助けになりたい

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かつて、に一つ尋ねた事があった。「どうして自分の所為で"大切な人"とやらが死んでも平気な顔をしているのだ」と。彼は不思議そうな顔をして「僕の為にみんな死んでくれるんです、みんなの為に僕は死ぬんです、だから死なせてくださいよ」と、相変わらずの調子で嘯いた。

それは、どれ程昔の事だっただろうか。あれからどれだけ経ったのだろうか。自分の置かれている状況を呑み込むまでには随分と時間を  あくまで体感的な、時間を  要した。私が居たのは、謂わば完全な"無"の中だった。何も見えない、何も聞こえない、何も感じない。暗闇に目を懲らそうとしたが、目が開いているのか閉じているのかも分からなかった。静寂に耳を澄まそうとしたが、無音すら聴こえてはこなかった。我武者羅にもがこうとしたが、腕の、脚の、頭の所在すら確かめられなかった。"無"と己を隔てる境界線を定めることすら叶わず、身体は何処までも闇に拡散して薄まってしまった様にも思えたし、どこまでも闇に押し潰されて点になってしまった様にも思えた。思考が纏まらなくなっていった。ふと浮かんでくる"それ"が、自分の思考だったか、想起された記憶だったか、無意識に刷り込まれた見知らぬ声だったか分からなかった。そもそもさっきまで私は思考していたのだろうか?ずっと昔の思考を夢に見ただけだったのではないか?さも、今まであるはずの脳を動かしていたように錯覚しただけなのではないか?思考が逸れていく、いや、そもそも今まで何を考えていたんだったか  

ああ、疲れた。疲労なんて感じない、感じる事を許されない、それに  疲れた。

そして、疲れは、例えようのない苦痛へと変わった。痛みも苦しみもない、それが苦痛だ。

苦痛だ。

苦痛だ。

苦痛だ。

ここには何もない、私すらない。完全な無の中にあって、苦痛だけが唯一白濁して存在を主張する。それは自意識とどこまでも混同されて、私は苦痛そのものと化していた。

苦痛だ。

誰かこれを取り除いてくれ。何でもいいから、ここから無を取り去ってくれ。熱い。出してくれ、ここから  

熱い?

熱い!

熱い熱い熱い熱い熱い!

熱が身体を駆け巡る、半身が熱を超え痛みを訴える、右腕が沸騰している!指先が燃え尽きて、散り散りになって、炭化して、灰化して、崩れていく!燃える、私が燃やされている!彼が燃えて、彼に代わって私が燃やされている!

熱い熱い熱い熱い熱い!

ああ、熱い  なんて心地のいい。熱が身体を象っている。痛みが私の脳を刺す。ここに身体がある、脳がある、思考がある、私がある。痛みが、苦しみが、さっきまであったはずの苦痛を拭い去った。

ああ、私は死ぬ、彼の為に死ぬ。彼は死ぬ、私たちの為に死ぬ。

ありがとう。

私の為に死んでくれて、ありがとう。


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