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アイテム番号: SCP-2478-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 死亡したSCP-2478-JPは、サイト-7256の専用監視収容チャンバーに収容します。チャンバー内には30mm生体反応レーザー砲1を搭載し、SCP-2478-JPの連続的な殺害を実行し続けます。
SCP-2478-JPの殺害に失敗し、なおかつSCP-2478-JPとのコミニュケーションが可能な場合、担当職員はインタビュー等によってSCP-2478-JPの一般社会への転移を防いでください。そのために、必要数のDクラス職員の動員が許可されています。
SCP-2478-JPが転移を行った場合、世界中の監視記録やSNS等の監視によって、SCP-2478-JPの捜索を行なってください。SCP-2478-JPを発見した場合は最寄りの財団施設、もしくは現地の協力的な警察機関に連絡し、SCP-2478-JPの殺害と死体の確保を行なってください。確保した死体は6名以上での監視のもと、アンダーシャトル2によりサイト-7256へ輸送し、収容してください。

SCP-2478-JP
説明: SCP-2478-JPは生物学的にオスのイエネコ(Felis silvestris catus)の特徴を有する実体です。主な振る舞いや生態は通常のイエネコから逸脱しませんが、不明な原理で口頭による発話が可能です3。周囲に人間が存在する場合、SCP-2478-JPは積極的に会話を試みます。会話の内容の主な傾向として、途中からSCP-2478-JPによる量子力学の説明が行われます。しかしその内容は、現行の量子力学から見て間違った内容が多々含まれます。
SCP-2478-JPは自身が観測4されていない状態を経て任意の人物から観測されると、生物学的な生死の状態が連続性を無視して不規則に変化します。これまでの観察において、生存の状態で観測された割合は約61%です。観測されていない状態のSCP-2478-JPについてSCP-2478-JP自身は「生と死が重なり合った状態にある」と主張していますが、その直接的な観測は原理的に不可能です5。
上記の異常性を有する理由として、SCP-2478-JPは「自身はシュレーディンガーの猫6のImaginanimal7であるため、量子的な振る舞いが可能である」という旨の証言を行っています。また同様の内容を理由としてSCP-2478-JPは現在までに以下の異常性を示している、もしくは保有していると主張しています。
上記の能力のほとんどは、ミクロな視点における量子力学的振る舞いとして捉えると一定の妥当性があります。しかし、SCP-2478-JPというマクロな実体が同様の振る舞いを見せることはありません。このことは猫の生死の重ね合わせが実際に発生するとし、量子力学における確率論的解釈の一例として提示するという、シュレディンガーの猫の一般的な誤用との類似性があると考えられています。以上のことからSCP-2478-JPは「シュレーディンガーの猫に対する間違った認識」から発生したImaginanimalであると推定されています。
収容経緯: SCP-2478-JPは2010年にSNSのTwitter上で拡散された"喋るネコがいる"という情報をきっかけに発見されました。該当ツイートにはSCP-2478-JPを撮影した動画が添付され、大きな話題を呼びました。その後も類似する情報が世界各地で出回りました。その大規模さから記憶処理の徹底は不可能と判断され、フロント企業のThe SillyCat Picturesから類似する動画作品を複数投稿し、一連のシリーズ群というカバーストーリーで情報操作を行いました。
収容初期段階では、死亡したSCP-2478-JPをDクラス職員4名で常時監視することで、死亡している状態を維持することが特別収容プロトコルとされていました。しかし、Dクラス職員の瞬きや配置の転換、観測機器のフレームが重なることによる観測不全により、SCP-2478-JPの蘇生と収容違反が約3ヶ月に1度発生していました。Dクラス職員の増員等の手順の改定が予定されていた中、2012/06/13に発生した収容違反において、SCP-2478-JPが日本国琵琶湖において溺死した状態で発見されました。監視カメラ等の記録からSCP-2478-JPは財団が発見する約1時間30分前から琵琶湖内で溺死していたことが分かり、その間にSCP-2478-JPは瞬間移動等による脱出を行えなかったことが判明しました。以上のことからSCP-2478-JPを連続的に殺害することによって、観測を伴わずにSCP-2478-JPの死亡状態を維持できると判断されました。溺死などの場合では死亡までに遅れが発生する可能性があると考えられたため、レーザー兵器を用いた連続的な殺害による収容体制の構築が行われました。複数箇所に同時に存在する異常性でレーザーの捕捉限界を越えることによる収容違反が確認されていますが、その頻度は5年に1件程度まで抑えられています。
インタビュー記録:
対象: SCP-2478-JP
インタビュアー: Agt. 江留品
<記録開始>
SCP-2478-JP: いやいやもう、こんないたいけなネコを一匹連れ去るなんて、君達も中々大変だね。
江留品: ええまあ、これも仕事なので。
SCP-2478-JP: それで何を聞きたいんだい?お、もしや量子力学のことについて教えてほしいとか?それならこんな攫わずともいくらでもいいんだぞ。知識は独占するものじゃないからな、まるで水のように。
江留品: ああいえ、それもそうなのですが、まずはあなた自身についてのことを聞かせてください。
SCP-2478-JP: なるほど、確かにそれはそうだ。よいコミュニケーションにはまずお互いを知らなければな。とは言っても私コビョウ13に名前があるわけではない。人は私をシュレーディンガーの猫と呼ぶが、じゃあそれが名前かと言われるとそれは少し違うだろう。死体のツギハギ怪人がフランケンシュタインではないのと同じように、シュレーディンガーも私を指すものではないからだ。かといって名前の無いネコというのも偉大な文学作品にそういったものがある。実はずっとこの問題には悩まされているが、これという答えには辿り着いていないんだ。いつもは特に呼ばれないか、ネコちゃんと呼ばれるのだが、もし良ければ……えと、君の名前はなんというんだ。
江留品: 江留品と言います。
SCP-2478-JP: えるしな君か、ではえるしな君、君は私をなんと呼びたい。
江留品: SCP-2478-JP、ですかね。
SCP-2478-JP: なるほど、良いかは分からないがユニークな名前だ。では気軽にSCP-2478-JPと呼んでくれ、えるしな君。
江留品: 分かりました、SCP-2478-JP。ではSCP-2478-JP、あなたは先程自身をシュレーディンガーの猫と言いましたが、それは同名の思考実験と同一のものと考えてもいいのでしょうか。
SCP-2478-JP: もちろん、私こそがあの生きたり死んだりするあの猫だ。もっとも正確に言えば私はシュレーディンガーの猫のImaginanimalだがね。SCP財団ならすでに私の仲間達が世話になっているだろう。
江留品: そうですね、ではあなたはシュレーディンガーの猫のイメージから作られた存在と。
SCP-2478-JP: そうなる。
江留品: それでは次にあなたの行動について聞かせてください。あなたはこれまで積極的に人と接触して会話をしていますね。その目的は何なのでしょうか。
SCP-2478-JP: 私には大きな使命がある。それは量子力学をより多くの人に伝え、そして理解してもらうことだ。だがこの体では出来ることも多くない。だから私はこの口で、僭越ながら講釈をしていたんだ。
江留品: なぜあなたがその使命を負っているのでしょうか。
SCP-2478-JP: 量子力学というものはとても難しい。何せ物理の中でも新しく、そして奇抜なことをやっているからだ。それでもこの私、シュレーディンガーの猫を通じて量子力学というものに触れた人は多い。私はその想いを受け継ぎ、そして単なる思考実験が意思をもって動くことで出来ることは何かということを考えた。その結果、私が量子力学の積極的に動く入り口となることが私の存在意義そのものではないかというところに落ち着いたんだ。
江留品: なるほど、ありがとうございます。それでは次はあなたの異常性に関する質問に移ります。
SCP-2478-JP: 異常性というのは、こういうことか。[SCP-2478-JPは1mほど瞬間移動をする。]
江留品: そうですね、そういったものです。
SCP-2478-JP: これもまさしく量子力学の賜物だ。私はその体現者だからね、こうして色々応用することができるんだ。今行ったのも量子テレポーテーションといったもので、自分の体を量子化することでタイムラグ無く離れた場所に移動が出来るんだ。えるしな君は量子テレポーテーションは知っているかな。
江留品: え、そうですね……私の知っているものとは結構食い違いがあるかな……と。
SCP-2478-JP: おやおや、やはりSCP財団と言えど量子力学は未知の領域であったか。これは教えがいがあるというものだな。いい機会だ、それでは今から講義を始めよう。
江留品: お願いします。
[約30分間に渡ってSCP-2478-JPによる量子力学の説明がなされた。しかし内容はミクロ視点での現象を単純にマクロ視点にも適用するなど初歩的な間違いが多かった。]
SCP-2478-JP: と、これであらかたの説明は終わったけど、どうだったかな。
江留品: ……まあ、その……参考になりました、ありがとうございます。
SCP-2478-JP: それほどでも、私としても科学者とこう面と向かって話す経験はあまり無かったから楽しかったよ。それじゃあ私はそろそろこの辺で失礼させてもらうよ。私の使命はまだま
[収容違反の兆候が見られたために、待機していた武装職員によってSCP-2478-JPが殺害される。]
<記録終了>
追記: 2022/8/7に発生した収容違反が発生し、1週間後にSCP-2478-JPが確保されました。SCP-2478-JPは対応した職員に対して悪態をつく、適当にあしらう等の精神面でネガティブな変化が見受けられました。再確保までのSCP-2478-JPの行動を調査した結果、以前までと比較して"態度が悪い"、"自身の主張に対してあやふやな考えしかない"といった認識が多くされていることが判明しました。
またSCP-2478-JPが出会った人物が、その会話の旨を撮影した動画を動画投稿サイトのニコニコ動画に投稿したことが発覚しました。動画の投稿者は城南大学の学生である上留うえとめ氏であり、氏と氏が所属する研究室の教授で、素粒子物理学の研究者である似寿にす氏とSCP-2478-JPが会話をしているという内容です。
<再生開始>
[画面中央にSCP-2478-JP、奥に座っている似寿氏の脚が映っている。]
似寿: 本当にこれおもちゃじゃないんだろうね。
上留: ホントですよ!というかおもちゃにしたら精工すぎますって。
似寿: それならいいんだけど、いたずらなら卒研見ないよ?
上留: 冗談キツいですってー。
SCP-2478-JP: そうなるのも無理はない。人にとって喋る猫がどれだけ奇異なものか分からない私ではない。
似寿: うーん、なんかこう釈然としないけど……とりあえず猫ちゃん、君は何をしに来たんだ?
SCP-2478-JP: 私は人々に量子力学というものを分かりやすく伝えるために日夜旅をしている。ここにもたまたま来させてもらったというわけだ。
似寿: 量子力学と。
SCP-2478-JP: ああ、そうだよご老人。
似寿: これまあなんというか。運命を感じるものだなあ、上留君。
SCP-2478-JP: というと?
上留: ここって素粒子物理学の研究室なんだよ。で、先生は量子力学の権威ってわけ。
似寿: 大言壮語が過ぎるぞ。
SCP-2478-JP: おお!それはなんという奇遇な出会いだ!それはそれは是非ともお話をさせていただきたい。
似寿: 猫……量子力学……猫ちゃん、もしや君はシュレディンガーの猫か何かなのかな?
SCP-2478-JP: いかにも。私こそが量子力学の申し子、シュレディンガーの猫その人……いや、厳密に言うとそのものではないのだが、まあそうと言って差し支えはない。
似寿: それならたまたま君が生きている状態であって良かったよ。猫の死体を見つけてしまったらただの事件だからね。
SCP-2478-JP: 面倒な存在で申し訳ないね。そうなったらまた観測し直して、戻してくれ。
似寿: ん?……猫ちゃんよ、君がいつもどうやってるかをちょっと見せてくれないか?
SCP-2478-JP: どうやってと言うと、普段どう説明してるかでいいのかな?
似寿: ああ、そうだね。
SCP-2478-JP: 了解した。やはり量子力学というのはどうと説明されてもとっつきづらいものではある。いきなり波だ粒子だと言われても納得出来るものも出来なくなる。
似寿: それには同感だよ。
SCP-2478-JP: だからまずはぱっと見て分かりやすい現象から、何が出来るかからのどうやって起きてるんだという説明が常套手段かな。例えば
[SCP-2478-JPが消失する。しばらく画面が様々な方向を映し、少し離れた机の上に再出現したSCP-2478-JPを発見する。]
上留: え、マジワープじゃん。ノーベル賞間違いなしですね。
似寿: いやいやいや、嘘だろうこれは……。
[SCP-2478-JPは再び似寿氏に歩み寄る。]
SCP-2478-JP: とまあこんな風にまずは動きとして分かりやすいものを見てもらうんだ。釈迦に説法だとは思うが、今のは量子テレポーテーションの実演というわけだ。
似寿: ……ん?
SCP-2478-JP: どうしたかなご老人。まさかあなたのような人がこれを知らないとは言うまい。
似寿: いや、そういうわけではなくてだね……
上留: 量子テレポーテーションってそういうのじゃなくない?
似寿: こら上留君!……あまりはっきりと言うものじゃないぞ。
SCP-2478-JP: おやおや、やはり勉強中と言えど理解は難しかったかな。
似寿: すまないね猫ちゃん、もしよければその仕組みを教えてもらえないかな?
SCP-2478-JP: その道の専門家を前にというのは気恥ずかしいものがあるが、それでも気を抜くつもりはない。全力でさせていただこう。量子というのは曖昧に存在するもの、言わばその場所にどのぐらいの確率で存在するかというものだ。100%なら明確に存在する、0%なら全くいない。つまり今自分がいる場所とは別の地点での存在確率を100%にすることが出来れば容易に瞬間移動が可能になる。そしてこれを可能にするのが量子もつれだ。これによって異なる量子同士を関連付けさせて、片方の情報をもう片方に送る。こうすれば後は一切の時間差無しにまったく異なる地点に再出現が可能になる。
似寿: はあ、なるほどねえ……。
SCP-2478-JP: 特に若い子に量子テレポーテーションはウケがいいんだ。進んで話を聞いてくれるようになる。
上留: でもそれって量子状態だからってもんでしょ?今この場で猫が出来るのはなんかおかしくない?
SCP-2478-JP: 青年、科学は疑うことは大事だが、目の前のことはちゃんと受け止める姿勢は大事だぞ。
似寿: いや猫ちゃん、私も上留君と同じ意見だよ。瞬間移動は事実……と断定するのはまだ出来ないが、その説明では納得しかねる点があるのは確かだな。
SCP-2478-JP: ご、ご老人?!
似寿: 確かに粒子の状態の伝達がタイムラグ無しに行われるというものはある。ただそれはあくまでミクロの範疇でのことだ。猫ちゃんのように目に見える状態でそれが起きるとなると、それはまた別の仕組みか……何とも言えないが、少なくとも私が今知っている量子力学ではそれは起こり得ない。加えて言えば実際の量子テレポーテーションでも完璧な伝達が行われるわけでなく、多少なりとも不完全になってしまったりするんだ。それを補完するには後から埋め合わせの情報を別に送る必要があるんだ。つまり厳密に言えばタイムラグはどうしても存在する。最短でも光速分ほどの時間差は生まれるんだ。
SCP-2478-JP: ……え?
似寿: あとこれはまあ重箱の隅をつつくようなものだが、あくまで量子テレポーテーションは量子もつれで他の粒子をまったく同じ状態にするというものだ。瞬間移動とは厳密に言えば異なるが、この点は仮に猫ちゃんの言うようなものが出来たとしても、個の連続性にも関わるから大事な点だ。そのあたりはどうなっているのかい?
SCP-2478-JP: 連……続性……?……で、では!これはどうだ!ほれ!
上留: はえっ!?
[上留氏が一瞬意識を失うもすぐに復帰する。]
SCP-2478-JP、上留14:……あーあー出来ているかね。今少し彼の頭を借りて喋っているよ。
似寿: 上留君?
SCP-2478-JP、上留: これは量子もつれを応用した人格の制御で
似寿: うちの学生をよく分からないものに巻き込まないでくれ!
SCP-2478-JP、上留: ひゃわっ!す、すまない、今戻す。
[再度上留氏の意識が一瞬失われる。]
SCP-2478-JP: これで、大丈夫だ。
似寿: 上留君!大丈夫か!
上留: ずっと猫の世界見えてた……良かった、俺だ……。
SCP-2478-JP: すまない、確かに了承を得ずにやるものではなかった。
似寿: いや、こちらこそ声を荒げて申し訳ないね、猫ちゃん。それで、今のは何がどうなっているんだ?
SCP-2478-JP: ああ、これは量子もつれを利用して彼と私の意識を結びつけたんだ。先程のテレポーテーションと同様に……リアルタイムで意識を同じ形にすることで……まあ……その……
似寿: うーん、量子脳理論のように意識と量子力学を結びつけようとする試みはあるがねえ。そもそもの問題として通常の脳が量子的効果が発現するような状態ではないという根本的なものもあるしねえ。
SCP-2478-JP: いや、そうじゃな……いや、あー……うー……。
似寿: ああその、いじわるをしたいわけじゃないんだ。ただ正直に言ってしまえば、今の猫ちゃんがどういう風に量子力学を理解しているのかというのが少々気になってね……
[SCP-2478-JPは沈黙し、それにつられて似寿氏、上留氏も併せてしばらく沈黙が続く。]
似寿: いやまあ、興味を持つことは大事だからね。これから色々勉強すればいいんだよ。
上留: え、でも今の感じで色んなとこで説明しちゃってるんだよね。それ大丈夫なの?
似寿: 上留君!だからなんで君はそうはっきりと言ってしまうんだ!
SCP-2478-JP: ……申し訳ないことをしたね。私は失礼させてもらうよ、ではまた。
[SCP-2478-JPは消失する。]
似寿: あっ猫ちゃん……言いすぎてしまったかな……
上留: いやあの説明は完全に追い詰めるやつですよ。
似寿: 君にはあまり言われたくないよ、もうカメラ消しなさい。
上留: はーい。
<再生終了>
以下は確保後のSCP-2478-JPに対するインタビュー記録です。
対象: SCP-2478-JP
インタビュアー: Agt. 江留品
<記録開始>
江留品: それでは外に出ていた間、どういったことがあったかを教えてください。
SCP-2478-JP: え?
江留品: いや、え?では無くて、教えてもらえませんか。
SCP-2478-JP: どうせあらかた調べはついてるんだろう。それをわざわざホンビョウ15の口から吐かせるか?ずいぶんと趣味が悪くなったものだな。
江留品: それはそうなのですが、あなたの立場からの主観的なものもお聞きしたいのですよ、SCP-2478-JP。この収容違反中にあなたは多くの人物と接触し、それで……
SCP-2478-JP: どうした、何を言い淀んでる。
江留品: いや、その……全体的に必死さがあった、反論に対して苛烈だった等の証言が目立っていて……
SCP-2478-JP: あ……
江留品: なので、何があったのかをお聞きしたくて……
SCP-2478-JP: ……君のように聡明な者に隠しても無駄だろう。いいさ、この弾丸自分探しの旅について話してやろう。
江留品: お願いします。
SCP-2478-JP: きっかけはたまたま出会ったご老人との会話だ。たしか似寿という方だったかな。
[江留品はリストを確認して、SCP-2478-JPが似寿博士と会っていることを確認する。]
江留品: 高名な物理学者の方ですね、専門は素粒子理論の。
SCP-2478-JP: そうだ、私はこれまで量子力学を知らない者達との会話ばかりだった。当然だ、そもそも私はその解説のために奔走していたのだから。
江留品: そうですね。
SCP-2478-JP: だからこの出会いはなんと運命的なことだと思ったんだ。ついに専門家同士、見識を深める機会が来たのだと。
江留品: そうなんですか。
SCP-2478-JP: ……その後、私は自分の話したことをほぼすべて訂正された。
江留品: ああ、はい。
SCP-2478-JP: 私の説明の中の、私が誤解していたらしいところを似寿先生は丁寧に指摘してくださった……それはもう、本当に丁寧だった。
江留品: ……はい。
SCP-2478-JP: 私は自分が情けなくなった、これでは私が今までしてきたことはなんだったんだ。そもそも私とはなんだったんだ。シュレーディンガーの猫は量子力学を否定するための概念だったんだ!
[SCP-2478-JPは声を荒げ、前足で床を叩く。]
江留品: お、落ち着いてください。
SCP-2478-JP: 落ち着けと?ここまで自分の存在意義を失った私に落ち着けと?ああ何だか思い出したらまたあの無力感がぶり返す、あの時もこうだった。失意の底で私は移動した。思えばこれまでも似寿先生と同じような反論を受けたこともあった気がする。それでもその時は私の方が知識量が上回っていたからそれにも答えることが出来た。でもそれももう終わり、私の中で私というものが脆くも崩れ去っていく音が聞こえたんだ。
江留品: ……お疲れ様です。
SCP-2478-JP: じゃあこれからどうしようということもない。私はシュレーディンガーの猫、それ以上でも以下でもない。あくまで私は私のまま生きるしか無いんだ、半分死んでいるが。
江留品: そ、そうですね。
SCP-2478-JP: しかしな、しかしここで私はあることに気がついたんだ。私は半分生きて、半分死んでいる。これは変わらぬ事実だ。じゃあこの事実は、一体何に基づいて出来ているのだと。さあ何だと思う?
江留品: え?なん……でしょうね。
SCP-2478-JP: 分からない、それで当然。何せ私の体というのは量子力学の未知なる分野によって支えられているのだからな!
江留品: それはどういうことでしょうか。
SCP-2478-JP: 言葉通りだ。まだ人類にとって未解明の理論があって、私はそれを具象化した身なんだ。そしてそれは私が持つ知識であって、私の使命はやはりその知識を広めることなのだ!
江留品: ……ええと、まあ。
SCP-2478-JP: どうしたえるしな君、何か質問でもあるかな。
江留品: その、それがあなたの真意ということでよろしいでしょうか。
SCP-2478-JP: ……まあ、これで納得出来れば良かったんだがね。アイデンティティに関わることをそんなおいそれと片付けることは出来んさ。
江留品: そうですよね。
SCP-2478-JP: えるしな君、私はこれからどうすればいいのかね。
江留品: 私個人としては収容されてもらえると嬉しいですね。
SCP-2478-JP: 君はそう答えるよな。もういいよ、私を撃ってくれ、しばらくは何もしたくない。
[SCP-2478-JPをレーザー砲で撃ち、殺害する。]
<記録終了>
付与予定タグ: scp jp keter qコン22 ネコ imaginanimal 観測 瞬間移動 蘇生 物理学 共著
テーマはQuantum mechanics(量子力学)です。
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構文を除き数万字以上の長編の下書きが該当します。
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SCPやGoIFなどのフォーマットが一定の記事種でフォーマットを崩している下書きが該当します。
シリーズ-JP所属
JPのカノンや連作に所属しているか、JPの特定記事の続編の下書きが該当します。
JPではないカノンや連作に所属しているか、JPではない特定記事の続編の下書きが該当します。
JPのGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。
JPではないGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。
ジャンル
アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:2419995 (03 May 2018 09:09)
ありがとうございます。
上記二点は修正しました。
こちらについてはカラ元気さの表現ということで現状のままにいたします。ただ同様の意見を頂く等ありましたら表現について再考したいと思います。
ここについてはどうにかしたいと思いますが、正直まだ何にも思いついてないので時間かけて改善していきます。