ハブ 独白

記事カテゴリが未定義です。
ページコンソールよりカテゴリを選択してください。


人身事故で、電車が遅れて舌打ちを鳴らした経験はないだろうか。障害を抱えた人間を、邪魔だと思ったり、薄気味悪く感じたことはないだろうか。困惑している外国人を、泣いている子どもを、見て見ぬ振りしたことがないだろうか。

そう考えることは悪いことではない。知り合いでもない他人の状況を慮れるほど人間の処理能力は大きくない。だからこそ理解するよう努力せよと隣人は言う。だが、できるだろうか? 私はできると思わない。これは人類が薄情だからではない。世界が残酷だからではない。当事者になるまでは気づけないことがある。人はそれぞれの地獄を抱えて生きている。私は炎天下、倒れ込んだホームレスの横を自転車ですり抜けたことがある。何故か? 汚かったからだ。そして、当事者ではなかったからだ。第三者は当事者の境遇に苛立ち、邪険にし、無視するのだ。

今なら、私は彼に手を差し出すだろう。倒れる苦しみや、死を望む孤独に接したからだ。社会に加わることはできず、生きていくだけしかできなかった。そして誰も私を見なかった。

自分を知ることもない世界に放り出されたわたしは、ようやく当事者になったからだ。

 

 

 

たまにですけどね、故郷のことを思い出しますよ。そんないいもんじゃなかったとは思います。虹色の煙に覆われて、たまに鳥が襲ってくる。こっちの人からすれば住みにくいでしょうね。なんか肺の構造も違うらしいですし。

だからこっちに来たときは驚きました。あのときみんなに助けられなければきっと、死んでいたでしょう。コミュニティにもよるらしいですけど、俺のとこはわりと仲間意識が強かったんです。多分、全員がもう故郷に帰ることを諦めていたからでしょうね。仲間たちがこっちに馴染んでいくたびに、ささやかですけどお祝いをしました。

……そう、もう故郷のことよりも、その記憶の方が強い。

ただ、故郷のことではっきりと覚えてる記憶があります。俺は母子家庭で育ってたんですけど、仲がいいとは言えませんでした。喧嘩も多かったし、俺も不満を持ってたんでしょうね。あの日。虹色の煙が全部晴れた日。何千年ぶりかの青い空をみんなが見上げた日。みんな、喜んでいたのに。何に気付いたんでしょうね、母親だけは何かが違いました。顔は覚えていません。覚えているのは、背中を強く押されて振り返ったときの痩せた手だけ。

その記憶だけを残して、俺の世界は滅びました。

……俺は、この世界に馴染みたいわけじゃない。でも、帰る場所もない。仲介者やってるのなんて、それだけの理由ですよ。寂しいけれど、仕方のないことですから。

ERROR

The kyougoku08's portal does not exist.


エラー: kyougoku08のportalページが存在しません。利用ガイドを参照し、portalページを作成してください。


利用ガイド

  1. portal:2700573 ( 03 May 2018 13:41 )
layoutsupporter.png
Unless otherwise stated, the content of this page is licensed under Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License