に入り、植民と収奪によって現世の富を集約した西欧諸国は、国家主導によるアノマリーの収集に着手し始めます。イギリスにおいては「超常現象の確保収容に関する王立財団」が設立され、収集に勤しみました。


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