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簡易通達、2018年11月6日。
財団管理下、横須賀市第6区████アノマリー空間に由来不明の建造物が出現。
すでに無人機による内部の簡易探査、およびマッピングは完了済み。
敵性存在は確認されず、ヒューム値も安定。最終危険度査定に人員調査を許可。
███████の後、機動部隊に-9("モータルオフィサー")派遣が決定。
████████、██████████████。██████████。
なお、当任務には危険性、緊急性、共に軽微と判断されたため、投入資源は必要最低限とする。
—-PiPiPiPi、PiPiPiPi
インカムからのコール音に足を止めたオニキスは、再度周囲を警戒し、異変が無いことを確認して通信に出た。
『 こちら、マーズクラウド。
北校舎3階の男子トイレにいる。だれか聞いているか』
「フォアオニキス、こちらは東校舎3階の理科準備室。
感度は心許ないが音質は良好、よく聞こえているぞ」
『ライナーリザード。北の屋上だ、……っと。
スマン、いま校庭のブラキオサウルスと目が合った』
『……他に近くにいる奴はいないらしいな。
やはり通信可能な範囲に制限が掛かっているようだ。
仕方がない、俺たちだけでもマッピングの成果を共有しておこう』
オニキスは左前腕に装着した端末を操作し、無線を通じて二人の端末と同期させた。彼らの装備品は全て、財団での現行品からざっと十七世代は型落ちの装備だ。それでも平時なら5秒もかからない工程だが、今回は電子機器間の通信に原因不明の制限が掛かっている。
オニキスは手頃な椅子に腰を下ろした。2分程度はこの場を動けなさそうだ。たった2分だが、手持ち無沙汰だ。作戦中の雑談は控えるべきだが、ここまで来て構いはしない。
「リザード、今目が合ったっていうブラキオサウルスってのは、
首の長いやつか? トカゲみたいなやつか?」
『首の長い方だ。っつーか、任務中はトカゲとか言わないでくれって言ったろ。
リザードなんて名前つけられてからこの三十時間、
爬虫類が絡む話題は過敏になっちまう』
『名前一つで気にしすぎだ。コードネームなどなんでもいいと隊長も言っていただろう』
『それだってよ、講習じゃさんざん合理性とか効率性を追求しろって言ってたくせに、
コードネームとかまどろっこしいよな』
「じゃあなんて呼び合うんだよ。俺たちみんな本名覚えてねぇし、
まさか数字で呼び合うわけにもいかないだろ」
オニキスの語調はいささか辛辣だったが、他の二人から咎める声はない。
リザードが二の句を継げないでいると、代わりにクラウドが言葉を返した。
『俺たち死刑囚にはお似合いだろう。覚えているのは任務と、己の罪だけでいい』
『……名前は柔らかそうなのに、ずいぶんとお堅い考えだことで』
『まぁこれも、隊長の受け売りだがな』
「……地下に向かった隊長達は、今頃どうなってるだろうか」
『俺たちが地上部の調査を始めて5時間が経つ。地下もそれだけ広大複雑な構造をしているのか、あるいはすでに死んでいるのか』
『まっ、いいさ。俺たちは自分の担当箇所が調査できればその時点での帰還も許可されてる。さっさと仕事して帰ろうぜ』
Black in the Dark
#1: モータル・ヒューマノイド
「つまり俺たちがこれから突入するのは、ジュラ紀の恐竜が闊歩する異常空間。
その異常空間に突然出現した『小学校の校舎らしき建造物』だ。質問あるか」
モータルオフィサーの隊長、D-2930は大声を出すことなく、
しかし確実にコンテナ内の人員全てに届くハリと声量で伝達を区切った。
揺れの激しいコンテナの中、天井から垂らされた吊り革に掴まって伝達を聞いていた人員の中に、
D-2930とは逆側に座る10名ほどの人員は
片やD-2930の周囲に座る3名は、表情一つ動かさず、ただ黙々と装備のチェックに勤しんでいる。伝達中であってもその手は止まらなかった。話を聴いていないわけではなく、彼らにとっては手を止めて聞き入らねばならないほどの情報ではないのだろう。彼らの練度の高さ、場数の多さが表れている。
「……北校舎は終わりそうだな。どうする、割り振りが終われば離脱も許可されている」
『そうだな、俺はまだ余力がある。
隊長たちが向かった「地下」は別として、他の応援に向かってもいい』
『俺とクラウドがいる北校舎は2階の渡り廊下から中央校舎へ行ける。そっちに向かおう』
「了解した、俺は東校舎の調査を続ける」
『OK、オーバー』
通信を切ったオニキスはインカムのノイズが耳の奥のほうに残っているのを感じた。
首を回して気合を入れ直し、部屋の内部をぐるりと見渡す。
ガラス張りの戸棚には大量の備品が並んでいた。人間の骨格標本が一体と、哺乳動物らしい骨格標本が三体机に置かれ、周囲にはカビた空気が充満している。
恐竜の闊歩するジャングルの中にあるというのに、この異常空間は異常に静かだ。加えて人のいない学校の校舎などは、特に静寂が耳を痛めつける。ましてや建設されて間もないであろう新築の建物特有のシンナー臭さと、人の痕跡が皆無であればこその不気味さまである。
・・・
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アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:2677442 (20 Apr 2020 12:22)
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