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シャルル・ド・ゴール空港第2ターミナルに降り立ったJALの旅客機、その搭乗口から天使は姿を現した。お嬢様の"福音の断章"が告げた時刻から1秒のずれもなく。毎度のことながら、その正確さには驚かされる。
天使の外見はごく普通の女性だった。まだ若い。俺より少し年上と言ったところか。滑走路を吹き渡る風に、艶つやのある黒髪をなびかせている。その無駄のない足運びから、武術の心得があるのが見て取れた。おそらくは日本人だろうし、やはりジュードーかカラテか。
一瞬、女性が顔を上げ、確かにこちらを見た。気付かれた? まさか。俺は管制塔の屋根に停まったカラスの目を通して見ているのだ。気付かれる訳が──いや、正体を考えれば、有り得ない話ではない。俺は右目の視界はカラスと共有したまま、左目の視界だけを自分の肉体に戻す。まずは主に報告を。
「お嬢様、天使を発見しまし──」
「まあ、ニコラ、ご覧なさいな!」
リュミエール騎士団が擁ようする特殊能力者、"聖別されし者"のお一人で在らせられるマティルドお嬢様は、アイスブルーの瞳を輝かせながらくるくると周囲を見渡している。このお方こそ、身命を賭としてお使えすべき我が主──もっとも、ご本人は俺を「パートナー」とお呼びになって憚はばからないが。
「何て大きな飛行機なんでしょう。あら、あのお店はスターバックスかしら? わたくし、キャラメルフラペチーノが飲んでみたいですわ!」
ストラスブール分団領のグランドマスター"語らざる"ギヨーム様のご令嬢にして、自らも神に選ばれし者とは言え、まだ十代の少女である。しかも、騎士団の修道院で育てられたせいで、俗世には慣れておられない。ヨーロッパでも最大級のこの空港は、さぞ好奇心が刺激される場所だろう。
とは言え、今は任務に集中して頂かないと困る。
「お嬢様、観光は任務の後に──」
「あら、ごめんなさい。天使様はどちらに?」
天使が施設内に入ったため、俺は視界を梁上のネズミに移す。天使は入国手続きを済ませ、RERの駅に向かうようだ。そう告げると、お嬢様は目を丸くする。
「ニコラはすごいですわねえ」
「──こんなもの、ただの技術ですよ」
"共生"など、騎士団の実働部隊たる"探求者"なら使えて当然だ。"秘才"は騎士団秘伝の修練の賜物たまものとは言え、人間が文明の発達によって忘れた能力を思い出させたに過ぎない。福音の断章のような奇跡とは違う。
俺に特別な点があるとすれば、このお方の従者になれたこと──それだけだ。
天使に先回りすべく、人ごみを掻かき分けて進む。お嬢様がはぐれないよう、お手を繋ぎながら。俺は気恥ずかしさを誤魔化すために──お嬢様は平然となさっているが──、数日前のことを思い出していた。
お嬢様が日課である"光の書"の黙読をなさっていた時のことだった。突如、お嬢様の頭上に光輪が現れ、その緩やかに波打つ金髪を 燦 然 さんぜんと輝かせた。福音の断章が発動したのだ。何度見ても、畏敬の念を抑えられない光景だ。
俺がいつものように"I-Light"──騎士団員に支給される情報端末──をお渡しすると、お嬢様は虚空を見つめたまま報告書作成アプリ"Æden"を起動して、指がぶれて見える程の速度で各項目を記入していく。そう、通常なら苦労して天使を探し出し、危険を犯して性質を探らなければ書けない報告書を、予あらかじめ書いてしまえる能力。それが福音の断章だ。
内容は黙示録のごとく難解な表現が多いが、外れたことは一度もない。加えて、時刻や場所など、間違えようがない情報は常に正確だ。お嬢様はこの能力で多くの天使と接触し、騎士団に引き入れてこられたのだ。
・リュミエール騎士団ハブ(Deepl翻訳) よろしければ、ご批評の参考にどうぞ。堕天使アザナエルはこの記事中に登場する「謎の忠告者」をモデルしています。
◆心配な点
1. 面白いでしょうか? ウリとしては、リュミエール騎士団という日本支部ではあまり知られていないGoIの実像、そこに属する人々のドラマ、アイスヴァインがフランスでもおちょくられる(?)ギャグ展開、かと思いきやまさかの超展開、といったところですかね。
2. リュミエール騎士団フォーマットが活きているでしょうか? できれば正体がアイスヴァインであることは、マティルドの「勿論、あなたをお迎えに上がったのですわ、アイスヴァイン様」まではバレたくないんですよね。
3. 分かりづらい点はないでしょうか? 要するに、アイスヴァインことエージェント・立花には本当にアザナエルという名前の堕天使が憑依していて、彼が神に対抗するためにマティルドをおびき寄せて勧誘したら、守護霊のジャンヌ・ダルクに阻止された・・・というストーリーです。
4. リュミエール騎士団に興味のない方にも楽しんで頂けるでしょうか?
5. 描写不足な場面はないでしょうか? なるべく文字数を抑えようと、かなり急ぎ気味に書いたので・・・。
その他、お気づきの点があれば遠慮なくご指摘下さい。可能であれば代案もご提示頂ければ助かります。
◆用語の翻訳について
リュミエール騎士団ハブを元に、基本的にはなるべく無難な訳を選びましたが、直訳ではどうしてもそぐわない用語は意訳しました。もっと相応しい訳があれば、ぜひご教授下さい。
昇位(Ascensions) リュミエール騎士団による異常存在の分類。第1昇位・能天使(知性が低いか、そもそも自我がない。動物や物品など)、第2昇位・力天使(人間並の知性を持つ。特殊能力者や人型実体など)、第3昇位・権天使(法則そのもの。異常空間やミームなど)、第4昇位・座天使(高次元の存在。神格実体など)。
本来の意味は「上昇」「昇天」。1~4まで順位が存在すること、順位が上がる程に神に近い存在になることから、地位という意味を含ませこのように翻訳しました。
唱別(Chœurs) 昇位のサブ分類。各昇位に4種類存在する。備えた能力、人間に対する態度などで分類される。本来の意味は「合唱団」「所属団体」「同意見の人々の一団」「曲目」「教会の内陣」など。ここでは神が指揮する「世界という合唱」のどの部分を担当しているか、というイメージでこのように翻訳しました。
秘才(Prodiges) 本来の意味は「神童」「天賦の才能」など。隠されていた才能、というイメージでこのように翻訳しました。
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任意A任意B任意C- portal:2257305 (18 Jun 2018 09:42)
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