AM4:15、初夜

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「……弐条、さん」
「あ、アマリア……っ」

 2つの鼓動、2つの吐息、2つの嬌声。

 互い違いに木霊するその声は、ほの暗いく僅かに甘い匂いが漂うホテルの一室の、官能的な空気感をことさらに補強している。熱量を持った2人のAFCが、ただゆっくりと流れる時に身を任せるように、濡れそぼったシーツの上に身体を重ね合わせていた。

 AM4:15、それは、師走の早朝にかけての出来事だった。







 時を遡ること7時間とわずか。今年の末も近い冬空の下。2人は様々な人達が行き交う都心の一角を歩いていた。
 ヌートリアの女性、アマリア・アヒージョ・リュドリガ
 そして、イヌ科AFCの男性、福路弐条
 それぞれ互いに、彼らはアマリアと弐条と呼び合うほど、2人は親密な仲だった。
 絶妙な緊張感と、寒さに負けず劣らずの熱を持った手を繋ぐその2人の馴れ初めは、今からそう離れた頃の事ではない。

「ねえ、弐条さん」

 頬を染めたヌートリア──アマリアが、彼に問う。
 彼は歩みを止め、握った手を離さぬまま振り返り、その言葉に耳を向けた。

「私は、今日この日が来るのを、待っていました」

 目をそらすように身体を横へ向けたアマリア。緊張しているのは彼女も一緒であった。

「私はこの国が好きです。兄と初めてこの国に来た時、右も左も分からなかった私に、最初に手を貸してくれた貴方と、今年も過ごせたことが。私は、とても幸せです」

 落ちつかぬ呼吸の合間を縫って紡がれる言葉は、確かに彼の心に刻まれていく。
 彼は少し驚いたような顔を向けたが、すぐにその表情を砕き、アマリアの方へと歩み寄っていく。

「アマリア。……うん。僕も、とても幸せなのだ。大変な一年だったけど、それでも君にまた、こうやって年を過ごせることが、僕にとってもすごく幸せだと思ってるのだ」

 彼は、弐条は彼女の柔らかい肉球と水かきを備えた小さな手を握って、ゆっくりと己の胸へと引き寄せた。
 アマリアはその動きに身を任せるように、毛並みを沿わせるように彼に身を預ける。

 アマリアは嬉しかった。弐条と、この日本で過ごせたことが。
 彼の存在がなければ、きっと彼女はこの国の問題に取り組むきっかけを、見つけられなかっただろうから。



 2人の力強い情動を祝福するかのように、しんしんと柔らかな雪が辺りに散らばり落ち始めた。
 それがホワイトクリスマスだと気がついて、最初に相手へ伝えたのは、どちらだったのか。

 そんなことを思慮することすら、今の2人にとっては些細なことのように思えるほど、この時間を愛おしく過ごしていた。







 寒空に晒されて夜を過ごすのも2人にとっては楽しいことではあったが、それ以上に、この日の2人は高ぶっていた。
 お互いに口には出さない。けれどもわかりきった目的。それを達成するために、今日この日、彼らはこうやって巡り会っている。

 都心から少し離れたところのホテルの一室を間借りしたアマリアと弐条は、お互いにゆったりとベッドに腰掛けていた。
 今はすぐにそのような行動に出られるほど、彼らは性急ではなかった。
 2人は顔を合わせず、床を見つめている。AFC特有の弐条のイヌ科の尾っぽが、ぽふぽふとアマリアの尾っぽを叩く。アマリアはそれが彼の無意識に発する喜びの表現であることを知ってか知らずか、ゆっくりと距離を詰め、肩を寄せ合う。

「弐条、さん」
「うん、アマリア」

 2人は初めてだった。このような施設を借りるのも、同じ部屋の空気を吸うのも、そして、同じ夜を過ごすのも。
 だからこそ、互いに寄せ合う身に伝わる早まった鼓動を感じつつ、静かに頷き合っていた。
 これからすることに期待の感情を馳せながら。

「……。大丈夫、ですよね?」
「うん。……僕が、ついてるのだ」

 シーツに置いた手を重ね合わせる。先に動き出したのは弐条だった。
 彼はアマリアの身体をゆっくりと自分の方向へと向ける。頬を染め、赤くなった顔を俯かせて息を荒げているアマリアを見て、弐条は僅かな背徳感に背中がむずがゆくなる。
 普段、スペインの英雄として書籍に映る、そして名のあるAFC人権活動家としてメディアで目にする、あのアマリアとは同じ人物だと思えないほどに惚気た、女性の表情を浮かべるアマリアを目にして、弐条は自分が彼女にふさわしい人物であるのかと、ふと考えてしまう。

「どうしたん、ですか……?」
「え、ああ、いや……なんでもない、のだ。その、アマリアが……可愛くて」
「えっ……えへへ、嬉しい、です」

 弐条はとっさにごまかしたが、そのごまかした言葉がアマリアにとってはとても喜ばしいものだった。アマリアは彼から「可愛い」とは言われ慣れてはいたのだが、この時ばかりの空気で評される自身の魅力に対する感想というのは、どうにもさらに気持ちを昂ぶらせる何かが含んでいる気がしたのだ。

「私は、いつでもかまいません。……弐条さん」
「……うん、わかった、のだ」

 これが、最後の確認だった。互いの心の準備が整ったことを認識し合うと、弐条はそっと手をブラウスに手を掛ける。
 緊張で手が震えていることは、彼自身も理解していた。その原因もまた同じく──そう、彼は不安だったのだ。心の奥底では本当にこれで良いのかと、僅かな不安がよぎっていたのだが、アマリアが己の胸毛に彼の肉球がくすぐってくるのを感じて少しだけ喘いだ様子を見て、たどたどしいながらも手つきに自信がつく。
 ひとつ、またひとつ。ヌートリア向けに作られた大きめの、ブラウスのボタンが丁寧に外される。

 この官能的な空気が幾千億もの時が巡るほど続くと思っていた彼らだが、既にアマリアの上半身を大きく開かせたところで、それが永久に続くものではないことがはっきりと理解出来てしまう。早く次のステップへと進まなければ、それこそかえってこの貴い時間が失われてしまう気がしていた。
 弐条は見る。アマリアのさらけ出された上半身を。
 ヌートリア特有のなだらかな流線型を描く身体は、まさしく彼女がカワウソの身を持って生きていることを明確に誇示する。
 その胸部から腹部に掛けてぽつりぽつりと表出する小さな出っ張りは柔らかな毛の間から顔を覗かせており、将来彼女が身ごもり、子を成した時に初めて使われるであろう器官であることは間違いない。
 彼にとってもまさしく初めてのことであるだけでなく、ヌートリアの肉体をはっきりと目にすること自体、弐条にとっては非常に新鮮な出来事だった。

「アマリア……その、毛並みがとても綺麗、なのだ。それに……」
「弐条さん、ふっうっ……そこは……」

 弐条は弐条で、少々我慢が利かなくなりつつあるようだった。彼自身も初めてのことで、具体的に理解も、そして制御もうまくできない感情、いや情動に、手が、指が勝手に動いていたのだ。
 弐条は、ここに来て初めて、オスとしての本能に目覚め始めた。

「大丈夫、大丈夫なのだ。僕が、ついてるから……」
「う、うん……でも、やっぱり、ちょっと不安、です……」

 僅かな刺激にすら敏感に身を震わせるアマリアの不安そうな表情を見て、戻ってきた理性に意識をはたき起こされる。「何をやっているんだ僕は」──彼は心の中で静かにそう呟く。怯えた小動物そのものと形容できそうな顔を向けるアマリアを安堵させるために、弐条は彼女の頭を撫でた。

「うん……ゆっくり、優しくするから、大丈夫なのだ」
「……」

 アマリアは静かに頷いて、弐条に身を委ねた。もう、大丈夫だからと。彼女は弐条の着ていたワイシャツの裾を強く握り、さらに顔を近づけた。
 その意味を察した弐条は、愛撫をする手を止めて、長く伸びたマズルをアマリアの口へと近づけ、そして重ね合わせた。







 ホテルに入って、既に1時間が経過しようとしていた頃。既に全ての衣類を脱ぎ去ったアマリアは、弐条を前にして気恥ずかしそうにしている。
 彼女は処女だった。生まれて20年弱生きただけのアマリアにとって、異性に己の裸体をさらけ出すのは、今夜が初めてだった。
 対して弐条のほうも、女性の肉体をここまで近くに感じるのもまた今夜が最初のことであり、アマリアの一糸まとわぬ姿を見て、淫らな感情を隠しきれずにいた。

「……弐条さんのも、見せてください」

 アマリアはここに来て積極的になった。何故と問われることはこの場においてはないだろうが、そのようなことは説明するまでもない。
 アマリアの言葉に頷いた弐条は、ベッドの上で紺色のズボンのベルトに手を掛ける。

 弐条は自身が思う以上に興奮を秘匿できないでいたことは、己の股を見ればいくらでも分かることで。ズボンを力強く押し上げるその怒張は早くアマリアにその勇姿を見て貰いたいとわめく子供のように強くたくましく震えていた。
 彼は僅かに深呼吸をして、緩めたズボンをゆっくりと下ろし始めた。

「……わぁ」

 アマリアが吃驚の声を僅かに上げる。ズボンの尻の上方に形作られた穴から尻尾が抜けると同時に、堅くそり立った弐条の剛直が天高くに向かって背伸びをした。彼自身が持つ覚めやらぬ興奮を象徴するそれは同年代のものに比べればやや小ぶりだったが、それでもアマリアにとってはひときわ大きなものとして如実にその眼に映っていた。

「あ、あまり見ないで欲しい、のだ……」
「あ、えっと……すみません。でも、弐条さんの、こんな大きさ、なんですね……その、初めて見るけれど、かっこいいです」
「……かっこ、いい……?」

 アマリアが率直な感想を述べる。本当に率直な感想だったのだが、弐条にとって、自分の逸物を、好いている女性から「かっこいい」と形容されたのは、あまりにも気恥ずかしかった。自分でもそのように思った事がない印象を、自分のそれがアマリアに与えていたということが、妙な情動を呼び覚ますきっかけとなる。

「はい。かっこいいです。私のために、こんなに元気になってくれているんですもの……私、とっても嬉しいです」
「ええっと、その……ありがとう、なのだ」

 ここまで成していよいよ、弐条の顔も赤く染まる。「うぅ」と情けない声を漏らして、膝立ちだった彼の姿勢は少し崩れる。緊張に縮こまって倒れる弐条とは裏腹に、彼の分身はぷるりと震えて彼女に観察される喜びをその身一身でアピールしていた。

「……私のことを撫でてくれた、お礼、しますね」

 僅かな沈黙の後にその言葉を伝えたアマリアは、弐条の脚の間へと潜り込む。押し下げたズボンを越えて、彼女の顔が彼の屹立の数センチ手前までやってくる。
 アマリアは先端から漂うオスの強い匂いに、なおのこと恍惚とした表情を向ける。その様子をまじまじと見つめる弐条と言えば、女性どころか他人にすら見せたことのない部位を至近距離で観察されてしまっている事実に、強烈な背徳と興奮を覚えていた。それは彼の剛直にさらなる興奮のうねりを与え、ついには赤子が情けなく泣きじゃくるように先端から雫を迸らせた。

「あっ……これって……」

 その動きさえもじっと観察していたアマリアが、またも感嘆の声を上げる。粘性の高く青臭いその雫は弐条の下腹部へとしたたり落ち、薄い毛の流れを乱す。アマリアはそれが弐条が喜んでいることの証であると直感的に理解し、そり立つ逸物越しに弐条に向かって静かに笑いかける。

「良いんですよ……弐条さんは、そのまま……。それじゃあ、おじゃま、します」

 その言葉と共に、アマリアは弐条のそれをゆっくりと握る。「あうっ」と情けない声が聞こえてきたと同時に、僅かに冷えた手のひらに広がる熱した金属のごとく堅く強い熱に、彼女は僅かに衝撃を受けた。
 男性のそれはここまで熱く、堅く、重ったるいものなのか──アマリアはその熱源に対して好奇心を隠せずにいただけでなく、その持ち主が己の愛する弐条のものであるという事実に、ことさらに面白さを感じていた。

「ひぅっ……あ、アマリア……っ! そ、その……すごく、変な感じ、なのだ……っ」
「あっえ、ご、ごめんなさい、痛かったですか……?」

 急に喘ぎ始めた弐条に怖じ気づいたアマリアが、彼の屹立からとっさに手を離してしまう。しかし、直後に弐条は続けて言う。

「い、いや、大丈夫なのだ……ちょ、ちょっと、すごく、その……気持ちよくって……びっくりしただけ、なのだ……っ」
「え、ええっと……そうなんですね。なら、続きをしても……?」
「うん、大丈夫……」

 弐条が息を荒げて彼女に今の感覚を伝える。よかった、痛いわけではなかったんですね──アマリアはそのように安堵して、もう一度打ち震えるものを握った。

 熱い。熱くて、大きくて、そして愛おしい。
 アマリアは弐条のそれに対してそういった尊さ溢れる感情を露わにしていた。弐条だから、弐条のものだからこそ、このような情動を素直にさらけ出せるのだと、彼の逸物を優しく撫でながら、じっと見つめていた。

「アマリア、アマリア……すごく、すごく……き、気持ちいい、のだ……っ、あっ、あぁっ……アマリア、アマリアぁ……っ!」

 いつの間にか起き上がっていた弐条は、アマリアの慎重ながら愛らしい愛撫に、少しずつ、少しずつ高められていった。身体の奥底……根元に垂れ下がる器官から打ち出された種子が上り詰める感覚。あと少しで山場を越えてしまうところにまで差し掛かる。もはや止められない。止めたくない。彼女に、アマリアにしてもらえるのなら、どこまでもこのままでいたい。止めどない感情のウェーブが、弐条の熱く滾る欲望の結晶となって、ついに勢いよく飛び出した。



「あっ……わぁっ……!」
「ひぅ、はぁっ……はぁ……うっ、ふぅーー……っ!!」

 まるで数十分にわたって吐き出し続けたかのように錯覚するほどの、経験の無い強烈なオーガズムに、弐条は声を抑えきれなかった。まるで少女の淡色の叫びのように甘ったるい嬌声を部屋に轟かせ、周囲に白いマグマを打ち上げ続けた。

 やがてその勢いも収まり、ほんの僅かに理性が戻ってくる。スパークしてぼやけていた視界も戻ってくると、目の前には己の吐き出した白に汚され、きょとんとした顔で目を丸くしていたアマリアの姿が見える。

「……あ、アマリア……!?」
「え、えと、その……大丈夫です……?」

 弐条は慌てふためきながらアマリアに飛び散った雫を拭った。なんてことをしてしまったんだ──弐条はそんな罪悪感すら感じ始めていたその時。

「……えへへ。弐条さん、いっぱい出ましたね。すごいです、実際に見たのは初めてですけど……」

 屈託のない笑顔を向けるアマリアは、彼の精液を受けてなお嫌だとすら思っていないようだった。
 それゆえに、弐条は感じていた。己の背徳感に苛まれ、押しつぶされそうになる感覚を。

「あ、えっと、うん……ごめんなのだ……んっ?」

 とっさに謝罪の言葉を口にしてしまう弐条のマズルに指を押さえるアマリア。他に何かを言いたげに口をもごもごと動かす彼だったが、直後に続けてアマリアは話し始めた。

「弐条さんは、いつもいつもあやまり過ぎです。私はそんなに何も思ってないですよ……これも、全部私のために出してくれたんだと思えば、嫌に思うはずがないですよ」

 また、彼女は優しく笑う。深く考えすぎてしまう弐条を落ちつかせるためでもあったのだろう。弐条はそうだとは知らず、彼女の言葉を素直に受け取って、また「ごめん」と謝ってしまう。

「あはは……すぐには変わりませんね、弐条さん」

 それでもなお申し訳なさげに謝る弐条と、あれだけ欲望を吐露したにもかかわらず現金にも必死に膨らみを維持する彼の逸物のアンバランスさに、アマリアはまたクスリと笑った。







「……本当に、避妊しなくても、いいのか……?」

 シーツの上にただゆっくりと横たわるアマリアを見て、弐条は心配げに言う。
 念のためにと用意しておいた避妊具──コンドームを手にとったまま、彼はそれを拒否するアマリアに疑念をもって問いかけた。

「ええ……その、以前、調べたんです。エスパノル・ヌートリア同士でない場合は、子供はできない、って。なので、避妊は必要ないんです……」
「それは知ってるのだ。僕が言いたいのは……」

 エスパノル・ヌートリア。アマリアは15年のスペインでの事件をきっかけに今のその姿となった過去を持つ人物で、種族としての彼女は僕の精では子を宿すことがないのは、彼自身も事前調査で知識としては得ていた。
 だがそうじゃない。彼はそれが心配ではなかったのだ。

「……この異常が溢れる世の中で、僕ら異種族が行為に及ぶとなったら、お互いどんな病気を持ってるかなんて分からないのだ。その、僕が避妊をしたほうが良いって言ったのは、それが心配だからなのだ……」
「弐条さん……」

 アマリアは、彼がそこまでして自分の身を案じてくれているという事実に深く喜びを感じた。そうか、彼はどこまで行っても優しい人なんだ──その優しさこそが、アマリアが彼を好きになったきっかけだった。
 でも、だからこそ。アマリアは思った。

「……大丈夫です。異種族間での交配の心配もですが、AFC同士での性感染症の例も、実はそこまで多くはないですから」
「そ、そうだけど、でも……」
「それに」

 弐条の言葉を遮って、アマリアはさらに続けて言う。

「……それに、私の初めては、弐条さんと、直接触れ合いたい……ですし」

 彼女はじっと弐条の目を見て、己の思いを伝えた。初めてのことだからこそ、彼との間に薄い壁を作って阻まれたくはなかったのだと。弐条はアマリアのその言葉を受け、少し思案した後に折れるしかなかった。



 弐条は自身の屹立を手で押さえ、受け入れ体勢を整えたアマリアの間に狙いを定める。
 熱く火照った亀頭が彼女の陰りの毛にくすぐられ、僅かな喘ぎとなって表出する。

「……弐条、さん」
「アマリア……」

 既に濡れそぼった互いの秘部が重ね合わせられる。いよいよ、ついに、この時が来たのだ。
 互いの情動は熱い吐息となって混じり合う。アマリアの上に覆い被さるように位置する弐条は、彼女を安心させるためにゆっくりと頭を撫でた。

「いい、ですよ……来てください」
「……分かった、のだ」

 2人の合図と共に、女知らずだった弐条の健気な陽根が少しずつ押し入れられていく。彼は慎重に、ゆっくりと、女陰の位置を定めながら挿入していった。

「い、いたかったら……言うのだ」
「は、はい……今は、大丈夫です。ちょ、ちょっとキツいけど……」

 実際、弐条が思う以上に彼女の内部は狭く、いくら小ぶりの彼の逸物といえど、これ以上進めるには力まなければならなかった。
 きっとアマリアにとってそれはつらいだろうとは思ったが、だからといってここでやめてしまえば、それこそアマリアの気持ちを無碍にしかねない。その天秤に大いに悩み──そしてついに彼は退路を断った。

「ひっ、ひぅっ……弐条さっ、弐条さ、あっ、あがぁ、っ……あぁぁっ、ひはぁぅ……っ!!」
「えっだ、大丈夫なのか……っ!? 痛かった?!」

 ぐりっと歪な感触を受けた直後、アマリアが大いに叫びを上げた。間違いない、無理に通したせいでアマリアは痛みに苦しんでいた。悲痛な叫びは声にならない声へと変わってゆく。
 弐条はこのままでは彼女を傷つけてしまう──そう思い、ゆっくりと腰を引こうとしたその時。

「だ、だめっ、やめないで……つづけてっ……!」

 アマリアが彼にしがみつく。必至に、涙を隠すこともなく、彼のを受け入れるために。
 ここで諦めてしまうのだけは、今の彼女にとってはなんとしても避けたかったのだ。

「あ、アマリア……わ、わかったのだ。大丈夫、大丈夫なのだ……っ」

 強く締め付けるアマリアの膣内の蠕動に苛まれる弐条の根は、今ここで外の空気を拝むことは避けねばと言わんばかりに、さらに奥へ奥へと突き進む。
 ヌートリアの小さな身体で、弐条の逸物を一身に受け入れ、そしてついには最奥まで到達した。

「ふぅーっ、ふぅーっ、ふぅーっ……」
「あ、アマリア……アマリア、つ、つらくは、ないか……?」

 荒々しく、弐条の胸で涙と涎を垂らしながら耐えつつ頷くアマリアを見て、彼は「よく頑張ったのだ」と優しく褒めていた。頭から背中に掛けてを撫でる度、アマリアはその度にぷるぷると身体を震わせていた。

「……じゃ、じゃあ、動くのだ……いいな……?」
「ひぅ……ぅっ は、はいぃ……っ おねがい、します……っ」

 アマリアに無理をさせてはいけない。どうせなら今でもやめて落ちつかせるべきだ……彼の理性は常にそう警鐘を鳴らしていたが、それ以上に彼女の思いを無碍にすることだけは避けなければならない。──その一心で、弐条は少しずつ腰を引いた。
 ヌートリアの膣では、彼の全てを受け入れることは難しかっただけに、実際全長の半分しか入っていなかったそれを少し引っ張り出しては、またゆっくりと押し進める。ねちっこい水音が部屋の隅々にまで木霊しては、その度に2人の喘ぎ声もまた続いて反響した。

「……弐条、さん」
「あ、アマリア……っ」
「弐条さんっ、弐条さん……」
「アマリア……アマ、リアぁ……っ」

 共鳴のように互いの名前を呼び合う2人。熱い結合部からは次々と粘液が滴り、涙と涎を合わせて白いシーツがドロドロになっていった。
 アマリアは、自身の身体の中で、彼のあの立派な怒張が一生懸命に打ち震えているのを感じて、彼女の感情は痛みによる苦痛から、さらに深い喜びへとグラデーションのように変化していった。彼からもたらされる愛情が、自分の中へと届けられる──そう思うだけで、今のアマリアにとって、この瞬間はただただ幸福で満たされていた。

 やがて、その時が来る。弐条の呼吸はさらに荒々しくなり、腰の動きはついに当初よりも遙かに早くなっていた。互いの名を呼び合い、高まった感情を形を持った熱へ変換し、最後の時へと駆け上っていった。

「あ、アマリア、でっ、出る……っ  う゛っ」

 彼の潰れたカエルの鳴き声のごとく放り出された声と共に、アマリアの奥深くへと幾度となく叩きつけられる熱い塊。その熱量に圧倒されたアマリアも、甲高い声をきゅうきゅうと上げながら彼にしがみつくばかりだった。
 まばゆい光が何度も何度も視界を散らし、強烈な絶頂の波に意識がスパークする。



「はぁ……あっ……はぁ……ふぁ……」

 ようやく、何度も襲いかかってきた荒波が落ちつき、潮が引いてきた頃になって、互いの浮ついた意識はゆっくりと戻ってくる。アマリアの上に倒れ伏した弐条は、まるで体力を使い果たしたかのように、もう一度深呼吸をして、彼女の横へと転がり落ちた。







 それからしばらく経って、彼ら2人はベッドの上で暗い天井をじっと眺めていた。事を済ませて十数分が過ぎたところで完全に理性が戻り、互いの好意に気恥ずかしさを感じて、顔を見合わせるのも億劫な気がしていた。
 それでもなお、互いの手は離すことなく、強く握り合っていた。

「弐条さん」
「……どうしたのだ?」

 ずっと天井を見たままのアマリアが、弐条に問いかける。

「私達の間に、もし子供ができたら……なんて名前にしますか?」
「……異種族の間には子供はできないのだ」
「そ、それは分かってますよ! そうじゃなくて、もしもの話ですよ。夢の話ですー」

 弐条は自分が少し的外れな回答をしたことに気づき、僅かながら後悔の念を抱いた。そういうつもりで言ったわけではなかったのだが、それは別として、再度アマリアの問にふやけた思考を巡らせた。

「うーん、そうだなあ。名前、名前……まず何人子供が欲しいかにもよるのだ」
「えー? そんなにたくさん欲しいんですか?」
「うん。僕はにぎやかなほうが好きだから」

 アマリアは少し考えて、彼の言葉に合わせて、続けて言う。

「3人。3人欲しい、ですかね」
「3人かあ……うん、僕も同じくらいの数を考えてたのだ」

 弐条がアマリアの方へと顔を向けて、にこりと笑って続ける。

「めぐみ、よすが、ちとせ」
「……うん?」
「僕が名前をつけるとしたら、こうつけるのだ」
「それはどういう意味ですか?」

 慣れない日本語の単語を聞いて、少し首をかしげるアマリア。
 ああ、そうか。まだ日本に来て長くなかったっけ──彼はその名前の意味をどう説明するか、少し考えた後。

「めぐみは、いろんな幸せに恵まれた子に育つように、という意味でめぐみ。
 よすがは、その幸せが縁となって繋がってくるように、という意味でよすが。
 ちとせは、幸せがいつまでもずっと続いていくように、という意味でちとせ。

 ……実は結構前から考えてたのだ」

 アマリアは、弐条からの説明を受けてなるほどと頷いた後、彼の込める名前の意味を反芻するように、3つの名前を口にする。

「めぐみ……よすが……ちとせ……。うん、すごく、すっごく良い名前だと思います……っ!」
「えへへ、そうかな? ……まあ、もし、子供が出来たら、こういう名前だといいなって、そう思ってただけなのだ。もし近い将来、異種族間でも子供が出来る技術ができるかも知れない。その時のために、なのだ」
「……そう、ですね」

 アマリアは、弐条の方へと向く。互いに顔を向けて少しの静寂を形作った後、ゆっくりと身を寄せ合った。

「もし駄目だったとしても、その時は養子をとるのだ。そうすれば、きっと幸せな家族が作れると思うのだ」
「あはは……その前にまずは結婚、ですよ」
「あぅぅ、そうだったのだ……」

 申し訳なさそうに笑う弐条の顔。そのいつだって優しい顔が、アマリアにとっては今、一番大事なものだった。
 アマリアは弐条の鼻に、自分の鼻をくっつけ合い、静かに言う。銀の指輪が通されたアマリアの手を、弐条はしずかに取った。

「弐条さん。愛しています」
「……僕も、アマリアを愛してるのだ」



 AM4:15、初夜。それは、師走の早朝にかけての出来事だった。
 彼らの夢は、この先も続いていく。

1998 tale-jp 川獺丸従業員 福路捜索部隊長 adult 財団職員id_a

批評の上で見て貰いたい点

  • 現状ではUVか、NVか、DVか。
  • adultTaleとして面白みのある内容か。
  • シナリオとして面白みのある内容か。
  • 誤字脱字衍字はないか。

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  1. portal:2577572 (14 Jul 2020 12:54)
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