SCP下書き「一寸の虫にも」

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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPとの交戦は許可されていません。SCP-XXX-JPの出現が感知された場合、周囲の封鎖を行い、SCP-XXX-JPの運搬が終了するまで対化学物質用防護服を装着したうえで遠距離からの観察を行ってください。SCP-XXX-JPに観察が露呈した場合、迅速な撤退を行ってください。

説明: SCP-XXX-JPは複数種からなる異常なアリ科(Formicidae)の群れです。

SCP-XXX-JPはほぼ全ての個体が高い知能及び技術を持っていると推測され、同種らの外骨格から成形されたと推測される武器を初めとした道具、及びSCP-XXX-JP内部での独自言語、蟻酸や蟻毒を用いた化学兵器及び幻覚剤、記憶処理薬等の使用が確認されています。SCP-XXX-JPは流動的であるものの種ごとに分業されていると推測されています。以下は各種ごとの行動例です。

便宜的分類呼称 種類 役割 特徴
A群(攻撃部隊) キバハリアリ亜科(Myrmeciinae) グンタイアリ亜科(Ecitoninae)等 一般的な働きアリと同様の役割を担います。通常時は対象の運搬及び周囲の警戒などを行いますが、攻撃の際は全個体がメディアの役割を果たし、前述の銃火器、殺虫剤及び高熱に対応した装備等の使用が確認されています SCP-XXX-JP中最も数が多い役割であり、SCP-XXX-JPのうち約8割を占めていると推測されます
B群(化学部隊) ハリアリ亜科(Ponerinae)  ヤマアリ亜科(Formicinae)等 主に蟻酸や蟻毒など化学物質の放散を行う役割を担います。これらは多くの場合、SCP-XXX-JPの行動を隠匿する目的で散布されています これらの化学物質は前述の種らの武器としても使用されており、SCP-XXX-JPとの接触時には大量の蟻酸による健康被害、蟻毒によるアナフィラキシーショックに対する警戒が必要です
C群(斥候部隊) カタアリ亜科(Dolichoderinae)等 攻撃時における破壊工作、潜入行為を担います。また、後述の運搬路を構成する役割の多くを担います 電子機器に対する知識に長けていると推測され、数度の接触時におけるSCP-XXX-JPとの交信は主にこれらの種とのものです

SCP-XXX-JPは自コミュニティに対する高い帰属意識と協調性を持ち合わせており、攻撃や逃走時には種による差異もなく統率の取れた連携を多く見せます。これらは財団機動部隊による検分においても高い評価を受けています。

SCP-XXX-JPは市街地内の路上等に発生します。周囲の土壌から一般的なアリ科の生物と同様に出現しますが、出現地域を掘削した場合においても痕跡を発見できないことから、何らかの異常な移動技術を所持していると推測されます。この発生は路上に何らかの生物の死体が存在していることが条件として挙げられます。これらの死体は多くの場合轢死体であることに留意してください。

SCP-XXX-JPは発生と同時にB群が周囲へ幻覚剤、記憶処理剤を散布、C群が情報統制を行います。これにより該当地域の封鎖を行った後、死体の解体、運搬を行います。解体された死体はSCP-XXX-JP発生地点に運搬され、上記と同様に喪失します。この運搬は主にA群によって行われ、生物の体長等にもよりますが多くの場合約1時間程度で終了します。また、運搬時には周囲の警戒等、各役割についていないSCP-XXX-JPにより誘導の列が作成されます。誘導の列に参加したSCP-XXX-JPは全て頭部を地面に接触していることが確認されています。

この運搬行為を阻害するとA群による攻撃が行われます。現在時点で財団とは5回の接触、交戦が行われています。SCP-XXX-JPの所持する武器、兵器は十分な殺傷力を有し、小型ながらも多量の掃射が行われるため、被弾部位によっては致命的な被害を受ける結果になります。また、蟻毒や蟻酸等の化学物質によって、失明、アナフィラキシーショック等の被害が発生することも確認されています。捕獲したSCP-XXX-JP個体は自死することが確認されており、情報は得られていません。

SCP-XXX-JPの武器等は交戦の度に強化されていることが確認されており、主な出現箇所が市街地であることも踏まえ、現在時点ではその潜在的な危険性から可能な限り交戦を避ける特別収容プロトコルが制定されています。

以下はSCP-XXX-JP発生事案の抜粋です

日付: 20██/08/06

運搬対象: クマゼミ(Cryptotympana facialis)3匹

状態: 歩行者によって踏み潰されたと思われる

所要時間: 約20分

日付: 20██/12/24

運搬対象: イエネコ(Felis silvestris catus)1匹

状態: 乗用車によって撥ねられた後、複数の車両により轢かれたものと推測される。原形を留めておらず、薄い皮状になっていた

所要時間: 約50分

日付: 20██/02/03

運搬対象: 60代男性

状態: 公園内において凍死。数年にわたりホームレス生活を続けていたとされる

所要時間: 約1時間

日付: 20██/04/01

運搬対象: 20代女性

状態: 5階建てのビルから落下したことによる転落死。自殺と推測される

所要時間: 約50分

インシデントレポートXXX-JP-01 - 日付 20██/██/██ : 20██/██/██、SCP-███-JPの収容作戦中、死亡したD-6676に対しSCP-XXX-JPが発生、財団との交戦事例が発生しました。当該事案時、超長距離からの射撃を用いたピレスロイド系薬物の散布が計画されていましたが、C群がこれを察知し狙撃手を襲撃、狙撃手は全治3か月の化学熱傷を負いました。

また、この交戦の際、SCP-XXX-JPはAH-1 コブラに似た構成の戦闘ヘリを使用し、これに対し交信を試みたところSCP-XXX-JPが電子音声によって応答、SCP-XXX-JPとの対話に成功しました。以下は当該通信記録の抜粋です。

交信記録XXX-JP-01 - 日付 20██/██/██

発信者: 名和伍長

対象: SCP-XXX-JP(クロオオアリ(Camponotus japonicus))

«再生開始»

(前半部は事実確認の為省略)

名和伍長: こちらとしては武力を用いた衝突よりも、何らかの形で対話の場を設けたいと考えているがどうか

SCP-XXX-JP: 貴官らの厚意には感謝する。しかしこれはあくまでも防衛行為であり貴官らの主張する交戦とは一方的なものに過ぎない。貴官らが我々の行動を静観するならばこれ以上の攻撃は行わない

名和伍長: こちらの資源を先に奪取しようとしたのはそちらであると考える。そちらが現在解体している人員は我々にとっての人的資源である

SCP-XXX-JP: 人的資源ではあるまい。貴官らにとってはこれらは路傍において踏み潰された畜生と変わりあるまい。我々はそう判断する

名和伍長: 訂正を求める。我々は彼らの人権を尊重し、可能な限り身体の安全と文化的な生活を保障している

SCP-XXX-JP: 建前はいい。彼らは路傍の虫である。踏み潰される蝉であり、気にも留められぬ蟻である。畜生に仏性はない、畜生に徳はない。だが、畜生にも魂はある。そして踏み潰され、見向きもされなくなったものに憐憫を垂れることは否定されるまい。誰にも気に留められぬ芥にただ葬列を作り、祷ることくらいは許されよう。貴官らは、大義の名の下にそれすら踏み躙るか

名和伍長: 個人としての返答は控えさせていただく。そのうえで、組織として応えるならばその通りである。命に優劣はないが平等ではない。貴官らの行為を黙認し、それがいつか我々を暗闇に引き込むならば看過はしかねる。貴官らの行為が踏み躙られるものを増やすことに繋がる可能性があるのならば

SCP-XXX-JP: 貴官らの意見は理解した。理解したがゆえに納得できるものではない。互いに損害を出さぬよう心を砕いた貴官らの申し出、改めて非常にありがたく思う。しかしそれを呑むことはない。貴官らの正しき傲慢は我々にとって許しがたき侮蔑なのだ。一寸の虫にも五分の魂、千丈の堤も螻蟻の穴を以て潰ゆ。これ以上の交渉は無意味であろう

(以降、SCP-XXX-JPからの交信は途絶える)

«再生終了»

事案発生から2時間後、部隊への被害を鑑み、攻撃は中止、撤退しました。これ以降の事案でSCP-XXX-JPとの交信は成功しておらず、財団による偵察や観察が判明した場合でも攻撃が行われるようになりました。

補遺: 20██/██/██、サイト-81██内のDクラス職員一時霊安室に対しSCP-XXX-JPの襲撃が発生。該当事案は密室への薬物散布において阻止されましたが、これ以降散発的にDクラス安置所への攻撃が行われています。SCP-XXX-JPがサイトの位置を把握している方法ならびに襲撃の方法については現在調査中です。


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