A.D. 3341 - ある探植家の行動記録
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 風の吹きさらす殺風景な景色ばかりが広がるこの場所で、私はじっとしゃがみ込んでいた。

「このあたりはもう探索済みか……」

 ただ何も考えずにしゃがんでいたわけではない。私は植物計測器プラントウォッチに備え付けられたモニタに何も表示がされていないことを確認すると、浅黒く堅い床面から立ち上がって、かぶっていたフードを手で押さえながら周囲全体を見渡した。
 強い風が吹いている。ということは、まだこのあたりは吹く風があるくらいには空気が存在しているということ。これなら、まだなんとかなる。探せば、使える植物の1つや2つ、見つけられるはず。私は自分で感じている不安よりも、楽観視とも言えるかもしれない希望に、追いすがっていた。

「カオナガ、何か見つけた?」

 私は左手に通信端末を持ち、それに向かって、通信相手のカオナガに現状を問いかける。異常な電波ノイズが走るこの場所で安易に無線の使えない状況にあるために、私は有線ケーブルをカオナガとつないで通信していた。

「いいえ 到達地点には 確保対象は ありません」

 ぶつ切りの女性の声らしき音声データをつぎはぎにしたかのようなしゃべり口が、端末のスピーカーから聞こえてくる。

「そう、そっちも収穫なしか。……いいよ、戻ってきて」
「指示を 受理しました」

 ガシャン、ガシャン、ガシャン。
 鋼鉄の奥、金属構造体の形作った巨大な隙間から、重々しい足音が聞こえてくる。しばらくすると、4つの赤色に輝く眼がこちらへと近づいてくる。巨躯を引きずるようにやってきたマシン。彼こそが、私の唯一のパートナー、カオナガだった。

「お帰り、カオナガ。今日はこの辺にしておこう」
「はい オーナー」

 私は彼につないでいた通信ケーブルを巻き取り、彼の背中のバックルにしまい込む。ここには何もないことがわかっただけでも、よしとするべきだろう。あまり長居するわけにもいかない。この調子だとすぐにでも夜になりそうだ。敵対するマシンやインクが現れる前に、(セーフティポケット)


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