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諸君らの気分を害したくないので、画像は載せないでおく。
概論
ゲロみたいな寿司とはその名の通り、ゲロのような外見の寿司だ。もう少し詳しく説明すると、通常の寿司の上にゲロを吐き散らしたような形式の寿司だ。…そこの君、戻るボタンを押すのは待ってもらいたい。実は、寿司にゲロを吐くというのは大変妥当かつ正当性のある行為なのだ。その理由を説明するには、まず寿司の歴史から語らねばならない。
寿司が日本で作られるようになったのは稲作文化が伝来した紀元前3世紀頃ではないかと言われているが、庶民にまで広く食べられるようになったのは平安時代だ。そして、その頃の寿司に関する重要な史料として今昔物語集1の「人、酒に酔ひたる販婦の所行を見る語」がある。以下に引用する。古文に興味の無いやつは読み飛ばしてくれ。
今は昔、京に有りける人、知りたる人のもとに行きけるに、馬より下りてその門に入りける時に、その門の向かひなりける旧き門の閉ぢて人も通はぬに、その門の下に、販婦の女、傍に売る物ども入れたる平らなる桶を置きて臥せり。何にして臥したるぞと思ひてうち寄りて見れば、この女、酒によく酔ひたるなりけり。
かく見置きてその家に入りて、暫く有りて、出でて又馬に乗らむとする時に、この販婦の女驚きさめたり。見れば、驚くままに物をつくに、その物ども入れたる桶につき入れてけり。あなきたなと思ひて見る程に、その桶に鮨鮎のありけるに突きかかりけり。販婦、過ちしつと思ひて、急ぎて手を以てその突きかけたる物を鮨鮎にこそあへたりけれ。
これを見るに、きたなしと云へば愚かなりや。肝も違ひ心も惑ふばかり思えければ、馬に急ぎ乗りて、その所を逃げ去りにけり。
要約すると、「昔、京都の人が知り合いの家を訪ねた際、その家の向かいの門の前に物売りの女が酔っ払って倒れていているのを見つけた。その女は目覚めると、売り物の寿司桶の中にゲロを吐いた。女は急いでゲロをこねて寿司の中へ混ぜ込んでしまった。それを見ていた京都の人は、なんと汚い事だと驚き馬に乗って逃げ去った」という事だ。いかがだろうか?寿司屋に関する日本最古の史料に、きちんとゲロへの言及があるのだ。今からおよそ900年前、確かに寿司にゲロをかけた女がいた。そして、恐らくそれを食べた者もいた事だろう。この事実を元に、今一度問いたい。寿司にゲロを吐くという行為は悪だろうか?むしろ、寿司を嗜む者として一度は経験しておくべき事ではないだろうか?
さて、ここからは作り方の説明に入る。折角だから平安時代当時の製法を真似たいところだが、実は当時の寿司は「馴れずし」と言って、一般的な今の握りずしとは少し違う。まず、魚の切り身に塩をよく振って、桶に入れる。その上に酒と香辛料を混ぜた飯を乗せる。これを繰り返して魚と飯の層を何重にも作り、最後に重しを乗せる。この状態で1年ほど寝かせたら完成だ。…少しどころか全然今の寿司と違うではないかと思う読者もいるだろうが、これが古代の寿司の製法だ。寿司とは元々、腐りやすい魚を長期間保存しておくための技術なのだ。また、余談だが寿司という名前も発酵して酸っぱくなるから「酸し」と呼んだ事が由来という説がある。
ここまでで、勘のいい読者はもう気付いたかも知れない。こんな風に寿司を作ると、米が発酵してべちゃべちゃになり、かなり強烈な悪臭を放つようになる。そう、このままでもかなり「ゲロっぽい」のだ。今の感覚からすれば寿司にゲロを混ぜ込むというさっきの女の話はかなりの狂気だが、昔の寿司は元々ゲロみたいなものだと考えれば納得も行くだろう。俺のスシブレードはこの「馴れずし」をこのまま使う。もちろん、本当に寿司の上にゲロを吐き散らしたりはしない。(俺も料理人の端くれなので、そんな不衛生な真似はしない)ただし、対戦相手には本物のゲロだと説明する。さっきの今昔物語集の話も聞かせ、俺が本気で寿司にゲロをブチ撒けて回すような人間だと信じ込ませる。心の乱れは回転の乱れ、吐瀉物を相手にしていると思いながら実力を出し切れるスシブレーダーはいないだろう。
スシブレード運用
攻撃力
防御力
機動力
持久力
重量
操作性
歴史的正当性
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運用を考える上で、ひとつ悩ましい点がある。それは、米部分を残すのか、捨てるのかという事だ。実は昔の馴れずしにおいて米は単なる保存料で、食べるのは魚だけだ。なので米は捨てて、魚の切り身だけを回すという選択肢も存在する。しかし切り身単体では防御力に不安が残るし、何より肝心のゲロ要素が少ない。おすすめは、米も切り身もすべて寿司桶にぶち撒け、桶ごと回す手法だ。重い寿司桶を回すにはある程度の熟達が必要となるが、悪臭を放つ変な色のべちゃべちゃした米を満載にした寿司桶が高速回転する様は圧巻だ。また、回転中に中身が飛散すれば対戦相手やギャラリーから大きな悲鳴が上がる点も見逃せない。腕に覚えのあるスシブレーダーには是非この手法をお勧めしたい。今回のレーダーチャートも寿司桶バージョンを想定している。何しろ重いので機動力は低いが、その分破壊力は抜群だ。また、近頃は相手の寿司に異物を混入させる形で攻撃するスシブレードが流行っているが、こっちは元々異物まみれ同然なのでそういった攻撃への耐性もある。
エピソード
俺がゲロ寿司…もとい馴れずしを本格的に運用し始めたのは、今年の年始ごろの事だ。その時は闇寿司の若手と俺たち中堅の間でちょっとした小競り合いと言うか勢力争いのようなものがあって、お互いの代表5人ずつぐらいが集まって決着を付けようという事になった。各自色々な寿司を持ってきたようだったが、流石にゲロを持ってくると想像できるやつはいない。俺はこれ見よがしに桶いっぱいの馴れずしを見せびらかし、例の今昔物語集の話もしてやった。話はうまくいき、俺以外の参加者は全員桶に入っているのがゲロだと信じ込んで顔をしかめたようだった。そして、勝負が始まる。誰もが俺の寿司には近づくのも嫌だといった具合で、勝負は終始俺のペースだった。…あの男が現れるまでは。
「おいオッサン!面白い寿司使ってんなあ。俺と勝負しようぜ」
見かけない顔の若い男が他の参加者の押しのけ、おもむろに俺の前に立ちはだかった。その際に馴れずしがやつの顔に少し飛んだが、気にしていない様子だった。
「おい、顔にゲロ飛んだぜ。拭いたらどうだ」
「こんなもん、なんでもないよ。俺のこれと勝負しようか」
男は顔を拭うでもなく、自らの寿司を取り出した。その寿司は軍艦だったが、茶色くて臭い謎の物質が乗っていた。
「なんだ、うんこみたいな寿司だな。汚いもの持ってきやがって」
「あんたにだけは言われたくないよ」
男はうんこ軍艦の正体については説明しなかったが、俺にはすぐ分かった。うんこではなく、味噌軍艦だ。しかも恐らく自家製の味噌を使って、わざと臭くしている。まるで俺のような手口じゃないか。
「同じ戦術に、さっきの態度。貴様、俺の寿司の正体を知っているな」
「ああ、そうさ。俺は悪臭寿司のスール。臭くて見た目の悪い寿司を愛している。無論、あんたの馴れずしも知ってるよ。さて、"なれ過ぎた 鮓すしをあるじの 遺恨哉2"。腐り切ったオッサン達は、馴れずしと一緒に退場して貰うとしようか」
「なんの、"寂寞と 昼間を鮨の なれ加減3"だ。年月を経る中で見えるものもあるって事よ」
「「3、2、1、へいらっしゃい!」」
お互いの寿司が激しく回転する。俺はかなりの時間をこの馴れずしの研究に費やしてきた。ゲロのハッタリが通用しないぐらいで、こんな若造に負けてたまるか。
まず、相手は味噌軍艦を俺の馴れずしにぶつけて来た。寿司桶に穴が空くんじゃないかというぐらいの物凄いスピードだ。負けじとこっちも体当たりを繰り出すが、難なく躱される。速さ勝負では敵わないので、俺はべちゃべちゃの米をそこら中に撒き散らす戦法に出た。足元が悪ければ、スピード自慢の寿司も持ち味を活かせない。俺が編み出した軽量寿司対策だ。だが、相手の腕前はかなりのもので、米の間をうまく縫って再度体当たりを仕掛けて来る。
「そら、これで終わりだ!」
2度目の体当たりは物凄い勢いで、寿司桶の中身がかなり飛び散った。しかしこちらも負けてはいない。ぶつかった時に桶の淵で相手の味噌をいくらかこそぎ取ってやった。そしてさらに回転を増し、今度は地面に飛び散った米や具を散弾のようにして攻撃する。一進一退の攻防だ。ちなみに傍から見たらゲロとうんこが飛び散る最低の勝負にしか見えず、他の参加者は悪臭と汚さにうんざりして全員帰った。
「オッサン、意外とやるじゃねえか」
「当然だ、これがじっくり寝かせた馴れずしの真髄よ」
強がっては見たが、正直内心は驚いていた。味噌軍艦のスピードはかなりのもので、相手は明らかに今までの俺より格上の実力を持っていた。それでも勝負は拮抗している。理由はゲロのハッタリが無くなった事だ。そう、いくら自分ではタネを知っているとはいえ、汚いものを回していると周囲に思われるのは気分のいい事じゃない。心の乱れは回転の乱れ、ある種の負い目のようなものが気付かないうちに俺の枷となっていたのだ。それに気づき、一瞬自戒の思いに心を奪われる。その隙を相手は見逃さなかった。3度目の体当たりによって馴れずしは寿司桶ごと弾け飛び、俺の身体はゲロ馴れずしまみれとなった。
「完敗だ。どうにでもしてくれ」
「いや、あんたの馴れずしも中々だった。だが、これだけは忘れないでくれ。馴れずしはゲロなんかじゃない。立派な寿司だ。作るのに時間のかかる馴れずしをわざわざ使うあんたの根性は買うが、ゲロ呼ばわりはいただけない」
そうだ。どんなに見た目が似ていても、臭かろうとも、食べ物は食べ物だ。ゲロやうんこじゃない。食べ物を排泄物呼ばわりするのは下品な上に食べ物に失礼な事なので、やめよう。それが、俺がこの記事を通して伝えたかった事だ。
関連資料
闇寿司ファイルNo.864 "ユムシ軍艦"
ゲロやうんこではなく、ちんちんみたいな外見のスシだ。
攷証今昔物語集(本文)
今昔物語集の全文を載せているサイトだ。寿司の話は巻31の第32話だ。
文責: 古代寿司のオルド
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任意A任意B任意C- portal:2165171 (09 Jun 2020 11:32)
ゲロという題材はやはり途方もないほど高い壁なのかもしれません。個人的にはまだ話の面白さよりゲロの気持ち悪さがかなり上回っていると思います。
具体的な点ではエピソードの盛り上がりに欠けていると思いました。割と淡々とバトルが進んでいるため展開の変化や熱い感じがほしいところです。
また項目名について、作っている寿司はなれずしなのでゲロ寿司とはならないのではないでしょうか。闇寿司ファイルはそこあたり割と正直に書いていると思います。それに合わせてまずはなれずしの説明をして、その後に「これ実はゲロに見えるでしょ」という流れの方がまだショックは少なくなると思います。
ただすみません、例えこれらを僕の理想通りに改稿されたとしても、それでUVまでに至れるかは分かりません。やはりゲロは相当厳しいテーマだと思います。頑張ってください、本当に。
批評ありがとうございます。
歴史がどうのと書きましたが、要は900年前の人ですらドン引きしているので、我々の相当深い所に嫌悪感が刷り込まれているのかも知れません。
表題の不自然さと戦闘シーンの単調さも、やっぱり気になっちゃいますよね…。
薄々そんな気はしつつ、前者は表題をこれにしたかったという理由により、後者は単なる筆力不足により、なんとかできなかった部分でした。ひとまずタイトルはちょっと変えました。
なんというか、自分の中で薄々あった心配どころが、やっぱりご指摘頂いてしまったという感じで、どうしようかなという気持ちです。
今昔物語集のくだりは好きなので、なんとか形にしたいんですけどね。どうしたものか…。
追記:戦闘シーンはちょっと加筆しました。また、タイトルなども修正しました。