【アイデアメモ】唯一の明晰である限り、私は落ち続ける

正体不明の巨大で深い縦穴について書かれた報告書
その深さを測ることには成功しておらず、調査のために降下されたあらゆる財団資源は
不明な時点、調査に携わったあらゆる職員の不自然な認識・意識の外にそれが置かれた時点にて
その全てが喪失したため、その詳細についてもほとんどが不明のままであった
しかしながら、後述の異常性質を考慮したのならば、その深度は何らかの空間異常性質によって
底部が非ユークリッド学的に延長されているか、あるいは存在しないものと考えられます

上記の性質の他に、オブジェクトは特質すべき異常性を持っている
それは縦穴を落下する個人を対象として発生し、当該被験者は不明な原理によって
部分的な不死性を獲得し、半永久的に縦穴を落下し続けるという異常現象である
この不死性の定義として、財団による正確な分析が行われていないために詳細は明らかになって
いないが、水分や栄養失調による飢餓症状や加齢現象は発生せず、排泄などの生理現象も行わなくなる

その一方で、睡眠行為に関しては欠如することなく必要となる
加えて、睡眠中には必ず異常な夢を経験するようになる

その夢の内容とは、自身がかつての生活空間で目を醒ますというものであると推測される
しかしながら、被験者が夢中において意図的に干渉を行わない限り、夢中で発生する出来事
つまりは一日のルーチンは全ての夢の中で共通のこと(毎回同じ出来事を繰り返す)となる

また、この夢中の描写は非常に鮮明であり、多くの場合で被験者は「こちらが現実だと」誤認される
夢中における曖昧であったり抽象的な描写・出来事に関して、気が付かないか、もしくは気に留めようとしない

しかしながら、この繰り返しの認識は夢見の経験の反復(明晰夢訓練)によって獲得できるケースもあり、
これによって、部分的に前回の夢で起きた出来事を記憶していくことが可能となる


この報告書自体が「不明な理由から穴を落ち続ける羽目になった職員」によって書かれた
「夢の中の報告書」であり、職員は夢の中で自身が置かれた状態から脱するための手掛かりを探し続けている

しかし、職員は明晰夢訓練を受けていたわけでもないため、夢見に際して毎回意識が明晰となるわけではない
初期に関しては、永遠に同じ展開の夢を見続けており、現実でその変わらぬ状況に屁維持し続けていたが
気が遠くなるほどの反復の結果として、部分的にだが明晰夢を見る能力を獲得し、上記の様な活動を始めた

とはいえ、現在でも全ての睡眠時に明晰化できるわけではなく、前回の記憶も部分的にしか
引き継がれていないケースが多々ある。そのため、職員は自身の1日のルーチンの中に割り当てられた
「XX時にSCP-XXXX-JP報告書の作成を行う」という部分を当該オブジェクトの情報を記録するスペースとして
定めることとしており、そこには縦穴の説明に加えて、ここが夢の中であるとする自身へあてたメッセージと
これまでの反復の中で行ってなってきた記録が残されている
(なお、なぜその報告書下書きへの記載だけ、前回の夢から引き継がれるのかは定かではない)


このメッセージを覚えているのであれば、報告書を飛ばしてログを確認し、記憶との相違が無ければ追記しろ

もしも覚えていないのであれば、端的に言うがここはお前の夢の中で、この文章はお前が
これまで見て来た夢の中で重ねて書いたものだ

信じられないかもしれないが、この文章は同僚の悪戯でもないし、他のオブジェクトによる影響の発露でもない
だから、システム担当者やサイト管理官に連絡する前に、以下の質問に目を通してくれ

まず、今日目覚めてからの大まかな流れは以下の通りだろ?

X時に目覚め、X時に食堂で朝食にシリアルを食べた(いつもはハムサンドなのに)
そしてX時にSCP-XXX-JPの件で聴取を受け、X時にSCP-XXX-JPのレポート作成を行った

まだ信じられないなら核心的なことを突こう
自分の部屋と食堂、食堂から聴取室、聴取室から第6研究室、
これらの間をどのように移動したか覚えているか?
行く途中で誰かとすれ違ったか覚えているか? そもそも、廊下を歩いた記憶すらないんじゃないか?

ここまで言っても信じないようならば、システム担当者にでも報告してくれ
きっとへとへとになるまで質問攻めを受けるだろうが、また次の夢に掛けるさ


補遺: 私は現在、不明な理由から現実でSCP-XXX-JPを落ち続けている状態にある
上記報告書は、その状況からの解決策を模索すべく、数万回以上の睡眠の末に
自身の夢の中で作成・維持することに成功した、唯一の要素である

しかしながら、私は明晰夢訓練を受けたわけではなく、現在でも睡眠に際して
ほとんどの場合で前回までの夢の出来事を記憶にとどめているわけはなく
多くは夢特有の曖昧さや抽象性によって無視されるか新たな模索の試みは成功しない

それを踏まえ、当該報告書及び以下の記録群は、これまで私が夢の中での経験や思考を
記録し、夢での明晰性を失う事のないよう繰り返し反芻し続けるためにも活用されている


記録1:他者との交流
異常現象やここが夢の中であるという報告、もしくは奇行や突拍子もない発言や現象への発露は
その大半が無視されるか、もしくは別の話題に差し替えられるか、非異常性であるかのように扱われる
全ての者が明らかに気が付いていないか、もしくは気は付いているのに気に留めていないというのが正しいか
彼ら全ては同僚であり、見知らぬものはいない。おそらくは自身の記憶の産物に違いないが確証がない

記録2:場所の移動
場所の移動は、自身が向かいたいと心の中で思い扉をくぐると、そこへと実際に行き着くまでの
時間が消費された上で、目的地から意識の連続性が開始されるようである
これについて、「廊下を歩きたい」もしくは「散歩をしたい」というような目的意識を持つことによって
瞬時の移動は回避されるようである。なお、サイト内に実在しない場所や、私が物理的に入れない場所、
そして、現実の私ならば勝手に入らないであろう場所にも侵入することはできなかったし、サイト外にも出れない

記録3:聴取時における報告
毎回発生するコモンイベントとして、SCP-XXX-JPに関する聴取がある
この際の担当者はリース研究員であり、毎度同じ質問が行われるのみだが、
こちらから内容を意図的に逸らす、変更することによって時折奇妙な反応を見られる
留意すべき点として、彼女が聴取室の外で見たことが無いが、これについては単にスケジュールのためだという

記録4:SCP-XXX-JPに関するディスカッション

記録5:他者の殺害の試み

記録6:自死の試み

記録7:このメッセージを読む者へ
リース研究員に対して、自身の状況を説明したことを報告
その際に抱いた違和感や、自分がこれから自死を選ぶことをメッセージとする
そして、このメッセージをサイト上の全ての職員に送ったことも告げる(誰かに託す)

もしかしたら、本当にこっちが現実で、穴に落ち続ける状況が夢ではないかと思ってしまう
願わくば永遠に眠り続けるか、もしくは明晰である状態から脱すことを

記録?:明晰を放棄した貴方へ
謎の人物が新たに書き残したメッセージ
明晰性を得たことで、実在しない穴底へと向かって落ち続けることになったということ、
同時に明晰性を放棄したことで落ち続ける定めから逃れたということを示唆しつつも、
それによって解決の芽がまた絶たれたという悔みと、新たな明晰者へとある種の祝福の言葉を贈る


主人公は「穴」の何かを知ってしまい、反芻し続ける夢の中で唯一の「明晰」な存在となる
それが原因で、現実では実在しないはずの穴底へと向かって落下し続ける定めとなり、
皆が反復し続ける穴底の夢の中で、唯一思案し、奔走し、足掻き続ける羽目になってしまった

もしくは、夢の中で「明晰」となったせいで、現実で穴に身を投じる選択を行ったのかもしれない
そして、明晰を放棄することによって、実在性を獲得した「穴底」に激突することとなってしまう
(明晰である限り、底に落ちることはないが、明晰を放棄すればそこに落ちてしまう)

「明晰」の獲得と放棄「穴底」の不在化と実在化、この関係性について背景を詰めて行く必要がある

ブラックホール(重力の特異点)のように、平面空間上に重量の大きい存在が出現し、平面の下方に落下し続ける
つまり、「引き上げられた底面」という二次元平面の上で、「明晰」という異常な意識の比重が生じたことによって
(≒自分が"現実を反芻し続ける"異常な夢を見ている事実に気が付いてしまったことによって)
現実における自身の真下が「穴」として再定義されてしまい、突然として落下し続ける羽目になってしまった?

明晰から抜け出すことで、この「穴の位置」に関する実在定義が解消されて、再び平面上に戻される
あるいは、異常な比重が失われたことで、縦穴の下方への延長がそこで停止してしまい、
その結果として「底」が発生し、結果として穴底に落ちて死ぬという結末を迎えることとなってしまう

この理論を語らせて、現実で自分が死ぬために明晰を放棄することを決意させる

他の者は明晰でなかったために、穴底に辿り着いて永遠に夢と現実のはざまを彷徨う羽目になった
しかし、主人公のみは明晰性を保持していたがために、未だに穴底に辿り着いておらず、
現実では穴を落ち続ける羽目になってしまっている
(上述の通り、皆はすでに穴の底)

そのため、終盤では明晰性を失うことに憧れを抱き始めており、最後のリースとの遣り取りで瓦解してしまう
そして、ここが夢であるという理解を捨て去るために、報告書を削除するか、別の職員に転送しようとする

他の職員は「現実と同一人物」ではあるが、夢の中なので死亡しても次の夢では復活している
(記憶も無くなっているが、繰り返すと若干覚えられて何となく避けられるようになる)
この挙動を検証しつつも、自分が死亡した場合はどうなるのかと考え、保留していたが後半で実行
しかし、結局は夢から醒めて、次に同じ夢を見ただけでしかなかったので絶望してしまったことで、
上述の穴底に落ちる方法(明晰性を捨て去る方法)を検討し始めるようになる
(自殺した次の回くらいで、リースにそのことを何気なしに相談してしまうという流れでも)


重要事項: 現在の精神状態や明晰度合いにかかわらず、以下の文章には必ず目を通しておくこと。その過程に際して、自身に身の覚えが一切ないか、あるいは既に記憶の中で曖昧化・抽象化している情報を確認できたのならば、その事柄について強く意識しながら反芻を行わなければならない。 ……もしも、作成途中であったはずのこの報告書が既に完成している点について疑問に思っている場合は、全てを読み終えるまではシステムもしくはセキュリティの担当者へと報告を行うべきではない。

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid Dagdagiel

特別収容プロトコル:

説明:

付記:

記録XXXX-1


http://scp-jp.wikidot.com/scp-2455-jp
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