あ短縮

記事カテゴリが未定義です。
ページコンソールよりカテゴリを選択してください。

 大昔、この地域には国がありました。物や食べ物が溢れ、文化が栄えた大国でした。
 その国の学び舎に通う男はある日、同じく学び舎に通う一人の女に恋をしました。その女は、学び舎がある地域の領主の娘でした。
 男は周囲には隠していましたが、魔術を扱うことができました。しかし男は本当の愛を欲したため、魔術を使って女の気持ちをどうこうするなどとは考えませんでした。
 男は身分違いの恋であることを承知しながら必死に女を誘いましたが、女はそれら全てに素っ気なく返しました。しかし男の必死さに確実に惹かれてもいました。

 学び舎の卒業も間近というある日、女は領主たる父親から婚約者の存在を知らされました。あまりにも急でしたが、従うしかありませんでした。
 男は当然婚約者の存在など知らないので、卒業を記念した催しにどう女を誘うかだけを考えていました。そして、男はある魔術を使うことを思いついたのです。

 男は、星がよく見える小丘へ女を誘いました。そして、とっておきの魔術を使いました。
 女は感動し、涙を流しました。男が手を振ると、夜空の星々が動き出し、女への愛の詩を綴り出したからです。しかし、女は男の誘いを断りました。父を裏切れなかったのです。
 女が去り、男は絶望しました。男はもう一度魔術を使い、新たな詩を夜空に書き加えました。

 男と女が再び出会うことは、ありませんでした。

「何度見ても、悲しい話だ」

 大柄な体の男が、その厳しい顔を歪ませながら静かに涙していた。
 そんな男を揶揄うように、男の右腕にはめられた腕時計型端末から落ち着いた声が発される。

「またそれを見ているのかい、ミル。飽きないね」
「マックス、いいものは何度見てもいいんだよ。」
「そういうものかな」

 ミルと呼ばれた大柄の男は旅人である。元々は孤独な旅を続けていたが、ある日"同盟"という組織に勧誘され、言われるがままにほいほいと入ってしまった。
 "同盟"の目的は、世界に蔓延る異常存在("同盟"は異類と呼ぶ)と人類がどのように共存するかを探るというものである。
 "同盟"の探訪者はみな各地の共存体を巡り、それぞれの異類との付き合い方について記録を付ける。そして、各共存体との友好度を測り、さらなる情報収集に着手するのだ。
 この活動のサポートのためにあてがわれたのが、ミルがマックスと呼んでいる腕時計型の端末である。端末にはとある異常存在の残滓が吹き込まれており、意思を持ち会話をすることができる。また、翻訳に関してもこれらの端末の領分であった。
 
 ミルは奇跡を起こす"聖地"が存在すると聞いて、雨の降りしきる中このキッサの村にやってきた。しかし、奇跡は星がよく見える夜でないと起こらないらしく、晴れるまでしばらくの滞在を余儀なくされていた。

「早く奇跡をこの目で見てみたいものだ」

 涙を拭ったミルが、部屋の天井を見上げながら言った。

「この村の調査もあらかた終わってしまったしね。まあ、気長に行こうよ。キッサの人たちは良くしてくれるし」
「ああ、変な気を起こさない限りは安全だろうな」

 マックスの言う通り、キッサに住む人々はミルを歓迎していた。ミルが"同盟"の探訪者として行う調査にも協力を惜しまず、食事や宿の準備さえも村人たちがやってくれている。特に村長の娘であるマナリは幾度となくミルの助けとなっていた。キッサの伝説をミルに聞かせたのも、それを書き写す許可をくれたのもマナリであった。
 マナリは村における高待遇の代わりに、ミルにひとつ対価を要求していた。それはミルがこれまでにしてきた旅の話である。どうやらこの村の人々は娯楽に飢えているらしく、稀にやってくる旅人を歓迎しては旅の話をしてもらっていたようだ。ミルはそれを快く受け入れて、マナリを含めた村の人々に毎夜毎夜これまでのことを語った。
 弱いくせに何度もこちらへ向かってくる鉄の男の話、体内に潜り込むことができる熊の話、『悪霊の縄張り』と噂されていた更地の話。面白おかしく脚色したり、他の探訪者から聞いた話を交ぜたりしながら、ミルは村人たちの歓迎に応えていった。

「で、調査の結果何がわかったんだい」

 マックスが、キッサで手に入れた情報の整理に着手し始めたミルに問うた。

「異類が文化に与える影響かな」
「ふうん」
「他の村と気候も土壌も同じようなものだから作物は似通っているし、生活様式も特筆すべき点は見られない。唯一違うところは――」
「"聖地"だね」
「ああ。この村の文化といえるものは、その何割かが聖地やその伝説に影響されている。伝説を模倣した祭りをやっていたり、通過儀礼に頻繁に聖地が出てきたりな」
「この村で何度聞いたかわからないよ。"聖地"ってワード」
「これだけ身近に異類があれば、否が応でもそうなるさ。一番驚いたのは詩作だけどな」
「あったねえ。会う人みんなが披露してくれたっけか」

 ミルは、マナリがキッサの伝説を話してくれた際に交わした会話を思い出した。

「以上がキッサの伝説です。聖地にて見られる奇跡というのは、男が使った魔術そのものなのです」
「そんな、そんな話が……」
「お泣きにならないでください。ふふ、感動的なお話ですものね」
「ええ、とっても」
「残念ながら、詩に使われている言葉は大昔のもので、我々は読むことができないんですけどね」
「そうなんですか。てっきり知られているものかと」
「ええ。伝説だけが受け継がれてしまって、実際に詩を読むことのできるものはいないのです。そのためか、皆内容を予想しようと自分で詩を作ったりしているのですよ」

 ミルは記録帳のページをめくり、挟んでおいたメモ紙をいくつか取り出した。メモ紙には文字がびっしりと書き込まれている。

「なんだいそれ」
「気に入った詩を書いたメモだ。単純に出来がいいのとか、面白い発想のがあったからな」
「へえ、たとえば?」

 ミルが疑問に答えると、マックスは興味深げに聞いた。というのも、外に出ている間は翻訳に集中していて、マックスは村人の詩に耳を傾ける暇がなかったのだ。

「小さな男の子のものだが、付け足しの部分が全部罵倒になっているやつとか」
「それがいいのかい?もっといいのあるんじゃないの?」
「伝説でもあった通り、魔術師が綴った詩は愛の告白の部分と、女に断られた後に付け足した部分がある。大抵の人はそれぞれを愛の詩、絶望の詩とするんだが、彼は付け足しの部分を率直な女への罵倒の詩にしていた。詩自体は単調で、気持ちを純粋にぶつけるようなものなんだが、逆にそれが面白くてな。思わず書き留めてしまった」
「なるほどねえ。たしかに、あれだけの準備をしてこっぴどく振られちゃったら罵倒もしちゃうかもね」

 ミルはさらに別のメモ紙を取り出して、思い出したかのように呟いた。

「他に、付け足しの部分は詩ではない何かと言っていたご老人もいたな」
「詩って伝わっているのに?」
「あの伝説もいつできてどう伝わってきたか定かじゃないからな。いくらでも変化しうる。そういう意味で、詩ではないと断言していたのが面白かった」

 

「まあ何にしろ、キッサの人が

 
 

 

集村 - 53

友好度 - 高

異類の内容 - 奇跡を起こすという小丘。この村や周辺では"聖地"として崇められていた。ここで夜空を見上げると、星々が動き出してとある言葉を形作る。キッサの伝説で語られている、主人公が愛する女性へ告白するために使った魔術。内容は非常に緻密な詩らしいが、大昔の文字を使っているため誰も読めないようだ。

コメント - 直近で訪れたアウルやタグラザとあまり変わらないように見えたが、文化面では"聖地"の影響を受けていた。また、その聖地に関する伝説が代々受け継がれている。
娯楽に飢えている村人たちは、旅の話さえすれば色々ともてなしてくれる。友好度は高いと思われる。

  • 星々による奇跡を下へ書き写した。読めないということがこれほど煩わしかったことはない。マックスの意固地にも困ったものである。

HI BECKY

ME + YOU FOREVER

WILL YOU GO TO THE PROM WITH ME?

COMPLETE MESSAGE

MESSAGE COMPLETE

CANCEL

CANCEL MESSAGE

PLEASE CANCEL MESSAGE

FUCK

探索担当 - ミル・█████

 


ページコンソール

カテゴリ

SCP-JP

本投稿の際にscpタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。

GoIF-JP

本投稿の際にgoi-formatタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。

Tale-JP

本投稿の際にtaleタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。

翻訳

翻訳作品の下書きが該当します。

その他

他のカテゴリタグのいずれにも当て嵌まらない下書きが該当します。

コンテンツマーカー

ジョーク

本投稿の際にジョークタグを付与する下書きが該当します。

アダルト

本投稿の際にアダルトタグを付与する下書きが該当します。

既存記事改稿

本投稿済みの下書きが該当します。

イベント

イベント参加予定の下書きが該当します。

フィーチャー

短編

構文を除き数千字以下の短編・掌編の下書きが該当します。

中編

短編にも長編にも満たない中編の下書きが該当します。

長編

構文を除き数万字以上の長編の下書きが該当します。

事前知識不要

特定の事前知識を求めない下書きが該当します。

フォーマットスクリュー

SCPやGoIFなどのフォーマットが一定の記事種でフォーマットを崩している下書きが該当します。


シリーズ-JP所属

JPのカノンや連作に所属しているか、JPの特定記事の続編の下書きが該当します。

シリーズ-Other所属

JPではないカノンや連作に所属しているか、JPではない特定記事の続編の下書きが該当します。

世界観用語-JP登場

JPのGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。

世界観用語-Other登場

JPではないGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。

ジャンル

アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史

任意

任意A任意B任意C

ERROR

The Pagema157's portal does not exist.


エラー: Pagema157のportalページが存在しません。利用ガイドを参照し、portalページを作成してください。


利用ガイド

  1. portal:2680880 (31 May 2018 16:12)
特に明記しない限り、このページのコンテンツは次のライセンスの下にあります: Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License