SCPから引退するときのエッセイ

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SCP財団は世界的なコミュニティを持ち、各言語版を合わせると数万にのぼる記事があり、しかも登録料も年会費もかかりません。日々新しいメンバーが増え、秀逸な記事が執筆されており、すばらしいことにあなたにもそのチャンスが提供されています。さまざまなSCP財団をモチーフとしたゲームが出ており、近年では出版社からアンソロジーコミックやライトノベルが発売されるなど、その活躍の領域は広がる一方です。

とはいえ、何にでも終わりというものがあります。SCP財団への熱意が冷めてしまうことは決して悪いことではありませんし、誰にでも起きうることです。本稿はいわゆるROM専1ではなく、サイトに寄稿したことがあり、ページなどを持っている方を想定して話を進めていきます。

このエッセイの目的は、引退の原因となりうる「燃え尽き」の予防や引退の方法に関する知識を提供することです。筆者は引退したことがないため、その点でリアリティのある想定ができていないかもしれませんが、ご容赦ください。

1. 燃え尽き症候群

まず初めにしなければならないのは、「燃え尽き症候群バーン・アウト」に関するお話です。

燃え尽き症候群は、1974年にハーバート・フロイデンバーガーが発表したもので、「それまで意欲を持ってひとつのことに没頭していた人が、あたかも燃え尽きたかのように意欲をなくし、社会的に適応できなくなってしまう状態2」とされています。もとは対人的なサービス業などに従事する人がなりやすいとも言われてきましたが、現在ではさまざまな職業・職種でみられるようになりました。

SCP財団の歴史においても、燃え尽き症候群を思わせる行動の末、サイトを離れるという方がいました。しかし残念ながら、SCP財団は医療コミュニティサイトではありません。サイトスタッフやベテランメンバーはこのような人の存在を痛ましく思い、できたらなんとかしたいと思っているかもしれませんが、有効な手立ては持ち合わせていません。本稿における記述は、精神医学あるいは心理学の観点から正確ではない可能性がありますが、可能なかぎり信頼できる情報源から抜粋し、対処のための知識を共有するものです。もし本稿を読んで自分や、周りの人が燃え尽き症候群かもしれないと思ったら、病院にかかったり、周囲に相談することをおすすめします。

フロイデンバーガーとゲイル・ノースによる燃え尽き症候群における12段階のサイクルを簡潔に説明した論文3があります。残念ながら日本語訳は発見できなかったので、二次情報源とはなりますがサイクルについて紹介した文献4から引用します(元の論文はオープンアクセスなのでインターネット上で全文が公開されています。気になる方は読んでみてください)。

1. 自己承認衝動
自分自身の力を認めようと傾倒することが、燃え尽き症候群のトリガーとなることがよくあります。この欲求は自分の同僚と自分自身に対して、すごい力があることを見せたい、といった形で現れます。

2. 過酷な労働
前述のすごい力があることを証明するには、激しく働かなければなりません。「~しなければならない」と、結果に意識が向いて逃れられない状態が何日も、何夜も続く段階です。

3. 自分自身の要求の無視
この段階では、眠ったり、食事をしたり、友人と交流したり、『となりのサインフェルド』(訳注: アメリカのコメディ)を見たりと知ったシンプルな喜びが、仕事の注意を散漫にさせるものとしか見えなくなります。(私には、『となりのサインフェルド』のない生活と燃え尽き症候群の間に、何か証明された関連があるかどうかはわかりませんが、きっとあるはずです)

4. 闘争の置き換え
この段階では、あなたは自分自身の抱えている問題を理解していません。脅威を感じているため、不快な感情をはねつけます。

5. 価値観の見直し
この段階では、仕事に執着することによって、友達や趣味などのいままで持っていた価値観が捨てられて、脇へ押しやられます。ここでは、仕事を成し遂げることでしか成功したことを評価できなくなります。

6. 発生した問題の否認
この段階では思考パターンが悪化し、考え方が皮肉っぽくなったり、攻撃的になります。問題が増えてきますが、時間がなかったり、同僚が無能であったり、仕事の負荷が不公平なのが原因だとみなします。

7. 引きこもり
社会とのかかわりを減らし、仕事に120%打ち込みます。週の真ん中から酒によってストレスを紛らわしはじめます。入手可能であれば、ドラッグに手を出すことさえあります。選択したものが何であれ、危険な雰囲気を出しつつも、見た目は普段よりも少しのめり込んでいるように見えます。

8. 露骨な行動の変化
友人や家族、同僚から見ても、明らかに行動が奇妙でおかしいと分かります。もはや、あなたはもうあなた自身ではなく、近い仲間や親しい人は遠くからそれを見ているだけです。

9. 離人症
この段階に達すると、自分は世界にとって価値がないと考えるようになり、一度は感じることができたと思っていた信用を感じることができなくなります。人生が、機械的にただ過ぎていく、感情のないできごとのように感じます。

10. 精神的な虚無感
虚無感と言える感覚を覚えます。酒やドラッグにのめり込み、暴飲暴食をしたり、過度な性的な行為など、さまざまなことをして気を紛らわせようとします。

11. 憂鬱
この段階では、絶望、喪失感、疲れ果てた感覚を覚えます。未来から差し込んでくる光が少ししか見えなくなります。

12. 燃え尽き症候群
もっとも重度なレベルです。この状況から抜け出すために自暴自棄になります。精神的にも、肉体的にも破綻の瀬戸際にいます。医者のサポートと治療が必要です。

理想は、このような状態に陥る前に適切な休息などの対処をし、燃え尽き症候群にならないことです。上でも述べたとおり、SCP財団はこういった方に対する治療の手段を持ち合わせていませんし、サイトのミッションとしてもそういったことをかかげているわけではありません。そのため万が一、自分や周囲の方がこの12段階のような状態に陥っていたときは、自ら行動を起こす必要があります。

燃え尽き症候群からの回復について、久保真人(2007)5がBarnier(1998)6の研究を紹介しています。調査はサービス業に従事していた人間を対象としており、そのままSCP財団での創作に応用することはできませんが、参考になるはずです。

燃え尽き症候群からの回復過程6段階

各段階 内容
第1段階 「問題を認める」 自分自身に起きている不調が、疲労ではなく心因性のものであることを認識する
第2段階 「仕事から距離を取る」 仕事との間に心理的な距離を取る。多くの場合、休職などを必要とする
第3段階 「健康を回復する」 休息を取る。焦らず、徐々に心身を休めていく
第4段階 「価値観を問い直す」 仕事に偏重していた生活を見直し、重点をどこに置くべきかを再定義する
第5段階 「働きの場を探す」 外界とのつながりを取り戻し、問い直した価値観に合致する仕事を求める
第6段階 「断ち切り、変化する」 新しい環境下で、再出発を図る

SCP財団における創作活動はなにも締め切りに追われ、クライアントに責め立てられるような類の仕事ではないということを、いまいちど思い出す必要があります。また、この回復過程においては最終的に元の場所を離れていますが、必ずしも戻ってこられないというわけではありません。気負わないでください。ここはいつでも離れ、戻ってくることのできる場所です。

2. 引退するときの選択肢

前項は燃え尽き症候群という心身の病気による引退についてですが、こちらではより「前向き」な引退──時間がとれなくなった、役割をすべて終えたという達成感によって考える引退について述べていきます。

まず最初に確認すべきなのは、引退は決して「不可逆的な状態」ではないということです。前項の最後の言葉の繰り返しとなりますが、SCP財団はいつでも離れ、戻ってくることのできる場所です。なので、引退をするときは後に自分の気が変わったときに備えて、いつでも戻ってこられるような状態であることが望ましいです。下にいくつかの選択肢を書きだしてみました。

1. なにもしない

なにもせず、ただサイトから姿を消すという形です。多くの興味と関心を失ったメンバーがこの方法をとっています。無意識に引退を決意している場合に起きます。この方法は速やかに引退という目標を達成できるうえに、引き留められることもないためわずらわしさがありません。反面、残されたメンバーは連絡を取りたくとも取れないという状態に置かれるため、もしあなたが大量の記事やカノンの中心的記事を書いていた場合、困る人も出てくるでしょう(もっとも、引退する側にとってはそんなこと関係ありませんが)。

2. 連絡先を残す

あなたのSNSアカウントのIDなどを書き残したうえでサイトから離れます。この形なら消息がつかめず途方に暮れるメンバーを減らすことができますが、完全に視界からSCPを消そうと考えたときには、後から追いかけられる可能性があるため不安が残ります。この場合では、自分の執筆した記事について影響力を残しておけるため、望まない扱いを受ける可能性は減らすことができます(もちろん、それはあなたが自分に対する連絡に反応すればの話ですが)。

3. 誰かに記事を託す

著者ページや記事のディスカッションに、信頼できるメンバーやスタッフに記事の処遇を任せる旨を書いてからサイトを離れます。こういった内容を書かなくても、一定期間連絡が取れないメンバーの記事は編集などが許可される場合がありますが、この場合では記事に対する一切の行為について委任するため、より強力です。

ただし、この行為はサイトルールで規定されるものではないため、のちに気が変わって戻ってきたときに、委任された者による記事の処遇に不満があったとしても、サイトスタッフはなにもできない可能性があります。問題が起きたとしても、当人同士での解決が基本的には求められるでしょう。そのため、委任をするならば詳細なことまで事前に確認しておく必要があります。

4. アカウントを消す

出来れば避けてほしい引退のひとつです。アカウントの削除が行われると、記事は残りますがその作成者情報が消えるため、作成者不明の記事が大量にできることになります。サイトルール違反ではないので、別に処罰の対象になることはありません。ただ、気が変わってもどってきたとしてもカルマレベルはリセットされ、自分のサンドボックスなどにもアクセスできなくなるなど大きなやり直しを強いられます。

5. 一切の記事を消す

もっとも避けてほしい引退のひとつです。執筆してきた記事すべてを削除することは、シリーズには大きな穴が開き、またあなたの記事をもとに書かれた記事が根無し草になるということを意味しています。また、近年のSCP-JPにおけるコンテストは受賞記事の削除を禁じており、もしそういった記事までをも削除した場合、その後奇跡的に気が変わって戻ってきたとしても永久にコンテストへの参加資格を得られなくなります。

全記事を削除して引退する場合、あなたはスタッフから「記事の復活投票に同意するか」どうかについて聞かれます。クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示-継承 3.0に同意して発表したものは、クレジット表記さえあれば自由な転載を行っても問題ないということになっていますが、スタッフはあなたの心情に配慮してそれを行いません。できれば同意してほしいところですが、引退の是非も含めてすべてはあなたの思うままにするべきです。

3. 予期せぬ引退に備える

引退の方法はさまざまですが、そのやり方によっては残されたメンバーに大きな影響を及ぼすことがあります。ですが、引退の方法は必ずしも選べるとは限りません。突然の事故や入院によってサイトへのアクセスを長期間にわたって失う、あるいは、あってほしくはありませんが命を落とすと言ったことは現実に起きえます。このため、いつそうなってもいいように備えておくことも必要かもしれません。

具体的な方法は「引退するときの選択肢」にあった「2. 連絡先を残す」や「3. 誰かに記事を託す」などを事前に準備することなどが考えられます。これらはすでに作成された記事についての取り扱いでしたが、書きかけの記事などについても同様の方法でバックアップを取ることができます。

「万が一があった場合には、サンドボックスの残留データの取り扱いについて誰それに任せる」、といったメッセージを残しておけば、それにしたがって下書きは引き継がれるでしょう。とはいえ、これも後に復帰するようなことになったときのことまで考えておかなければ、厄介な事態を引き起こしかねないため、注意が必要です。


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