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報告書のフォーマットによる異常物品の管理体制の強化
形式部門所属
シェーキー・カイル
目的と背景
各国の正常性維持機関が統合しSCP財団が発足した。その結果管理する異常物品は1000を超える、一組織としては類を見ない規模となった。管理体制を統一するにあたって問題となったのは各々の組織、地域に根差した上で管理されていた異常物品だった。このような異常物品は全体の半数近くに及び、迅速な統合の障害になっていた。以上の問題によって、汎用性の高い管理技術の構築はSCP財団としての最重要課題になっていた。
この課題に対して科学部門が真っ先に提案したものがどのような種類の異常物品も完全に管理することを目的とした収容室というものである。これはSCP財団に集合した各組織が保有するパラテクノロジーを集結させて、いかなる異常性であっても非活性化させられる装置を多数搭載するという計画である。しかし完成した場合の効果は極めて高いものの、実現性、量産性に欠け、迅速な配備が望めないという問題点があった。そのため上記の提案とは別に簡便かつ即効性のあるものを構築する必要があった。
これに対して形式部門は儀式的手法を用いて対応する方法を模索した。元来儀礼は宗教的な行動であり、統合前の各組織でも多く用いられた手法であった。キリスト教ならイエス・キリストに、仏教ならブッダに対して祈り、その力を各宗教における"悪しき者"を抑制するために利用した。それらを総合的に分析していく中で共通する根源的な法則があることが判明した。そしてこれを非宗教的な異常物品の管理という事象に利用できる可能性が浮上した。今回の提案はそれに基づいたものである。
形式
形式部門が提案したものは報告書のフォーマットを利用した管理体制である。これは従来の報告書フォーマットを変更し、それを閲覧することそのものを一種の儀式行為とすることでSCP財団の利益となるような効果を発生させるというものである。具体的な変更点は2点あり、1つは「アイテム説明」と「現在における収容手順の詳細」の項目を入れ替えるという点である。すなわち異常物品の取扱方が説明よりも先に書かれるということになる。またフォーマットの改変に伴い「現在における収容手順の詳細」という名称から「特別収容プロトコル」と変更もされている。もう1つは異常物品に対する指定番号を「SCP+それぞれに割り振られた番号」で表記するようになるというものである。表記の具体例を以下に挙げる。
アイテム指定番号: SCP-001
警告: SCP-001は攻撃的で危険な振る舞いを見せます。
特別収容プロトコル:
部屋は鉛が裏張りされ、投光照明による明かりが保持されています。温度はセ氏98度、湿度は100%に保たれています。部屋は鋼鉄で補強された防爆扉によって密封されています。外のエリアはハイパワーストロボを持った警備員によって巡回されています。密封された部屋に入る人間はストロボを携帯し、溶接ゴーグルを着用するべきです。許可なく立ち入ろうとした場合はその場で即座に射殺されます。
アイテム説明:
SCP-001は背丈6.5フィート、97ポンド(平均であり5~10ポンド上下に変動)、年齢不詳、灰褐色の肌(痣がある)、目(?)の色はミルキーブルー、毛は生えていません。SCP-001は痩せ衰えた外見をしており、今まで記録されたいかなる種とも骨や筋肉の構造が異なります。SCP-001の足は細く長く、先端は黒く鋭尖です。それぞれの手には三本の指があり、これも先端は黒く鋭尖です。
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フォーマットの変更に合わせて報告書の運用方法にも変更点を加えた。それは特別収容プロトコルまでとアイテム説明以降で異なる閲覧制限をかけるものである。特別収容プロトコルまでは一定以上のクリアランスをもつ職員であるならば自由に閲覧可能にし、アイテム説明以降はその異常物品に関わる職員のみ閲覧可能にした。
改変後のフォーマットは一般的な神への祈祷、中でも荒れ狂う神を宥めその力を抑えることを目的とした儀礼を踏襲している。大まかな構造としては祈る対象を「異常物品」、教義を「確保、収容、保護」、祝詞を「特別収容プロトコル」に当てはめたものになる。特別収容プロトコルを閲覧することを異常物品に対して確保、収容、保護されていてくれと祈祷することに見立てることで、異常物品の管理体制が維持できるようにするものになる。またこの効果を高めるために施された工夫が2つある。1つは異常物品の説明項目に閲覧制限を設けることである。異常物品そのものの情報を絞ることにより神秘性を高めている。これにより本フォーマットを祈願により近いものにしている。もう1つは特別収容プロトコルという名称である。頭文字を取るとSCP(Special Containment Procedures)となる。これはSCP財団創設時に制定された理念である確保、収容、保護(Secure,Contain,Protect)と同一のものにしている。これにより「祈る対象」と「教義」と「祝詞」がすべて「SCP」という同じ単語で表せるようになり、関連性を高めている。
検証
本フォーマットの影響を調査するべく以下の条件で検証を行った。
目的: 非宗教的事象に対する儀礼形式の管理が及ぼす影響の調査
対象: 危険度の低い異常物品/危険度の高い異常物品
方法: 各異常物品について報告書を提案した新フォーマットで記述する。特別収容プロトコルの閲覧制限のみ低く設定し、担当職員以外でも閲覧可能にする。それにより異常物品の性質より管理手順を知る人数が多くなるようにする。複数の観点から各異常物品の管理環境の変化を観測する。比較対象として同数の従来のフォーマットで報告書が記述されている異常物品を据える。
結果: 全体的な傾向として新フォーマットによって報告書を書いた異常物品の方が安定した管理を行うことができた。これは異常性の予期せぬ変化や収容違反の件数の低下という点が特に目立つ。しかしそれ以外にも知性をもつ異常物品の精神状態の安定といった異常性には直接的な関係がない点や、未収容の異常物品と民間人の接触事案の減少といったその異常物品の周囲の環境に対する点等といった付随するものにまで影響が及んだことが確認された。
特筆すべき点として危険度が高い異常物品であるほど安定の効果がより強く反映された。また安定だけでなく抑制の効果も散見された。明確な点として例えば管理費の平均減少効果は危険度が低いものと比較して約3倍もの差が確認されている。
分析: 危険度が高い異常物品に対する効果が高くなった要因として、閲覧者のその異常物品に対する印象が関係すると考えられる。危険度が高いものに対して抱く恐怖心や警戒心が神格に対して抱く畏怖心と類似しており、その異常物品に対する儀礼が宗教的なものに近づいてることが推定される理由として挙げられている。今後はこの点の確からしさについて重点的に検証する必要がある。
まとめ
新フォーマットは導入コストに対するポジティブな影響は十二分なものが期待できる。しかし特別収容プロトコルの閲覧するということが必須条件であるが故に、今後管理する異常物品が増加することにより、1つ辺りの特別収容プロトコルの閲覧者数が減少してしまい、現時点で発揮されている効果よりも減退してしまう可能性も考えられる。今後は新フォーマットに加えてそれを補填する方法を模索する必要が出てくることが想定される。
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- portal:2419995 (03 May 2018 09:09)
「新しい特収プを施行したよ、うまく行ったよ」という内容で、
論文的なものなので仕方が無いのかもしれませんが、
本文でも引用されている828-KOや、あるいは5101等のような、この収容方法を開発、施行するにあたって振り回されたり、苦労させられたりした人間のドラマがあまり感じられなかったので、その辺がちょっと薄味なのかなあ…と思いました。
以下は細部に対する指摘ですが、上に書いたドラマ性を広げるというよりも、論文あるいはSF文章っぽさをより向上させるための要素について中心に書いている…と思います。私の解釈間違いとかがあったら申し訳ありません。
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