SCP-2XXX-JP - サツマイモを包む熱は……

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アイテム番号: SCP-2401-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-2401-JPはサイト-8041の収容室に収容されています。実験以外の目的で収容室に出入りすることは許可されません。SCP-2401-JPの実験に参加する人物は、支給される防熱服を着用しなければなりません。実験に参加した人物は、特別な理由がない限り、その実験の終了後に必ず、クラスIMO特殊記憶処理を受けなければなりません。

説明: SCP-2401-JPは、主に品種不明な木材・落ち葉などの可燃物が幾何学的に積み重なったドーム状の構造物と、その中心部分に存在するサツマイモ(Ipomoea batatas)の総称です。サツマイモの視認は、構造物の外縁と中心部を唯一行き来可能な、直径50cmの半円形の通路を介して行うことが出来ます。構造物の温度は常に250度を維持しており、温度が変化した例は報告されていません。サツマイモに関しては、表面温度は250度ですが、その内部は比較的低温であり、2~5度です。

SCP-2401-JPの異常性は、内部のサツマイモを視認した人物にもたらされる一種の強迫的思考です。サツマイモを直接視認した人物(対象者)は、サツマイモが食べごろかどうか確認する必要性を強く感じます。対象者はサツマイモの焼け加減を確認するため、通路内に侵入します。その行為の結果として、防熱服を着用していない対象者は、サツマイモの焼き加減を確認する前に死亡します。防熱服を着用した対象者は、サツマイモの焼き加減を確認します。サツマイモの焼き加減に満足した対象者は、現在までに確認されていません。サツマイモの焼き加減に満足しなかった対象者は、SCP-2401-JPから離脱すると、付近の人物に対し、以下の様な提案を持ち掛けます。

  • サツマイモがよく焼けていないから、可燃物を追加するべきだ(報告数: 32件)
  • サツマイモが焼けるにはまだ時間がかかりそうだから、現状をしばらく維持するべきだ(報告数: 21件)
  • サツマイモがよく焼けていないのは、薪の積み方に構造的欠陥があるからであり、それをいまから正すべきだ(報告数: 17件)
  • 焼き芋をいますぐ食べたいが、あれはどうやら食えなそうなので、近くのスーパーで買ってきて欲しい(報告数: 3件)
  • あんな冷たい芋は食えない。マクドナルドのポテトのほうが美味いだろうから、それをあの芋と取り換えるべきだ(報告数: 1件)
  • 提案なし(報告数: 1件)

対象者の強迫的思考は、クラスIMO特殊記憶処理(石焼き芋の古謡を対2401-JP用歌唱要員3名が歌い、その音声を直接対象者に長時間聴かせ続けることで、SCP-2401-JPを構成するサツマイモというミーマチック存在を、歌詞のなかの焼き芋というミーマチック存在によって上書きする処置)によってのみ除去可能です。しかし、対象者は処理後も、「あのサツマイモをよく焼くにはどうすればよいか考えなければならない」という思考がフラッシュバックします。この思考が発生する原因は不明ですが、この思考に強迫性はなく、多くの対象者はこの思考を他の思考によって上書きすることで自主的に解決します。

補遺-インタビュー:

インタビュー対象: 対象者No.41
インタビュアー: 紀伊 義春(精神科医)
日付: 2010/04/01
特記事項: インタビュー対象は、実験において一切の提案を出さなかった人物であり、実験に参加する以前に焼き芋の存在を知りませんでした。


[記録開始]

インタビュアー: 要件はすでに聞いています。あの実験に参加して以来、焼き芋の上手な焼き方を研究したい衝動にかられて、職務に悪影響が出ていると。

対象: はい、そのとおりです。昨日も実験施設の後処理中に、ふと目に入った楕円形の赤黒い塊が、頭の中であのサツマイモに置き換わって、それで外から怒鳴られるまで、ずっとこの芋はどうすれば焼けてくれるのだろうかと考え続けていました。

インタビュアー: その件についてはすでに報告を受けました。

対象: なら、このようなことが一度ならず、何度も何度も起こっていることもご存知でしょう。先生、私は頭がおかしくなったのでしょうか。あの実験以降、私の頭のなかのどこかに、あの芋が潜んでいるようです。

インタビュアー: あのサツマイモを見た後、サツマイモの上手い焼き方をつい考えてしまうというのは、あなた以外の方からも度々報告されています。その思考自体はおかしいことではありません。しかし、私からは、あなたのそれは、他の方と違い、若干の強制力があるように思えます。

対象: そう、そうです。強制力。私はあの芋をよく焼かねばならないと考えると、それ以外のことがまったく手につかないのです。きっと、その強制力というのが、私の体を操作しているんです。

インタビュアー: ふうむ……率直に言って、あなたのような事例に前例がないため、私だけではどう処置してよいか決めかねます。……あの実験で、その内容を別にして、なにか気になることがなかったか、思い出せませんか。

対象: 1つだけあります、先生。実は私はあの実験に参加するまで、焼き芋という食べ物を知らなかったんです。芋と言うのは、水洗いで土をとって、そのまま食べるのが常識でした。それが、あの実験で、あの芋を見た瞬間に書き換わったんです。最初は、なんてうまそうな芋なんだと思いました。そして、私の頭の中に、私の知らない記憶が起こったように思われます。焼き芋を新聞紙で包んで、落ち葉と一緒に焼くという記憶です。私は、あの実験の時はなんとも思いませんでしたが、その記憶に身に覚えがないんです。薪のまわりには私と母がいて、焼き具合がどうか確認するために、木の棒かなにかでサツマイモをつついていました。やがて、焼き芋の良い臭いが感じられると、薪の中から芋を取り出し、半分こして、母と一緒に食べました。そんな記憶が、あの芋を見た瞬間に現れて、私はいてもたってもいられなくなりました。もう一度、あの芋を食べたい。私の記憶にある食べ物の中で、あの芋は間違いなく一番でした。だからもう一度、食べたい。そして気が付いたときには、私はあのがらくたのなかに入り込んで、あの芋を握っていました。

インタビュアー: 記録によれば、あなたはサツマイモを握って、それからすぐにそれを放り出して、構造物の中から脱出していましたね。

対象: ええ、私が記憶していた焼き芋とあの芋はまるで別物の、冷え固まった死体のような芋だったもので。それでなにか大切なものをなくしたような気持になって。なぜか悲しくなって、それであそこから出たんです。今となっては、あの記憶がまやかしのものであることはしっかりと自覚できていますが、あのときの私は、私と母の思い出を勝手に裏切られたと勘違いしたのかもしれません。わかりませんが。

インタビュアー: 興味深い報告です。しっかりと記録しておきましょう。

対象: 先生、私はやっぱり頭がおかしくなってしまったようです。私に母なんていないのに。あの芋を見ただけで、こんなにおかしな考えが頭の中をぐるぐるするようになってしまうなんて。おかしいとしか思えません。それに私は、まやかしの記憶が、どうにも愛おしく思えてならないのです。だから、ふとした瞬間に、あの思い出を再現したくて、あの芋をどうやってうまく焼くか考えてしまうんです。これはまるでテレビで見たヒーローを現実世界で探す子供みたいじゃないですか。おかしいです。きっとおかしい。

インタビュアー: おちついて。今回のインタビューはここまでにしましょう。今回のインタビューは、お互いにとって非常に有益だったと保障しましょう。

[記録終了]


分析: SCP-2401-JPの異常性により対象者が獲得する思考は、本質的に、焼き芋と言う食べ物の存在を知っていることを前提にしています。そのため彼は、あのサツマイモをみた瞬間に、自分の記憶と獲得する思考の間に矛盾を抱えることになりました。そのことが対象者にどのような影響を及ぼすかという疑問に、今回のインタビューで回答が得られました。結果として、焼き芋の存在を知らないかった彼は、焼き芋に関する架空の記憶が出現したようでした。私が特に興味をひかれたのは、彼のなかに作り出された記憶に、母親という、矛盾を解決するには不必要な存在が出現したことでした。これがSCP-2401-JPの未知の異常性か、それとも彼の経歴がSCP-2401-JPの異常性となんらかの作用を生じさせた結果なのかは不明です。再びインタビューを行い、より彼の思考のなかを探っていくことが必要になると思います。—紀伊博士


本文此処まで
タグ予定
af2020 scp-jp safe 強制力 記憶影響 木製

最初はjoke記事として投稿するつもりでしたが、書いてみたらどうもjokeにはできなそうな内容となってしまいました。なので、通常ナンバーの記事として投稿予定ですが、途中までjokeにする気でいたので、記事の前半と後半で内容がちぐはぐになっていないか懸念しています。


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