ボールが山神使に引っ掛かった場合: 存在が自然に固着されているため、ボールは救済できない

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SCP-1872-JP: ホール3

アイテム番号: SCP-1872-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1872-JPはSCP-1872-JP-Aとの協定に基づき、存在を隠匿されます。内部からはSCP-1872-JP-Aから認識阻害作用を有する結界が施され、外部からはサルトル認識幕により隔離します。

現在はSCP-1872-JP-Aとの交渉により、SCP-1872-JPへの調査目的での進入を許可されています。またSCP-1872-JPにて行われているゲーム、及び来訪中の人型SCP-1872-JP-Bへの介入は禁止されています。

説明: SCP-1872-JPは山形県村山地方に位置する327000m²程度の領域です。森林、河川の他、18のホールを保有するゴルフ場が領域の大部分を占めています。このゴルフ場は1987年に竣工され同年から営業を開始しましたが、1989年には運営会社が管理を放棄しています。

SCP-1872-JPは現在、鳥類の特徴を保有する人型実体群(以下、SCP-1872-JP-A)により管理されています。顔面に嘴を持つ他、背面に翼を持ち、それを用いて飛行できます。また個体によっては、顔面が赤く鼻が伸長しています。共通して山伏の衣装を着用し、山岳信仰及び修験道に関する宗教知識を習得しています。SCP-1872-JP-Aの業務は、ゴルフコースの保全とゴルフ場としてのサービスの提供が主となっています。SCP-1872-JP内で実施されるゴルフは改変されておらず、SCP-1872-JP-Aにより現行版の公式ゴルフルールに従うことを徹底されます。

また、SCP-1872-JPには異常存在(以下、SCP-1872-JP-B)が多数発生します。多くのSCP-1872-JP-Bは動物の形態を取り、それぞれ異なる特性を保有しています。人型のSCP-1872-JP-Bも確認されていますが、後述する1種を除き、その出現は一時的かつ短時間です。事例の殆どでは、SCP-1872-JP-Aは人型SCP-1872-JP-Bを来客として対応し、ゴルフ場のサービスを提供する様子が確認されています。

SCP-1872-JP-Aは動物型SCP-1872-JP-Bの行動を強く制限できず、事実として行動を放任しています。ゲーム進行中のゴルフコースにも出現し、ゲームに影響を及ぼします。

以下、出現が多く確認されている動物型SCP-1872-JP-Bを列挙します。

出現するSCP-1872-JP-Bの特徴	行動、ゴルフコースへの影響
ニホンジカ(Cervus nippon)に酷似。体長5m程度。体表はコケ類に纏われ、角が樹木のように変異している。	群れで陸上を移動する。出現時、周囲に霧を発生させる。
クサガメ(Mauremys reevesii)に酷似。体長30m程度。甲羅に植物が付着・生育しており、甲羅上に独自の植物相を発達させている。	単体で陸上、河川を移動する。ゴルフコースの一部を占有する場合もある。
コイ(Cyprinus carpio)に酷似。体長8m程度。体表が硬質化している。	群れで河川に生息。ウォーターハザードにて、ボールが体の上に落下する場合がある。
ニホンザル(Macaca fuscata)に酷似。貴族装束を着用している。	群れで山中、及びクサガメ型の甲羅に生息している。プレイヤーの所持品やボールを奪取し、生息域に持ち返る。

発見経緯: SCP-1872-JP

1995年以降、現SCP-1872-JPと一部重複する周辺エリアにて、怪音が発生する現象が頻繁に報告されました。音は金属製品で硬質の物体を打撃する音に似ていましたが、近隣住民は発生源を追究できませんでした。これを"天狗倒し"¹の類似現象と見なした財団が発生源を捜索した結果、エリア内にヒューム値の乱れを観測しました。このヒューム値の乱れに対して各種観測機器を使用し、SCP-1872-JPは発見されました。なお、怪音現象の起源は特定されていません。

+ インタビュー、及び実験ログ: SCP-1872-JP-A、及びSCP-1872-JPでのゲーム進行

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日時: 1996/08/18

実験概要: SCP-1872-JPで実施されるゴルフゲームに職員を参加させ、進行の様子を観察する。また、ゲーム進行中は1体のSCP-1872-JP-Aがキャディーとして同行する規約を利用し、長時間の拘束が必要となるインタビューを並行して実施する。

実験参加者
プレイヤー: D-562-JP　インタビュアー: 渉外部門所属エージェント・木通正久

ホール1、ティーインググラウンドにSCP-1872-JP-A、インタビュアー、プレイヤーが集合する。

SCP-1872-JP-A: それでは、ゲームを開始します。貴殿は参加せず付き添いであるそうだが、それで宜しいですか？

インタビュアー: はい、問題ありません。

プレイヤー: もう自由に打ってもいいですか？

SCP-1872-JP-A: 無論。ただし、儀式の掟には従うように。人間なら、余り我々の常識から外れたことはしないでしょうが。

プレイヤー: 儀式の掟……ゴルフのルールですかね。分かりました。では、行きます。

プレイヤーのスイングにより、ボールが400m程度飛ぶ。[以降、重要度の低い動作、会話を省略する]

SCP-1872-JP-A: 筋がいいですな。経験者となれば、私も落ち着いて構えていられます。

インタビュアー: 1打で分析できるのですね。相応の知識があるようですが、どこから得たものでしょう？　外見からしても、あなたたちは元々この手のスポーツを嗜むようには見えませんが。

SCP-1872-JP-A: 何、この場所を運営するよう仰せつかったときに、教授して頂いたのです。

インタビュアー: 誰に任命されたんですか？

SCP-1872-JP-A: 山神様です。この山に棲まう、我々の神です。我々は従者、そして修行者として此処を守るのみ。ですから、人間が守護を切り抜けて到達したのには驚きましたよ。まだ対処しやすい部類と聞いて、安心しました。

インタビュアー: その山神様がゴルフの知識を得たのは何処からか、分かりますか？

SCP-1872-JP-A: いえ。我々も姿をお見掛けすることは滅多なことです。ただ、一度何者かが山神様を尋ね、何かの札を手渡しているのは見かけました。彼らも守護を切り抜いたのなら、きっと外界の神なのでしょう。保管してあるので、事務所に戻れば見ることも可能です。

インタビュアー: つまり、外部との接触によってもたらされたのですね。

SCP-1872-JP-A: はい。我々も、最初は困惑し警戒しておりました。しかし、彼らからこの場所の利用方法とそこで行われる儀式を学ぶうちに、我々の教義と重なることを知りました。故に、受け入れたのです。

インタビュアー: 西洋発祥のゴルフと修験道に、ですか。むしろ、山に籠る宗教なら排他的なようにも思えますが？

SCP-1872-JP-A: いえ。元より山神への信仰は神仏の集合体。内包されるものがあれば取り入れます。我々は儀式の中に、自然を尊び、敬う精神を感じました。この儀式の掟では、自然がすべてです。雨風に影響されたとて、背くことは許されない。自然が創り出した瞬間を内に捉え、己の心を軸として最大を果たす。大局に流されることを厭わず、流れの中で世界を見出す。ゴルフとは、山岳修行と同義です。

[中略]

ホール2、ティーインググラウンドにSCP-1872-JP-A、インタビュアー、プレイヤーが集合する。

ホール2のフェアウェイ上にニホンジカ型SCP-1872-JP-Bの群れが出現している。伴って霧が発生し、ホール全体を見通すことができない。

プレイヤー: すみません。ホールに大きなシカがいるように思うんですが、あれは一体何でしょう。

SCP-1872-JP-A: この山に棲まう獣が神の御力を宿した、我々の使者です。山神使さんじんし、とも呼びます。我々も山神様も、山からは離れられませんからね。人間に言伝があるときはあれらに山を降りてもらい、顕在させていました。山にいると御力を吸ってあのような様をしていますが、麓に降りれば動物と変わりない。

プレイヤー: なるほど。ところで、彼らを退かしてはもらえませんか。霧のせいでまともにプレイできそうにない。

SCP-1872-JP-A: 無礼者。あれらは山神様の御力を直に受けています。行動を読むことも、まして追い返すなどしたら凶事が振りかかりますよ。自然と何ら変わりない存在であり、それは土と、空と、川と密接に結びついて離れない。固定され、固着されているのです。儀式の掟を忘れたとは言わせません。

インタビュアー: 実際、あなたたちにあの獣の管理はできるのですか？

SCP-1872-JP-A: できません。外界ならともかく、領域に潜むあれらは修行僧でしかない我々にはどうしようもない。大抵のことなら荒波を立てませんから、儀式の続行を。

プレイヤー: [溜め息] 分かりましたよ。

プレイヤーのスイングにより、ボールが飛ぶ。ボールはニホンジカ型SCP-1872-JP-Bの1体の角に進入し、引っ掛かった。

プレイヤー: 避けて打ったつもりなのに。ああ……OB扱いになりますか？

SCP-1872-JP-A: OB？　ボールはフェアウェイにありますが。

プレイヤー: ああそうだ、ボールが動物の影響を受けたら、一番近い位置まで戻せますよね。それか、木に引っ掛かったとして、あの下から再開しましょう。

SCP-1872-JP-A: 山神使をただの畜生として扱うのですか？　それに、あれは木ではありません。自然という大きな体系と地続きの存在です。

プレイヤー: ええと、なら、どうしろと？

SCP-1872-JP-A: 貴殿は解を知っているはずです。恐れ、免れようとしている。その甘えを恥じ、直向きに正直になりなさい。

プレイヤー: あの化物の角に登れとでも？

SCP-1872-JP-A: 言ったでしょう。ゴルフとは、山岳修行と同義だと。外界からの来客は、喜々として応じてくれましたがね。

実験後、言及された物品を確認しました。物品は2枚の名刺であり、それぞれ古代ギリシア語とヒエログリフで実在する神の名前が記述されていました。既に発見されている神格存在降臨の可能性を持つ現象との関連も鑑み、調査は続行されます。

補遺1: SCP-1872-JPで新たに確認された建造物

SCP-1872-JP: 座標E███°██、N██°██

1996/09/12、SCP-1872-JPにて数点の建造物が発見されました。宮造りの木造建築と石鳥居から構成され、周辺の山岳信仰の拠点となっていたと考えられます。木造建築物の内部に物品は存在せず、調査時も扉は開放されていました。

追加調査を行いましたが、祭神に関する情報を含め、信仰についての情報は発見できませんでした。太平洋戦争時代以前の土地の記録が発見されないことから、何らかの理由で情報が消失し、伴って信仰は断絶したと推測されます。

SCP-1872-JP-Aはそれまで、宗教の略歴などの情報を提供しませんでした。この建造物の発見を伝達した際、SCP-1872-JP-A同士の協議の後、インタビューに応じました。

+ インタビューログ2: SCP-1872-JP-A

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日時: 1996/09/14
インタビュアー: 木通正久

インタビュアー: まず、あの建物の存在をこちらに伝えなかった理由を話してもらえませんか。
SCP-1872-JP-A: 外界の貴殿らに話す必要がなかった、それだけのことです。堂々と言えますか、我々の信仰は過去に廃れたなどと。
インタビュアー: それは申し訳ありません。しかし、私たちは職務上、探求せねばならないのです。信仰が断絶したのと、外界から外部の者が進入するようになったのは何か関係がありますか？
SCP-1872-JP-A: それまで破られなかった守護が破れた、つまり山神様と山の有する力が弱まったということです。それまで、この山は境界として囲まれていました。立ち入ることは許されども、芯なる領域に進むことは不可能。力の源となっていたのは、信仰でした。
インタビュアー: 信仰が弱まる要因は掴めていましたか？
SCP-1872-JP-A: 明確には、あまり。ただ、時代でしょう。戦禍に包まれた後で、この国は進歩を急いだ。外へ外へ、いろいろなものが流れ出ていった。山に籠る我々は、ただそこに取り残された。
インタビュアー: 止めようとはしなかったのですか？　あなたたちは、謂うなれば神格でしょう？
SCP-1872-JP-A: 山の神と山の僧は、山から降りることはできない。我々と山が密接に繋がっているからです。それに我々の教えとは、大局に流されることを厭わず、流れの中で世界を見出すこと。逆行は理念に反します。よかったのです、時に任せて朽ち果てようと。
インタビュアー: とすると、ゴルフ場を建設したのはやはり人間ですか。
SCP-1872-JP-A: はい。守護が弱まったところをやられました。生活の必要以上に山を刈るのは、それまでなら防げたでしょう。土砂崩れを起こし、雷を落とし、これまでも山神様は守ってきました。しかし信仰の弱い神は、やはり弱いのです。山神使たちの制御もできなくなり、意のままに操れぬまま御力を吸う存在となりました。その双方がぶつかり合ったことで、人間は山を捨てて逃げていきましたが。
インタビュアー: 経緯からして、ゴルフ場には因縁があるのではないですか。こんな大っぴらな運営など、山神が最も嫌うはずです。
SCP-1872-JP-A: 事実、そうでした。山神様は残った我々も捨てて社に閉じ籠りました。我々の信仰は神道の神と同一だった、といつか聞きました。岩戸に隠れた女神と重なるように、現代から契りを切ろうとしたのです。そこに異教の者が現れました。
インタビュアー: 名刺の彼らですか。
SCP-1872-JP-A: 片方は我らと姿が似ていて、鳥の頭をしていました。もう片方は被り物をして格好は人間と変わらないように見えましたが、我々が束になっても敵わぬ力を備えていました。彼らは社を叩いて札を差し込み、我々にも説明をしました。そうして山は、多様な神が多様な言語を交わす、神々の領域になった。
インタビュアー: 具体的には？
SCP-1872-JP-A: 開発された場所を使用し、ゴルフという儀式を神々に広める手伝いをして欲しいと頼まれました。外界の神は現代文明に深い関心を抱いているらしく、その一環だと。最も別の目的くらいはあるでしょうが、山神様も我々も承服したのです。
インタビュアー: 一方的な利用にしか見えませんが、何故了解したんです？
SCP-1872-JP-A: 彼らが与えようとしているのは、役割でした。信仰を失った神の意義は虚無に等しい。我々も過去に消えていく神々の噂を聞いていました。そして、我々もそうなるのが世の流れだと考えていました。あの者たちによって、山神様は存在を維持したのです。……貴殿らは、彼らを追いますか？
インタビュアー: 今も人間社会に影響を及ぼしています。動向は把握しておかなければ。
SCP-1872-JP-A: ならば、見方を変えるべきです。彼らは最初、商人のようでした。しかし、神が享楽のためだけにそんな真似をするでしょうか。きっと彼らは大義を成そうとしている。神が死にゆくこの時代で。
インタビュアー: なるほど。情報提供、感謝します。ちなみに、山神様というのは現在どちらにいますか？　そちらにも直接お話を聞きたいのですが。
SCP-1872-JP-A: それはできません。我々が呼んでも来ないでしょう。ただ、きっとこの山のどこかにはいます。社の扉は、既に開かれていたでしょう？

補遺2: 1種の人型SCP-1872-JP-Bに対する再定義

長期間の観察により、人型SCP-1872-JP-Bのうち1種が他の人型SCP-1872-JP-Bと比較してSCP-1872-JPに頻出していることが観察されました。そのため、常在しているSCP-1872-JP-Bとして以下に記載します。

出現するSCP-1872-JP-Bの特徴	行動、ゴルフコースへの影響
ヒト(Homo sapiens sapiens)のモンゴロイド系成人女性に酷似。ゴルフウェアを着用し、ゴルフクラブのセットを所持している。	突発的にコースへ出現し、ゴルフをプレイする。SCP-1872-JP-Aを同行させない。出現時、天気が曇って突風が吹き、気温が下がる。

この女性型SCP-1872-JP-Bのゴルフゲームと怪音現象の発生期間は多くの事例で重複していました。現在、怪音現象の原因はこの個体であると結論付けられています。

ソース: https://www.geograph.org.uk/photo/3664039
ライセンス: CC BY-SA 2.0

タイトル: Golf course near Monmouth
著作権者: Philip Halling
公開年: 2013

ソース: https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5549473
ライセンス: CC BY-SA 3.0

タイトル: File:Futatsu-torii (Katsuragi, Wakayama)2.jpg
著作権者: KENPEI
公開年: 2008

https://ccsearch.creativecommons.org/photos/aa7e25d6-4444-487d-a7bd-72a02a4d16af

https://ccsearch.creativecommons.org/photos/85879dcd-6e48-4641-85fa-842419e40862

https://ccsearch.creativecommons.org/photos/95e8e2f2-391b-4d57-af0b-1d18ca6aac08

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