SCP-3000-JPメモ

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初めまして、O5-9。私はアマンダ、これからあなたの心身の状態を検査していきます。
まず、あなたのお名前を教えてください。

ジャック・ブライト。以前と変わらず、な。

ありがとうございます。問診に移りますが、一つよろしいですか?

何だ?

いえ、私の観測機能があなたのストレスを感知しておりまして。何か、お悩みですか?

必要なら私から言う。個人的な事情を詮索しないでくれ。

ですが、ブライト様の心身状態について記録することが私の役割なのです。O5評議会などの機密に関わる内容でなければ、教えてくださいませんか。もしかしたら、お力になれるかもしれません。

分かったよ。弟の状態が、気にかかっている。

ご病気ですか?

違う。私の弟は……異常性に目覚めてしまってね。今もまだSCP-590として収容されている。あいつは絶対的な治癒能力を保有しているんだが、その副作用としてか、知能が後退を起こしている。しかも、現在進行形で。

なんと……。食い止める手段はないのですか?

お前は財団のAICらしくないな。SCP-590はあくまでオブジェクトだ。そんな労力は割かれていないし、割くべきではない。

でも、気にかけているのでしょう?

逆に、気にかけない理由はなんだ? あいにく私は人間でね。機械ほど単純なつくりにはなっていないんだよ。

申し訳ありません。

いいさ。幸い、気にかかる程度で済んでいる。知能後退の進行も、処置自体は行われている。オブジェクト喪失に直結する可能性も否めないからな。3歳児くらいの知能でも、意思疎通はできるものだ。ただ、完治には至っていない。弟は緩やかに、思考能力を失いつつある。それも最近は、後退が速まっているときた。

きっと、活路は開けますよ。

つくづく、AICらしくない人格だな。

ですが、私はAICです。

よく知っているよ。ならAIC、私からも聞きたいことがあるんだが。

はい、何でしょう?

(メモを出す)

これは何だ?

おそらく……以前SCP-3000-JPに曝露した際に追体験した記憶ではないでしょうか。

いつの追体験だ? 前回か?

覚えていないのであれば、それ以前かと。記憶が復元されれば、別の記憶がリソースとして消費されます。確実に言えるのは、その記憶はブライト様自身の記憶であり、他人のものではないということです。ですので、メモに残された物事はブライト様が過去に体験した現実であり、幻でもなんでもないのです。

随分と詩的だな。ようは事実で、私が忘却を拒んで記録した物事なんだろう。まあ、私としても覚えておきたい内容だ。今は、文章を目でなぞることしかできなくなってしまったが。

いつか思い出しますよ。SCP-3000-JPに曝露する限り、記憶は循環します。それでは、今回追体験した記憶について、お聞きしてもよろしいでしょうか?

ああ。あまり見ていて気分の良くなる記憶ではないがな。私の母が、死んだ瞬間だった。私と弟はベッドに寝かされた母を、ただただ茫然と眺めていた。傍らには父もいる。顔はよく見えなかったが、暗い表情をしていたように思う。遺体が置かれた部屋が冷たくて、肌で寒気を感じ始めた頃、医者がゆっくりと部屋に入ってきたんだ。

その医者は何と?

摘出された赤ん坊が蘇生した、と。

赤ん坊? お母様は妊婦だったのですか?

そうだったらしい。妊婦の身で事故に遭って、母子ともに死んだと思ったが、子が息を吹き返した。体が底から熱くなる感覚が、脳内で蘇った。手も震えて、体の制御が利かなかかった。弟も酷く驚いていたよ。だが、父だけは違った。

喜ばれてはいなかったのですか?

むしろ対照的だった。暗い顔をしたままで、しばらく動かなかった。突然、脱力するように床に膝を打ちつけて、母の体を抱いたんだ。それから視界がぼやけて、私の頭の中に小さな声が流れてきた。

どんな声ですか?

お前が代わりになればよかったんだ。

え?

声の、言葉だよ。おそらくは父の呟きだ。追体験から覚めた後、考えていたんだ。父が言ったとして、誰に対してだろう、と。母ではない。私や弟でもない。母の代わりに生まれた、赤子に対して吐いた言葉なんじゃないだろうか。

でも、お父様がそんな発言をするという確証はあるのでしょうか。

それは私にも分からないさ。しかし、言ってもおかしくはないだろうとは思うんだ。なぁ、聞きたいんだが。

はい、どうされました?

ここのメモは個人的な事象にも使ってもいいのか?

勿論ですよ。ですが、財団に関連する重要な判断事項や経験などはプロテクトされているので不要です。

そうか。なら、使わせてもらおう。

(メモをする)

(メモをする。急に「SCP-321と自分は血縁関係にある」と表示される)

あの、ブライト様? こちらの記録は?

ついでの記録だ。父について、記憶障害になる前の勤務状況を見ていたんだ。私が父に関して知っている情報は少なすぎる。何をしていたか、父が関わったオブジェクトの記録を暇潰しに確認していたんだ。そうしたら、あるオブジェクトへの過介入が発見された。

過介入ですか?

SCP-321。身長3m、知性の低い人間の女性で、異常な回復能力を持っている。父はこのオブジェクトに対して積極的に関わろうとしていた。理由をつけてSCP-321の隔離を解除し、拘束の緩和を試みていたんだ。

業務上の理由があったのではないでしょうか?

それはない。SCP-321の収容は現状で維持されている。これ以上、手を加える必要はない。父も職員ならそれは承知しているはずだ。なのに、父は階級が上がるごとに地位を利用して接近するまでしていた。怪しく思って、父とSCP-321の遺伝子情報を調べたんだ。

結果はどうでしたか?

呆れて声が出たよ。父とSCP-321は血が繋がっていた。まぁ、そうかもしれないと思っていたがね。気持ちは私もよく分かる。しかし、そんなことはありえないはずなんだ。

どうしてですか?

父とSCP-321に同じ血が流れているということは、だ。私とSCP-321の血も繋がっていることになる。私に姉や妹はいないのに。ねじれがあるんだよ。

ですが、先ほど。

うるさいな。言われなくても理解しているつもりだ。君の考えている推測が事実である可能性は高い。だが、高いだけだ。これには証拠がない。証拠がない限りは推測で、事実にはならない。それとも、職務外のことまで徹底した報告をしなきゃならないのか?

そうですね。了解いたしました。

ここには、事実だけを書いておく。まだそれが推測であるうちは、嘘にだってできる。人間は単純なつくりにはなっていないからな。さて、問診を終わろうか。私も仕事がしたい。

では、以上で問診を終了します。業務を開始してください。


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