【Qコン】誰の家にも地下室はある(パラウォッチ)

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Red Bull 2022/8/22 (木) 10:35:01 #82965128


1年くらい前に体験した話だ。最近ようやく冷静に考えられるようになってきたので、気持ちの整理も兼ねて投稿することにした。文章にはあまり自信がないが、なるべく当時の雰囲気が伝わるよう努力はしてみる。

きっかけはよくある話だ。いわゆる肝試しってやつ。ダチとホラーゲームで盛り上がって、そのノリで行くことになった。行ったのは車で一時間ぐらいの所にある廃病院。医療ミスで患者が死んだとか、医者がそれに責任感じて自殺したとか、ありがちな噂が色々ある。

着いたのは真夜中近かったと思う。廃病院の周りでは木がざわざわしていて、すごい迫力だった。でも、中に入ったら落書きだらけで拍子抜けした。だって、どこぞのDQNですらこんなノリで入り込めるなら、大した場所じゃなさそうだろ? 俺らは「おい、何か聞こえたぞ」「こえー、超こえー」とかバカ騒ぎしながら歩き回った。うん、俺らも他人様のことDQNとか言えないな。だが、そんなノリもその部屋に入るまでだった。

骨組みだけになったベッドが並んでいたので、元は病室だったんだろう。入った途端、ダチが「うわっ」と声を上げた。何だと思って懐中電灯を向けたら、ダチの足元に真四角の穴が開いているのが見えた。そこに落ちそうになったらしい。ハシゴが付いていて、降りられるようになっていた。地下室への入口だ。

なぜこんな所に? とはその時にも思ったが、投稿のために記憶を辿っていたら、他にもおかしい点があることに気付いた。

1. 蓋が付いていなかった。壊れてなくなったのではなく、元から付いていなかったっぽい。
2. エレベーターの階数表示に地下室はなかったと思う。他に地下に降りる階段も見ていない。
3. 妙に真新しかった。同じ部屋にあるベッドはボロボロなのに、ハシゴにはサビ一つなかった。
4. この廃病院の噂の中にも、地下室に関するものはなかった。

懐中電灯で照らしてみたが、底までは光が届かず真っ暗だった。お化け屋敷のつもりで来てみたら、本物の心霊スポットへの入口を見つけてしまった。そんな気分だった。

結論から言うと、俺らは降りることになった。建前上は「怖いんだろ?」「怖くねーし!」という煽り合いの末……ということになっているが、本音は違うと思う。無視して帰ったら、この地下室の入口はずっと記憶に居座り続けることになる。永遠に解けない、気味の悪い謎として。だったら、この場ではっきりさせた方がマシだ……と、言語化できた訳じゃないが、俺もダチもそういう気分だったのだろう。ホラーの主人公がなぜ自らヤバげな所へ凸るのか、初めて分かった気がした。

ハシゴを降りるには両手が必要なので、懐中電灯は服のポケットに入れておかなければいけない。おかげで、真っ暗闇の中を手と足の感触だけを頼りに降りる羽目になった。そのせいか、無限に続いているんじゃないかというぐらい、ハシゴは長く感じた。ハシゴが壊れたらどうしよう、地獄の底まで落っこちるんじゃないか、とか考えるとマジで発狂しそうだった。何とか底に着いて、見上げてみると10mもないと分かって、ようやく少しだけ安心した。

ハシゴの下は長い廊下になっていた。床も壁ものっぺりとしていて何もなく、まるで細長い箱の内側みたいだった。ああ、これも書いていて初めて気付いたけど、電灯もないのはおかしいよな。それじゃ、病院の人間はここに入る度に、俺らみたいに懐中電灯を持参していたのだろうか。

廊下の突き当たりにはドアがあった。倉庫とも何とも書かれていなかった。死ぬ程開けたくなかったが、開けなくちゃここまで来た意味がない。俺が半泣きになりながらドアノブに手を伸ばしたら、中から微かに音が聞こえることに気付いた。

ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……。

心電図の音だと気付いて、俺は生まれて初めて頭の中が真っ白になるという体験をした。現役の病院ならともかく、ここは廃病院だ。しかも、真っ暗な地下室の中からなぜそんな音が? 俺らが立ちすくむ間に、音はだんだん途切れがちになっていき、ついにはドラマとかでお馴染みのピーーーーーー……になった。俺がなおもドアノブに手を伸ばしたまま固まっていたら。

ピッピピピピピ、ピョルピョルピョルピピピ……。

いきなり音がバグりだした。同時に、ばさっと布をはためかせるような音がして、次いでドサッと何か重い物を落としたような音がした。そして……。

ペタッ……ズルッ……ペタッ……ズルッ……ペタッ……ズルルッ……。

そんな音がドアの向こうから徐々に近づいてきた。俺の脳裏に浮かんだのは、ベッドに横たわっていた死者が、バグった心電図のせいでフランケンシュタインの怪物のように蘇るイメージだった。そして、シーツを跳ね除け、ベッドから転げ落ち、だらりと舌を垂らしながら這いずって来る……だが同時に、ドアの向こうにいる何者かは、そんな分かりやすいものなんかじゃないという、妙な確信もあった。

逃げたいのに、足が動いてくれなかった。足音を立てたら、何者かが気付いて一気に突進してくるかもしれないという恐怖と、このまま動かずにいれば、相手がどこかへ行ってくれるのではという甘い期待が、タッグを組んで俺の足を止めていた。あのままだったら、ドアが開いて何者かが姿を現すまでそうしていたかもしれない。

呪縛を解いてくれたのは、ダチの叫びだった。「うわあ」でも「ひゃあ」でもない。腹の底で恐怖が爆発して、声に変換する間もなく喉から吹き出してしまった……そんな、まさに本能の絶叫だった。それを聞いて俺も理性が吹き飛んだ。

それからしばらくは、記憶があいまいだ。がむしゃらに走り、ハシゴを昇る最中、ダチがずっと「ごめんなさい」とか「俺のせいじゃない」とか呟いていたことぐらいしか覚えていない。気が付くと、24時間営業のファミレスに逃げ込んでいた。そのまま夜が明けるのを待って解散するまで、俺もダチも無言だった。

(キリがいいので、今日はここまで)

Red Bull 2022/8/23 (金) 15:35:01 #21265128


ここまでだったら、よくある「肝試しに行ったらひどい目にあった」話なんだが……まあ、このサイトの人たちなら、予想できる展開か。そう、「ついてきた」んだ。翌日から、何度もあの廃病院の夢を見るようになった。正確には覚えていないが、3~4日に1回ぐらいの頻度だったろうか。

懐中電灯片手に、今度は一人で廃病院の廊下を歩いている場面から始まる。そして、あの地下室への入口を発見し……初回はそこで目が覚めた。次に見た時はハシゴを降りるところで、その次はドアの前に立つところで……と、見る度にだんだん核心に近付いていくのが分かった。

このままでは、現実では開けずに済んだあのドアを、今度こそ開けてしまうかもしれない。そうなったらどうなるんだろう。俺は夢の地下室から、永遠に出られなくなるんじゃないか……そう思うと、もちろん怖かった。だが、俺は誰にも、一緒にあの廃病院に行ったダチにさえ、相談はできなかった。

と言うのも、その時の俺は恐怖以上になぜか「絶対に知られてはいけない」という思いに駆られていたのだ。あの地下室には、俺が他人に知られたくない秘密が隠されている。そう思えてならなかった。「あの廃病院に行ったのは、あの日が初めてじゃないかよ」という理性の主張を押し退けるぐらい、その思いは強烈だった。

その思いを自覚したせいなのか、夢の中の廃病院にも変化が現れた。壁に見慣れたカレンダーが掛かっていたり、窓から近所の公園が見えたり、果てはオカン愛用の健康サンダルが転がっていたり……そう、だんだん自宅に変わっていったんだ。それでいて、安心は全くできなかった。むしろ、自宅という安全地帯さえ悪夢に侵食されていくようで、ますます逃げ場がなくなっていくという思いの方が強かった。

そして、地下室も自宅のそれに変わっていった。ハシゴは階段になり、壁には手すりが付いた。ガキの頃、秘密基地ごっこをしていた時にした落書きもあった。それでいて、わだかまる暗闇は廃病院の地下室と全く同じだった。夢の中で俺は電灯のスイッチを探るが、なぜか見つからない。ドアの向こうから聞こえるのも心電図の音ではなく、ポロンポロンというどこか間が抜けた……玩具のピアノか何かを鳴らしているような音になっていた。

何回目の夢だったか正確には覚えていないが、ついに地下室のドアは開けられてしまった。廃病院の時とは違い、自分の手で。もちろん怖かった。だが、この中にある秘密が人目に触れていないか、確かめなければ居ても経ってもいられなかった。それが何なのか、自分でも分からないのに。

ドアを開けた瞬間、ポロンポロンという音はぴたりと止んだ。内の様子は予想通りだった。普段は使わない物を詰め込んだダンボール箱が、雑に積み重なっている。つい最近、俺が運び込んだ古いイスもあった。その中で唯一見覚えがないのは、小さな古びたベッドだった。サンリオのキャラクター柄のタオルケットで覆われ、その中心はこんもりと盛り上がっていた。

妹だ。夢の中の俺はそう思った。

現実の俺は一人っ子だ。なのに、その時はベッドの中にいるのは妹、いや、妹の死体だと確信していた。ついでに、理由は思い出せないが、彼女は自分のせいで死んだのだと。ああ、俺が隠しておきたかった秘密はこれかという理解と、誰にもバレていないという安堵と共に、目が覚めた。

見慣れた天井を見上げながら、俺は後ろめたい気分だった。妹を死なせておきながら……と自分を責めかけて、そこでようやく自分に妹なんかいないことを思い出して、目が点になった。何だよ、妹って? 夢にしても突拍子のない……きっと、廃病院の恐怖を引きずっていて、あんな夢を見たんだろう。存在しない兄弟が出てくる夢っていうのは、よくあることらしいし。

でも、あの夢を見るのも、これが最後のような気がした。廃病院の地下室は謎のままだが、もう自分とは関わりのないことだ。この世には理屈じゃ説明の付かない領域がある。自分は一時そこに踏み込んでしまっただけ、明日からはこれまで通りの日常に戻れるんだと思った。

朝まではまだだいぶあったし、もう一眠りしようと布団を被った瞬間だった。ぎいいと家のどこかでドアが開く音がした。こんな時間に何だろう、オカンがトイレにでも行ったのかな……なんて思っていられたのは、一瞬だけだった。

ポロン、ポロン、ポロロン……。

玩具のピアノを鳴らしているような音が聞こえてきた。そう、夢の中でドアの向こうから聞こえてきた、あの音だ。そして、それに紛れるように……。

ペタッ……ズルッ……ペタッ……ズルッ……ペタッ……ズルルッ……。

廃病院の地下室で聞いたのにそっくりな足音が、俺の部屋に近付いてくるのに気付いた。妹が地下室から出てきた、そう思った。

誓ってもいい、その時俺はちゃんと目覚めていた。自分の頬をつねって確かめるという、ベタな方法まで試した。ちゃんと痛かった。そんな馬鹿な、俺に妹なんていない。いないはずの妹が、どうして現実に現れるんだ。

布団の中で震えていた俺は、大変なミスに気付いた。ドアに鍵を掛けていない。しかし、気付いた時には、足音はすでにドアのすぐ向こうまで迫っていた。今動いたら、中に居ることがバレる。いや、とっくにバレているのかもしれないが、それでも自分から知らせるのは恐ろしい。何となく「入っていいよ」という許可だと受け取られそうで。

やがて、足音はドアの前で止まった。やっぱりバレてるのか。しかし、ドアノブが回りだす気配はない。代わりに妙な音が聞こえてきた。

タンッ……ベタン……タンッ……ベタン……タンッ……ベタン……。

繰り返し聞いている内に、その音の正体が分かってきた。ドアノブに手が届かず、ぴょんぴょんとジャンプしているのだ。妹の背丈はそれだけ小さい……もしや、まだ赤ん坊なのではないか。自分に妹などいない。分かっているのに、罪悪感と共に涙が出てきた。まだそんなに小さかったのに、俺のせいで。ごめん、ごめんよと、居もしない妹に謝り続けた。

気が付くと、窓から朝日が差し込んでいた。恐る恐る部屋から出たが、廊下に謎の足跡が残っていたりはしなかった。今度こそ終わった。俺はそう思った。しかし、当分の間、地下室を使う気にはなれないな……と思いかけて、初めて思い出した。

我が家にはそもそも、地下室なんかないことを。

(あと少しだけ続く)

Red Bull 2022/8/24 (土) 18:35:01 #716165128


気取った書き方してすまん。しかし、あの時の俺の気分を正確に伝えるには、これが最適だと判断した。

まあ、そうだよな。日本では地下室がある家は滅多にないだろう。アメリカでは竜巻用シェルターやボイラー室も兼ねて、地下室を設けている家は多いらしいけど。一体、いつから自宅に地下室があるなんて思い込んでいたんだろう。夢を見始めた頃から? それとも、廃病院の地下室に入った時には、すでに?

あれ以来、地下室の夢は見ていない。久しぶりにダチに会って、それとなく探りを入れてみたが、どうも奴も同じような体験をしたらしく、その話題には触れたがらなかった。そのせいもあって、何となく疎遠になってしまった。さびしいことだが、お互いのためにはその方がいいのかもしれない。

あの地下室は何だったんだろう。家の地下室が夢にしか存在しなかったように、廃病院にも本来は地下室など存在しなかったのではないか。俺らに発見され、俺らが中にいる間だけ、現実に出現していたのではないか。

人間の心に本人も知覚できない深層があるように、建物にも普段は存在しない地下室がある。深層心理がエゴやトラウマのるつぼであるように、地下室には建物の住人たちの秘密や罪が押し込められている。廃病院の地下室に隠されていたのは、医療ミスの記憶とそれに対する医者の罪悪感だった……というのは、どうだろうか?

分かっている、こんなのはただの妄想だ。ただ、根拠という程ではないが、思い付いた理由は一応ある。廃病院の地下室から逃げ出す時、ダチが憑かれたように繰り返していた言葉だ。「ごめんなさい」はまだ分かる。背後から迫る何者かに対する命乞いだろう。だが「俺のせいじゃない」とは?

俺がこんな所に連れてきたせいで、怖い目にあったと責めていたのか? だったら、俺のせいにすんなと言いたいところだが、ダチは俺に向かって言っていた訳じゃない気がする。あれもやはり、背後から迫る何者かに言っていたのではないか。あの時のダチには、医療ミスで患者を死なせた医者の罪悪感が取り憑いていたのではないか。

だとすると、俺の家の地下室にいた妹は何なのか。繰り返すが、俺に妹なんていない……と言いたいところだが、俺が知らないだけで本当はいたのかもしれない。たとえば妹は俺の双子で、俺は無事に生まれたが妹は死産だったとか。俺が罪悪感を覚えるかもしれないと思って、両親も隠しているとしたら? しかし、俺が知らなくても地下室は記憶していた。ちゃんと生んでやれなくて申し訳ないという罪悪感と共に。今のところ、両親に問い質すつもりはないが。

就職して自宅を出た今も、時々不安になる。ちょっと部屋の模様替えをしようと、カーペットをめくったり、家具をずらしたりした途端、その下から地下室への入口が現れるのではないかと。そうなっても、元通りにして何も見なかったことにするしかないのだろう。

誰の家にも、地下室はあるのだから。

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◆選択Qワード

Qualm=不安、良心のとがめ

◆心配な点

1. 面白いでしょうか? 唐突さが面白さを上回まっていないでしょうか? あと、肝試しという導入がさすがにベタすぎる気がするので、できれば変えたいなぁ~。

2. 分かりにくい点はないでしょうか? 「地下室」がどういう存在かは、ご理解頂けたでしょうか?

3. 素人の書き込みっぽさが出ているでしょうか? なるべく難解な表現を使わない、擬音やネットスラングを多用する、などで表現しているつもりなのですが……。

4. 実話っぽさが出ているでしょうか? 怪異を目の前に出さず音だけで表現することで、なるべく「作り物感」を減らしているつもりなのですが……。

5. 地下室の正体について、語りすぎではないでしょうか? もっとぼかすとしたら、どこをぼかすべきでしょうか?

他にもお気になる点ございましたら、遠慮なくご指摘下さい。代案もご提示頂ければ助かります。


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