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彼は、有能な技術者だった。同僚からも財団外からも、認められる有能な技術者だった。能力はずば抜けていた。
向こう5年は彼に勝る技術者は表れないというものまでいた。
しかし、――――――――――――――――――――
もう彼の行方を知る者はいない。
――――――――――――――――――
彼は、孤独だった。入社する予定だった、会社を不合格になり滑り止めであった、この財団に入社した。
財団では、様々な研究をしていた。そこは、妥協などではなく、素晴らしい物ばかりであふれているようにみえた。そして彼は、幼少期の時から得意であった機械系の部門に入った。
そこでは、最先端の技術を研究していた。研究室に入ってみると、他の研究室とはまた違った、雰囲気に包まれていた。
同じ時期に入った新入社員は、20人ほどいた。その中でも頭角を現した人もいれば、いつのまにか消えていった人もいた。
そこで彼は、気づいたのだった。
積極的に研究をしているのは、古参の先輩メンバーで一部、若手の先輩もいた。しかし、中には研究もせず、何もしていない先輩もいたりした。
そのことに彼は、本当にショックを受けた。
そして、彼は「なぜここにいるのだろう。」と、考えるようになり、そして、かんがえるのをやめた。
彼は、孤独だった。
彼は、笑っていたのかもしれないが、凄く乾いているように見えた。
――――――――――――――――――
その後彼は、ほかの研究室に異動した。あの研究室に失望したのもあった。
異動した研究室では、科学的な研究をしていた。そこでは、あの研究室にいた先輩もいたように見えた。
彼は、ある同期に勧誘されて、その研究室に入った。そこは、新入社員が不足し、研究室がなくなることもあり得たそうだ。
彼は、そこの研究室が楽しかった。ただ、何のためにしていたのかはわからなかった。
――――――――――――――――――
ある研究室から移動して1年がたった。この会社に入ってから3年がたった。
早いものだと、彼は感じていた。いつの間にか、遊んでいた先輩はいなくなっていた。先輩の同僚に聞いたがわからないそうだった。
彼は決意した。「この研究室を変えなければ。」と。彼の動機は、何週間か、外国に先輩らと留学していった。
彼は、 ―――――――――――――――――
彼は、ずば抜けていた。幼少期に様々な経験をしていたこともあり、その研究室では一番の技術者となった。
そのころから、室長とはそりが合わなくなっていった。
――――――――――――――――――
そのころから、彼は精神的な病を抱えるようになった。精神的に不安定な状態その後3年ほど続いていた。
また、彼の同僚同士が、付き合い始めた。彼は素直に喜んだが、複雑な気持であったのかもしれない。
彼は、文字が好きだった。文学を書くということではなかったが、記述することが好きだった。
彼の先輩は、彼に色々なことを教え、残していった。
彼は、独学で勉強し、一番の技術者になった。
そのころから、彼の心は荒んでいった。
彼は、この研究室を変えたい一心で頑張っていた。
――――――――――――――――――
彼はもう一つの研究室をやめようとそこの研究室室長に申し出たが、「君はやめないでくれ」と。頼まれていた。
彼は、嬉しそうな反面、寂しそうだった。
彼が、会社に入って4年がたった。
彼は、同僚と一緒に外国へ留学し、研究成果を発表してきた。
しかし、予想外のトラブルで失敗に終わった。彼ら自身の行動が遅かったのも原因だと、彼自身も悔いていた。
研究発表は日本でも行われたが、またしてもトラブルが生じ、研究成果が公になることはなかった。
人間関係の悪化や、再構築があったが彼は平然としていた。 平然としているように見えただけかもしれない。
――――――――――――――――――
彼が入社して5年がたった。
彼には、後輩ができていた。しかし、継承が全然できていなかった。後輩は全く育っていなかった。
彼は、研究室の部長になる資格はあった。しかし、室長の求めるものを満たさず、また、信用もなかったようだ。
彼は、結果を残せず、制作期限にも間に合っていなかった。
彼の求める技術水準は高かった。できるだけ良いものを探求していっていた。
当然、期限に間に合わなくなるのも当然なのかしれない。
彼は、責任だけ負っていった。彼以外の同僚の負担にならないように。彼が願う、この研究室がよくなっていくようにするために。
彼は、孤独だった。他人とよく話すが他愛のない話をよくしていた。真剣な話は、いつしていたのだろう。
――――――――――――――――――
彼は、同僚ともめた。人間関係の悪化につながった。
彼は、不干渉を続けた。彼は、それでよかったのかはわからない。
彼は、さらなる技術発展のために、自分のお金を使い続けた。
研究室の環境をよくするために。ただ、急ぎであったため、室長の許可を取っていなかった。
彼は、新たな技術を導入した。室長も同意していたはずだった。
しかし、研究発表の前週から予定は狂い始めた。
研究発表にその技術を用いた成果は間に合わなかった。
できあいのものを使って、研究発表には臨んだ。
結果はまたもや失敗だった。
彼は、このことに人生をかけていた。去っていった先輩の言葉がなければ、その研究発表の夜にはこの世を去っていたかもしれない。
それほど、彼はこの研究室に入れ込んでいた。
彼は、猛烈に後悔した。初歩的なミスであった。事前に先輩の言葉を思い出していれば防げていたミスでもあった。
しかし、彼は
焦り、
忘れ、
間違えた。
彼は後悔し続けた。自分を追い詰め続けた。どう死ぬかについても考えていた。
研究発表の次の日は、精神的にも思い詰めていたことから、半日休みを取った。会社には親が伝えていてくれたそうであった。
会社に行き、室長に出社したことを報告した。室長は、仕事が忙しかったのか、こちらには見向きもせず応対した。
彼は、またもや失望し始めていた。
その後、彼はプロジェクチーム内で反省会を行い、彼は反省した。
彼には、オーバーワークであった節があったのかもしれない。
――――――――――――――――――
彼は、今回の研究発表のために使った彼のお金の精算について室長に相談しに行った。
室長は、
「前に請求された金額については了承したが、今回後から来たものについてはわからない。精算しなければいけない理由がわからない。
そもそも、新たな技術についても了承していた覚えはない。
自分勝手に行って、自分勝手に進めて、自分勝手に失敗して、周りに迷惑かけて。
とりあえず、その技術を使用した経緯などを報告書にまとめてきて。それが提出できるまでは俺のところに現れるな。」
とのことだった。彼は、最初は室長が何を言っているのか理解できなかった。
彼は、この研究室のために、少なくとも4年は尽力してきたつもりだった。脳内リソース使用率も70%をいつも超えていた。ずっと、良くなる方法に向かせるためにはどうすればいいか、かんがえていた。
彼には、理解できなかった。自分が自分勝手に行ってきていたということが。
彼には、戦うべき競合企業の存在が見えていた。どれくらいの水準の技術力がないと太刀打ちできないかも、わかっていたはずだった。
しかし、彼は、周りからは暴走しているという風にしか見えなかったのかもしれない。
彼は、もう疲れていた。この研究室には、もはや、裏切られていた。
彼は、彼自身がこれまでしてきたことは何だったのだろうか考えていた。
室長は、早めに辞表を提出するよう促してきていた。
彼は、今すぐ、辞表を提出すべきか考えていた。
同僚に話をするのも手なのかもしれないと考えた。
そして、彼は決断を下した、 ――――――――――――――――――
彼は、コミュニケーションには障害があったものの、有能な技術者だった。財団外からも、同僚からも認められる有能な技術者だった。能力はずば抜けていた。
向こう5年は彼に勝る技術者は表れないというものまでいた。
しかし、――――――――――――――――――――
もう彼の行方を知る者はいない。
彼は、もう去ってしまっていた。もう戻らないと決意して。
彼は、前々から、引退した、前室長に戻るべきだと主張していた。
しかし、彼の願いはかなわなかった。
今の室長は、結果ばかりを重要視していた。
結果は、経過がもとになっていると、彼は信じていた。
彼は、最後まで頑張っていたと私は信じたい。
彼は、今頃、安らかだろうか。私には、連絡手段がない。
彼自身の上からの返心を待つしかない。彼は、遠くへ行ってしまった存在なのだから。
彼の遺書には友人への感謝、研究室に対する失望・呆れそして感謝を、もう一つの研究室については純粋な感謝と謝罪が書かれていた。
私は、もう一度、彼が生きているうちに笑っている顔を見たかったものである。
今となっては叶わないこの気持ちを私はここに綴っておくことにする。