絵本Tale「ボクのゆめと、もののけと(仮題)」

 ある町に ケイスケという 男の子が すんでいました。
 ケイスケは どこにでもいるような ふつうの小学生でした。でも ひとつだけ ほかの子とはちがう とくべつなことを 知っていました。
 ケイスケは このせかいには 科学で せつめいできないような ふしぎなものや 出来ごとや 生きものがすんでいるのを 知っていたのです。

 でも ケイスケは そのことは だれにも言いませんでした。
 そのことを 友だちや クラスメートに 言っても だれも 信じてくれないのは 分かっていたし、 だれにも そのことを 言えない りゆうが ありました。


「いいかい ケイスケ。 パパが はたらいている ひみつそしきの ことは だれにも言っちゃ いけないよ」

 ある日の よる。
 ケイスケは パパから さいしょに そう言われて このせかいの ひみつを おしえてくれたことを 思い出しました。
 ケイスケにとって パパは じまんの パパでした。ケイスケのパパは ケイスケもよく知らない ひみつそしきで はたらいていました。 パパは はたらいているところの はなしは あまりしませんでしたが そのしごとは 「世界をまもる とってもだいじな おしごとなんだよ」 と、 ケイスケにいつも かたっていました。
 そのときの パパの ほこらしげな顔は ケイスケの いちばんおぼえている パパの 顔でした。

 ケイスケは そのはなしを パパとするたび いつもパパに 言っていました。
「ボクもいつか パパと 世界をまもる おしごとを したい!」
 そう言うたび パパはケイスケに ゆっくりほほえんで 言いました。
「それはうれしいな! でもケイスケ。 パパのおしごとは とってもきけんなものなんだ。 だから本当に パパのおしごとを したいなら ちゃんとべん強 しないといけないよ」
 ケイスケはすこし くるしそうな顔をして こくりと うなづきました。

 でも パパは ケイスケから そのことばを聞くたび 少し うれしそうに 楽しみそうに わらっていました。


 パパから そんなはなしを 聞いてから 一年が すぎたころの ある夏の あつい 日のことです。
 なぜかパパは 夏休みなのに 家にいちども 帰って きませんでした。

 いつもなら 夏休みの ときは かならずしごとを休んで 家に 帰ってきます。 ひみつそしきの しごとは いそがしく 家に 帰らない 日も つづくことが よくありましたが、 夏休みの ときは かならず パパは 家に帰って きていたのです。
 なのに この時ばかりは なぜかれんらくも なく ケイスケは しんぱいそうに パパが 帰ってくるのを まって いました。

 でも まってもまっても パパは 帰ってきませんでした。
 ケイスケは すこし こわくなってしまいました。


 パパが 帰ってこない ことに 気づいて 三日が たった ところで ケイスケはひとつ けつい しました。
「よし、 パパを さがしに いこう!」

 そう言って ケイスケは すぐに じゅんびして 友だちの マサトシと サザミの ところへ かけ出しました。
 パパは どこにいったのか まったく分かりませんでしたが せめて 親友の 二人と いっしょに さがせば 見つかる 気が したのです。

 夏休みの ことなので マサトシと サザミは すぐ近くの 公園で あそんでいました。ケイスケが 公園に つくと 2人に 声を かけました。
「ぼくの パパが 三日も 帰って こないんだ」
 ケイスケが そう言うと 二人は とても おどろいた 顔を しました。
「家に 帰ってないって どうして?」
 帰ってこないって れんらくとかは ないの?」
 マサトシと サザミは しんぱいそうに ケイスケに といかけます。ケイスケは そのしつもんを うけて 答えるたびに ちょっとずつ かなしそうな 顔を しました。
 でも すぐに ケイスケは 目をこすって 二人の 手をとって 言いました。
「だから、 ボクのパパを さがしに 行こうと 思うんだ。 おねがい、 ボクに きょうりょくして ほしい!」

 こわがりで よわむしの マサトシは そんなことは 大人に そうだんしたほうが いいと 言いましたが ケイスケは 聞き入れませんでした。
 どうして? と マサトシから 聞きかえされましたが それは パパが ひみつそしきで はたらいてるからだとは パパとの やくそくがあって ケイスケも 言えませんでした。
 ぎゃくに ぼうけんや たんけんが 大好き サザミは 「なんだか 面白そう!」 と うれしそうに 言いましたが ケイスケが そのことばに かなしそうな 顔を 見せてからは ちょっとだけ おとなしくなりました。


 そのあとの ケイスケと マサトシと サザミは 町のあちこちを 歩き回って ケイスケの パパを さがしまわりました。
 けれど どこを さがしても パパの すがたは 見えませんでした。

「……どこに いったんだろう」
 日も かたむいて 夕方に なってきたころ。 ケイスケは 歩きつかれて もといた 公園の ベンチに こしかけました。
「大じょうぶだよ 多分 パパは すぐに 帰ってくるよ」
 サザミは うつむいた ケイスケの かたに 手をおいて やさしく なぐさめます。


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