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えーと……ああ、時間になったのでオリエンテーションを始めさせてもらおう。非記録事件記録管理課へようこそ。私は室長を押し付けられた折佐田という者だ。普段は別の業務に携わっていることが多いので、私と会うことはあまり無いだろう。
ここに集まったエージェント達にまずは一言、ご愁傷様。ここで君達が取り扱う記録は、基本的にアノマリーと直接関係の無いものばかりだ。アノマリーの性質が密接に関わるなら、それはウチの管轄じゃない。ここで扱うのは、「公に記録されないことが決定した事件の記録」の管理だ。
訳が分からないか? 例えば、フィールドエージェントが突如現れたアノマリーに殺された、なんて事件が起こればそれは公に記録される事件だろうな。しかしね、君達は財団で起こる事件がアノマリーに関わるとは限らないことくらい理解しているだろう?
試しにここに保管されている記録を読み上げてみようか。
『2022年12月5日、エージェント・福芝が宿舎にて自殺。当人が過去に接触したアノマリーを調査した結果、原因は過労と判断された。』
これは典型的なよくある「記録されない事件」だな。こんなものを記録していては職員の士気に関わるし、アノマリーとは直接的な関係が無い。では次を読んでみよう。
『2021年8月11日、保管されていたアノマリーがサイト外に持ち出されていた。犯人は小井研究助手。動機は学術的興味と判断された。当該アノマリーは現在サイトへと返還されている。』
これも、正直に言って公には記録されない。アノマリーの性質には関わらないし、この記録を見て「なら自分も」と真似をする輩が出てきかねない。まあ要するに、アノマリーの性質に関わらない、財団にとって汚点となるような事件の記録は全てここで管理する、と思ってくれればいい。
表に出す必要の無い記録を保管するのがこの部屋という訳だ。君達の仕事は送られてきた事件記録を精査して、「この事件はアノマリーの性質と関係がないのか?」「この記録は表で保管しなくて良いのか?」を判断することだ。君達がOKを出せばその記録はここで保管される。この記録の墓場にな。
さて、今君達は、財団でこんなに多くの事件が起きていたのかと驚いているはずだ。この部屋に収められている記録は日本支部で起きた事件の中でもほんの一握りだが、それでも棚の多くはバインダーで一杯だからな。しかしね、私に言わせれば、財団職員がそういう事件を起こさない訳がないんだ。
考えてもみたまえ。財団の研究職は大抵の場合、学術的な研究に没頭した末こんな所へと行きついている。普通の人間はこんな職場で働こうだなんて思わないだろう。ここの研究員達にとって、知的探求心は安定した暮らしや命よりも重いということだよ。興味が高じてしまえば、誰だって規則を破る可能性があるんだ……まあ、そういう事件は大抵の場合未遂に終わるし、死人が出る事も少ない。動機も明快で、アノマリーの性質によるものではないとすぐ分かる。
財団職員が自殺する原因も……まあ、分かるだろう。大抵は生死のかかった極限状態での業務や、労働環境のせいだ。言うまでも無い。財団職員の自殺の大半はここに送られてくる案件だ。原因も調べやすい。
ただし、一番厄介なのは次のようなケースだ。読み上げようか。
『2023年2月12日、北海道中央区に位置するサイト敷地内にて、エージェント・岩具の焼死体が発見された。エージェント・岩具は灯油をかけられ、マッチを用いて燃やされたものと断定されているが、犯人は未だ発見されていない……』
さて、君達に質問だ。この事件記録を我々が保管する時に問題になるのはどこだろうか。
眼鏡の君。……いいや、『殺人であること』はどうでもいい。殺人だろうが、他の事件だろうが、アノマリーの性質に絡んだ事件でなければこの部屋で保管される。事件が余りにも周知されてしまっている場合は別だが、その場合は私がその都度指示をするから考慮しなくていい。他に分かる者は?
背の高い君。……犯人がアノマリーかもしれない点? 惜しいな。惜しいが、違う。犯人が異常性を持たない人間だと分かっていても問題になることだ。分かる者は?
髪の長い君。……その通り、動機がアノマリーによるものかもしれない点だ。動機だけは、犯人が分かっていないと特定できない。もしかしたらアノマリーに精神影響を受けて殺人に及んだのかもしれないし、そうではないのかもしれない。つまり、犯人が分からないと我々はここで保管するべきかどうか判断のしようがないんだ。
……そういう記録が送られてきたらどうするか? じゃあ私からも質問させてくれ。君達は、どうしてエージェントだけがこの記録管理課に集められていると思う?
理解してもらえたようだな。君達の仕事は送られてきた事件がアノマリー絡みかどうか審査することだ。審査をする場所はこの記録室かもしれないし、事件現場かもしれない。
改めて、非記録事件記録管理課へようこそ、審査員達。
最後に、ご愁傷様。君達はきっと、財団職員に愛想を尽かす。
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