SCP-2956-JP改稿案「ヒト好きで芸術肌なお友達」
下記ぺージは削除用カテゴリに置かれています。
draft:7648798-2-1113
ページを完全に削除するには「オプション」から「削除」を選択し、「ページを完全に削除する」にチェックをいれてから削除してください。
アイテム番号: SCP-2956-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロコトル: オブジェクトの異常性そのものが周囲に与える影響が軽微であり、SCP-2956-JPが周囲に広く認知されてしまっている点やSCP-2956-JP-2と敵対する危険性を考慮し、SCP-2956-JPの直接的な封じ込めは現状見送られており、オブジェクトの監視に重点が置かれます。
SCP-2956-JPの内部および周辺地域にそれぞれ最低1名づつ記憶補強薬を服用したエージェントを配置し監視を行い、異常な動きが見られた場合には速やかに内海博士に報告してください。また、SCP-2956-JPの異常性を認知していると思われる人物を発見した場合には、当該人物がSCP-2956-JPから退園後、速やかに拘束しインタビューを実施、必要に応じて尋問を行ってから記憶処理を行い解放してください。
SCP-2956-JP外に存在すると思われるSCP-2956-JP-2個体の情報収集と捜索は継続し、新たな情報は都度内海博士に報告してください。
説明: SCP-2956-JPは千葉県八千代市に存在する認識災害特性を有するバラ園です。通常、SCP-2956-JP内で栽培されている人型実体(以降SCP-2956-JP-1)とSCP-2956-JPの従業員(以降SCP-2956-JP-2)は認識災害特性によって異常性のない一般的なバラや人物に見えますが記憶補強薬を服用している人物または後述するSCP-2956-JPから提供される点眼薬を使用した人物は、この認識災害特性の影響を受けません。
SCP-2956-JP-1はSCP-2956-JP内で栽培されている人型実態群です。人種、年齢は様々ですが、20代と推定される個体が比較的多く、全ての個体は容姿が非常に優れており衣服は身につけていません。また展示されている個体の足元にはSCP-2956-JPの作品名が書かれていると思われるプレートが設置されています。
SCP-2956-JP-1は足首から下を地面に埋没させた状態で個体によって様々なポーズをとっています。認識災害特性の非影響者がSCP-2956-JP-1を直接的、間接的問わず視認した場合、感情に軽度の変化が有ることが報告されていますが、これがオブジェクトの異常性によるものなのか、単に芸術作品等を観賞した際の心境の変化であるのかはわかっていません。SCP-2956-JP-1は自我を持っている様子は確認できず、周囲の刺激に対しても無反応です。肉体の組成に異常が見られないにも関わらず、肺によって呼吸はするものの食事や睡眠を必要とせず、一般的な植物と同様に埋没している脚部の指先から土中の水分を吸収する事で生存が可能です。また一般的な植物と違い、光合成を行っている様子は見られません。
SCP-2956-JP-2はSCP-2956-JPを運営している人型実態群です。頭部は個体毎に異なる種類の巨大なバラ科の花に酷似しており、肉体はバラの蔓が絡み合って形成されているように見えますが、SCP-2956-JP-2との不要な敵対を防ぐためにサンプルを採取する試みは見送られ、詳細な生態は判明していません。SCP-2956-JP-2は基本的にはこちらに対して友好的ですがSCP-2956-JP-1を傷付けた場合、敵対的になります。
SCP-2956-JPは別件で事前に記憶補強薬を服用していた内海博士がプライベートでSCP-2956-JPを訪れた事で発見されました。以下はDクラス職員を用いた探査およびインタビューの映像記録の抜粋です。
探査ログ 2956-JP
探査者: D-11029
付記: D-11029には眼鏡に偽装したカメラと通信機を用いた撮影および通信を行った。またD-11029は事前に記憶補強薬を服用してる。
D-11029: 博士、中に入ったぜ…ってうぉ!?
内海博士: どうしました?D-11029?
D-11029: いや聞いてはいたけどよ、入口からしてすげぇ!鉢植えに刺さった赤ん坊とか小さいガキが売られてんぞ!
内海博士: D-11029、少し声量を落としてください。周囲に一般人がいるのですよ?
D-11029: お、おう。そうだよな。わりぃわりぃ。お、博士。アーチだ。人間が絡み合って入口のアーチが出来てるぞ。
[映像内のアーチは異常性のない一般的なバラで出来たアーチに見える]
内海博士: やはり記憶補強薬無しでは異常無く見えますね。D-11029、SCP-2956-JP-1の様子を説明してください。
D-11029: 様子って言ってもなあ…無反応だな。笑顔は笑顔なんだが、目線も動かねえし声もあげてねえ。まるでオブジェみたいだが、呼吸はしてるのか腹は少し動いてるぞ。
[D-11029がアーチをくぐり、SCP-2956-JP内の中庭に入場する]
D-11029: おお…なんじゃこりゃ。
内海博士: どうしました?
D-11029: ヒト…ヒト…ヒト、人間だらけだ。人間が地面に植わった状態で突っ立ってる。
内海博士: ええ、私も発見時は驚きました。発見時は本部への報告を優先するためすぐ撤退したので、今回はより詳細な調査をしていただきます。まずはSCP-2956-JP-1のサンプルを――――
男: な、なんだよ!離せ!ちょっと触っただけだって!
D-11029: 博士!おっさんがバラ頭の奴らに捕まってるぞ!
[SCP-2956-JP-2と思われる三人の従業員に囲まれた男性が写し出される]
SCP-2956-JP-2: お客様、他のお客様のご迷惑になりますのでこちらへ。
男: 悪かったって!おい!俺に触んな!
[SCP-2956-JP-2群に拘束された男性が連行される]
内海博士: 嫌な予感がします。D-11029、サンプルの採取は中断して付近のSCP-2956-JP-2にインタビューを実施して下さい。
D-11029: はいよ。えーと、なああんた!
SCP-2956-JP-2: はい!いらっしゃいませ!何かお困りですか?
[D-11029が先程の個体とは別個体のSCP-2956-JP-2に声をかける。]
D-11029: いや、困り事っていうか…えー…変な事聞くかも知れないんだけど、ここのバラってなんか変じゃないか?バラじゃないっていうかなんというか。
SCP-2956-JP-2: [約3秒沈黙]お客様、本日はどなたかのご紹介ですか?
D-11029: え?い、いや紹介というかなんというか……。
SCP-2956-JP-2: ああ!ではクチコミで当園の事を? それではご説明致しますのでこちらへどうぞ!
内海博士: SCP-2956-JP-2の案内に従って下さい。くれぐれも慎重に。
[SCP-2956-JP-2はD-11029をSCP-2956-JP内西側に存在する建物へ誘導する。建物内部には空の鉢植えや麻袋、テーブルや椅子が雑多に置かれた倉庫のような内装になっており、テーブルの1つに案内される]
SCP-2956-JP-2: どうぞこちらにお掛け下さい。いやあ散らかっていて申し訳ありません。この建物は現在改装中でして清掃が行き届いてないんですよ、ハハハ。
[D-11029が促されるまま席につく]
SCP-2956-JP-2: それで…単刀直入に申し上げますと、あれはバラではなく当園で栽培しているヒトでございます。当園では観賞用にヒトを栽培しております。
D-11029: ヒト…栽培!?
SCP-2956-JP-2: はい、私どもの世界ではヒトは植物の様にそこら中に当たり前に存在する生き物で、我々は時にヒトで芸術を表現します。庭園にあるヒトはみな私どもの作品なんですよ。
D-11029: 芸術……いや、あんた今私どもの世界って…。
SCP-2956-JP-2: ええ、信じられない…とは言っても私どもの姿を見ればお分かりになるかと思いますが、私どもはこちらの世界の住人ではございません。当園の創設者は、こちらの世界の方々に私達の世界の芸術的文化を広めるべくこちらの世界に渡り、こちらの世界の方々からのご支援を頂きまして当園を創設いたしました。しかしこちらの世界の文化に土足で踏み込むつもりはございません。皆様には皆様のルールがありますので、当園のヒト芸術は会員のお客様か紹介で来られた方以外には、ヒトはバラの花に見えてるはずです。もちろん私どもの姿も。
D-11029: ヒトの栽培……そんな技術があんのか……。
SCP-2956-JP: さようでございます。とはいえ当園がこちらの世界でヒトを栽培出来るようになるまでには相当の苦労があったと聞いております。
D-11029: あんたらの世界じゃヒトの栽培なんて当たり前なんじゃないのか?
SCP-2956-JP-2: 私どもの世界のヒトはこちらの土壌ではうまく育たなかったそうです。また同様にこちらの世界のヒトは私どもの栽培方法では成育がうまくいかなかったとか。ご支援頂いたこちらの世界の方々からアドバイスを受けながら何年もかけて漸く安定した栽培技術を確立したそうでございます。
D-11029: 俺らの世界に協力者がいたのか。
SCP-2956-JP-2: さようでございます。あの方々からは資金や研究に必要な素材、こちらの世界の生物に関する知識や技術の提供があったと伺っております。今でもその方々とはお付き合いが続いておりまして、庭園内には彼らから寄贈していただいた作品も展示させて頂いております。私共にも負けず劣らぬ素晴らしい作品ばかりですので後程ぜひご覧になって下さいませ![やや興奮した様子で]私の作品もぜひ!特にVenusは前回のコンテストではアイスバーグの黒太陽を敗り最優秀賞に輝きましてね!私の芸術活動の中でも最高の――――
D-11029: あ、ああ!オッケー、後で見にいくわ。
SCP-2956-JP-2: ええぜひに!あ!申し訳ありません。失念しておりました。
[SCP-2956-JP-2が衣服のポケットから小さな小瓶を取り出す]
SCP-2956-JP-2: この点眼薬をお使いいただければ当園のヒト芸術をお楽しみ頂けます。本来は会員のお客様にしかお渡しして無いのですが、もし中身がなくなった時は当園の従業員にお申し付け下さい。ウェスターランドからの紹介だとおっしゃって頂ければ確実です。
D-11029: ウェスターランド?
SCP-2956-JP-2: 私の名前ですよ。
以上のインタビューと園内で栽培されていたSCP-2956-JP-1を調査した結果から、SCP-2956-JPの起源は並行世界に由来し基底世界の複数の要注意団体が関与している事、SCP-2956-JP-2は並行世界航行を初めとする未知のパラテクノロジーを所有している可能性があることがわかりました。また上記のインタビュー時に入手した点眼薬を調査した結果、一般的な点眼薬の成分に加え未知の成分が検出され、この点眼薬を使用する事で約3時間の間、SCP-2956-JPの持つ認識災害特性の影響を受けなくなる事がわかりました。
以下は内海博士によるSCP-2956-JPに関する提言を一部抜粋したものです。
探査および実験からSCP-2956-JPは現状、認識災害特性以外に特筆すべき異常性は見られません。しかし、その起源が並行世界に由来する以上、未確認のパラテクノロジーによる異常性が存在する可能性を否定することはできないでしょう。そのため下手な封じ込め処置はSCP-2956-JP-2達との敵対を招き、その場合未確認の異常性によりどれ程の被害が発生するか予想出来ません。
さらに、関与が疑われる複数の要注意団体に関する情報を入手する事が出来る可能性が有ること、SCP-2956-JP自体が一般に広く認知、利用されている一方で周囲に与える危険性が低いことを鑑みて、SCP-2956-JPの収容は監視に留めるべきかと思われます。財団の予算や人的資源も無限ではなく差し迫った危機が無いのなら大規模な収容処置でリソースを割くことは躊躇すべきです。またSCP-2956-JPと要注意団体が繋がっている以上大規模な封じ込めやカバーストーリーの流布が我々が本オブジェクトを捕捉した事実をSCP-2956-JP-2群および要注意団体に認知され、本オブジェクトおよび要注意団体の逃亡、喪失に繋がる可能性が懸念されます。この収容方法はそのための処置でもあります。
上記の提言を受けて、SCP-2956-JP内外の監視に重点を置き、SCP-2956-JPの異常性を認知していると思われる人物はSCP-2956-JPとのトラブルを避けるために退園後に拘束し、他の要注意団体の関係者であった場合には必要に応じて尋問を行い、情報を抜き出した後に解放するといった方向で収容スペシャリストによって収容方法の調整が行われています。
以下の参考資料はSCP-2956-JP-1のリストの一部です。完全なリストを閲覧したい職員は内海博士に申請して下さい。
SCP-2956-JP-1リスト
作品名 |
説明 |
視認時のDクラス職員の感想 |
Venus |
ブロンドの長髪で身長約160cm程の10代後半から20代前半と見られるコーカソイド系の女性に酷似した個体。他の個体に比べて胸部および臀部が発達している。プレートには作品名の他に「第12回ヒト芸術コンテスト 最優秀作品賞」と書かれている |
Dクラス職員は一様に非常に美しい、多幸感を憶えたと回答。数秒間放心する者もいた |
本質 |
様々な人種、年齢の個体が複雑に絡み合っている。通常であれば骨や内臓器官が損傷するような体勢であるにも関わらず、すべての個体が笑顔であり、苦痛の表情を見せていない。また全個体の腹部が切開されているものの出血はなく、内臓器官や骨が黒く染められている。プレートには作品名の他に「Are We Cool Yet?██ ███ 様 寄贈」と書かれている |
ほとんどのDクラス職員が不快感を示したものの、何故かもっと見ていたくなると回答 |
黒太陽 |
身長215cmの20代後半から30代前半と見られるネグロイド系の男性に酷似した個体。頭髪はなく全身の筋肉が非常に発達しており、皮膚表面は油分と思われる液体で覆われている。常に笑顔のままボディビルのダブルバイセップスのポーズをとっている。プレートには作品名の他に「第12回ヒト芸術コンテスト 銀賞」と書かれている |
ほとんどのDクラス職員が驚嘆の声をあげており、一部のDクラス職員は直接触れてみたいと回答 |
自由の翼 |
黒髪の長髪で身長150cm程の10代後半と見られるモンゴロイド系の女性に酷似した個体。両腕が鳥類の翼のようになっており憂いを帯びた表情をしている。プレートには作品名の他に「日本生類創研 様 寄贈」と書かれている |
ほとんどのDクラス職員が鬱屈とした感情をおぼえた、悲しくなった、胸が締め付けられると回答 |
Love and Peace |
身長165cm程のモンゴロイド系の男性に酷似した個体とSCP-2956-JP-2に酷似した個体が握手を交わしている。 両名の脚部は足首の辺りが結合している |
一部のDクラス職員はSCP-2956-JP-2に対して親愛の情を憶えた、作品がハートの形に見えると回答 |
望郷 |
黒髪で身長170cm程の20代前半と見られるモンゴロイド系の男性に酷似した個体。膝を抱えるようにしてしゃがみこんでおり、首の向きは常に上空に向けられている |
Dクラス職員は皆一様に故郷を思い出した、懐かしくなった、故郷に帰りたいと回答 |
前述したSCP-2956-JPの内部調査時、閉園後にSCP-2956-JP-2個体がSCP-2956-JP外部に移動する様子が確認されました。そのため、その日調査を行っていたD-11029がSCP-2956-JP-2を追跡するよう指示されました。以下はその際SCP-2956-JP-2に対して行われたインタビューの映像記録です。
インタビューログ 2956-JP
インタビュアー: D-11029
対象: SCP-2956-JP-2個体
付記: 対象となったSCP-2956-JP-2は探査ログ 2956-JPにおいて接触した個体と同個体と思われる。なお映像は園内の探査時と同様、眼鏡に偽装したカメラとマイクにより撮影された。
[D-11029が追跡した結果、SCP-2956-JPから5分程の位置に存在するアパートの前に到着した。SCP-2956-JP-2個体が追跡に気付き振り向く]
SCP-2956-JP-2: おや? あなたは確か昼間の…
D-11029: よ、よお! やっぱりあんただったのか!えーっと…そうウェスターランドさん!いや偶然見かけてさ! 今、帰りか?というか…こんな普通のアパートに住んでんのか?
SCP-2956-JP-2: 名前を憶えててくれたんですか! 嬉しいです! ここは僕たちの社員寮みたいなもんなんですよ。そうだ!ここで会ったのも何かの縁ですし、よろしければあがっていきませんか?お茶くらいしかだせませんが。
D-11029: じゃあお言葉に甘えてお邪魔しようか。
[二人がアパートの一室に入室する。部屋は玄関からのびた廊下の先に10畳程の空間が広がっており、異常な点は確認出来ない]
SCP-2956-JP-2: 散らかっててすみません。適当に腰かけて下さい。
[床に座ったD-11029に緑茶と思われる液体が入った湯飲みが渡される]
D-11029: サンキュー。へー、意外と普通なんだな。ん?なんだこりゃ?こんなん見るのか?
[D-11029が付近の床に置かれたボディビル関連のものと思われる雑誌とグラビアアイドルのDVDを発見する]
SCP-2956-JP-2:[興奮した様子で]素晴らしい肉体美でしょう! いやあこちらの世界にもこんなに素晴らしいヒト芸術の表現方法があるなんて思いませんでした! 彼らはきっとこれ程の芸術的で美味しそうな肉体を維持するために並々ならぬ努力をしているに違いない! 僕らの芸術作品の参考にさせてもらっていまして、よくアイスバーグとここで研究してるんですよ!
D-11029: そ、そうなのか。ん?なんか今物音が…
[D-11029がウォークインクローゼットと思われる扉を注視する。扉の奥からはガタガタと物音が確認できる]
SCP-2956-JP-2:あ!そうだ忘れてた!
[SCP-2956-JP-2が慌てた様子で扉を開く。押入れ内部には男女二体の人型実体で構成されたSCP-2956-JP-1が確認できる。男女は脚部が結合した状態で鉢植え内の土に足首より下を埋没させている。D-11029に視線を向けて何かを伝えようとする素振りを見せ身体を僅かによじらせている。発声は試みている様子だが出来ていない。また男性個体は探査ログ 2956-JPにおいてSCP-2956-JPに拘束された男性に酷似している。SCP-2956-JP-2がSCP-2956-JP-1をウォークインクローゼットから取り出す]
SCP-2956-JP-2: いやあいけないいけない。昨日群馬で働いてる古くからの友人が遊びに来ましてね。良いヒトが手に入ったからってお土産にくれたんですよ。今日は次の作品の試作をしようと思ってたんでした。眠ってるはずだったんですが……薬の分量間違えたかな……。酒に酔って作業するもんじゃないですね。ハハハ!
SCP-2956-JP-1: あ……かっ……はっ……
D-11029: お、おい。このオッサン昼間の……
SCP-2956-JP-2:ええ、まあたまにいらっしゃるんですよ。当園のヒトの栽培方法は企業秘密なので盗もうとする方が。女性の方もおそらく何かトラブルがあって捕まえたんでしょう。私の友人は密猟なんかするタイプじゃないですし。最初はこちらの世界の警察に突き出してたんですけど他では手に入らないからかキリがなくて……。 あ、そうだ!よければ試作風景をぜひ見ていってください!
[SCP-2956-JP-2がウォークインクローゼット内部へ入っていく]
内海博士: [他の研究員と協議を行う] 先程の発言が気になります。D-11029、このまま会話を続けて他の地域のSCP-2956-JP-2についての情報を聞き出して下さい。
D-11029:おう、了解。
SCP-2956-JP-2: え?何か言いました?
[SCP-2956-JP-2が何らかの薬物が入っていると思われる注射器を持って戻ってくる]
D-11029: え!? い、いや別に何も!
SCP-2956-JP-2: そう…ですか?
[SCP-2956-JP-2が手にした注射器をSCP-2956-JP-1の首筋に刺す]
SCP-2956-JP-2: さあ怖くないよ? 僕が君たちを素敵に飾ってあげるからね。ゆっくりおやすみ。
[SCP-2956-JP-1に薬物が注入される。SCP-2956-JP-1はD-11029を見つめたまま身をよじらせているが次第に動かなくなる]
D-11029: し、死んだのか…?
SCP-2956-JP-2: いえ、眠らせただけです。目も開いてますから見た目からはわからないですけどね。無駄に怖がらせる必要はありませんし。
[SCP-2956-JP-2がウォークインクローゼットから電動ノコギリに酷似した未知の機械を取り出し、数分SCP-2956-JP-1を観察した後、男女両個体の両腕を切り落とす。出血量は本来想定される量より遥かに少ない]
SCP-2956-JP-2: ふぅ……どうですか!あえて腕を剪定する事で胸部や腹部、臀部の筋肉や膨らみの美しさを強調しました!欲を言えば男性の方はもうちょっと筋肉質なら映えるんですけどね……。
D-11029: え……ちょ……は!?
SCP-2956-JP-2:あ、す、すみません!いきなりで脅かせちゃいましたか?これは皆さんで言うところの生け花みたいなやつでして!
D-11029: ま、まさか俺もこんな風に!?
SCP-2956-JP-2: 落ち着いてください!誤解です!貴方を生けたりなんかしないですって!
D-11029: 目の前で人間が刻まれたんだぞ!?信用出来るかよ!
SCP-2956-JP-2: それは……えっと……そんなにおかしなことでしょうか…?
D-11029: な、何?
SCP-2956-JP-2: 僕達にとってヒトは、大いなる自然の恵みであると共に、同じ星に生きる仲間なんですよ。だからその命には敬意を表します。皆さんだって牛や鶏を憎くて殺す訳じゃないでしょ? 木や花を快楽のためにいたずらに刈り取る訳じゃないでしょ? それと同じなんですよ。それに……僕は嬉しいんです。
D-11029: 嬉しい…?
SCP-2956-JP-2: はい、嬉しいんです! 僕達の世界のヒトは、野生種はそこら中にいますけど植物のように殆ど動きませんし、皆さんの様に日々自分を磨く知性も意思もありません。だからこうして大好きなヒトとおしゃべりしたり……友達になれるなんて思ってませんでしたから。それに、あの園の創業者達はビジネスという打算的な考えがあったかもかされませんが、僕個人としてはこちらの世界の方々にヒトのの魅力を、そしてそれから創造される美しい芸術の世界を、僕達の文化をもっともっと知って欲しいんです! もちろん逆もしかりです。ボディビルやアイドルとかね。まあ、こちらの世界にはこちらの世界のルールがありますから、あまりおおっぴらには出来ないのが残念ですけど……。
D-11029: 友達……友達か……そうだな、悪ぃ。文化がちょっと違うくらいで……取り乱しちまった。
SCP-2956-JP-2: いいえ、とんでもない!こちらこそ驚かせてすみません! あ!良いこと思い付きました。仲直りに飲みませんか?僕達の友情に乾杯しましょう!
D-11029: いいな! 酒なんてホントに久しぶりだ……。
SCP-2956-JP-2: そうだ! さっき剪定した腕で何か美味しいものでもこしらえましょう! こう見えても前職は市場でヒトの解体ショーやったり、学生時代もヒト料理専門店でバイトしてたんで料理は得意なんですよ? ちゃちゃっと作るんでちょっと待ってて下さいね!
D-11029: ひっ……う……あ……。
この時点で協議が行われ、これ以上のインタビューの継続は有益な情報の入手は難しくD-11029の精神的にも危険だと判断され、D-11029にはインタビューの中断と撤退が指示されました。 また映像内の女性はインタビューの数日前に群馬県内で行方不明になり捜索願が出されている人物と特徴が一致していることがわかりました。
以下は上記のインタビューの後に出された内海博士による提言の一部を抜粋したものです。
SCP-2956-JP内部探査時の私の提言は見通しが甘かったと認めざるを得ない。忘れてはいけないのは、SCP-2956-JP-2達はあのバラ園の中に生息している実体でなく、並行世界において我々と同じように広く繁栄した種であるという事です。それが財団と同程度の規模の集団なのか、地球の世界人口78億に匹敵するのか、はたまたそれ以上か。我々にとって幸運なのは、今のところ彼らに敵対的な意思はないことです。ですが大規模な集団となれば一枚岩ではないかもしれない。中には我々の世界を侵略、支配しようとする個体がいる、ないしこれから現れる可能性はむしろ高いと言えるでしょう。ビジネスや異文化交流を目的に我々の世界に滞在しているというSCP-2956-JP-2の発言の全てを鵜呑みにするべきではありません。そもそも彼らの文化と価値観は我々のそれと明らかにずれています。悪意が無いからといって安全ではないのです。彼らの真の目的はなんなのか。我々には圧倒的に情報が不足しています。かと言ってSCP-2956-JP内のSCP-2956-JP-2実体を不用意に捕えたり尋問するような行為はリスクが高すぎます。未発見のSCP-2956-JP-2とSCP-2956-JPの類似施設の発見、オブジェクトクラスおよび収容手順の見直しを早急に進めるべきです。
上記の提言を受け、本オブジェクトの完全な収容下にはない現状を鑑みてオブジェクトクラスをKeterに再分類し収容手順を見直すべきか否かが議論されていますが、国内の人肉嗜食用者の数が決して多くないこともありSCP-2956-JP-2の新たな目撃情報は本報告書執筆時点で未だにありません。そのため新たな情報を収集するためにも現行の収容方法が継続されています。
テーマは「日常の中に当たり前のように存在すり異常」「異文化交流の中のずれた価値観による気持ち悪さ、気味悪さ」です。
基本的な流れ、方向性は変えないように意識しました。
現行の記事からの変更点
・前半のSCP-2956-JP-2の台詞の削減
・カニバリズム要素の削減。それにともない石榴倶楽部の関与をカット。認識災害の無力化条件を変更。単純なホラー要素としての食人ではなく文化としての食人を意識。
・前半は気味悪くもどこかコミカルなSCP-2956-JP-1でなるべくホラー感は薄めに、後半の猟奇的な描写で緩急をつけることを意識。全体的に悪意は見せずやってることとのギャップを意識。
以下はスポイラーのようなものです。読んでいただける方の参考になればと思いますが、あくまで私の脳内設定です。
文中にもあるように、バラ人間達は並行世界の存在です。バラ人間達の世界の人間は、私達が花を活け花にしたり、時に食用にしたりするように、芸術作品の素材にしたり食べたりします。また向こうの人間はこちらの人間のように知能は高くなく、植物のようにほとんど動かないし、種類によっては動く種がいますが群れを作ったりといったコミュニティを形成する生態はありません。
ある日、バラ人間達の世界にAWCYのメンバーが迷い込みます。彼は人間を使った作品で人間の内面や本質を表現する芸術家でしたが、他のメンバーからは「ただグロテスクなだけ」「ゴア表現したいだけの幼稚な作品」などと言われ評価されませんでした。そこで彼はこの世界では自分は理解されないと異世界に興味を持ち始めます。方法は何らかの偶然飛ばされたのかも知れないし、エルマの技術かも知れません。
とにかく、バラ人間の世界に迷い込んだ彼は新種のヒトとして、後のバラ園創設者に捕まります。そこで彼は自分の生い立ちを語り、同じヒト芸術の文化があるバラ人間と仲良くなります。
創設者バラ人間は異文化交流であると共にビジネスチャンスだと思いました。新たな市場開拓と芸術活動の資金調達のため、私達の世界でヒトを栽培しようと画策します。元々並行世界航行の技術をバラ人間達は保有していましたが、並行世界は数多あるため私達の世界のことは認知していませんでした。
こうして創設者バラ人間はAWCYメンバーと共に私達の世界に渡りました。AWCYのメンバーは日本生類創研に協力を依頼しました。元々彼は芸術活動の素材提供元として日本生類創研にコネがあり、日本生類創研はバラ人間の生態や今後安定した人体実験の素材提供元として興味を持ち協力を快諾しました。以降は日本生類創研が素材とこちらの世界や人体の知識、人間の加工技術を提供し研究に参入します。また認識災害技術に加え、日本生類創研の忠告もあり財団やGOCにバレない様に徹底した情報封鎖を行ったため発覚が遅れました。こうして今に至ります。
また補遺2でのバラ人間の発言に嘘はなく100%悪意や害意はありません。文化の方向性は似通っているはずなのにどこか価値観がずれているのです。