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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは頸に小型追跡装置が埋め込まれ、サイト-8110に収容されています。収容室内に設置された監視カメラにて常時監視されています。後述する異常性から、人型SCPと同じサイト内に収容することは推奨されていません。

当オブジェクトを監視する、または当オブジェクトと対面して接するスタッフは全て、クラスA対ミーム汚染処置を受けることが義務付けられています。また、SCP-XXX-JPの異常性(後述するイベント-α「闊歩」を除く)に曝露した場合、クラスA記憶処理にての対応が可能です。

イベント-α「闊歩」が発生した場合、無人ドローンによってSCP-XXX-JPを追跡し、麻酔銃を対象に撃ち込むことで事態を鎮静化させてください。
また、イベント-α「闊歩」についての情報をSCP-XXX-JPに知らせることは如何なる場合においても禁止されています。
SCP-XXX-JPに関する実験を行う場合は主任担当である飴村医師に許可を得てください。

SCP-XXX-JPは週に一度、そしてSCP-XXX-JP自身の希望時に担当主任である飴村医師の精神医学的診療とカウンセリングを受けます。その結果に応じて、財団勤務の薬剤師が適切な医療薬を当オブジェクトに処方します。現在は朝食後に、ベルソムラ錠20mgを1錠、夕食後にセルトラリン錠25mg3錠とパロキセチン錠10mgを2錠服用させてください。

SCP-XXX-JPは標準的人型収容室に収容されており、その内装はSCP-XXX-JP自身の希望で、アイスブルーを基調としたものとなっています。赤色を含む家具や小物をSCP-XXX-JPに支給するのはできる限り避けてください。

SCP-XXX-JPはクラス1サイト職員として認可されており、簡単な書類仕事が毎日割り振られます。
また、SCP-XXX-JPは週に一度合計で1万円前後相当の娯楽品の入手を希望することができます。そして担当主任である飴村医師が許可した物のみが支給されます。

説明: SCP-XXX-JPは繻子乃 江茉という名前を持つアジア人女性です。黒い長髪に、平均的なアジア人に比べて、著しく白い肌を持っています。当時SCP-XXX-JPが在学していたSingapore ████████ Universityの屋上にて確保されました。日本語、英語、中国語での意思疎通が可能です。IQテストの結果では全体的に高い数値を出し、特に言語性IQの数値は著しく高いものでした。国籍は日本に据えられており、収容時の年齢は1█歳でした。収容後に行われた一般的な身体測定の結果は身長1.74m体重51kgというものでした。

SCP-XXX-JPは強迫性障害を患っており、普段は活発で知的好奇心に溢れた性格ですが、強く不安を感じるような状況に晒されると、加害恐怖、そして儀式行動といった強迫観念と強迫行為が現れます。また、SCP-XXX-JPの覚える強迫観念の重さによって、SCP-XXX-JPの持つ異常性が段階的に変化していきます。またその異常性は、人間であれば例外無く影響を受け得ます。

SCP-XXX-JPが持つ異常性はレベル1から3へと段階的に変化します。レベル3に到達してから48時間内にSCP-XXX-JPを気絶状態にできなかった場合、イベント-α「闊歩」が発生します。

レベル1: SCP-XXX-JPの姿を見た者全てが利他主義保持者となる。(なにかしらの電子媒体を挟んだ上でも、異常性の影響は受ける。)
レベル2:異常性曝露から数日後、レベル1で得た利他主義が強まり、本来の自身の生活を放棄してでも奉仕活動や福祉イベントなどに参加するようになる。
レベル3:致命的ではない範囲の自傷行為に走る。

イベント-α「闊歩」が始まると、SCP-XXX-JPの意識レベルは300前後となり、呼びかけや攻撃に反応しなくなります。そのような状態にも関わらず、SCP-XXX-JPは自らの足で移動を始めます。目的地は不明ですが、より多くの人間に自分の姿が晒されるよう道程を選択しているように見えます。
イベント中のSCP-XXX-JPの姿を目撃した人間は皆全て、強い自殺衝動に駆られ、その場で自殺します。

また、SCP-XXX-JP自身はイベント発生期間の記憶を喪失します。このため自身の異常性については無自覚です

2020/██/05、収容前のSCP-XXX-JPによってイベント-α「闊歩」がSingapore ████████ Universityにて発生しました。当時学生寮、また、大学内に居た生徒そして教職員の多くが舌を噛み切ったことによる出血多量により死亡していました。
異変に気付いた周辺住民からの通報により現地のエージェント複数人が駆け付けましたが、その半数が同様に舌を噛み切り死亡。エージェント・マクベスが撃った麻酔銃により、SCP-XXX-JPは気絶し、事態は鎮静化されました。この事案がきっかけでSCP-XXX-JPは確保されることとなり、SCP-XXX-JPの国籍から、日本支部にて収容することが決定されました。

以下は収容直後に行われた、当時担当主任であった██博士によるインタビューです。

対象: SCP-XXX-JP

インタビュアー: ██博士

付記: ██博士はAクラス対ミーム汚染処置を受けています。

<録音開始, 2020/██/██ >

SCP-XXX-JP:…はじめまして。

██博士:突然ですが、5日の夜、貴方はどこに居ましたか?

SCP-XXX-JP:学生寮の自室にいました。というか、ここはどこなんでしょうか?警察の方ですか?さっき目が覚めたばかりで、まだ状況が…。

██博士:5日の夜に何があったかご存知ですか?

SCP-XXX-JP:何かあったんですか?

██博士:当時学生寮と大学内にいた多くの生徒、また教職員が死亡した状態で発見されたんです。

SCP-XXX-JP:(沈黙)

██博士:今回の事態について、貴方は何かご存知ですか?

SCP-XXX-JP:(呼吸が浅くなり、自らの腕を掻きむしり始める。)

SCP-XXX-JP:し、知りません…ゲホッ、あ、う。マイアは、マイアはどうなったんですか?アーシャも、い、い、生きてますよね?

██博士:こちらからお伝えすることはできません。インタビューを終了します。

<録音終了>

終了報告書: SCP-XXX-JPの様子から本当に何も知らないようだ。自分の異常性についても同じらしい。__██博士

以下は「レベル3相当の異常性に曝露した人間が、自死することができない場合、どんな行動をとるか」を調査するため行われた実験です。

実験記録005 - 日付2020/██/21

対象: SCP-XXX-JP

実施方法: 自死防止の装備をつけられたD-201110にレベル3相当の異常性保持中のSCP-XXX-JPの姿を視認させる。実験に関わるスタッフはD-201110を除いて、Aクラス対ミーム汚染処置を受けている。

結果: 予期せぬイベントα-「闊歩」の発生。実験に関わったスタッフが全員死亡。当時担当主任であった██博士も含まれる。自死できぬように処置されていたD-201110はSCP-XXX-JP自身により、指で眼球を潰されそのまま脳へとダメージを与えられ殺害されました。

今回の事象を受けて、担当主任に飴村医師が任命されました。

分析:レベル3の異常性の影響である「自傷行為」によって、収容前の事案が発生したと考えられていたが、どうやらそうではないらしい。また、この段階に到達した異常性には対ミーム汚染処置は役に立たないようです。今後、レベル3より進んだ異常性を持つSCP-XXX-JPの一連の行動をイベント-α「闊歩」と呼称します。
にしてもわざわざ不安状態にさせた女性を、拘束具で縛り付けられ口内にタオルの詰め込まれた人間の前に立たせるなんて。倫理委員会は何をしているのでしょう。__飴村医師

以下は飴村医師が主任に就いた直後の、SCP-XXX-JPに対するカウンセリングの記録です。

カウンセリング記録001 - 日付2020/██/25

対象: SCP-XXX-JP

カウンセラー: 飴村医師

** <録音開始, 2020/██/25 >**

飴村医師: はじめまして。僕の名前は飴村世継。よろしくお願いしますね。

SCP-XXX-JP: よろしくお願いします。えっと、今回は何をお話ししたらいいんでしょうか?

飴村医師: あぁ、今日は君自身について色々聞きたいんだ。と、いっても身構えないで。趣味とか、好きな本とか食べ物とか。そういう他愛のない会話をしましょう。

SCP-XXX-JP:わかりました。といっても、それも私が何者か、探るための会話でしょう?きっと私は貴方達にとって悪い存在で、だからここにいる。
飴村医師:…悪い存在、ってわけじゃないよ。そういえば、君が気にしていたご家族のこと、彼らについては心配しないでください。こちらが危害を与えるようなことは絶対にありません。

SCP-XXX-JP:わかりました。…わかるしかありませんが。…好きな本の話でしたっけ?ありきたりですけど、江戸川乱歩とか、芥川龍之介とか、あとは梶井基次郎とかですかね。日本の作家だと。

飴村医師:ふむふむ。いい趣味だね。僕も好きな作家ばかりだ。

SCP-XXX-JP:そうなんですね、嬉しいです。あとは、筋トレとかが趣味です。

飴村医師:筋トレかぁ!僕も筋肉つけたいんだよねぇ…。
<以下省略>

<録音終了>

終了報告書: カウンセリング内にていくつかの対話性の心理的な分析を行いましたが、SCP-XXX-JPは性欲が人類愛に昇華されているようで、それが彼女の人格形成に大きく影響しているようです。__飴村医師

カウンセリング記録002 - 日付2020/██/09

対象: SCP-XXX-JP

カウンセラー: 飴村医師

<録音開始, 2020/██/09>

飴村医師:こんにちは、繻子乃さん。

SCP-XXX-JP:こんにちは、飴村先生。

飴村医師:今日は君の病気について、少しお聞きしたいんです。シンガポールでも、メンタルクリニックで定期的な診察を受け、薬を処方してもらっていた…合ってるかな?

SCP-XXX-JP:はい。初めて心療内科に行ったのが9歳のころでした。場所を何回か変えたりもしましたが、ずっと心療内科やメンタルクリニックで定期的に診てもらってました。

飴村医師:なるほど。認知療法などの経験は無いですか?

SCP-XXX-JP:無いです。…あれって凄く胆力を使うでしょう?治そうと強く苦しむより、治らずとも死なない程度の苦しみを味わう方が、マシだなって。幼い頃はそういう風に考えてたので、カウンセラーの方に提案されても、挑戦したことはありません。

飴村医師:今でも、そう思ってますか?

SCP-XXX-JP:…今は、そんなことないです。さっさとこんな病気治したいし。苦しく仕方ない。耐えある苦しみじゃ無くなってきたんです。よく、時間も場所も問わずに、不安だと倒れるようにもなって。

飴村医師:…確かに、認知治療は、患者本人に頑張ってもらうしかない、というような節はあります。新たな治療法を選択する勇気も必要です。今、君がそれを選択できたのは素晴らしいことだと思います。

SCP-XXX-JP:…ありがとうございます。

飴村医師:じゃあ、君に合いそうな治療法を、こちらで考えておきます。もし、希望の治療法があったら教えてね。

SCP-XXX-JP:特に無いです。見つけたらまたお話します。

飴村医師:じゃあ今日のインタビューはここまでにしましょう。

<録音終了>

カウンセリング記録003 - 日付2020/██/15

対象: SCP-XXX-JP

カウンセラー: 飴村医師

<録音開始, 2020/██/20 >

飴村医師:こんにちは、繻子乃さん。

SCP-XXX-JP:こんにちは、飴村先生。

SCP-XXX-JP:…数冊ほど、頼みたい本があるのですが。

飴村医師:もちろんだよ。なんて題名の本かな?

SCP-XXX-JP:シェイクスピアの『マクベス』と、あ、日本語版がいいです。あと、『O Alquimista』、英語訳の2002年版がいいです。

SCP-XXX-JP:ふむ。また後で確認しておくね。

SCP-XXX-JP:ありがとうございます。先生は、『マクベス』読んだことありますか?

飴村医師:ありますよ。日本語版だけど、誰が訳したやつだったかなぁ。

SCP-XXX-JP:マクベスって酷いですよね。あれだけ自分に尽くしてくれた夫人を、「your patient」ですよ。恩知らずな男ですよね。

飴村医師:君は、夫人の方に感情移入しちゃう?

SCP-XXX-JP:まぁ…。手段を選ばないところとか、強迫観念にかられて、苦しんでいるとことか。ちょっと共感できますし。

飴村医師:君は自分のことを、「手段を選ばない」と評価しているんだね。

SCP-XXX-JP:あんまり、社会のルールとか、倫理観とか、気にならないんですよ。自分にとって善か悪か、良心の呵責があるかどうかが、尺度なんです。

飴村博士:ふむふむ。社会が禁止していることでも、自分が正しいことだと思えるなら、躊躇なく行える?

SCP-XXX-JP:そうですね。でも、社会で生活している以上、法に取り締まられますから、しませんけど。

飴村医師:もし例外的に、取り締まられないとしたら?

SCP-XXX-JP:しますね、迷いなく。

飴村医師:なるほど…。では、今日のカウンセリングはここら辺で終了しましょう。本については、追ってお伝えしますね。

<録音終了>

終了報告書: 彼女の希望した本達は、私の許可のもと、彼女に支給されました。

カウンセリング記録003 - 日付2020/██/20

対象: SCP-XXX-JP

カウンセラー: 飴村医師

<録音開始>

飴村医師: お久しぶりです。といっての一週間ぶりくらいかな。

SCP-XXX-JP: お久しぶりです。

飴村医師: 今日は少し踏み込んだお話をしようか。

SCP-XXX-JP:わかりました。
飴村医師:君はどんな時に、罪悪感を覚えますか?

SCP-XXX-JP:…いつも薄い罪悪感はありますよ。…人ってみんな、人殺しですよね。

飴村医師:ほう、というと?

SCP-XXX-JP:人って、みんな間接的に人を殺してるんですよ。今吐いた二酸化炭素が、地球温暖化につながって、最終的に多くの人を殺しているかもしれない。自分がポイ捨てした空き缶にお婆さんが転んで骨折して、それをきっかけに体を悪くしちゃって死んでしまうかもしれない。自分が不用意に発した言葉が誰かを傷つけて、死に追い込むかもしれない。けれど、みんな、それを見て見ぬふりしてるわけですよね、そうやって生きているんですよね。認知バイアスって自己防衛で、そうやって社会って回ってるんですよね。

飴村医師:…うん。

SCP-XXX-JP:人って唯一、清廉潔白で居られるのは生まれた瞬間だけですよね。いや、なんなら胎の中にいる時からあり得ることかも、間接的に人を殺すって。嗚呼、やだなぁ。江戸川乱歩の、赤い部屋って知ってます?あぁいうことですよ。あ、う。

飴村医師:繻子乃さん、落ち着いて。カウンセリングを終了します。誰か、鎮静剤を!

<録音終了>

終了報告書: 迂闊でした。今後、彼女の価値観について深く踏み込むときはもっと注意しないと。__飴村医師

補遺001:彼女の異常性が何時、そして何故発現したかは不明です。また、それについての調査の必要性は薄いと思われます。
ひとつ言えることは、彼女はイベント-α「闊歩」発生時には、どんな対ミーム処置もものともしない「価値観の強制上書き」を続ける存在となりますが、精神的安定が保たれている限り、善良な1人の人間であるということです。__飴村医師
アダムのリンゴ

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